人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:


【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

こうして年下扱いされることも、甘えをそのまま許容されることも。
先に心配したのはこっちなのになあと思いつつ、眠気には抗えない。

「何回でも来てもいいんですよ。
 連絡さえもらえたら、俺はいつだって嬉しいです」

とん、とんと腹を叩かれるままに眼がすこしずつ開かなくなり、眠気に誘われていく。
手に力が入らなくなった代わりに、何かを探すように貴方の服に指先が引っかかった。

「……おやすみなさい……」

ほとんど吐息混じりのそれは、聞こえただろうか。
(-2) NineN 2023/09/20(Wed) 21:04:56

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

ぶつかった視線、先にある翠。
鏡で見た自分のそれとよく似ている気がしたのは。

「────」

願いを聞いたからこその思い込み、だろうか。
撫でてくれる手つきはとてもやさしいもので。
ねえさんやにいさんと呼び慕うその人たちとも、違うもので。
呆けた表情を浮かべながらもそうされている内。
掻き消えそうな小さな言葉を拾い上げた瞬間。

…………なんで、泣きたくなったんだろ。


ついと視線が落ちかけてしまう前に、口を開く。

「────"フレッド"」

逸らされた話題に乗りかかることもなく。

[1/3]
(-3) mspn 2023/09/20(Wed) 21:15:37

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ


「フレッドって、……呼んで」

貴方が遠ざけようとしたものを近づけるみたいに。

「…………オレの、ほんとの名前」

唐突に告げた。
今の名を渡されてから、昔を知らない誰かに教えたこともないし、伝えるべきでもない真実を……それでもだ。

『弟にして』、なんて。
そのまま伝えたところで、受け取ってもらえるかわからなかったから。

瞼を落として、頭を傾ける。
貴方の肩口に額を押し付ければ、よく似た金糸が揺れた。

[2/3]
(-5) mspn 2023/09/20(Wed) 21:17:03

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ



「教えたの…………とくべつ、だよ」



なんでもをしてほしいから、望んだんじゃなくて。
だいすきなあなたが、そんな笑い方をしなくていいように。


[3/3]
(-6) mspn 2023/09/20(Wed) 21:17:26

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「じゃあ来るよ。お土産持って」
「お前が良いって言ってくれるんなら、
 お泊りじゃなくて遊びにでも」

そうなったら、なんだか本当のただの友達みたいだ。
──マフィアだなんて大層な事を言って、
その中に混じるのはただのひと。自分も、きっと貴方も。
自分がひとだって? まさか。


とん、とん、と一定のリズム。
これがいいと言われるのはなんでだったか。
母親か自分の鼓動に近いからだったか。

「ん」
「おやすみ。ダヴィード」

服に貴方の手が触れる感覚。
それを自分の手で包んでやって、握った。
かすかに聞こえたその七文字に、穏やかな笑みを浮かべて。

ロメオもそのまま瞼を閉じた。
あたたかい。

これでいい。これがいい。
金でもない。名誉でもない、
なんでもないような細やかな幸せがこんなにも。

じきに広い寝室に、二人分の寝息が聞こえるんだろう。
(-53) susuya 2023/09/20(Wed) 23:30:37

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「え」

微かな動揺。聞き慣れない名前。
翠の色はそれで揺らいで、空のグラスを静かに置いた。

少しばかりの訝しさを以て細められた目は、
続く言葉を聞いて幾ばくか瞼を持ち上げる。

「ほんとの、」

朝の日向の色が揺れれば、照明がそれを透かした。
癖のない貴方の髪。
癖ばかりで跳ねる自分の髪とわずかに重なる。

(-63) susuya 2023/09/21(Thu) 0:03:54

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「──フレッド」


名を紡ぐ。
貴方の本当の名前を口に出す。
大事に。

そっと手に包むように。



「フレッド」


そっと抱いて抱えるように。



握られた手を一度放した。
それから、自分が貴方の手を握った。



知らないうちに空いていた、心の穴のピースがそこにあった様な気がして。


(-65) susuya 2023/09/21(Thu) 0:06:20

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ



「オレでいいの?」
「オレで……」



無意識に漏れた問いの答えを、
貴方の口から聞かずとも知っている。
けれどこの自意識が、こんな。

ひとらしい、だいじなものを持つ事を拒んでいるから。
貴方の言葉で杭を打ってほしかった。
(-66) susuya 2023/09/21(Thu) 0:07:32

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

アジトに来てはいるが、今は買い出しに出ている女からのメッセージ。
いつものように、また唐突に送られたもの。

『あとで、時間くれる?』
『少しだけ』
(-71) otomizu 2023/09/21(Thu) 0:23:51

【神】 渡りに船 ロメオ

情報整理、精査、それから諸々の隠蔽に操作。
相変わらずロメオはギルドの端でパソコンに向かいながら、
親指の爪をガリガリ噛んでそんな作業をしていた。
ノートパソコン二台とタブレットを併用して、
苛立たしそうにキーボードを叩きながら
据わった眼で画面を見ている。

「カンターミネさん捕まったのマージで痛ぇんだよな……」

ちらりとウィッグを被ったテディベアを見る。
それからドでかい溜息を一つ吐いて、

「──へえ!」

画面に戻した視線の先にあった、新しい情報。
名前は知らぬが『その顔に覚えはあった』。

「そりゃすげえ。会えて光栄だったな」

よかった〜、と場違いに嬉しげな声を上げる。

#アジト
(G17) susuya 2023/09/21(Thu) 1:03:59

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

『時間?』
『OK。いつでも』

すぐに簡素な答えが返ってくる。
この男の言う事だから、本当にいつでもいいのだろう。
(-80) susuya 2023/09/21(Thu) 1:12:15

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

多少動けるくらいには落ち着いてから。
あなたをメッセージで別室に呼び付けている。
あまり使われていない予備の小さな会議室。
たまに昼寝だったり休憩だったりで使う人がいるくらい。

