情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード「じゃあ来るよ。お土産持って」 「お前が良いって言ってくれるんなら、 お泊りじゃなくて遊びにでも」 そうなったら、なんだか本当のただの友達みたいだ。 ──マフィアだなんて大層な事を言って、 その中に混じるのはただのひと。自分も、きっと貴方も。 自分がひとだって? まさか。 とん、とん、と一定のリズム。 これがいいと言われるのはなんでだったか。 母親か自分の鼓動に近いからだったか。 「ん」 「おやすみ。ダヴィード」 服に貴方の手が触れる感覚。 それを自分の手で包んでやって、握った。 かすかに聞こえたその七文字に、穏やかな笑みを浮かべて。 ロメオもそのまま瞼を閉じた。 あたたかい。 これでいい。これがいい。 金でもない。名誉でもない、 なんでもないような細やかな幸せがこんなにも。 じきに広い寝室に、二人分の寝息が聞こえるんだろう。 (-53) susuya 2023/09/20(Wed) 23:30:37 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「え」 微かな動揺。聞き慣れない名前。 翠の色はそれで揺らいで、空のグラスを静かに置いた。 少しばかりの訝しさを以て細められた目は、 続く言葉を聞いて幾ばくか瞼を持ち上げる。 「ほんとの、」 朝の日向の色が揺れれば、照明がそれを透かした。 癖のない貴方の髪。 癖ばかりで跳ねる自分の髪とわずかに重なる。 ▷ (-63) susuya 2023/09/21(Thu) 0:03:54 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「──フレッド」 名を紡ぐ。 貴方の本当の名前を口に出す。 大事に。 そっと手に包むように。 「フレッド」 そっと抱いて抱えるように。 握られた手を一度放した。 それから、自分が貴方の手を握った。 知らないうちに空いていた、心の穴のピースがそこにあった様な気がして。 ▷ (-65) susuya 2023/09/21(Thu) 0:06:20 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「オレでいいの?」 「オレで……」 無意識に漏れた問いの答えを、 貴方の口から聞かずとも知っている。 けれどこの自意識が、こんな。 ひとらしい、だいじなものを持つ事を拒んでいるから。 貴方の言葉で杭を打ってほしかった。 (-66) susuya 2023/09/21(Thu) 0:07:32 |
【神】 渡りに船 ロメオ情報整理、精査、それから諸々の隠蔽に操作。 相変わらずロメオはギルドの端でパソコンに向かいながら、 親指の爪をガリガリ噛んでそんな作業をしていた。 ノートパソコン二台とタブレットを併用して、 苛立たしそうにキーボードを叩きながら 据わった眼で画面を見ている。 「カンターミネさん捕まったのマージで痛ぇんだよな……」 ちらりとウィッグを被ったテディベアを見る。 それからドでかい溜息を一つ吐いて、 「──へえ!」 画面に戻した視線の先にあった、新しい情報。 名前は知らぬが『その顔に覚えはあった』。 「そりゃすげえ。会えて光栄だったな」 よかった〜、と場違いに嬉しげな声を上げる。 #アジト (G17) susuya 2023/09/21(Thu) 1:03:59 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ『時間?』 『OK。いつでも』 すぐに簡素な答えが返ってくる。 この男の言う事だから、本当にいつでもいいのだろう。 (-80) susuya 2023/09/21(Thu) 1:12:15 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ「いた」 キィ、と音を立てて開く会議室の扉。 それを潜って貴女の姿を確認すれば、 何を言われるより前に、貴女の隣の椅子を引いて座る。 「食べな〜」 そうして唐突に、持っていた紙袋を1つ机の上に置いた。 中身を出す。ふかふかのボンボローニだった。 「疲れた時と、厳しい時と、とりあえず落ち込んだ時……」 「甘いもんって効きますからね。なんでか知らんけど」 買った時は揚げたてだったんだけどさあ、と 机に頬杖をついて。 