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【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ「っ、痛……」 頭を抑えながら。それでもこの機を逃すわけにはいかないと、あなたのポケットに入った携帯電話を抜き取って。 足元の砂利を砂ごと掬ってから、痛む身体を引きずって走り出す。 片腕に力が入らない。新たに連絡を入れる余裕はない。 だから、最初の場所へと戻るしかない。今ならまだ、迎えに来たはずの同僚がいるはずだ。 「はっ、……ッ!」 蹴り上げられた腹も鈍い痛みが走って、顔を顰める。 足が縺れそうになっても、ひたすらにこの路地を抜けだすために足を動かして。 あなたが迫ってきたところに、掬った砂を投げつけてやるのだろう。 狭い路地では、それを避けることも難しいはずだ。あなたのような体格ならなおさらのこと。 (-364) otomizu 2023/09/30(Sat) 23:06:01 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>-363 ぱ、ぱ、ぱ、ぱぱぱぱぁん。 発砲炎と共に破裂音が何度も瞬き、血飛沫と湿った音が響く。 構成員たちの半数近くを奇襲で叩き、 がしゃあん!! ――照明を打ち抜き。 暗闇に閉ざされた中で殴打と落下音、銃声がさらに続いて―― 「おう」 ――あなたのそばで、足音が聞こえる。 「生きてるかあ、ヴィンセンツィオ」 #BlackAndWhiteMovie (2/2) (97) gt 2023/09/30(Sat) 23:06:51 |
【人】 花浅葱 エルヴィーノゆっくり、上がる。 病院の階段を、一歩ずつ。 それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。 ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。 絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。 すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。 歩けるようになって、リハビリを始めた。 手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。 砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。 本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。 金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。 だって。 寂しいんだ。 心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。 #BelColletto ▼ (98) eve_1224 2023/09/30(Sat) 23:13:14 |
【人】 花浅葱 エルヴィーノ「やっとついた」 白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。 ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、 柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。 身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。 手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、 ……ぱた。 ぱたり。 静かに雨が頬を伝った。 「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」 「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」 僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。 僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。 僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。 ――知らないことは、罪だ。 だからこれは、全部僕のせい 。#BelColletto ▼ (99) eve_1224 2023/09/30(Sat) 23:14:13 |