目はまだ涙で濡れて、おさまってはいないようだったが。
(-110) otomizu 2023/09/21(Thu) 3:05:17

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

「いた」

キィ、と音を立てて開く会議室の扉。
それを潜って貴女の姿を確認すれば、
何を言われるより前に、貴女の隣の椅子を引いて座る。

「食べな〜」

そうして唐突に、持っていた紙袋を1つ机の上に置いた。
中身を出す。ふかふかのボンボローニだった。

「疲れた時と、厳しい時と、とりあえず落ち込んだ時……」
「甘いもんって効きますからね。なんでか知らんけど」

買った時は揚げたてだったんだけどさあ、と
机に頬杖をついて。

「………………………………」
「話は落ち着いてからでいーんで……」

そう言って、貴女の言葉を待っている。
(-113) susuya 2023/09/21(Thu) 3:46:00

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

「……」

本当はもっと軽い気持ちで、あなたに会うつもりだった。
気を許している人たちが軒並み捕まったり、いなくなったりして。心細かったから。
けれど今は……無念と、情けなさと、ぐるぐると濁った感情ばかりが渦巻いて。
口角を上げるどころか、目線も合わせられずにいたけれど。

「……わざわざ」
「買ってきてくれたの?」

砂糖がまぶされた、まだ温かいそれを。
言われるままに手に取って。暫く、そのまま見つめている。
少しだけかすれた涙声が、ぽつりとつぶやいた。

「……パンを持っていくと、すごく喜んでくれたの」
「スラムの子も、養育院の子も……」

ボンボローニを真ん中で分ける。中のクリームはまだ熱いだろうから、ふわりと湯気が出て。

(-115) otomizu 2023/09/21(Thu) 4:17:59

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

「……この子達にも、私が救ってもらったように…素敵な未来がありますようにって」
「おもって、たの」

口が、止まらない。落ち着いてから、って言ってくれているのに。

「……私、馬鹿みたい」
「この法律で、子供たちを助けてくれている人に何かあったら……守ってあげようって、言ってたのよ」

「それより前から、あの子達は……苦しんでいたのに……、ッ…」

ひっく。肩が震えて。嗚咽が漏れる。
送り出した子達、ひとりひとりにお別れ会を開いたことも。一緒に遊んだ思い出だって残っている。
なのに。

「送り出した先に未来がないなんて、思わないじゃない……っ」


ぼた、ぼたと。大粒の涙がボンボローニの上に落ちる。
後悔の気持ちは、抑えようもないものだった。
せっかく気を遣ってくれたあなたの前で、みっともなく泣き喚いている。本当に、嫌な女だと思う。
(-116) otomizu 2023/09/21(Thu) 4:18:38

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

とん、とん、とん。

そのまま意識を手放した男は、夢も見ない深い眠りについた。
夜明けの時間まで眠り、一度だけ貴方より先に目を開ける。

貴方が安らかに眠れているのであれば、寝ぼけ眼のぱやぱやした頭で

「よかった」


とだけ呟き、己の服が乱れていないか
醜い傷跡を晒していないか
を確認して二度寝を決め込むだろう。
朝が来れば、貴方が買ってきてくれたお土産を朝食にしよう。
今度は味の違う方を、また二人で。
(-127) NineN 2023/09/21(Thu) 6:57:32

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ


ほんとうを呼んでくれる。
とても、やさしい声音だった。

呼ばれる度に、剥がれてゆく。

やっぱり泣きそうだった。
こんなにも貴方は"大事"をできるのに。

生涯、隠そうとしたこと。

手が離れるのが嫌で。
追おうとした、指先を。
よく似た体温が繫ぎ止めてくれる。

だから。

そうして落ちた問いがあんまりにも。

……ああ、"いじらしい"って、こういうことをいうのかな。

[1/2]
(-150) mspn 2023/09/21(Thu) 9:41:20

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ



「───あなたじゃなきゃ、やだ」

 
遠ざけないで。


「…………ロメオにい」


 
どうか、傍に置いて。



──ぬくもりを知る場所で、生きていて。


[2/2]
(-152) mspn 2023/09/21(Thu) 9:42:25

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

その日ルチアーノの部下から貴方の部屋へ白い猫のゲージが持ってこられた。『なーん』。

白い猫はもうわが物顔で貴方の部屋を満喫している。

『あの……ぐす、えぐ……ロメオさん、ルチアーノさんがっ、
 すんっ……、その……。迷惑かけて、
ずっ
……すみません……』

ちなみにこの部下は猫アレルギー。
マスクをつけながら涙目で距離を取っている。
(-155) toumi_ 2023/09/21(Thu) 10:18:44

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

「おう。オレも食べたかったんで」
「移動屋台で売ってたんだよ。ラッキーだな」

貴方が手に取れば、自分もお構いなしに
紙袋の中身を取り出した。

「…………うん」
「うん」

貴女の口からとつとつとこぼれる掠れた声は、
貴女の今まで抱いてきた祈りを、願いを、想いを。
そして、無念と後悔を。
ターコイズブルーから溢れた大粒と共に流していく。

ロメオはそれをボンボローニを齧りながら、
砂糖の付いていない方の手で貴女の背中を摩って聞いていた。

「泣きな〜」
「仕方ないよ。悪人ってウイルスみたいに湧くんだから」
「潜んで蝕むもんなんだよ。オレらみたいに……」

「抗体のない女子供から狙われていくんだよ。
 胸糞の悪い話だね……」

あんたは悪くないよ。
抵抗できない子供も悪くない。
悪いのは、わるいひとなんだよ。

そんなことを言いながら、貴女の背中を摩り続けた。
(-156) susuya 2023/09/21(Thu) 10:26:31

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

「おおすげえなお前」

朝から見えない姿に、何かしらを察していた。
それからあの猫の件はどうなったかと考えていた頃、
ゲージが持ってこられて少しほっとしたのは分かる。
まさか顔面グズグズの人間を
遣わせてくるとは思っていなかったが。
頭の中であの人が言ってたのってお前の事か、と納得する。

「……ありがとございまーす。マジで大丈夫?」
「これ……お駄賃の代わりに持ってきな。ティッシュ一箱」

おそらくこれも今日中と言わず数時間のうちに
無くなりそうな雰囲気ではあるが。
はい、と新品を部下くんに手渡した。
ゲージから解放され、ベッドの上で丸まった白猫は
そんな事知った事ではなさそうだ。