「………………………………」 「話は落ち着いてからでいーんで……」 そう言って、貴女の言葉を待っている。 (-113) susuya 2023/09/21(Thu) 3:46:00 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ「おう。オレも食べたかったんで」 「移動屋台で売ってたんだよ。ラッキーだな」 貴方が手に取れば、自分もお構いなしに 紙袋の中身を取り出した。 「…………うん」 「うん」 貴女の口からとつとつとこぼれる掠れた声は、 貴女の今まで抱いてきた祈りを、願いを、想いを。 そして、無念と後悔を。 ターコイズブルーから溢れた大粒と共に流していく。 ロメオはそれをボンボローニを齧りながら、 砂糖の付いていない方の手で貴女の背中を摩って聞いていた。 「泣きな〜」 「仕方ないよ。悪人ってウイルスみたいに湧くんだから」 「潜んで蝕むもんなんだよ。オレらみたいに……」 「抗体のない女子供から狙われていくんだよ。 胸糞の悪い話だね……」 あんたは悪くないよ。 抵抗できない子供も悪くない。 悪いのは、わるいひとなんだよ。 そんなことを言いながら、貴女の背中を摩り続けた。 (-156) susuya 2023/09/21(Thu) 10:26:31 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ「おおすげえなお前」 朝から見えない姿に、何かしらを察していた。 それからあの猫の件はどうなったかと考えていた頃、 ゲージが持ってこられて少しほっとしたのは分かる。 まさか顔面グズグズの人間を 遣わせてくるとは思っていなかったが。 頭の中であの人が言ってたのってお前の事か、と納得する。 「……ありがとございまーす。マジで大丈夫?」 「これ……お駄賃の代わりに持ってきな。ティッシュ一箱」 おそらくこれも今日中と言わず数時間のうちに 無くなりそうな雰囲気ではあるが。 はい、と新品を部下くんに手渡した。 ゲージから解放され、ベッドの上で丸まった白猫は そんな事知った事ではなさそうだ。 「……あん人、どこ行ったの」 知らなくても良いけど、気になるから。 ダメ元で一つだけ尋ねてみた。 (-158) susuya 2023/09/21(Thu) 10:34:15 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「…………」 ゴト、とカウンターを伝うのは外した眼鏡を置く音。 遮る分厚いレンズは無くなって、 そのままの翠を貴方に向けた。 与えられた光だけを表面で返して、 その奥にはずっと奥まで深い洞があるような。 森の谷底のような、南の深海のような瞳。 「オレはお前が思ってるより善人じゃない」 「酷いものだよ。非道いもの……」 「……きれいじゃないんだ」 「……大丈夫かな」 「お前はきれいだから」 負い目がある。 「それだけが心配だよ」 「──ハハ」 ▷ (-162) susuya 2023/09/21(Thu) 11:02:17 |
ロメオは、矛盾を抱えている。 (a8) susuya 2023/09/21(Thu) 11:03:25 |
ロメオは、『人並み』にいつも背を睨まれている。 (a9) susuya 2023/09/21(Thu) 11:04:42 |
【秘】 セントエルモ ロメオ → 暗雲の陰に ニーノひとのかたちは喜んでいる。憂いている。 慈しんでいる。心の裏側が焼け焦げるような思いがした。 けれど、善い。 言葉は貰えた。 杭は打たれた。 「弟ができたな」 「フレッド。おいで」 繋いだ手を、グイと引っ張って。 バランスを崩して傾いた椅子の勢いで、 貴方を抱きしめようと思った。 吐き気がするほど、貴方を随分、大事に思ったから。 (-165) susuya 2023/09/21(Thu) 11:08:37 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ景気の良い鼻かみ音に、ヨシ……と頷いた。 ティッシュは有用だったようだ。 「成程な。賢い。つかそこまでしてたんすね? ケーキ屋ね。ケーキ屋……」 一応聞いといてもいいすか、とその場所を尋ねるだろう。 教えてくれれば、携帯端末にそれをメモする。 「……」 疑問の果てに辿り着いたトンチキな心配は置いておいて。 