【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ「……レオ……」 あの日約束したその名を呼ぶ。 「レオ………ッ」 何度も、何度だって、その名を呼ぶ。 天国への道を閉ざす、格子の前で。 「約束、守って……る、だろ」 「なのになんで、応えてくれない……っ」 だけどそこに、あなたは居ないのだ。 今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。 #BelColletto (100) eve_1224 2023/09/30(Sat) 23:15:34 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>96 >>97 [16:00] ノッテの構成員が殴り込んできたときよりも大胆な音が響く。 此れより先に追いかけっこに加わるものなんて警察ぐらいしかありはしない。 その筈だった。そうだとしたなら、こんな荒っぽい手立ては取らない。 他の誰が在るというのか。彼らの手を迷わせたのはそうした困惑もあったのだろう。 目を向けるべき相手を誤らせ、その視界を暗く潰した。 男の反応は緩慢だった。薄く雲が張ったような、空の色が向けられる。 人の死体がいくら増えようが男の注意を引くことはない。そうだった。 それが、乱入した男の顔を見て僅かに目を見開く。 確か当初乗り込んで来た構成員達は、ある男の部下だった筈だった。 秘密主義のマフィアたちであっても、多少顔の割れている人間はいる。 そうした者たちの幾らかは、一人の男を信奉めいて仰いでいた筈だった。 少なくとも自分が罪を暴かれ情報から隔離される前はそうだった。 #BlackAndWhiteMovie → (101) redhaguki 2023/09/30(Sat) 23:27:35 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>96 >>97 その男の顔を見上げて、満身創痍の男は笑った。 息だけで、けれどもそこにあるのは嘲弄とはまた違うものだった。 仕方ないものでも見るような、怪訝と皮肉の混じったそれだ。 「……はっ、はは」 「迎えの趣味が派手だな、アレッサンドロ」 #BlackAndWhiteMovie (102) redhaguki 2023/09/30(Sat) 23:28:17 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>101 満身創痍の男の前に、黒いスーツを翻した男が立っている。 壁の隙間から差し込む燦光が、ちかちかとその輪郭を彩って。 見やれば、その体のあちこちに乱雑にまかれた包帯や布の切れ端が赤く染まり、彼もまた無傷ではないことが分かるだろう。 そいつはあなたの表情に、に、と笑顔のように口元を歪めると。 「――気安く 呼ぶン じゃッ ね えよ、 くそヴィト ッ!!!!」――横殴りに銃身を叩きつける。 #BlackAndWhiteMovie (103) gt 2023/09/30(Sat) 23:35:27 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ物が落ちるような気遣いのない音が足元で立った。 それはあなたが倒れ込む音で、遅れて絶叫が喉を震わせる。 対する男はそれを見下ろして、ことりと首を僅か傾げた。 「……はあ。」 ただひとつ、吐かれた息。 その吐息は一方的な暴行ではなく双方間での攻防に詰めていたものが解放されたようにも、やっと大人しくなったと言いたげな溜息にも聞こえた。 きっとどちらでもあるし、どちらでもない。それを男は自覚していない。 丸くなるさまが身を守ろうとするようで、頼りなさに男はまた口元を緩める。これだって無意識のことだった。 「手間のかかる……」 まるで人ではないものを扱うような言葉を貴方に投げつける。 随分苦労させられた。まるで手負いの獣だ。今日はもうひとつ予定があるのに、と思考が過る。 ────まあ、仕方ない。これも仕事だ。 口元に手をやって男は思考を始めた。貴方はもう抵抗できないだろう、そう信じ込んだ油断がある。試しに足で小突くくらいのことはしたかもしれない。死にかけの虫の、威勢のほどを確かめるような仕草だった。 仕事なのだから、遂行しなければならない。しかしこの状態ではもう、貴方からこれ以上話を引き出すのは難しいだろう。 痛みにあえぐ貴方は、話すどころか座ることすら困難そうだ。 ならば。 ならば、最善は。 ▽ (-365) rik_kr 2023/09/30(Sat) 23:35:57 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ貴方が狂った狼であるなら、これはもっとたちの悪いものだ。 ひとつ思いついた男は、貴方を放置して何かを取りに棚に近寄る。 貴方は、最後の力を振り絞ってそれを止めたかもしれない。 それとも、もうそんな余裕すら残っていなかったかもしれない。 どうあれ男はそれを振り払ったろう。酷く単純な、顔面に向けて足を振る動き。 そうして手に取るのは 金槌 だ。ぱん、ぱんと手のひらに打ち付けて感触を確かめる。男がしようとしていることは、とても悪趣味で無意味なこと。 それでいて残酷な次への布石。 再びの尋問が楽なものになるように、 貴方が二度と抵抗できないように、 その意志も行動も削ぐように ────四肢の内もうひとつを、砕いてしまおう。 (-366) rik_kr 2023/09/30(Sat) 23:36:13 |
