【赤】 一匹狼 “楓”[この暮らしにしがみつくのをやめる。 そう思って職場に向かってみれば、妙な気楽さがあった。 もう、不安に駆られる必要は無いだろう。自分が重ねてきた罪が暴かれ、仲間や友達に誹られて殺される不安に。 ずっとそれが怖かったのだ。 それなのにこの暮らしに囚われていた。 彼らの記憶の中ではきっと、ずっと人間のままでいられる。そう思えば解放感すらあった。 辞意を伝え、途中になっていた仕事を片づけていく合間、目的地を定めるのに調べ物を繰り返した。全ての仕事を終えて最後の給金を受け取るのと、彼女が近くと言った村を地図上に見つけたのとは同じ頃だった] (*37) 2023/03/10(Fri) 20:59:26 |