「……あん人、どこ行ったの」

知らなくても良いけど、気になるから。
ダメ元で一つだけ尋ねてみた。
(-158) susuya 2023/09/21(Thu) 10:34:15

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「…………」

ゴト、とカウンターを伝うのは外した眼鏡を置く音。
遮る分厚いレンズは無くなって、
そのままの翠を貴方に向けた。

与えられた光だけを表面で返して、
その奥にはずっと奥まで深い洞があるような。
森の谷底のような、南の深海のような瞳。

「オレはお前が思ってるより善人じゃない」
「酷いものだよ。非道いもの……」
「……きれいじゃないんだ」

「……大丈夫かな」
「お前はきれいだから」


負い目がある。



「それだけが心配だよ」
「──ハハ」


(-162) susuya 2023/09/21(Thu) 11:02:17
ロメオは、矛盾を抱えている。
(a8) susuya 2023/09/21(Thu) 11:03:25

ロメオは、『人並み』にいつも背を睨まれている。
(a9) susuya 2023/09/21(Thu) 11:04:42

【秘】 セントエルモ ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ


ひとのかたちは喜んでいる。憂いている。
慈しんでいる。心の裏側が焼け焦げるような思いがした。

けれど、善い。
言葉は貰えた。

杭は打たれた。



「弟ができたな」
「フレッド。おいで」


繋いだ手を、グイと引っ張って。
バランスを崩して傾いた椅子の勢いで、
貴方を抱きしめようと思った。


吐き気がするほど、貴方家族を随分、大事に思ったから。
(-165) susuya 2023/09/21(Thu) 11:08:37

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

『あり、えぐ、ありがとうございます……
ずーーーーーー!!

 ルチアーノさんは散歩してると思いまず……。
 アッ!! ふざけてるわけじゃなくて、
 同じ場所に居ない方が足取りが掴まれにくいからって』

新品は新品でなくなった。

『それと執行役は全員見つけたから最後の奴にあってくると。
 場所はすみません、本当にわからなくて。
 お気に入りのケーキ屋の場所なら言えるんですが……』

お気に入りのケーキ屋。ルチアーノが部下や特定の人間と極秘のやり取りをしているときに使われる店だ。
一番最新の知らせを間接的にやり取りする役割を持つ。

『……あの』

『ルチアーノさん、最近調子悪そうで。
 何もない変な場所見たり、急に胸抑えたり、動かなくなったり様子が変で……』

『もしかして、……チュールでも食べたんですかね』

部下くんは真剣に上司を心配しているようだ。
決して馬鹿にしているわけでも猫扱いしているわけでもない。
(-181) toumi_ 2023/09/21(Thu) 12:19:34

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

何に遮られることなく、真っ直ぐと見つめた貴方の翠は。
不思議な色をしていた。
或いはどこか、寂しくも思えた。
重なっていく声に言いたいことはあって、けれどそれが形になる前に。

「……ゎ、」


手を引かれる、バランスが崩れる。
そうしてそのままに貴方の両腕の中だ。
それは酷く恐ろしいこと……のはず、だったけれど。

「…………」

少し肩に力が籠ってしまっただけで、あとは。
ああ、貴方が望むものに手を伸ばしてくれたのだと。
理解し、うれしさに瞼を落としていた。

[1/2]
(-183) mspn 2023/09/21(Thu) 12:25:36

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「……ぁの」
「きれいじゃないよ、オレ、だって。
 ……スラムで、生きてた」

そうして恐る恐ると形にしていく。
貴方の期待を裏切ってしまうかもしれないけれど。

「悪いこと、いろいろしてる。
 パン屋のパンだって盗んだこと、あるし」

「…………春だって、売ってた」


「ぜんぜん、きれいじゃないんだ。
 きれいじゃないのに、きれいのふりしてる。
 でも……だから」

控えめに、それでも確かに。

「ロメオにいがもし、きれいじゃなくてもね」

両腕を己よりずっと大きな背へと、回す。

「……だいすき、変わらないよ」

"心配しないで"を伝えるように。

[2/2]
(-184) mspn 2023/09/21(Thu) 12:27:20

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

景気の良い鼻かみ音に、ヨシ……と頷いた。
ティッシュは有用だったようだ。

「成程な。賢い。つかそこまでしてたんすね?
 ケーキ屋ね。ケーキ屋……」

一応聞いといてもいいすか、とその場所を尋ねるだろう。
教えてくれれば、携帯端末にそれをメモする。

「……」

疑問の果てに辿り着いたトンチキな心配は置いておいて。
その内容は、あまり聞き捨てならない物で。

「マジで具合が悪い……か」
「マジで心労がすごい、の二択すね。それ」

「もしあの人が帰ってきたら休ませてあげてください。
 あの人、頑張りすぎなんすわ。……」

「まあ……スゲー嫌そうだし。この件」

片腕で自分の肩を揉みながら、
ほとんど重たいため息みたいに言って遠い目をした。

「良い上司だもんな。心配だろ」
「あの人の邪魔にならないように様子でも見に行ってみるよ。
 猫、ありがとうございました」

「あとチュールは食ってないと思います。安心していいよ」
(-219) susuya 2023/09/21(Thu) 17:26:19

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「うん」
「うん……なんだ。お前も?
 オレも居た時あったな……」

「大丈夫。いいんだ」
「いいんだよ。それでもお前、きれいだよ」

貴方を腕の中で抱いて、きつくない力で抱きしめる。
懺悔のように零れていく過去の一つ一つを、
拾い上げては許していく。

「立派に働いてんだろ。今じゃ盗みもしてない。
 してたところでまあ、許すけど」

それでもあなたは綺麗だった。そう思った。
陽光の元で溌溂とした笑顔を自分に向けて、
それがずっと眩しかった。

「……ありがと。よかった」
「お前が許してくれてよかったよ。嬉しい……」

回された腕の温もりに目を閉じた。
伝えられた言葉の意味をしっかり飲み込んで。

(-221) susuya 2023/09/21(Thu) 17:43:13

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「……困った事があったら言いな。酷いことされた時も。
 助けてほしい時も。傍に居て欲しい時も」

「オレはあんたの力になるよ。フレッド」

『うまく使え』、といつもの癖で言いかけて。

「……兄ちゃんだし…………」

きちんとそう言い直した。
(-222) susuya 2023/09/21(Thu) 17:44:06

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

──あれから、お泊り会を終えて。
久しぶりによく寝たロメオは、
無事に次の日を迎える事ができた。
残りのお菓子を食べて、貴方にお礼を言って帰ったのだろう。

それから、数日経って。
ギルドで聞く声が少なくなり、いつもの顔が見えなくなった頃。
アジトで買い出しから帰ってきた貴方の後ろ姿を見つけると、
「よ」と横から現れて声を掛けた。