その内容は、あまり聞き捨てならない物で。 「マジで具合が悪い……か」 「マジで心労がすごい、の二択すね。それ」 「もしあの人が帰ってきたら休ませてあげてください。 あの人、頑張りすぎなんすわ。……」 「まあ……スゲー嫌そうだし。この件」 片腕で自分の肩を揉みながら、 ほとんど重たいため息みたいに言って遠い目をした。 「良い上司だもんな。心配だろ」 「あの人の邪魔にならないように様子でも見に行ってみるよ。 猫、ありがとうございました」 「あとチュールは食ってないと思います。安心していいよ」 (-219) susuya 2023/09/21(Thu) 17:26:19 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「うん」 「うん……なんだ。お前も? オレも居た時あったな……」 「大丈夫。いいんだ」 「いいんだよ。それでもお前、きれいだよ」 貴方を腕の中で抱いて、きつくない力で抱きしめる。 懺悔のように零れていく過去の一つ一つを、 拾い上げては許していく。 「立派に働いてんだろ。今じゃ盗みもしてない。 してたところでまあ、許すけど」 それでもあなたは綺麗だった。そう思った。 陽光の元で溌溂とした笑顔を自分に向けて、 それがずっと眩しかった。 「……ありがと。よかった」 「お前が許してくれてよかったよ。嬉しい……」 回された腕の温もりに目を閉じた。 伝えられた言葉の意味をしっかり飲み込んで。 ▷ (-221) susuya 2023/09/21(Thu) 17:43:13 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「……困った事があったら言いな。酷いことされた時も。 助けてほしい時も。傍に居て欲しい時も」 「オレはあんたの力になるよ。フレッド」 『うまく使え』、といつもの癖で言いかけて。 「……兄ちゃんだし…………」 きちんとそう言い直した。 (-222) susuya 2023/09/21(Thu) 17:44:06 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード──あれから、お泊り会を終えて。 久しぶりによく寝たロメオは、 無事に次の日を迎える事ができた。 残りのお菓子を食べて、貴方にお礼を言って帰ったのだろう。 それから、数日経って。 ギルドで聞く声が少なくなり、いつもの顔が見えなくなった頃。 アジトで買い出しから帰ってきた貴方の後ろ姿を見つけると、 「よ」と横から現れて声を掛けた。 「ボンボローニ。揚げたて」 「食べる?」 うまそうでいっぱい買ったから、と紙袋を揺らす。 いつものおすそ分けに来たようだ。 (-227) susuya 2023/09/21(Thu) 18:31:58 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ店の情報を見れば、へえ、と片眉を上げた。 ついでに買って行こうか。 「あー……やっぱすか。 ちゃんと寝てもらいたいもんですね……」 やっぱりか、と難しい顔をした。 「お前……言うね。身の振り間違えなきゃ出世するよ。 個人的に応援したくなっちゃったな」 「あんたも無理しないでくださいね〜……」 手を振って見送って、ふむ。 踵を返して猫の近くに行けば、猫はなあおと鳴いた。 予め買っておいた餌があるはずだから、 とりあえず手ずからあげて。 「……飯持ってくか」 そうする事にした。 仕事云々は顔を突っ込めるかは怪しいものだが、 物資を押し付けて摂取を強要することはできるかもしれない。 居なければ仕方が無い。ティラミスを買って帰る。 居れば儲けもの。 エネルギーゼリーやら飲み物を持って、 教えてもらったケーキ屋に赴く事にする。 (-248) susuya 2023/09/21(Thu) 20:31:00 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード「おう、もちろんいいよ。お使いのご褒美」 フィオレにもあげるんだ、と紙袋の中身を貴方に渡す。 簡単な個包装はしてもらったので安心。 貴方に頼んだコーラを受け取って交換の形とした。 「甘いもんはエネルギーになるからな。 踏ん張りどきだろ。多分……」 「上が居なくなると俺達下っ端も忙しくなるからな。 なんとかやろうや。愚痴なら聞くし」 受け取ったコーラのペットボトルはすぐに開栓された。 