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![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク どこか以前とは変わりのある様に思える声色を聞き乍ら、 無遠慮に室内を見回す。 吊られた上着、布の掛けられた鞄。 移ろった視線は軋む音に遅れてベッドに向けられる。 「あァ、こいつのことか」 トントンと右の耳介を指で叩く。 正確には、幾つも開けた穴を埋める飾りを。 「本筋にゃ関係ねェんだが…… マ、聞かれたからには答えるかァ」 立った儘、其れを聞かせる。 因みに、関係無いというのはこの男の主観に過ぎない。 ▼ (-144) 榛 2021/07/03(Sat) 15:53:01 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「ホトホトいやになっちまったからだよ。 ――おれの十八番はもう見せたろ。 十二のころだったか、外に売られちまってなァ。 それからはマァ、奇術を生業に生きてきた。 ……おれを買ったヤツも一緒に仕事するヤツも、 ロクなのはいなかったがねェ。 銭を稼ぎゃァ持ってかれ、それが消えりゃァおれのせい。 半分くらいはカネよか殴ンの目的だったンだろうが、 それでもジッとけなげに耐え忍んだモンさ。 ハハ、たまァにホントに盗ってやったけども」 空笑いと共に、至極どうでも良さそうにそこまで話して。 ホントにこの話聞きたいか?と、 目で訴えながらサッサと切り上げようとする。 「マ、我慢する理由もなくなっちまったンで、 稼いだ分だけキッチリ“貰って”店じまい。 いけ好かねェ銭を捨てちまうかわり、 高くてキレーで洒落たモンにしたのさ」▼ (-146) 榛 2021/07/03(Sat) 15:57:50 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク 逡巡の間があって、理由を一つ付け加える。 その響きはどこか言い訳めいていて、 建前なのだと察せられるかもしれない。 「……文ナシじゃアどこにもいけねェからなァ」 口を閉ざし、これでどうかと出来を問う様に、 ベッドに腰掛けている相手の顔を窺い見る。 (-148) 榛 2021/07/03(Sat) 15:59:38 |
![]() | 【秘】 流転 タマオ → 遊惰 ロク 何処かの廊下。ころん、あなたの足は何かを蹴って転がした。大きなびぃ玉よりも一回り二回り大きな球体が、ぽつぽつと赤い跡を床につけてゆき、そして見えなくなった。 ──それは、人間の眼球だった。 ほんの一瞬だけ視界に入った翡翠は、血に濡れてなお現実離れした鮮やかさを保っていた。誰のものかはすぐに思い当たるだろう。 何処を探しても翡翠を閉じ込めたそれは見つからない。血の跡も気付けば綺麗さっぱりなくなっていた。怪奇現象に遇ったか、狐に化かされでもしたかのようだ。 (-166) Vellky 2021/07/03(Sat) 22:51:27 |
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ロクは、こつん、ころん。 (a12) 榛 2021/07/03(Sat) 23:45:19 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 流転 タマオ どこぞの誰かか或いは場所に、用が有ったか無かったか。 兎にも角にも院内を歩き回っていた時のことだった。 ――何かを蹴り転がした。 自然と視線を下げて、転がしたものをその目で捉える。 ――翡翠でしょうか。あの青を好みます。 覚えのある色が、それ以外を失って。 あってはならない形でそこに転がっていた。 「――――ッ!?」 バクンと心臓が跳ねる。 ヒュッ、空気を吸い込み損ねた喉が鳴る。 ――己はこの目が好きだ。 転がっていく一瞬、目が合ったそれは紛う事無く。 “茶飲み話”をした、あの警察官の瞳だった。▼ (-173) 榛 2021/07/03(Sat) 23:45:44 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 流転 タマオ ……暫く立ち呆けてから。 突き飛ばされるように正気に返り、慌てて赤い跡を追う。 それは歩を進める毎、背後から順に消えていく。 一歩、二歩、靴で擦った筈の跡も残りはしない。 男は、翡翠を探す。 (-174) 榛 2021/07/03(Sat) 23:46:10 |
ロクは、翡翠を見つけられなかった。 (a13) 榛 2021/07/03(Sat) 23:46:34 |
遊惰 ロクは、メモを貼った。 ![]() (a14) 榛 2021/07/03(Sat) 23:49:54 |
![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「盗品ですか」 一言、それだけ返す。事実であると思ったので。 目の前の青年がそれを憐れんで欲しいというのならば相応の態度が見えただろうと解釈をした。 「話は、続けてください。 半分以上の疑問は解決しました」 (-191) toumi_ 2021/07/04(Sun) 2:34:12 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「アー、盗品。マ、そうなンだろなァ」 アッサリ肯定してみせる。表情も声も乾ききっていて、 ただ問いに答えるための答えを並べただけの様に見える。 「はいよ、どこから話しゃァいいかねェ。 ……――あァそうだ、盗ったモンの話。そいつでいいか。 イチバン最初は握り飯。たしか四つのころかなァ。 兄サン、ガキが飯くすねる理由。それってなンだろ?」 ツラツラ並べて、唐突に投げかけた。 (-196) 榛 2021/07/04(Sun) 3:13:40 |
