【赤】 片連理 “椿”怖かったな。 突然水の中に落ちて、深みに引き摺り込まれて。 息ができなくて、どれだけもがいても暗がりに引き込まれるだけで。 そのうち、足元に手が見えて、私を沈めようとしているのが、見慣れた人だったりして。すごく怖かった。 [彼は椿にとっての全てではあったものの、彼こそが自分を化け物たらしめているのではないか、という恐れはいつもどこかにあった。彼を恨んではならない、その献身に報いなければならないと自分に言い聞かせて、愛しているのか、愛されているのか、憎んでいるのか、恨んでいるのかも考えないようにして、ただ望まれるままに生きて、望まれるままに消えようとしていた、ような気がする。] 怖い夢は誰かに話すと見なくなるっていうけれど…… そんなの嘘。どんなに慰めてもらったって、 すぐにまたやってくる。 [貴方もそうでしょう?というような目を楓に向けて。]** (*20) 2023/03/07(Tue) 21:08:47 |