「だから、皆が
　ボクの為に生きることをやめないでほしいとは思ってる」



「麻弓くんは、どうだい？　ボクの為に、
　いつかの死にたい理由を壊してはくれたりはしないかい？」

「ボクは、死んでしまうキミはみたくないんだ」

「多くの顔はわからない。靄みたいな物でさ。
　色がぶわーって陰ってる。暗い煙が世界に浮いている。
　泣いていそう、怒っていそう、苦しそう。
　……喜んでいる人はみないかな。

　事故にあったんだって、殺されたんだって。
　友達と仲直りしたいんだって、お家に帰りたいんだって。」

淡々と普段から見えている物を説明してから一区切り。

「
　できるだけ話しかけないようにしていたんだけど、
　どうやらボクはここで幽霊と話してしまったみたい。

　」

くすくす、と、聞きたそうな君に優しく甘い声で囁く。


　

『どんな関係でもないよ』

今関係があるのはキミとボクの関係性。
その為に使える物だった。そんな関係性。


『ああ　そうかもしれない』

ボクがこうやってキミに話しかけた理由もそうだ。
抱えていた物を出しておきたくなったんだ、だって、もう。
二度と会えなくなってしまいそうだと思ったから。

『突然　でも必然だ』

『今日じゃないといけない理由があったんだろう』

『今日という日の、この土地と、この空気と、この人数の』

『ボク達の存在がなければ、こんな事にはならなかったんだ』

『
　キミなら解き明かせるのかな』

『解決は難しいことかもしれないな
　死ぬことさえ恐れないか、考えもしないような
　大層な賢者である愚か者が探りでもしないと
　この真実は、きっと闇のままだ』

『悲しいな　今日はめいいっぱい楽しむつもりで来たのに』

「知りたい？　教えてあげるよ」

「あの子は知られること気にしていなさそうだ。
　ただ、――揺蕩っている」

信じてくれるんだね。驚いて居るはずなのにね

「一人目は深雪くん。
　――――きっとまだいる。
　ボクはその子を見つけてあげようと思う」

痛みや苦しみを感じることが生者の特権だ。
恨みこそあれ何も感じなくなることが死者だ。

「かわいそうだから。
　鹿乃くんは、どう思った？　これを聞いて」