![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-173 流石に歩くのがつらくなってきた散歩の最中。 中庭のベンチにでも座ろうかと視線を投げれば、何故か見知った男がベンチに寝ている。 「……いや、なんで?」 浮かんだ疑問は言葉になって呟かれ、きょとん、と小首を傾げた。 あの日のようなあどけなさのある寝顔は、何も警戒してないようにも見える。 部屋やホテルとは違うのに、なんとも無用心だ。 「誰かの見舞いにでも来たのかな……」 あの強制的な逮捕の裏で拷問などもあったらしいから、怪我人もきっと多いだろう。 部下を沢山もつマフィアは大変だな、なんて思いながら、連なる隣のベンチに腰を下ろした。 そろりと、動く方の左手を伸ばして。 柔らかな髪に触れてみる。 いつも気持ちよさそうに眠るから、起きないだろうなんて思いながら、その頭をゆっくり撫でて表情を緩めた。 暫く休憩したら、そっと立ち去ろうと思いながら。 (-174) eve_1224 2023/09/29(Fri) 8:38:24 |