【鳴】 L’ancora ロメオ「はい、かっこいいろーにいです」 かっこいいだろ。はずかしげもなくおふざけの延長でそう言って、 貴方の腕の中の子猫を見れば「かわいっ」と笑った。 「おう。折角だから一緒に何か食べたいだろ」 「オレも朝飯まだだったし……丁度よかったな〜」 朝飯にしては甘いが、見たら食べたくなってしまったのだ。 気付いたら2個買っていた次第だ。 飲み物は何がいいか聞いて、その通りにグラスに注げばマリトッツォと一緒にテーブルへ並べる。 隣に座りたい様子があれば、 クッションをソファの横に持ってきて横並びに。 自分はクッションの方に座ろう。 「まあなー。もちろん違法だけど」 「………………ノッテの人間だからね。慣れてるよ」 これだけ言えばあなたには伝わるだろうと思った。 今回の騒動で仲間が牢屋に入れられたのだと。 自分は運が良かっただけだと。 「ごめん。黙ってて」「怖がらせるかなって……」 (=11) susuya 2023/09/30(Sat) 23:43:55 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>103 頬骨に堅いフレームが擦り合わされる感覚があった。 既に大分張られて腫れた頬に、今までの痛みを再生するように神経が痛んだ。 軽く咳き込んで血塊を吐き出す。喘鳴は荒れたものの、悲鳴はあげなかった。 衝撃に流される前に向こうを向いて金属製の扉に叩きつけられた頭は、 まず視線を貴方へと向けて、それを追うように頭そのものが前を向く。 「他人行儀に呼ばれる方が、お前はよっぽど好みじゃないだろう」 立ち上がろうともしなければ、反撃の姿勢も見せない。 ただ、大混乱のさなかにある町工場の中の景色を背景に見上げて、 叩きつけられた言葉と態度を映画のスクリーンのように眺めているだけだ。 それで満足するのなら、それで構わないだろう。 けれどもそれで腹の虫が治まらないのなら、それはきっと不満だ、そうだろう。 「一方的に殴りつけて気が済むんだったらこのまま付き合ってやる。 で? それでお前は構わないのか?」 #BlackAndWhiteMovie (104) redhaguki 2023/10/01(Sun) 0:02:08 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>104 ぷ、と吐き捨てる唾は赤黒い。 ストックに張り付いてしまったような指を引きはがして、 弾切れになったらしい短機関銃ががらんと床を転がった。 「うるせェ。 舐めやがってマジで」 乱暴に伸ばした腕で、あなたの肩を掴み引き起こす。 その振る舞いに"カポ・レジーム"としての、 あなたからすれば取り繕った、気さくな様子は欠片もない。 ──ただ、まったく、見慣れた様子。 かつてソルジャーとして纏っていた、当時の顔をすっかりと取り戻した顔で。 「ここで元部下の代わりをやってやってもいいンだが──」 じろ、と目だけで横を見る。 「………」 「乗れ」 車体のひしゃげたフィアットを指さす。 「これ以上話を聞いてやる気も、解釈してやる気もねえ」 「ただ、ここにいると邪魔が入るだろ」 「──ンなことしてる時間も余裕も、暇もねえ」 だろ、と。 答えも聞かずに、車の方に向かっていく。 (105) gt 2023/10/01(Sun) 0:10:00 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「あぐっ…う、ぐ…うぅ…はぁっ……」 肋骨を折られては 先程のように動くことはままならない。 身じろぎする度に、激痛が身に走る。 小突かれても、呻くばかりで。 貴方が離れて、拙い、と思ったのも束の間のこと。 何とか首をもたげて、金づちを持つ貴方を見た。 「げほっ…やっぱり、尋問なんかじゃ、ねえだろ… ただの、拷問、だ……」 避ける事は出来ないだろう。 だから、呻きながらも貴方に言葉を吐きかけて。 笑うのだ、愚かだな、と。 (-367) ぴんじぃ 2023/10/01(Sun) 0:14:04 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「お出迎え……わたし、お出迎えできるんだぁ…… それは、がんばれる。今までの3倍がんばれる、かも」 わたし、そんないい所を貰っちゃっていいのかしら…… 孤児院のみんな、ヴィットーレを独占してごめん。