【赤】 片連理 “椿”[頬を撫ぜる手はその声と同じく、無機質で冷たい。 光沢のない琥珀色が近づく。 それを瞬きもせずにじっと見ている。 あるいは、乾いた色の唇から覗く牙を。 赤が重なったのはほんの一瞬、すぐに下唇を歯列が捉えた。何かを感じる猶予も与えられず、牙は柔らかな肉を貫く。] ——ぁ [小さく呻いて、目を見開く。 舌先にとろりとしたものが触れる。慣れた味がする。 じわりと滲んだそれは次第に溢れて、唇の端から流れ落ちた。] (*3) nemunemusan 2023/03/07(Tue) 11:46:18 |