【秘】 リヴィオ → 口に金貨を ルチアーノ望まれて生まれたかった。 愛されて生まれたかった。 必要とされて生まれたかった。 ずっと、ずっと──生きていくのが、苦しかった。 涙は出ない。泣き方の辞書なんてとっくの昔に置いてきた。 代わりに浮かぶのは、泣きそうなほど顔を歪めた笑顔だ。 俺は要らないものだった。もうずっと、昔から。 ようやく手に入れた居場所でも結局また、 必要とされない、価値のない存在だった。 それでも生きてきたのはきっと、 本当は誰かに、その言葉を否定して欲しかったのだろう。 夢は終わらない。 これからもまだ、変わらない時間が続いていく。 それでももう少し、生きようと思えたのは───。 「……本当に君は、俺のことが……好き、だね」 破滅願望はきっと消えない。 いつかにきっとまた、終わりを求めてしまうのだろう。 それを否定されることは望めないし、変えられない。 それでもまだ少し、あと少しこれから先の未来を、 友人と、君達と、緩やかに、平和に過ごすとしようか。 「……ここを出たら、酒が飲みたい気分だ」 (-279) sinorit 2023/09/30(Sat) 5:55:54 |