![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「お腹がすきましたか?」 簡潔に思いつく理由。 それ以外にも多々流派あると思ったが、間違いを言えば青年が補足をすると思い足りない言葉を投げかけた。 (-197) toumi_ 2021/07/04(Sun) 3:19:08 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク だなァ、と笑って頷く。 花丸満点の回答。それに補足をするならば。 「ついでに言えば、他にも腹すかしたガキどもがいて、 大人はシッカリ飯食ってたから。 おれが育ったところのハナシだよ。 はじめは握り飯、次もそうだったかなァ。 そンでくすりだの包帯だの。 しまいにゃ銭まで手をつけて」 手持無沙汰、上着のポケットに手を突っ込み体を揺らす。 えらく子供染みた仕草をして、ヘラリと笑い顔で締め括る。 「おれのハナシはこれで終い。 あとはもうだいたいわかンだろ。 ――ああはなりたかねェし、 あいつらみたく死なせたかねェって、そンだけだよ」 (-204) 榛 2021/07/04(Sun) 3:52:59 |
![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「『一生の最もすぐれた使い方は、 それより長く残るもののために費やすことだ。』 とある人が言いました。 あなたの、倫理観はこの間よりは理解が出来ます。 だからあともう一つだけ質問をさせてください。 何故あなたが死ぬ必要があるのですか?」 「あなたは、生きる以上に必要なことがあると思いますか?」 (-205) toumi_ 2021/07/04(Sun) 4:12:40 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「生きてノウノウとあの子らの骸漁るよか、 死んじまうほうがよっぽど良いに決まってらァな」 アハ、と笑い声を零して目を細める。 長々と語った青年の、結局のところの“理由”と“倫理”は。 恐らくきっと、これ一つに集約される。 青年にとっては奇跡に等しく、他の何より価値あるもの。 「大人は子どもを守るモンなんだろ」 (-209) 榛 2021/07/04(Sun) 5:12:50 |
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![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「そうですか。 それなら、最後に、いま浮かんだ疑問点を証明してください。 いつかあの子達が助かって、すべてが恵まれたとき。 もし、あなたがまだ、生きていたら。 未来のために、あなたは、大人だから、 私以外と死のうとしますか?」 (-218) toumi_ 2021/07/04(Sun) 6:08:37 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク「しねェなァ」 最後の問いを頭の中で並べて揃えて整理して。 男にとっての単純明快な答えを口にした。 「食いモンが足りねェわけでも、 食い扶持減るわけでもねェんだろ。 ――そンときゃァ、そうだな。 土産話でも持って遊びにいきてェかなァ」 (-219) 榛 2021/07/04(Sun) 6:35:25 |
![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「なんだ、それなら良かった」 ひどく安心したように笑って。 「取引、いたしましょうか」 たった一つ、あなたに隠し事をしています。 「あなたの名前は、なんですか」 たった一つ、あなたに伝えたかったことがあります。 「共に餓える予定のある人のことぐらい、知りたいですよね」 たった一つ、様々なたった一つがこの取引で生まれました。 「忘れることもないですから、本名があれば教えて下さい。 断ってくれても構いません」 (-220) toumi_ 2021/07/04(Sun) 7:04:39 |
![]() | 【秘】 遊惰 ロク → 商人 ミロク 商人がそんな風に笑う理由が見当も付かず、 その相好をただキョトンと見つめるばかり。 「いいのかい」 念を押す様にそう言って、 青年は漸く、ほんの少しだけ肩の力を抜く。 リク 「おれの名前かい? ……六。 シカシまァ、覚えてくれンならロクのがいいや」 それから同じ問い掛けを。 「――ミロクサンだっけか。ハハ、似てンなァ。 他に名があンなら知りてェんだが、どうだろ」 (-221) 榛 2021/07/04(Sun) 7:41:16 |
![]() | 【秘】 商人 ミロク → 遊惰 ロク「……、ありませんよ」 「残っているのは偽名だけですね」 また何か言おうとして口を閉じる。 「もう、お話は大丈夫です。 食べ物の件ですが、増やすと不公平が生まれますから。 気をつけて配布することにしましょう」 「……、……」 「六さん、記録しました。 対価をいただきありがとうございます、またのご利用を。 最初は興味もなく、今もそこまで、かなり、一部に気乗りではないですが」 「楽しかったです」 (-224) toumi_ 2021/07/04(Sun) 12:27:45 |
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