「ボンボローニ。揚げたて」
「食べる?」

うまそうでいっぱい買ったから、と紙袋を揺らす。
いつものおすそ分けに来たようだ。
(-227) susuya 2023/09/21(Thu) 18:31:58

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

ケーキ屋はメモすることが出来る。
通りに面した何の変哲もないスイーツ店だった、調べるとティラミスがちょこっとだけ有名。

『俺たちが何言っても休まない人なんで上の人がぶん殴る必要があると思います。
 勿論俺たちは殴れません、運よく引っ張れてベッドに連れてっても携帯離さないんです』

真面目なんですよね、と楽し気に言うのは愚痴として言ってるようではないらしい。

『いい上司は俺に猫のゲージは運ばせないと思いますけど心配です』
『でも猫の餌食ってないならよかった〜。
 食事抜かない人が何も食べない日が続くと何するかわからないんで!』

この部下くんは上司に似て正直者であった。

それじゃあ、ティッシュありがとうございましたと斜め45度ぐらいのお辞儀をすればラウルという部下くんは去っていった。
アレルギーは多分服を着替えてシャワーでも浴びれまマシになるだろうが、果たしてどうなったのかはわからぬままだ。
(-229) toumi_ 2023/09/21(Thu) 18:53:22

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

店の情報を見れば、へえ、と片眉を上げた。
ついでに買って行こうか。

「あー……やっぱすか。
 ちゃんと寝てもらいたいもんですね……」

やっぱりか、と難しい顔をした。

「お前……言うね。身の振り間違えなきゃ出世するよ。
 個人的に応援したくなっちゃったな」
「あんたも無理しないでくださいね〜……」

手を振って見送って、ふむ。
踵を返して猫の近くに行けば、猫はなあおと鳴いた。
予め買っておいた餌があるはずだから、
とりあえず手ずからあげて。

「……飯持ってくか」

そうする事にした。
仕事云々は顔を突っ込めるかは怪しいものだが、
物資を押し付けて摂取を強要することはできるかもしれない。

居なければ仕方が無い。ティラミスを買って帰る。
居れば儲けもの。
エネルギーゼリーやら飲み物を持って、
教えてもらったケーキ屋に赴く事にする。
(-248) susuya 2023/09/21(Thu) 20:31:00

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

お泊り会が無事にうまくいって、今日はいいことがあるだろうな、だとか。
またこうやって集まれたらいいな、だとか。
そういったことを考えながら、貴方を見送ったのだろう。

買い出してきたブラックコーヒーと指定された店のサンドイッチをソルジャーに渡して、ようやく殆どの荷物を下ろしたところだった。

「ロメオさん!
 いただいていいのなら、ぜひ!」

傍から見れば貴方に会えて嬉しくて笑ったのか、それとも甘味に釣られたのか分からない光景だ。
男からすれば見知った姿がいつも通りに話しかけてくれたことがただ嬉しいのだろう。
はたして貴方から頼まれた品はあっただろうか。あればそれらも共に持っていそいそと寄っていくことだろう。
(-253) NineN 2023/09/21(Thu) 20:52:56

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

へんな気分だ。
全てをいいんだと許されていく。
それでもきれいなのだと告げられる。
昨日までは友達だったひと。
今日からは家族のように想うひと。

大きな腕の中に抱かれていると、安心した。
まるで昔からずっとそうしてほしかったみたいに。

「……ありがとう」

貴方もスラムにいたのなら案外、なんて。
ちょっと高望みしすぎか、それにそうじゃなくても。
嬉しい、の次に、己を想って告げてくれる言の葉たちと。
貴方自身が
そう
であると認めてくれたのだから。

それだけでもう十分で……なんでだろ。
酔っているせいかな、胸が締め付けられて。
先の貴方の笑みを思えば一滴だけ、涙が落ちた。


一度詰まってしまった声を抱きしめる力を強めて誤魔化す。
見えてないから、ないしょ。

[1/2]
(-257) mspn 2023/09/21(Thu) 21:07:35

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「……へへ、うれしい。
 でも、逆だってそうだよ」

「オレも、ロメオにいの力になるよ。
 できること……多くないけどさ。
 それでも、オレが叶えられることならなんだって」

貴方のこと、多くを知るわけじゃない。
けれどきっと"家族"を多く知っているのは自分の方だ。
だから、と。

「ね、一緒に色々しようよ、これから」

ひとつひとつ、ぬくもりを教えられますように。
望んだものは夢などではないのだと告げられますように。

「友達じゃなくて、家族っぽいこと。
 ……いいだろ?」

ちら、と貴方を見上げ、いつもみたいに無邪気に笑う。
これから変わっていく明日に想いを抱いていた。
共に居られる日々は変わらないって、信じていたから。


[2/2]
(-260) mspn 2023/09/21(Thu) 21:09:35

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「おう、もちろんいいよ。お使いのご褒美」

フィオレにもあげるんだ、と紙袋の中身を貴方に渡す。
簡単な個包装はしてもらったので安心。
貴方に頼んだコーラを受け取って交換の形とした。

「甘いもんはエネルギーになるからな。
 踏ん張りどきだろ。多分……」

「上が居なくなると俺達下っ端も忙しくなるからな。
 なんとかやろうや。愚痴なら聞くし」

受け取ったコーラのペットボトルはすぐに開栓された。
プシュ、と爽やかな音。

「出来ることが少ないってのは歯痒いけどな……」
(-272) susuya 2023/09/21(Thu) 22:17:45

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

腕の中の友人は、今は弟と同じ。
ぎゅう、と回された腕の力が強くなれば薄く笑った。

もしかしたら幼い頃会っていたかもしれない。
逃げ回るように生きた幼年期のどこかであなたと会えたなら、自分はきっと今のような生き方をしていないのかもしれない。

例えば、一緒にマフィアになって。例えば、共に警察として。
結局はもしも話、なのだが。

「……オレの力に?」「頼もしいな」

後輩にも頼る事はあるのだ。きっと弟にも頼る事がある。
弟にしか頼れない事がある。

「家族っぽいこと……ってなんだ?一緒に寝るとか?
 それはちょっといいな」
「いいね。色々やろう。オレ、やりたいな……」

無邪気な笑顔と向けられた視線に、
こっちもいつも通りの笑顔を返した。
あの時の笑みは、あれきりだ。


何かが変わった。どう変わるかは、わからないけれど。
家族への憧憬、もう手に入る事のないと思っていた夢の断片。
今、確かに貴方の形をして共に居る。

「……グラスホッパー、頼むかぁ」

そろそろ少し酒も抜けたろ、なんて笑って。
これから起こる事なんて、今はまだ知らないで。
(-276) susuya 2023/09/21(Thu) 22:48:09

