![]() | 【独】 摘まれた花 ダニエラ>>-109 ひらり、ぱさりと冷たい床に白い紙。 身体は痛いし指先に力は入らないしで散々だ。散々だけれど、今は全く最悪なんかじゃなかった。 「…うー。だいじょ、…」 大丈夫じゃないけど。 「だいじょおぶう……」 今は、大丈夫。 落ちる涙の隙間からそれだけをいう。 空気が触れるだけで痛み続ける指先だったけれど、単純にもその唇が触れたあとには少し痛みが引いたような錯覚さえした。 「…ん ん 。」頷いた眼前。茶色の髪の下に咲くようなライムグリーンが映る。 約束のあかしがなくなっても、今はそれだけでよかった。 こうして本当に、傍にいてくれているんだから。 自分の手で拭えない涙をあなたが拭う。 そんな中、冷静になるのは状況の割に早かったように思う。 少しずつ、自分が本当に 警察のお姉さん でなくなったのだという自覚も湧き始めていた。「…ええ、と、」 追いついてくる。現実に。 まだまだ、それくらいじゃ追いつけていないことなど今の女が知る由もない。 「…護送、ですかあ。」 「わかりましたあ、よろしくお願いしますう」 そう笑う。本当の笑顔に、作り物の笑顔をかぶせて。 (-128) oO832mk 2023/09/28(Thu) 22:44:26 |