プシュ、と爽やかな音。 「出来ることが少ないってのは歯痒いけどな……」 (-272) susuya 2023/09/21(Thu) 22:17:45 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ腕の中の友人は、今は弟と同じ。 ぎゅう、と回された腕の力が強くなれば薄く笑った。 もしかしたら幼い頃会っていたかもしれない。 逃げ回るように生きた幼年期のどこかであなたと会えたなら、自分はきっと今のような生き方をしていないのかもしれない。 例えば、一緒にマフィアになって。例えば、共に警察として。 結局はもしも話、なのだが。 「……オレの力に?」「頼もしいな」 後輩にも頼る事はあるのだ。きっと弟にも頼る事がある。 弟にしか頼れない事がある。 「家族っぽいこと……ってなんだ?一緒に寝るとか? それはちょっといいな」 「いいね。色々やろう。オレ、やりたいな……」 無邪気な笑顔と向けられた視線に、 こっちもいつも通りの笑顔を返した。 あの時の笑みは、あれきりだ。 何かが変わった。どう変わるかは、わからないけれど。 家族への憧憬、もう手に入る事のないと思っていた夢の断片。 今、確かに貴方の形をして共に居る。 「……グラスホッパー、頼むかぁ」 そろそろ少し酒も抜けたろ、なんて笑って。 これから起こる事なんて、今はまだ知らないで。 (-276) susuya 2023/09/21(Thu) 22:48:09 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード「……皆が帰ってきたときにここがいつも通りでなきゃあな。 わかるよ。皆ちゃんと帰ってくるんだから」 「オレたちはここを守る……うん」 ちびちびとコーラを飲み、 ……それでも尚、何か溜飲が下がらない物言いをして。 「……」 「弟捕まってんだよネ」「やだな〜……」 ポロッと、そんな事を急に言い出した。 「ボスでもどうにもならなかったら、 オレ刑務所に火付けに行くから」 「その時になったら、まあ後はよろしく……止めないでね」 アハハ……と乾いた笑い。口元だけが笑っていた。 冗談交じりに貴方と話す事は多々あるが、 だからこそ、この言葉は冗談じゃないと 貴方は勘づくかもしれない。 (-322) susuya 2023/09/22(Fri) 8:14:10 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「ああ、いいな。オレ作れるよ、少しくらいは。 オレんちに泊まりは……あー、多分大丈夫」 「いいよ。やろう」 急に仲間が尋ねてくることも殆ど無いし、 忙しい日に予定しなければいい話だ。 その時は折角だから、貴方の好きな食べ物を 作ってやれたらいいな、なんて。 頬をするりと撫でる手は、やっぱり自分より小さく。 「……伊達なんだよ。これ」 そう言って、肩を竦めて笑ってみせた。 ロメオは店の中でも素知らぬ顔で、 恥ずかしげもなくまたメニューを見て。 「また来ような」 カクテルの届かぬうちに、次の約束をするのだった。 (-409) susuya 2023/09/22(Fri) 19:21:53 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ靴音は固く、人々の賑わいは相も変わらず。 表立っての用事でも無いので、今日は変装もしないでいる。 位置情報を片手にどこにあるか見渡しながら歩けば、 それは案外と分かりやすく建っていた。 良い店だ。外装も良く期待出来る。 「あ、ども……、?」 扉を開けた時に合った視線、 店員からの定型文の後に空いた妙な間。 それに自分もハテナをまた浮かべつつ、 「うす。ティラミスが美味しいって聞いて」 おすすめされるままに、今日の所は控えめに選ぶ。 店内に彼の姿は無く、ハズレだったかと思ったが。 思わぬおまけと共にもらった紙切れに気が付けば、 ふむ、と顎を擦った。 店員に礼を言い、「良い店すね」と愛想を撒いて、 少しばかりのチップをカウンターに置いて店を出る。 そこからまっすぐ目指すのは紙切れに示された先。 傍からは人気の無いそのバーの扉を、 ひとまずはノックしてみた。 反応があればそれで。無ければそのまま薄く扉をあけよう。 (-413) susuya 2023/09/22(Fri) 19:42:15 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード「ん。弟」「義理……?だけど」 説明が難しんだよな、と首を傾げる。 貴方の察する通り、歯切れの悪さの理由はそこにあった。 弟だけではない。今まで逮捕された仲間だってそうだ。 手段があればすぐにでも解放してあげたい。 けれど、手段はない。 できる事は現状維持、ボスの帰りを待つのみ。 それが嫌だ。 「……あんた、いい男だな」「ありがとよ」 我儘みたいに打ち明けた八つ当たりの一つを、 見送らず隣に立とうと言ってくれるのが嬉しかった。 無免許宣言に大丈夫かよと笑って。 「ボスの事信じてない訳じゃないけど。 そうなったらあんまりにもやりきれないからさ」 「一人でやれば捕まったって迷惑かけない。 皆逃げてくれれば、オレは別に」 「って、思ってるけど。あんたは怒りそうだし」 「一緒に来てもらうのも良いな」 今はまだもしも話にしか過ぎないそれを、 夢物語みたいに目を伏せて唱えた。 (-421) susuya 2023/09/22(Fri) 20:32:39 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ濡れた肩口を気にすることも無い。 ただ貴女の哀しみが少しでも収まるまで、 横で寄り添っていようと思っていたのだ。 居たけれど。 「───へえ?」 「なんだ。あんたのそういう声、初めて聴いたよ」 興味深げに目の色を変え、重たい瞼を少し持ち上げる。 ▷ (-425) susuya 2023/09/22(Fri) 21:00:03 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ「そうだよなあ。許せないよな」 「許せないのは当たり前だよ……。 あんたとあんたの大事なもんは踏みにじられたんだ」 「あんたは信じてたのに。そうだよなあ……」 途端に、寄り添い方を変える。声音を変えて囁くように。 「縄張りを荒らされたようなもんだ。 善意を装って付け込まれたんだ。 あんたの大事な場所は、アイツの目には金鉱山か、 家畜小屋にでも映ってたんだろうぜ……」 貴方の肩に腕を回した。悲し気なトーンを持たせた。 いやに落ち着いた声だ。 「オレもスラムには僅かばかりの恩がある。 あんたにはやる事がある。そうだろ?」 「なあ。どうしようか」 「──オレはあんたの力になりたいんだ」 この男は明らかに貴女を焚き付けるような真似をしている。 貴女の言葉の端に感じた火種の──熱のその先を見たい。 その興味と善意を薪にして、貴女の選択を見たがっている。 余計な真似と思われても仕方が無い。こちらが怒りを買っても仕方が無い。 男は貴女の答えを待っている。 (-426) susuya 2023/09/22(Fri) 21:04:50 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ「──はい、はいはい、オレですよ〜」 向こうから近付いてくる声。ロメオだ。 貴方の声を遠くに聞きつけ、ぱたぱたとやってきた。 仕事用の伸縮性のいい黒手袋を外しながら、 髪は一つに結わえたまま。 「どうしまし……酒持ってる」 「やっぱり飲むんじゃないすか……」 貴方の姿を見つけるなり、目に留まるのは酒。 「……どうしました?」 (-432) susuya 2023/09/22(Fri) 21:19:54 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ店の中は仄暗く、喫茶店でもないのに珈琲の香りがした。 人の形跡はある。しかし姿はやはりない。 「…………」 く、と店の奥を見やった。となれば向こう側に居るのか、と。 レジ袋をガサリと揺らし歩を進める。 ──ブラインドが掛かった窓の近く、ソファの上。 「あ。お〜い……」 「わかりますかあ。ロメオっす」 ふ、と貴方に影を作るように覗き込む。 癖のある髪が垂れて、薄明るい陽光を透かした。 「ヘルプに来ました」 (-441) susuya 2023/09/22(Fri) 21:39:31 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「なんなら教えようか。オレの作れるもんくらいは」 「そしたらお前もオレに作ってくれるかもしれねえし……」 というのもまた冗談だが、教えるのも楽しいんじゃないかと思ったのは本当だ。