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「頑張った甲斐がありますよ。
 今はもちろん、皆が力を合わせるべきなんですが」

それはそれとして労われることは素直に嬉しい。
渡された中身をしっかりと両手に持って、ひとまず匂いを楽しむ。

「皆の帰る場所を守るって大事な仕事です。
 いつも通りにやりましょう、焦らずに。
 俺も、頑張るんで」

いつも通りに振舞うことを自分に許す。
拭えない恐怖や不安を持ちながら、好きな人と笑い、好きな物を食べることを許す。
大切な人が今なお暗い牢獄にいても、その人の帰還を笑顔で迎えるために、自分を大切にすることを許す。


ボンボローニを一口食む。
味覚はとっても正直なもので、甘味は疲れた体に染み渡った。
(-280) NineN 2023/09/21(Thu) 23:30:15

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「……皆が帰ってきたときにここがいつも通りでなきゃあな。
 わかるよ。皆ちゃんと帰ってくるんだから」

「オレたちはここを守る……うん」

ちびちびとコーラを飲み、
……それでも尚、何か溜飲が下がらない物言いをして。

「……」
「弟捕まってんだよネ」「やだな〜……」

ポロッと、そんな事を急に言い出した。

「ボスでもどうにもならなかったら、
 オレ刑務所に火付けに行くから」
「その時になったら、まあ後はよろしく……止めないでね」

アハハ……と乾いた笑い。口元だけが笑っていた。
冗談交じりに貴方と話す事は多々あるが、
だからこそ、この言葉は冗談じゃないと
貴方は勘づくかもしれない。
(-322) susuya 2023/09/22(Fri) 8:14:10

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

先程の笑顔はもうそこにはない。
普段よりよく見えるいつもの笑みを見上げながら。
やりたいの意志を隠さずに示してくれることに眦を下げる。

「作ったご飯一緒に食べたり、とか。
 ……一緒に寝るならロメオにいの家行きたいな、そのうち。
 だめ?オレの家、ちょっと厳しいから」

尋ねながらもゆっくりと身体を離していく。
このままではグラスホッパーが頼めないし、と。
けれど、離れ切ってしまうその前。
少しだけ貴方の頬を掠めるように撫でては、悪戯をした幼子みたいに笑った。

「眼鏡さ、ないほうがかっこいいね」

それだけ告げて、姿勢を正したことだろう。
次いでマスターにグラスホッパーを注文して、…………。

……そういえば店の中だったんだよな、とか、今更のそれだ。
今になってちょっぴり恥ずかしさが湧いた。
誤魔化すように水に口を付ける。
(-335) mspn 2023/09/22(Fri) 9:46:16

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

昼間の人通りが多い目立つ煉瓦道。
その一角に赤のオーニングテントが目立つケーキ屋がある。
おススメが乗っている看板にはティラミスの絵、
他にも棚にはタルトにパイにシュークリームが並ぶ甘い香りが漂う人気店だ。

『いらっしゃいませー、あら……?』

カウンターの中の女性店員がやってきたあなたと目があった。
数秒瞬いたあと、一度すぐ横の路地をじっと見てからまた目をしっかりと合わせた。

『ケーキはいかがですか?』

そうして貴方がケーキでも買えば渡されたのはおまけのクッキーの包みに紙切れ。
紙切れに書かれていたのは、直ぐ横にある裏路地を真っすぐ歩いた先にある最近閉店したバーだった。
(-344) toumi_ 2023/09/22(Fri) 11:30:04

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

甘味を頬張りながら貴方の話を聞く。
いつもの貴方にしては様子が変だ。歯切れが悪いし、違和感がある。

「…‥弟さんが?」

初めて聞いた話だ。
弟がいることも、それがあのクソみたいな法律で捕まっていることも。
違和感がそこにつながれば返す言葉はひとつ。

「後はよろしくってなんですか。
 ボスでもどうにもならなかったら、一緒に行きましょうよ」

皆の帰る場所は大切だけれど、それは誰かが帰ってくるために守っておく場所だ。
男にとって帰ってきてほしい人が戻らないことが決まってしまえば、火を付けることに反対するような人間ではない。

「俺、無免許ですけど……車出しますから。
 皆でそのまま車に乗って、逃げちゃいましょう」

あいつらの追ってこないところ、どこまでも。
(-346) NineN 2023/09/22(Fri) 12:11:56

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

「本当に……本当に、ひどい……」
「近くで、笑ってるのも……将来の夢を語る姿も、見ていたはずなのに……っ」

あの男にとっては、それすら取るに足らないことだったのか。
何の意味もないただの音に過ぎなかったのだろうか。

自分がスラムにいた時から、臓器売買は行われていたらしい。
幼い頃の私や弟が無事だったのも、きっと運が良かっただけで。
被害がなかったから良かったなんて口が裂けても言えなくて。

頭をあなたの肩にくっつける。肩口をじわじわと濡らしてしまって。

「許せない……」
「許せないの……」


ファミリーの前でさえ、どんな仕事の後であっても。喜怒哀楽の喜楽ばかりを見せていた女の。
絞り出すような、怒りと悲しみの滲んだ声だった。
(-349) otomizu 2023/09/22(Fri) 12:16:39

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「ああ、いいな。オレ作れるよ、少しくらいは。
 オレんちに泊まりは……あー、多分大丈夫」
「いいよ。やろう」

急に仲間が尋ねてくることも殆ど無いし、
忙しい日に予定しなければいい話だ。
その時は折角だから、貴方の好きな食べ物を
作ってやれたらいいな、なんて。

頬をするりと撫でる手は、やっぱり自分より小さく。

「……伊達なんだよ。これ」

そう言って、肩を竦めて笑ってみせた。
ロメオは店の中でも素知らぬ顔で、
恥ずかしげもなくまたメニューを見て。

「また来ような」

カクテルの届かぬうちに、次の約束をするのだった。
(-409) susuya 2023/09/22(Fri) 19:21:53

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

靴音は固く、人々の賑わいは相も変わらず。
表立っての用事でも無いので、今日は変装もしないでいる。
位置情報を片手にどこにあるか見渡しながら歩けば、
それは案外と分かりやすく建っていた。
良い店だ。外装も良く期待出来る。

