【人】 軍医 ルーク[ 同情ではない、それは確か。 それだけははっきりと言い切れる。 では別の何かというと――… どれも、きっと違うだろう。 わたしには、なにもない。] 『それなら結構。 まあ、心配にせよ、なんにせよ――』 [ 医務室から、賑やかな笑い声が聞こえてくる。 元気でいいことだねえ、と、司令は目を細め、 ゆるやかに視線を遣った。 そうすることで、彼我に一本の線を引くように。] 『あの様子なら、そういったものは 十分足りているようだし、 君のは、迷惑なだけだろう? まあ、つまりは―― お互いお仕事をしましょう、ということだ』 [ 否定はせずに、頷いた。 何を感じることも、なかったと思う。 仕事はする、そのために此処に来た、それは確かだ。 その場を持して持ち場へと向かう。 ぎしり、と軋みを上げて扉は開き、 ゆるやかな足取りは、その向こうへと消えていった。]* (305) 2020/05/17(Sun) 12:03:55 |