なんて、思わず謝らなければならない気持ちが急に込み上がってくる。 無論アリーチェの理想のお出迎えとは異なったものにはなるだろうが、それでも嬉しいものは嬉しいし、幼心にも抱いていた、少しでいいから貴方を独占したかった気持ちの芽が、ちょっぴり顔を出す。 「実は私、家具とか凄く少ない方で…… 運ぶの、あんまり苦労しないと思う。 だからヴィットーレのお部屋の内装を邪魔する心配は多分ないと思うわ。 でも、要望、言っても大丈夫なら…… ……一緒に家具を買いに行って選んで欲しい、な」 頭を大人しく撫でられて、猫のように目を細める。 くすぐったいと思った。こうして大人になってまで 変わらず接してくれる貴方の優しさに、 相変わらず胸に疼く不思議な感覚に、 その上で貴方をどうしようもなく愛しているという感情全てに。 ▽ (-368) poru 2023/10/01(Sun) 0:16:42 |
【秘】 favorire アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……あのねヴィットーレ、アメリータのことだけど──」 それでも、重荷のひとつはすぐに下ろされる事だろう。 残りのふたつが下りるのも、もしかしたら そう遠く遠くの未来の話にはならないかもしれない。 それはアリーチェ達の成長と決意、運や神様の祝福次第だ。 過酷な戦いにはなったとしても、それでもアリーチェは、 貴方の傍に居られるのなら、何度だって。挫ける事は、決して。 (-369) poru 2023/10/01(Sun) 0:18:20 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ「知るわけ無いだろう他人が死ぬ理由なんて」 貴方を突き放すような言い方であった。 過去の亡霊になど囚われてほしくない、されどこの胸のつっかかりが酷く痛みはじめている。 「……殺し屋のような連中に殺されていた。 無事な部分なんて残ってなくてな。 持ってこれるのがこれだけだった」 本当は手首もあったが、これはボスへの手土産だ。 わざわざ入れなくとも良いだろう情報以外素直に告げてやる。 値段はただで、入院中で幼馴染の貴方へのサービスだった。 その実、便利屋として確実性のある情報などどこにもなかった。 目の前の幼馴染は彼が殺された理由が知りたいのだ。 知るわけがない、過去に恨まれることがあったのか。 痴情のもつれか、私怨か、ファミリーからの刺客か。 何も理解なんてしてやらないしわかりたくもない。 (_8) toumi_ 2023/10/01(Sun) 0:22:56 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ丁度よかったな〜に、うん〜と返して笑う声は陽気なものだ、訪れた平和を享受するみたいに。 飲み物についてはミルクがあればそれをねだり、横並びになれると分かればソファにぽすんと座る。 そうしてマリトッツォにはまだ指先を伸ばさず、返答を待って、待って。 「……そっか」 内容は予期していたものだから驚きはなく、答え合わせが済んだだけに違いない。 でも貴方の口から直接伝えてもらえたことに何よりもの意味がある。 「そりゃ〜中々言えないだろ、オレが同じ立場でもそうだよ。 怖いの気にしてくれてありがとう、隠さず言ってくれたのも」 ふっと目を細めると其方へと少し身体を傾けた。 クッションとソファでは高低差があるだろうからバランスには気を付けつつ、とはいえ身長差を考えれば丁度いいぐらいなのかもしれない。 頬に当たるのはあの日とおんなじ、柔らかなひだまり色。 「……大丈夫、怖くなんかない。 だから安心してね、変わらないから」 ……で。 結局それだけじゃ足りなかったから、両腕を伸ばした。 貴方の頭を抱え込んで、それから左手でやさしく髪を撫でる。 抱いているこの思いがちゃんと真っ直ぐ届くよう。 「きれいじゃなくても、ろーにいがだいすき」 違法頼んだのオレだしな、とも、笑声を傍で揺らしながら。 (=12) mspn 2023/10/01(Sun) 0:24:59 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>105 上体さえ浮き上がらせられたなら、それに追従しないわけでもなかった。 何もかもに無気力であるのとは異なる、他から見て違いはわからずとも。 打撲程度の損耗はあるものの無事な方の腕で体を支えて立ち上がる。 片足は引きずり気味ではあるものの、体重を支えられないわけではない。 点々と血が尾を引く足跡を残しながら、助手席の方へと歩いていく。 時間が無いのは確かだ。そして目の前の相手を見れば、互いにそうなのも確かだった。 皮肉るような物言いはされど相手の提案を蹴って立ち止まったりするものではない。 そればっかりが事実であって、心中の内を饒舌に語ったりはしない。 「話くらいは聞いていけよ。何も聞きたくないわけじゃあないだろ。 もしそれくらい呆れてるなら、お前は此処にわざわざ来ない」 決めつけるような物言いのどれだけが真を得ているのだろう。 長い月日の中で互いがどういう人間か霞んだか、或いは。 少なくとも、聞けと言うほど自分から話したりというのも、男はやはりしなかった。 「……お前の運転する車に乗るのは、そういや初めてだったかな」 #BlackAndWhiteMovie (106) redhaguki 2023/10/01(Sun) 0:26:40 |