「あ、ども……、?」

扉を開けた時に合った視線、
店員からの定型文の後に空いた妙な間。
それに自分もハテナをまた浮かべつつ、

「うす。ティラミスが美味しいって聞いて」

おすすめされるままに、今日の所は控えめに選ぶ。
店内に彼の姿は無く、ハズレだったかと思ったが。
思わぬおまけと共にもらった紙切れに気が付けば、
ふむ、と顎を擦った。

店員に礼を言い、「良い店すね」と愛想を撒いて、
少しばかりのチップをカウンターに置いて店を出る。

そこからまっすぐ目指すのは紙切れに示された先。
傍からは人気の無いそのバーの扉を、
ひとまずはノックしてみた。
反応があればそれで。無ければそのまま薄く扉をあけよう。
(-413) susuya 2023/09/22(Fri) 19:42:15

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「ローメオ〜。ロメオ居るかあ〜?」

真夜中。

食事会の残りの缶ビールやら缶ワイン、
他つまみになりそうなもの、それから酒瓶を持って。
酒飲みはあなたを探してアジトをぶらついていた。
やっぱり飲まないとやってられなかったらしい。

が、さて、あなたの姿は見付かるだろうか。
(-419) unforg00 2023/09/22(Fri) 20:27:53

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「ん。弟」「義理……?だけど」

説明が難しんだよな、と首を傾げる。
貴方の察する通り、歯切れの悪さの理由はそこにあった。
弟だけではない。今まで逮捕された仲間だってそうだ。
手段があればすぐにでも解放してあげたい。
けれど、手段はない。
できる事は現状維持、ボスの帰りを待つのみ。

それが嫌だ。

「……あんた、いい男だな」「ありがとよ」

我儘みたいに打ち明けた八つ当たりの一つを、
見送らず隣に立とうと言ってくれるのが嬉しかった。
無免許宣言に大丈夫かよと笑って。

「ボスの事信じてない訳じゃないけど。
 そうなったらあんまりにもやりきれないからさ」
「一人でやれば捕まったって迷惑かけない。
 皆逃げてくれれば、オレは別に」

「って、思ってるけど。あんたは怒りそうだし」
「一緒に来てもらうのも良いな」

今はまだもしも話にしか過ぎないそれを、
夢物語みたいに目を伏せて唱えた。
(-421) susuya 2023/09/22(Fri) 20:32:39

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

濡れた肩口を気にすることも無い。
ただ貴女の哀しみが少しでも収まるまで、
横で寄り添っていようと思っていたのだ。

居たけれど。

「───へえ?」
「なんだ。あんたのそういう声、初めて聴いたよ」

興味深げに目の色を変え、重たい瞼を少し持ち上げる。

(-425) susuya 2023/09/22(Fri) 21:00:03

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

「そうだよなあ。許せないよな」
「許せないのは当たり前だよ……。
 あんたとあんたの大事なもんは踏みにじられたんだ」
「あんたは信じてたのに。そうだよなあ……」

途端に、寄り添い方を変える。声音を変えて囁くように。


「縄張りを荒らされたようなもんだ。
 善意を装って付け込まれたんだ。
 あんたの大事な場所は、アイツの目には金鉱山か、
 家畜小屋にでも映ってたんだろうぜ……」

貴方の肩に腕を回した。悲し気なトーンを持たせた。
いやに落ち着いた声だ。


「オレもスラムには僅かばかりの恩がある。
 あんたにはやる事がある。そうだろ?」
「なあ。どうしようか」

「──オレはあんたの力になりたいんだ」


この男は明らかに貴女を焚き付けるような真似をしている。
貴女の言葉の端に感じた火種の──熱のその先を見たい。
その興味と善意を薪にして、貴女の選択を見たがっている。
余計な真似と思われても仕方が無い。こちらが怒りを買っても仕方が無い。

男は貴女の答えを待っている。
(-426) susuya 2023/09/22(Fri) 21:04:50

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

ノックに返事はなかったが扉が開けられると珈琲のような香りが漂っていた。
中に人がいる証拠だっただろうか、それ以外にも何やら人の気配はするようなしないような。

奥のもう閉じた店内まで行ってみると、昼間でも暗くなるほどの細いブラインドから漏れる僅かな陽光を浴びながら、三人がけほどのソファーに横たわるルチアーノの姿があった。
足元には未開封のクッキーの袋が何故か落ちていて、少し離れた場所にあるテーブルには冷めた珈琲がおいてあった。

「ぁー……?」

息はありそうだが、貴方を認識していないのか顔も体も上がってはこなさそうだ。
(-428) toumi_ 2023/09/22(Fri) 21:07:23

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「やった!
 料理は……オレ、あんまりできないけど。
 でも手伝うから、火の番するとか……」

好きな食べ物を、なんて考えてくれていることも知らず。
おねだりを受け容れてもらえたのなら満足気。
マスターが早速作ってくれているのをちらと眺めたが。
それもすぐに貴方へと戻して、はたりと瞬いた。

「……なんでつけてたの?恥ずかしがり屋?」

……なわけ、ないだろうなあ。
ちょっとどきまぎした自分と違って、貴方は気が付いているだろうに涼しい顔だし。

「…………うん」

そうして続く、届いていない内の次の約束への返答は妙な間が一瞬空いた。
嫌だったとかそういうものではない、でもさっき聞いたばかりだ。
自分から誘うことはそうないって。
じわり湧き上がる嬉しさに口元がどうしたって緩むから、こてん。
気にしてないみたいだしいいかって、頭を傾けて貴方の肩にくっつけていた。
(-430) mspn 2023/09/22(Fri) 21:14:37

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

「──はい、はいはい、オレですよ〜」

向こうから近付いてくる声。ロメオだ。
貴方の声を遠くに聞きつけ、ぱたぱたとやってきた。
仕事用の伸縮性のいい黒手袋を外しながら、
髪は一つに結わえたまま。

「どうしまし……酒持ってる」
「やっぱり飲むんじゃないすか……」

貴方の姿を見つけるなり、目に留まるのは酒。

「……どうしました?」
(-432) susuya 2023/09/22(Fri) 21:19:54

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「おう。時間あるか?」

言いつつ片手に持った酒瓶を揺らした。
あると言えば酒飲みに付き合わされる事になるだろう。

「ん〜……まあ特別どうしたって訳でもねえよ。
 ただ向こうさんの動きが結構素直だったからな。
 耳聡いカンターミネの次は顔の広いルーカス…ルチアーノ。
 んで順番通りに行けばそのうち俺達裏方の番だろ」

