【赤】 片連理 “椿”[突然抱き寄せられて、言葉に詰まる。 このまま黙って消えるべきだったはずなのに。ずっとそうするべきだと思っていたし、死ぬのは当然の報いだ、怖くはない。 人のように生きろ、という願いは椿にとっては呪いにも似たものだった。その言葉に縛られて、死ぬことも、生きることもできなくて、ただ蹲っていた。 本当は殺されたかったのだろう。 自分よりも強いものに。 けれども、彼はそうしなかった。 生きていてほしいと言い、そして、殺さなかった。 自分が生きていてもいい、とは、やはり思えない。 はじめから“いらないもの”であった椿には、それはどれだけ時間をかけても、経験を重ねたとしても理解できないことだ。] (*24) 2023/03/10(Fri) 14:38:16 |