【魂】 口に金貨を ルチアーノ「エル」 だけど自分は貴方には優しく語りかけてやる。 もうきっとその心はボロボロで、自分が何もせずとも傷だらけ。 「この世に死んで良い人間なんて早々いない。 奴のことは本当に わからない 、だから。こうして彼のものが残ってたことも、運が良かったと思ってくれ」 いつか、彼の罪というものが誰かに提示されるのであれば。 俺だってそれを知りたいぐらいだ、この事件で本当に罪を犯していたものがどれぐらいいたのか。 彼は本当に私刑ではなかったのか、証明できたものはいたのか。 ただ唯一わかることは。 「ただ、そうだな。 間違えたんじゃないか」 その方法を。信じるものを。取るべき行動を。 何かを間違えた、殺されてしまった理由なんてきっとそれだけ。 「…………。エルが無事で良かった! 心配したんだ。 俺はお前まで居なくなっていたらどうしようかと」 あなたの背に手を回し抱きしめれば、穏やかにリズム良く宥めるように動かして。 そうして何度も何度でも、優しいあなたの幼馴染は嘯いた。 (_9) toumi_ 2023/10/01(Sun) 0:31:44 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>106 怪我を慮る様子など一切なく、力任せに腕を引き起こす。 手招きも指図も、説明も気づかいも無い。 奇妙で不格好な、それは信頼ににた形。 ここ十年ばかりお互いの間に横たわっていたさまざまなしがらみや思惑、年月や歳月。 そういったどうでもいいもの全て、 ばたんと乱暴に閉じられる扉の音にかき消えていくようだった。 「……カー・ラジオ代わりに流してやるから、勝手に話せよ」 分泌される脳内物質のせいか、 それとも流れ出す血のせいか。 なにもかもを走り切った直後のような、気怠さと自由の境目のような空気。 ──この十年ばかしあった微妙な距離感の代わりに、そういったものがぶちまけられたような感覚。 それを形容する名前を、ふたりは持たなかった。 あるいは、必要としなかった。 「たりめーだろ。 カポの車に乗る警部がいるかよ」 がたがたと煙と異音をあげながら、フィアットのタイヤが滑り出す。 行先は、港。 ゆっくりと沈みゆく太陽を追いかけるようにして、ひびの入ったフロントガラスが瞬いた。 #BlackAndWhiteMovie (107) gt 2023/10/01(Sun) 0:35:59 |
【秘】 リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ勝手に手渡されるものを突き返すのは難しい。 結局、こういうところが"悪役"になれないひとつなんだろう。 でもそれに後悔はない。後悔は、しない。 だから、君からの言葉。ちゃんと受け取るよ。 触れる肩。拒まれなかったことに安堵の息を吐き 海の色は視線だけが空に向いて、 少し、何かを考えるようにその双眸を閉じた。 「俺も、」 「………俺も、この街を出ようと考えているんだ。 友人に頼めば、いい物件を探してくれそうなんでね」 A.C.Aに所属していた、それだけが理由じゃあない。 今の家は与えられたもので、職も与えられたもので。 名前も、何もかもが"リヴィオ・アリオスト"のためのもので。 それは、愛されていたからじゃない。 引き取った以上、そうするしかなかったのだろう。 だから俺が俺として、彼らが彼らとして生きていくために、 今このタイミングで選ぶことが必要だった。 「………まぁ、だから」 「忘れることはないし、見守っている……が、」 ▽ (-370) sinorit 2023/10/01(Sun) 0:37:59 |
【秘】 きみのとなり リヴィオ → 夜明の先へ ニーノ瞳を開き、深く、息を吸ってから。 吐いて、少し躊躇って、………それでも。 「── 暫く 、俺と一緒に暮らすかい?」声にする。言葉にする。 自分を受け止めてくれた人達のためにも。 抱いた本音や想いを語って、生きていこうと考えている。 これは、その一歩──のうちのひとつ。 「勿論、既に決まっているなら断ってくれて構わない。 行き場がまだないならって話でね」 「……どうやら俺は、君のことが心配みたいだからさ」 ひとりで歩くのって、きっと大変だから。 その一時の支えを担い見届けて、満足に死ねたらいいなと。 狡い考えを笑顔に隠し、君の隣を 少しの間 歩こうとする。「情けない俺も見せてしまうだろうけど、 それは、……出来れば、許してくれると嬉しいな」 (-371) sinorit 2023/10/01(Sun) 0:39:15 |