「その前に飲んでおこうと思ってな。
 ついでに愚痴くらいなら聞いてやれるぞ」

そっちも働き詰めだろうしな、と。
理由は至極真っ当とはいえ、結局の所は飲む理由に帰結する。
息抜きと言えば聞こえは良いが。
(-438) unforg00 2023/09/22(Fri) 21:38:25

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

店の中は仄暗く、喫茶店でもないのに珈琲の香りがした。
人の形跡はある。しかし姿はやはりない。

「…………」

く、と店の奥を見やった。となれば向こう側に居るのか、と。
レジ袋をガサリと揺らし歩を進める。
──ブラインドが掛かった窓の近く、ソファの上。

「あ。お〜い……」
「わかりますかあ。ロメオっす」

ふ、と貴方に影を作るように覗き込む。
癖のある髪が垂れて、薄明るい陽光を透かした。

「ヘルプに来ました」
(-441) susuya 2023/09/22(Fri) 21:39:31

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「なんなら教えようか。オレの作れるもんくらいは」
「そしたらお前もオレに作ってくれるかもしれねえし……」

というのもまた冗談だが、教えるのも楽しいんじゃないかと思ったのは本当だ。しかしあわよくばいつか、貴方の作ったご飯も食べてみたくは……ある。

伊達眼鏡の理由を聞かれると、少しだけ視線を巡らせて。

「ナイショ。」

なあなあにしてごまかすことにした。
ただのパン屋が変装する義理が無いのは本当だし。
おしゃれと言い張るにはこの眼鏡じゃ無理がある。

「ふ。よかった〜」

楽しみができたわ〜、と気の抜けた声。
預けられた頭の重さに心地良さを感じて、
随分居心地のいい空間だな、と思った。

直にカウンターに置かれるグラスホッパー。
ミルキーなグリーンが揺れて、どこか愛らしい。

「…………」
「乾杯でもする?」

本当は飲み初めにするものだろうが、
なんとなく自分たちの区切りにはいいと思った。
グラスを持ち上げて、貴方に持ちかける。
(-445) susuya 2023/09/22(Fri) 21:54:40

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

時間はあると頷けば、
酒の席に自分も加わる事になるのだろう。
続く言葉には……頭を掻いて難しい顔をした。
歯痒い事だが、その通りだと思ったから。

「っぱルチアーノさん、持ってかれるんすかね。
 あの人は自分でもわかってるみたいですけど」
「あんたまで持ってかれたら声の通る纏め役が居なくなる。
 それは困る……」

「そういう事なら喜んでご一緒しますよ。
 あんたのせっかくの厚意ですもんね」

実を言えば、パッとした休憩が欲しくなっていた頃だった。
貴方のお陰で腰を落ち着けて休憩する言い訳ができたので、
ひっそりと喜んでいる。

「あんたの愚痴も聞きますよ。
 場合に寄っちゃあ、聞かなかったふりもできるんで」
(-448) susuya 2023/09/22(Fri) 22:02:27

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「まああいつらに
荷物纏めとけ
って伝えたの俺だしな」

さらりとそのような事を言いつつ。
適当なテーブルに酒類とつまみを置き、
ソファにどっかと腰掛ければ缶ビールを開けた。

「最近
妙な夢
を見るんだよ。
 次は誰をやる、その次は誰を……ってな」

「あいつらの次はどうも読めんが…順当に行くなら、の話だ。
 俺は居なくなった所で上に話の通る奴が減るくらい…
 くらいでもねえか。まあ明日には引き継ぎしとかねえとな」

この地に於いて、そういった夢の話は笑い事にならない。
もしもの時を考えつつ、温め直したピッツァを齧る。

「愚痴、愚痴なあ。多すぎて何から言ったもんかわからんな。
 仕事が多すぎる、アホ、ボケ、Imbecile.
 この件が片付いたらぜってえ休みもぎ取る」

「お前の方はどーよ」

何ぞ愚痴でも無いのか、と。
指に付いた油を紙ナプキンで拭いつつ問い掛けた。
(-454) unforg00 2023/09/22(Fri) 22:38:49

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「え、ほんと? じゃあおしえて!」
「作ってもらうばっかりもくすぐったいからさ。
 オレも作れるようになったら作りたい」

冗談、だとは受け取ることはなく。
貴方が少しでもその未来を描いてくれているならと男は笑った。
……が、続く、ナイショの一言を聞けば少しだけ頬を膨らませる。

「弟に内緒にするんだ〜」

意地悪な言い方だ、とはいえ本当に拗ねたのではないのだけれど。
代わりにぐいぐい……と寄せた頭で貴方を押すようにしていた。

そんなもちゃもちゃとしたやりとりののち、カウンターに置かれたグラスホッパーに気が付けばきらと目を輝かせて。

「わ、ほんとうに緑」

つん……とグラスを謎に突いて感動の声。
そのままそろっとグラスを持ち上げて飲む前に。
誘いを持ちかけられるときょとんと眼を丸くして貴方を見上げる。
込められた意図に気が付けば目を細めて、無意識に微笑んでいた。

「うん。
 じゃあ〜えっと……
 ……兄弟になった日に、乾杯?」

小首傾げつつ、こつん、貴方のグラスと己のグラスを合わせてみる。
改めて口にしてみるとなんだかやっぱり恥ずかしいな。
つい感じてしまえばそそくさと誤魔化すみたいにグラスに口をうけて一口。
思っていた以上にチョコミントだったので感嘆の声よりもいっそ、「えっ……」という動揺の声が出ていたとされる。
(-457) mspn 2023/09/22(Fri) 22:45:34

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

「え、」

そうなんすか?と素直に驚いた声を出して、
貴方が座った後に自分も腰掛け缶ビールを1つ手に取る。
ごちそうさまです、と一言添えて。

「妙な……夢すか。それはまた」
「予知っつうか、正夢っつうか、そんなやつですか。
 ヤなもん見ますね……」

カシュ、とプルタブを押す音。

「あんた、働きすぎですもん。オレは別にいいすけど。
 使えるだけ使ってもらって全然構わないし」
「でもあんたがくるくる動いてくれてるから、
 オレらもそれに背を押されてるトコありますよ。だいぶね」

