【独】 教会住みの娘 エヴィ (-15) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 9:42:40 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ まるで我がことのように息を詰めて、 見ていた舞台が、次の準備にかかろうと する様子が見えて、ふぅぅぅ、と お腹の底から大きな息を吐けば、 ようやく身体の力は抜けました。 ] (すごい…これがこの国の、音楽祭…) [ じりじりと胸の奥に炎が灯るような。 久しく感じたことのない熱が腑から次々と 手を伸ばすような渇望を呼んで。 額にじんわり浮かんだ汗を、掌で そっと拭った時。 …それはごく近くから発せられては 私の耳に届く、声>>43 ] (53) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 11:33:26 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ( 飛び入り枠… ) [ ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえて、 それが自分のものだと気付けば、 堪らず噛み締める奥歯の音も重なって。 けれど自分の手を、上げる、数十センチは とてつもなく、遠く、重く 『お姉さん、歌えば?さっきとっても上手だったし!』 [ 私のその震える手を突然ぎゅっと握って、 小さな男の子がにこにこと、 私に話しかけてくれていることに気づいて。 いつもとは違う衝撃で私の身体が跳ねました。 ] (54) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 11:35:57 |
【人】 教会住みの娘 エヴィあ、あの、あ…え… [ 周りの方々も次々と、その純な男の子に 同調する様に、そうだよ歌いなよ、と にこにこと私に向けて手を振っていて。 中には、『おーい!ここの彼女が歌いますー!』 なんて手をあげる、程良くお酒が入った様子の おじさんまでいて。 (酔っ払い!) …その様子は、茶色い髪を結い上げた、 『コンペ裏方』の腕章を付けた方の目に 止まったのでしょうか。 もし、目が合ったのなら、 からからに乾いた口で、 震える喉で、跳ねる心で、 ほんの一時、夢を見ることを ]*願っても良いでしょうか (55) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 11:38:54 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ お客様がいらっしゃるからと言われ、 日頃より少し早い時間から教会内の お掃除をしておりますと、優雅な佇まいの 美しいお嬢様が、お供の方を連れて おいでになりました。>>0:94 熱心に祈りを捧げておられるお嬢様に お邪魔にならないよう注意しながら、 水を替えるため花瓶を抱えて歩き出すと、 お供の方が声を掛けてこられたので、 思わずびくりと身体が跳ねて。 花瓶を取り落とさなかったことに安堵し (落として割っていたらどうなるかは 想像に難くないので!) ゆるゆると視線を上げると、柔和な笑みを 称えて挨拶をしてくださる男性と目が合いました。 ] (56) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 12:28:29 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ こちらも急いでいつものように笑顔を作って、 そぉっと花瓶を元の台座に置いてから、 丁寧に頭を下げました。 ] お祈りに来て下さりありがとうございます。 ただいま、呼んでまいります。 [ 神父様に御用があると仰るその方に>>0:94 にこりとそう告げて。 あ、とまた思い出せば、慌てて トゥニカの袖を引っ張ります。 …昨夜は、私の態度のせいでしょうが、 神父様のご機嫌があまり良くありません でしたから、頂く 御指導 が少し厳しかったもので 酷く腫れて傷になった腕が、そんなものとは 縁の無いご様子のお嬢様や、そのお供の方の 目に触れないように、と。 顔には、痕は残っていなかったかしら、と 思いながら、頭を下げて。 神父様を呼びにその場を離れたでしょう。 ]* (57) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 12:33:06 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ つかつかと歩を進める靴の音>>61 それまでもがリズミカルで音楽を奏でるよう。 そうして私の前で音は止み。>>62 靴音の持ち主である女性は、こちらに 合わせて少し身を屈めるようにして、 尋ねてくださったのです 『飛び入り参加希望の方ですか?』 >>64と。その方の顔には穏やかな微笑みが 浮かべられていて>>64、 それでもじっと目が合うと、 どくん、どくん、と心臓が早鐘を打つ音が 人にも伝わり聞こえるのではないかと思う程。 ] (94) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 23:18:22 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ ぐ、と握りしめていた拳の僅かな痛みに 目をやれば、親指の爪が柔らかい肉に めりこんで白く色を変えていました。 自分のものではないように固まって しまったそれらを1本1本、そっと、解いて。 瞳を閉じて、ひとつ息を吐いて。 ( かまわない ) 真っ直ぐにその人に向き直れば、 ( どんなばつをうけようとも ) ( うたは、わたしのいきるあかし ] (95) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 23:26:53 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ そう、答えたのでした。 声は小さかったかもしれませんが、 震えてはいなかったと信じています。 ]* (97) yukiyukiyuki 2020/09/21(Mon) 23:28:36 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ 神父様の元へ歩き出す私の背に、その方の 視線が注がれていたとは気付かず。>>107 なるべく普段通りに歩いたつもりでしたが、 昨夜捻った足首が少し言うことを聞いてくれない ことがあったかもしれません。 ともかく近くにいらっしゃる神父様をお呼びし、 そうして足早にやってきた神父様が、 いつものように老若男女から慕われる 柔和な笑みを浮かべ、先程から祈りを 捧げておられるお嬢様の元へ向かわれる 様子を見届ければ、私はひとつまた頭を 下げて、その場を離れ掃除に 戻ったことでしょう。 ところがいくらも時間が経たぬうちに、 今度は神父様が、表面だけは変わらぬ笑みを 口元に称えたまま、なんとはなしに 不穏な口調で私を呼びにいらしたのです。 ] (130) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:23:44 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ 聞けば、先程のお嬢様が、 この教会で信仰する神に興味をお持ちで 是非詳しく知りたいと仰っておられる、と。 そのままあとについて教会内のお二人の 元へ伺うと、神父様は私に向き直り、 にこにこと話すのです。 ] 『是非お伺いし、お嬢様に神の教えを説いて 差し上げなさい。年頃が同じくらいの お前なら、お嬢様のご心労も僅かながら 減るだろうし。 お前にとっては良い学びになるでしょう。 お嬢様はお身体が御丈夫ではない そうだから、重々気をつけて 』 [ などと。 言われたことに逆らう術などありません。 目を伏せて、深くお辞儀をして、 はい、至らぬところもございますが 真摯に務めさせていただきます、 と答えました。 ] (131) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:28:09 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ 本当のことを言えば、身体中の傷が 軋むように痛んでいたので、 それをこの儚げな美しさを備えた お嬢様の目に触れさせぬようひとときを 過ごすことが出来るかと不安はありました。 もちろん…神を心から信仰しているふりは、 問題なく出来るでしょうからそれは まぁ良いのですが。 そのまま当日であったか、 また日を改めてのことであったか。 私はお嬢様のお屋敷…ハイアームズ家の それは豪華な門戸をくぐり、 その煌びやかな様子に、目も、口も、 まんまるくぽかんと開いたままにしながら、 お嬢様との対話の時間を過ごすのでした。 ] (132) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:33:08 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ お供の方 あったならばヨシュア様 教会への寄付だと、傷薬などの品>>111を 持たせてくださいました。 思わずどきりとして、恐る恐る彼を 見上げますが、その表情は先程まで 私やお嬢様にお茶を(…世の中にこんな 美味しいお茶があるのかと思うほどに 素晴らしいものでした!) 淹れて下さった時と変わらない様子で。 …それらの薬が、持たせてくださった意味が、 わからぬほど私は馬鹿ではありません。 詳しい事情など問い詰めることなどせずに 多くを語らぬその優しい心遣いに、 気を抜けばすぐに瞳に水膜が張りそうで、 懸命に堪えました。 ] (133) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:36:49 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ 息を整えて、深々と頭を下げて御礼を伝えて。 …本来なら、歌を歌って感謝の気持ちを 伝えたいところ。 けれど声がどうしても震えてしまいそうで それは出来ないままお屋敷を あとにしたのでした。 ] (134) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:38:26 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ …余談ではありますが。>>112 その薬は、神父様に全てお渡し致しました。 隠しておけばよかったのですが、 あまりの嬉しさに、両の手に握りしめたまま 教会についてしまったものですから。 帰宅を待ち構えていた神父様に、 俗世のものを持ち込んでいないか、 良からぬことを吹き込まれてはいないか、 身辺を検査されるのはいつもの事なのに、 嬉しくて、失念していて。 さらにどうでも良いことですが、 その品が傷薬であったことから、 余計なことを言ったのではないだろうなと その夜の神父様は非常にお怒りでした。 ええ、その薬が私に使われることは なかったでしょうね。 ]* (135) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 8:40:59 |
【秘】 従者 ヨシュア → 教会住みの娘 エヴィ何か困り事があれば言って下さい。 貴族には高貴たる身に相応しい義務があり、 ならば、それを手助けるすのが、私の務めです。 (-37) 希 2020/09/22(Tue) 10:54:17 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ その方が、別の係の女性を呼んで>>121 テキパキと指示を出している間、 心の中を様々な感情が浮かんでは消えて。 感激、困惑、緊張、恐怖 それらは腑の中でぐちゃぐちゃと ひとつに丸まっては喉奥から 込み上げてくるよう。 けれど説明とともに通行証… 深緑の地に銀糸で縫われた縦線が 入ったもの>>1:44が手渡されれば、 その存在感に目を奪われて。 思わずぎゅうと胸に抱きしめてしまって、 あ、と慌てて離せば顔が火照るのを 隠すように俯いたでしょう。 ] (149) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 15:15:28 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ そのまま私は黒髪の女性について進みます。 歩を進める時、先程の小さな男の子がまた にこにこと破顔しながら私の服の裾を ぴ、と引っ張って ] 『頑張ってね!僕ここで聴いているね!』 [ と送り出してくれ、他の方もつられるように 次々と拍手を下さって。 さっきの 酔っ払い 陽気なおじさんも、こちらに向かって何故か自慢げに 親指を上げていて、思わずぶっ、と 吹き出しそうになって。 いけない、と表情を引き締めるのですが、 抑えきれない一笑が口角の端には 僅かに浮かんでいたでしょう。 辺り一帯の人が皆暖かく、円い布で ふうわりと包まれたような和やかな 風が吹きました。 おかげで先程までの緊張はどこへか とても落ち着いた気分で特設の楽屋へ 入ることが出来ました。>>123 ] (150) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 15:19:59 |
【人】 教会住みの娘 エヴィ[ 楽屋には大勢の方がいらっしゃって>>127 これが此の国が音楽のやまない国、と 呼ばれる所以なのだと改めて理解すれば、 初めてほんの少し誇らしい気持ちになりました。 楽屋での受付は事務的に進みます。>>124 名前を聞かれた時は一瞬息を飲み、 虚偽の名を伝えようかと思いました。 わたしはわたしのしんじるものを ]エヴィ、と言います。 (わたしがわたしであるために) [ と嘘偽りのないまま申し出ました。 歌をうたうこと、伴奏は要らないことなどを 淡々と伝えて。 ] (151) yukiyukiyuki 2020/09/22(Tue) 15:22:47 |
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