リヴィオは、君と同じ空を見ている。 (a37) sinorit 2023/10/01(Sun) 0:40:35 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>107 その日の空は晴れていた。 緞帳を割るように光は破砕された開口部を割って差し込む。 パレードが幕を開けた頃に比べれば随分と光は色を帯びていて、 道向こうの目的地であるように主張する夕の色がやけに視界に眩しかった。 僅かな隙間を縫って吹き抜ける風が傷をひりひりと傷ませる。 「お前をパトロールカーに乗せてやることはしょっちゅうだったけれどな。 性懲りも無い暴れ方ばかりするもんだから、ガソリン代を請求してやりたかったくらいだ」 まだお互いが若く未熟で、ちょうど今の夕焼けのように昼と夜の交わりとの関わり合いを、 どんなふうに図るべきなのか探るようにしていた頃の話だ。 今、或いはこうなる直前よりもずっと上手く切り抜ける方法なんざ知らなくて、 どちらも自分の上、社会だとかそういうものに叱られため息を吐かれていた、 あの頃の夕日が一番眩しかった。 「お前は引き継ぎは終えてきたのか。どうせろくに話もしてないんだろう。 口を開かないことばかり得意になっちまったもんだな」 #BlackAndWhiteMovie (108) redhaguki 2023/10/01(Sun) 0:59:55 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>108 潮風はまだ遠く、けれど海から吹き上がる風は真っ直ぐに削いでいくようだ。 こんなときにこそ使うべき黒眼鏡を助手席にかちゃりと放り捨てて、 ハンドルを苛立たし気に指先が叩く。 とん、とんというリズムは、鼓動とも路面の震動とも入り混じらない不協和音。 なのにその音が妙に耳に響いて、それ以外がどこか遠くに聞こえてくる。 「今ならぜって〜被害届出してるからな、あんなの。クソ暴力警官。 あの時懲戒喰らわせておくべきだった」 今にして思えば、あの時分が一番互いを信頼していたとさえ思う。 何も伝えず、何も理解せず、 それなのに同じ場所にいた。 その時のように交わされる言葉は、 傷跡に疼く熱に溶けていくよう。 ──理解とは程遠く、けれど齟齬がなかった。 スラムか、暴力か、あるいは痛みか。 何某かの塔の正体が何だったのかはいまだに分らないが、 少なくとも、同じ言語が通じていた。 「…そっち、あの状況でしてきたのか? 嘘だろ。 俺ぁなんもしてねえよ。あいつらならどうにかするさ」 車は海辺へと続く道路を曲がり、赤い照明が明滅する港湾設備へと進んでいく。 その光をフロントガラスに映しながら、 なんだか嬉しそうに笑う。 ──相変わらずの放任主義だ。信頼する相手のことは、あとは大丈夫だと無条件に、どこまでも放り出す。 #BlackAndWhiteMovie (109) gt 2023/10/01(Sun) 1:10:39 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>109 ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。 いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、 その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。 街の景色が遠ざかっていき、見えるものの色数ばかりが少なくなっていく。 そう遠くもないうちに、この車は港へと着くのだろう。 「俺の部下に引き継ぎなんざ必要ないさ。普段からなんでも教えてやっている。 お前と違って上に立つものも一人きりてなわけじゃない……うまくやるだろうさ」 果たして当人らにとって適切な引き継ぎがあったかなんて想像はしない。 少なくとも今から間に合わせることなんてのはお互いに出来やしないのだから、 彼らの身になって考えるなんてことに意味があるわけではない。 痛んでいない右腕を動かす。ポケットから抜き取られたのは一本の葉巻だ。 湿気の管理もされていなければ剥き身のままほっとかれてラッパーに皺が寄っている。 あの日、餞別として貴方から強奪したものだ。 それが見えるように片手で掲げてから口に咥える。 「……火貸してくれ。シガーライターくらいあるだろ、この車」 #BlackAndWhiteMovie (110) redhaguki 2023/10/01(Sun) 1:29:23 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>110 がたがたと歪んだフレームの隙間から、さんざめく潮騒が聞こえてくる。 