しかしあわよくばいつか、貴方の作ったご飯も食べてみたくは……ある。 伊達眼鏡の理由を聞かれると、少しだけ視線を巡らせて。 「ナイショ。」 なあなあにしてごまかすことにした。 ただのパン屋が変装する義理が無いのは本当だし。 おしゃれと言い張るにはこの眼鏡じゃ無理がある。 「ふ。よかった〜」 楽しみができたわ〜、と気の抜けた声。 預けられた頭の重さに心地良さを感じて、 随分居心地のいい空間だな、と思った。 直にカウンターに置かれるグラスホッパー。 ミルキーなグリーンが揺れて、どこか愛らしい。 「…………」 「乾杯でもする?」 本当は飲み初めにするものだろうが、 なんとなく自分たちの区切りにはいいと思った。 グラスを持ち上げて、貴方に持ちかける。 (-445) susuya 2023/09/22(Fri) 21:54:40 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ時間はあると頷けば、 酒の席に自分も加わる事になるのだろう。 続く言葉には……頭を掻いて難しい顔をした。 歯痒い事だが、その通りだと思ったから。 「っぱルチアーノさん、持ってかれるんすかね。 あの人は自分でもわかってるみたいですけど」 「あんたまで持ってかれたら声の通る纏め役が居なくなる。 それは困る……」 「そういう事なら喜んでご一緒しますよ。 あんたのせっかくの厚意ですもんね」 実を言えば、パッとした休憩が欲しくなっていた頃だった。 貴方のお陰で腰を落ち着けて休憩する言い訳ができたので、 ひっそりと喜んでいる。 「あんたの愚痴も聞きますよ。 場合に寄っちゃあ、聞かなかったふりもできるんで」 (-448) susuya 2023/09/22(Fri) 22:02:27 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ「え、」 そうなんすか?と素直に驚いた声を出して、 貴方が座った後に自分も腰掛け缶ビールを1つ手に取る。 ごちそうさまです、と一言添えて。 「妙な……夢すか。それはまた」 「予知っつうか、正夢っつうか、そんなやつですか。 ヤなもん見ますね……」 カシュ、とプルタブを押す音。 「あんた、働きすぎですもん。オレは別にいいすけど。 使えるだけ使ってもらって全然構わないし」 「でもあんたがくるくる動いてくれてるから、 オレらもそれに背を押されてるトコありますよ。だいぶね」 仕事に対する罵詈雑言に苦笑しつつ、 自分もピザを1切れ貰う。それから、フライドポテトも。 「惜しいな……カンターミネさんもそうだ。ヴィットーレの姐さんも、黒眼鏡の旦那も、ガイオさんだってそうだ。いつか終わる悪夢であって欲しくてね」 「オレの愚痴はそうなってんのに何も出来ない事くらいすかね。 誰か殺して済む話ならすぐにそうするんすけど」 「そうじゃないからなー……」 あーあ、と重たい息を吐きつつ缶をベコベコして遊んでいる。 (-461) susuya 2023/09/22(Fri) 22:59:37 |
【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「作ってくれんの?なんだ、嬉しいな……教育しがいがある」 何を教えてやろうかな、なんて企みも出てきた。 無論変なものを教えたり嘘を教えるつもりはないが、 自分の好物を貴方に作ってもらうのも、また乙だと思ったのだ。 「そーでーす。オレは弟にもナイショごとがありまーす」 さして痛くもない圧力にささやかな訴えを感じつつ、 言えないことは言えないのでしょうがないのだと開き直る。 これ以上の誤魔化し方もわからないし。 下からの目線に目線を合わせ、 目を細めればタイミングはほぼ同時か。 そうだよ、と言外に語って自分も笑う。 「おう。乾杯」 カチン、と透き通った音。 バーに相応しい乾杯のシルエットがカウンターの上に映る。 横目に映ったその影が、ペパーミントの揺らぎが、貴方の微笑みが、約束の形としてずっと記憶に残ればいいと思った。 口を付ければ、生クリーム由来のなめらかな舌触り。 カカオの香りとミントの香りは甘さを伴って、なるほどまさにチョコミントのようであり。 「ん。美味いなあ」 よかったな、と噛みしめるように思った。 (-464) susuya 2023/09/22(Fri) 23:13:29 |