*ヒソヒソ*

「もしかしたら犯人が聞いてるかもなのだ。心して聞くのだ……！」

ぬいぐるみは修理されたばかりのようで、綻び一つありません。
あなたに修理を依頼したいわけではないようです。

「ブラキは思った。もし犯人が羽根を探しているとしたら、一緒に探したことがあるシトゥラを狙うかもしれない……！」

ブラキウムなりに一生懸命考えたのですが、きっとあなたには突飛もない内容に聞こえるかもしれません。
どうやらブラキウムは、羽根に関わった人間が襲われると思ったようです。

勿論あなたの考える通り、この事件と羽根は何の関係もありません。
しかしブラキウムはそう思わなかったようです。

「ブラキのせいで傷ついたら悲しくなる。
偶然戦えそうな人が多いけれど、……きっとラスは戦い慣れていないと思う。」

ブラキウムは、
ブラキウムは、人を疑わないからです。

「……推測だ。犯人の狙いが本当に羽根かどうかもわからない。

でももしかしたらってこともあるのだ。」

あなたを見上げる顔は、真剣そのものです。

「だからブラキは、羽根についていっぱい話した人に言って回っているのだ。
シトゥラは戦えるから、あまり心配はいらないかもだが……。」

「…………いいや違う。」

ブラキウムは、あなたを見据えます。
ブラキウムが否定をすることは滅多にないことです。
あなたはそのことを知っているかもしれません。

「あの羽根があれば、みんな争わなかった。
」



ブラキウムは、それを教わりました。
記憶が曖昧になっても、それだけは忘れません。
それを忘れてしまえば、ブラキウムはブラキウムでいられなくなるのです。

ブラキウムは、周囲を確認するとあなたに手招きをしました。
仕入れられた料理や備品が入った木箱たちの影にいます。

「えっと……、ちょっと長くなるけど聞いてほしいのだ。」

ブラキウムは、あまり言葉が上手ではありません。
きっと説明なら、もっと適任がいるでしょう。
しかしブラキウムは、そうしませんでした。

「シータの犯人？　が、羽根を狙っているかもってブラキ思ったのだ。
……藤色の女の人は、もしかすると羽根に触ったから死んだのかもしれない。」

ブラキウムの言葉は、きっとあなたにとって突飛もない内容であったでしょう。
本来何の関係もない事柄なのですから。

「あの羽根は、だ。
みんなが仲良しになるのが嫌だと思う誰かが、狙ってるのかも。」

ブラキウムは、考えます。
きっと羽根さえあれば、こんなことにはならなかったはずなのです。
しかし今の状況を好む誰かは、きっとどこかにいるのでしょう。

「あの女の人の他に、何かがあったってわけじゃないのだ。
でも可能性があるとしたら、羽根を探そうとした人が次に狙われるんじゃないかと思う。
いつどこで見られているかわからないけれど、ライバルはいない方がいいと思っているはずなのだ。」

ブラキウムは、会議の参加者に犯人がいるとはちっとも考えていないのです。
ですので、あなたを心配しました。

「……」

ブラキウムは、人を疑いません。
ですのでこの言葉は、それ以上でも以下でもないのです。


「だったら尚更、気をつけてほしいのだ。
ブラキは色んな人に羽根のことを話したが、中でも特に多く話した人にこうして回っている。

全員を守りたいところだが、ブラキの手は２本しかない。
だから戦えそうな人には、無事を祈るしかないのだ。……ごめん。」