フロントガラスから回り込むように、 海面が反射する橙の光が覆っていく。 ぐるりとハンドルを回して、半開きのゲートをくぐる。 するすると滑り落ちるように向かう先は、港湾施設に併設された倉庫群だ。 「俺の部下にも引き継ぎなんて必要ねぇけど!? 俺のやってた仕事なんざ、あることをあるようにしただけだ。 もっとうまくやるまであるね」 張り合っているのかなんなのか、それとも誇らしく主張しているのだろうか。 確かなものなど何一つなく、空々しくすらあるがなり声が車内に響く。 葉巻の先端を視界の端にだけとらえながら、 「セルフサービスだ。 お前の人生に俺からくれてやるものなんて一つもねえ」 アクセルをがん、と蹴りつけるように踏む音。 速度を増した車は、舗装された斜面を跳ねるように降りて、 ある倉庫の陰へと向かう。 ──そこは、カポ・レジーム"黒眼鏡"が管理する倉庫群。 治安組織もファミリーの監視も、少なくとも普段はほとんど及ばない この街の空白地帯。 #BlackAndWhiteMovie (111) gt 2023/10/01(Sun) 1:38:23 |
【神】 口に金貨を ルチアーノ「 金の出費が激しいなあ、アレッサンドロ 」赤字にならないスレスレを狙った被害。 既に片付けられつつも瓦礫が残る爆破された場所は風通しが良くなって外の爽やかな空気をアジトへと迎え入れる。 負傷による人員の損失だけが一番デカいと感じる、 労働的にも、精神面のフォローに関してもだ。 「無駄遣いのし過ぎなんだ、最後の祭りだからって。 せめて旨いもんを部下全員に奢るぐらいしてからいけ」 #アジト (G7) toumi_ 2023/10/01(Sun) 2:10:08 |
【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ>>111 「っ、はははは。 物知らずが店一つ任されるくらいだ、それくらい教えられてりゃ問題ないだろうよ」 空笑いが返る。くるくると葉巻を回してポケットへとしまいこんだ。 張り合って上げる大げさな声も、突き放すような物言いも、やけに満足そうに耳を傾ける。 背中の向こう、振り返らなければわからない街の様子などわからない。 残された彼らがどうしているかなど知る術もなく、知らせる者もいない。 それでよかった。 スピードを上げる車とは裏腹に、悠揚と構えて眼の前を見ていた。 話す相手に目を向けるのでもなく、ただ紫色を帯びていくオレンジを見ていた。 たかだかの干渉に集約してしまうには、男のほうは、今にすっかり満足していた。 車が停まれば扉を開けて助手席から外へ逃れ出る。 景色を見に来た、だなんて。そんなことは欠片も思っちゃいない。 それでも求めるものを提示されるまでは、開け放った扉に手を掛けて、 沈みゆく夕日が海を照らしているのばかりを見ていた。 体重を他に預けて構える、その片目は失われていた。 全身打撲の状態であちこちに殴打の痕があり、片足は半ば引きずっていた。 外套の内側からは血が流れ出す。左肩は粉砕され、脇腹はじんわりと血を吹いていた。 一番顕著であるのは右胸の傷で、すっかり黒くなった血の跡を染めるように新たな血が流れる。 今は空にされた助手席のシートが、凄惨さを物語っていた。 #BlackAndWhiteMovie (112) redhaguki 2023/10/01(Sun) 2:16:30 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>112 「ぬかせ。お前よりよっぽどいい上司してたわ」 本気の舌打ちをぶちまけながら、バックミラーをぐいと捻る。 根本から明後日の方向を向いた鏡は、もう背後の街並みを映し出したりはしない。 視界に広がるのは風の割には穏やかに揺れる海面と、 それを無機質な倉庫の陰が無機質に、参差として遮っていた。 助手席が開くの音に覆いかぶさるように、 蹴り開けるような勢いで扉が開く。 ところどころ穴の開いたスーツの裾がばたばたと、 忙しなく海風を孕んで揺れていた。 「一服する間くらいは待ってやるよ」 ばん、と力任せに叩きつけられたドアは、しっかりとは閉まらずに中途半端にずれた。 車越しににらみつけるアレッサンドロの片目もまた、押し当てられた布切れを赤黒く滲ませている。 銃弾が掠めたのか、あるいは貫通したのか肩や腿にはごわごわと乾いた血液の痕が張り付いていて、特に左腕の動きが鈍い。 それでも、 「おめえが何やったか、よく見てなかったンだけどよ」 フィアットの天板に、ごとん、と肘を乗せて。 「んなもん、どうでもいいから。」 「これからぶっ殺すくれえ殴るから、死んでも文句言うなよ」 ――笑った。 #BlackAndWhiteMovie (113) gt 2023/10/01(Sun) 2:30:45 |