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【人】 時見の妻 天宮 琴羽── 深い深い霧の中で [ 二人仲良く、温泉街の秋の味覚を楽しんで。 暫し歩みを進めていれば、徐々に視界が 白い靄のようなもので覆われ始めた。>>1:176] あ、霧……でしょうか…? 何か臭いもしますけど……。 [ はて、霧でも発生したのだろうか。 周囲を山々に囲まれた地。 霧が出てもおかしくはない気がする。 鼻をすんと小さく動かせば、 腐った卵のような臭いが鼻孔に流れ込んできた。] (0) kurage 2020/10/24(Sat) 17:49:52 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽[ 確か、この臭いは有害だから あまり長くは吸ってはいけないと。 温泉について書かれた冊子に 注意するよう記載されていたような。 靄から逃れようと急ぎ足を進める内、 途中、人とぶつかってしまった。 その衝撃で彼と手が離れてしまい、 そして気付いた頃には 彼の姿は見えなくなっていた。] (1) kurage 2020/10/24(Sat) 17:49:57 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽時見様……? [ 心細い声を漏らして。 辺りをきょろきょろ。 視線を走らせるものの、一歩か二歩先ですら 濃くなった靄ではっきりとせず。 何処からか 彼の声が響いてきたような気がしたが それは本当に彼の声であったかどうか。 はっきりと確信する事は出来ないでいた。 足元すら覚束ず、胸に生じた不安の靄は 時間が経てば経つにつれ その大きさを増していく。] (2) kurage 2020/10/24(Sat) 17:50:03 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽[ 早く、早く合流しなくては。 そう思っていると、ふと、 何やら周囲に人らしき気配を感じた。] 時見様……ですか……? [ 不安になって声を投げ掛ける。 ───反応はない。 一拍の間の後、その気配はかさりと音を立てた。 何やら笑っているようにも感じられる。] (3) kurage 2020/10/24(Sat) 17:50:08 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽[ 背筋にぞわりと冷たいものが走る。 それは怯えと恐怖と不安が入り混じったもの。 全身が凍ってしまったかのように動かない。 早く、早く、逃げなければ。 額から頬を伝い、汗が一筋。 ぽたりと地面に落ち、広がった。 ───次の瞬間。 その気配は突然動き出し、 此方へと長い腕を突き出してきたのだ。] (4) kurage 2020/10/24(Sat) 17:52:04 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽え、ぁ……きゃぁぁぁぁぁ!? [ 身を反らし、辛うじて避ける。 視線を向ければ、靄の中から幾つもの手が その姿を現していた。 その全てが己を捕らえるように蠢く。 捕まったが最後、 出口のない暗闇へと引き摺り込むというように、 それは生々しく、それ自体が 生きているかのように動いていた。 恐怖のあまり歯の根は合わず、 かちかちという音を周囲に鳴り響かせて。] (5) kurage 2020/10/24(Sat) 17:52:16 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽[ 最早、何も考えられそうになかった。 ───ただ、それから 逃げる事しか浮かびそうになかった。] (6) kurage 2020/10/24(Sat) 17:54:45 |
【人】 時見の妻 天宮 琴羽[ 絹を裂くような悲鳴を上げ、 私は靄の中、脇目もふらず駆け出す。 心臓がばくばくと跳ねる。息が苦しくなる。 それでも走る事を止めずに。 どこまでも、どこまでも 走り続けるのであった。]* (8) kurage 2020/10/24(Sat) 18:02:01 |
時見の妻 天宮 琴羽は、メモを貼った。 (a0) kurage 2020/10/24(Sat) 18:05:45 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ 真っ白に染まった視界。 誰の気配も感じられず。 ────しん、と痛いぐらいの静寂が耳に染みる。 聞こえるのは己の呼吸と とくりとくりと鼓動を刻む心臓の音だけ。] (=2) kurage 2020/10/24(Sat) 18:57:20 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ もしかして、あの後 何者かに捕まってしまったのだろうか。 そして、命を奪われてしまったのだろうか。 自分の事だというのに 他人事のような考えが浮かぶ。 ───何処か現実感がなかった。] (=3) kurage 2020/10/24(Sat) 18:58:37 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽時見様……。 [ もう、彼と会えないのだろうか。 俯いて視線を地面へと落とす。 悲しみに顔が歪む。 せっかく新婚旅行に来たというのに こんな事になってしまって。 彼が悲しむ事を思えば 申し訳なさに胸が苦しい。] (=4) kurage 2020/10/24(Sat) 18:59:32 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ ───ふと、視界に何かが過った気がした。 ゆっくりと顔を持ち上げ、目線を前へと向ければ そこには懐かしい人の姿。] (=6) kurage 2020/10/24(Sat) 19:03:05 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ はっきりと顔が見える訳ではない。 全身も輪郭がぼんやりとして朧気であった。 ───それでも、それが誰であるか。 伝わってくる雰囲気で理解出来る。] (=7) kurage 2020/10/24(Sat) 19:04:43 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽────……っ! [ 己の唇が音を形作る。 けれども、それは声にはならなかった。 ───何故なのか。 呼びたくて、呼びたくて堪らないのに。 懸命に唇を動かす。 それでも己の唇は音を紡ぐ事は無かった。] (=8) kurage 2020/10/24(Sat) 19:06:19 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ 情けない顔になりながらも顔を前に向ける。 視界が滲んでそれはさらに形を朧気にしていた。 そんな中、それは私に何かを伝えようと 口を動かしている。 けれど、声が伝えられないのは 向こうも同じであった。] (=11) kurage 2020/10/24(Sat) 19:14:34 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ …───諦めきれなかった。 折角会いに来てくれた。 そして何かを伝えようとしている。 口の動かす形に神経を集中させる。 それが意味するものは……。] (=12) kurage 2020/10/24(Sat) 19:15:51 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽( "向こう" "山の奥深く" ……? ) [ もしかして、目指す場所は山の中に? 顔のある部分に目を向ける。 さらに姿は朧気になって、 今や人であるかすらも分からない。 けれど、それは頷きながら、 懸命に指で何かを指し示している。] (=13) kurage 2020/10/24(Sat) 19:16:46 |
【鳴】 時見の妻 天宮 琴羽[ 徐々に視界は白から黒へと染まっていく。 朧げなそれは 小さな光の粒を空気中に漂わせ、 徐々に薄くなって消えていく。] 待っ………! [ 消えゆくそれに手を伸ばす。 けれど、それに触れる事は出来ず。] (=14) kurage 2020/10/24(Sat) 19:20:32 |
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