仕事に対する罵詈雑言に苦笑しつつ、
自分もピザを1切れ貰う。それから、フライドポテトも。

「惜しいな……カンターミネさんもそうだ。ヴィットーレの姐さんも、黒眼鏡の旦那も、ガイオさんだってそうだ。いつか終わる悪夢であって欲しくてね」

「オレの愚痴はそうなってんのに何も出来ない事くらいすかね。
 誰か殺して済む話ならすぐにそうするんすけど」
「そうじゃないからなー……」

あーあ、と重たい息を吐きつつ缶をベコベコして遊んでいる。
(-461) susuya 2023/09/22(Fri) 22:59:37

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「大切な人と言い換えてもいいです。
 関係性はどうであれ、そういう人なんですね」

男はとにかく、今のままであることに固執していた。
現状を守ってじっとしていれば、助けが来れば。
帰りを待つことに慣れていたのだと改めて思う。

「あんなクソみたいな法、嫌がってる人が大半ですよ。
 皆で逃げて、どこか遠いところで身を隠して、
 あったかいところでバカンスでもして……」

「俺は、ロメオさんが捕まっちゃうのも嫌です。
 一人で寂しいところに行くより、
 皆で一緒に逃げちゃいましょうよ」

だから、どうにかなってもならなくても。
貴方を一人で危険なところに追いやったりはしない。
(-462) NineN 2023/09/22(Fri) 23:01:29

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「作ってくれんの?なんだ、嬉しいな……教育しがいがある」

何を教えてやろうかな、なんて企みも出てきた。
無論変なものを教えたり嘘を教えるつもりはないが、
自分の好物を貴方に作ってもらうのも、また乙だと思ったのだ。

「そーでーす。オレは弟にもナイショごとがありまーす」

さして痛くもない圧力にささやかな訴えを感じつつ、
言えないことは言えないのでしょうがないのだと開き直る。
これ以上の誤魔化し方もわからないし。

下からの目線に目線を合わせ、
目を細めればタイミングはほぼ同時か。
そうだよ、と言外に語って自分も笑う。

「おう。乾杯」

カチン、と透き通った音。
バーに相応しい乾杯のシルエットがカウンターの上に映る。
横目に映ったその影が、ペパーミントの揺らぎが、貴方の微笑みが、約束の形としてずっと記憶に残ればいいと思った。

口を付ければ、生クリーム由来のなめらかな舌触り。
カカオの香りとミントの香りは甘さを伴って、なるほどまさにチョコミントのようであり。

「ん。美味いなあ」

よかったな、と噛みしめるように思った。
(-464) susuya 2023/09/22(Fri) 23:13:29

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ


「    」

その口から溢れて音にならなかったものは。
貴方の名前に似ていて、貴方の名前ではなかった。


男は眼の前の首に腕をまわし自分の顔を近づける。
ゆらりと誘うようなその動きは普段の姿から想像つくだろうか。
怠惰に緩くなったその口元を僅かに開かせて、しばらく顔を見つめていれば小さくつぶやいた。

「疲れた」

シーグリーンの瞳は翠をじっと見つめている。
(-465) toumi_ 2023/09/22(Fri) 23:21:12

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「アハ。南国に逃亡? いいね、夢がある」
「ノッテで新しい商売始めるか。タピオカドリンクショップ」

それも楽しいな、と思った。
一部が変わるから嫌なのであって、皆で変われば怖くない。
それが良い変化ならいいな、と思った。
全員ムショに入るよか、よっぽどそれがいい。よっぽどだ。

「……今は随分悪夢みたいだ。そんな楽しい夢になりゃいい」
「離れ離れは嫌だ。虚しい。信じられるものが側にいて欲しい」

「…………昔」
「ノッテとドンパチして吸収されたファミリーがあんだと。
 その抗争も、別の縄張りの奴の差し金だったって」

「バラバラになったファミリーって、どうなんのかな」
「オレら、それよりマシなのかね……」

──今日は弱音がよく漏れる日だった。
普段言わないような事をとつとつと話して、
それから急に、ふと思い浮かべるように、人に聞いた昔話を。

「怖いんだよなぁ。オレァ今が幸せだから」
「幸せなのが怖いんだよ。不幸に責められてる気になるから」

「お前は捕まらないでね……」

ぼそぼそと、そんな風に言うのだ。
(-466) susuya 2023/09/22(Fri) 23:25:38

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

ぱち、と。瞬きが一つ。
呼ばれたような気がして、そうではないことに気が付く。
そのまま、されるがままに近づく顔に、

──余程だな、と思った。

様子がおかしい。
その一言で片付ければ簡単な話になってしまう。
簡単じゃない筈だ。単純じゃない筈だ。
ここまで弱った姿を見たことはなかった。話にも聞いて、いつもの疲れ方ではないと感じていた。

「そうでしょう」
「そうでしょうね。お疲れ様です」
「あんたはよくやってます」

自分と似て異なる色を受け止めて、はっきりと言葉を落とす。
拒絶しない。抵抗しない。その腕は未だ首に回されたまま。

「固形物、食べられそうですか。
 冷たいゼリーとカロリー飲料があります」
「何かしてほしいことはありますか」

1つ、2つ。
そしていつもの。

「なんでもしますよ」
「上手く使ってください」

自分はヘルプに来たのだ。
救けるために来たのだと。
(-469) susuya 2023/09/22(Fri) 23:39:40

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「おう、強いて言うなら正夢か。
 どうも予知夢までは見せてくれねえみたいだな。」

どうしても後手になっちまう、とつまらなそうな顔。

「ただ一つ愉快な事はあったぞ、あの夢のおかげでな。
 イレネオの野郎、どうもA.C.Aから睨まれて嵌められたらしい。
 内部には当然サツも居るだろう、身内から睨まれたってわけだ」

とはいえこればかりは一転、愉快そうに。
個人的に何か恨みでもあったのだろうか。そんな雰囲気。

「俺のしごきが下のやる気に繋がってるなら光栄だ。
 働きすぎつってもまだまだこれから仕事は増えるんだろうがな
 ま、お互い無事な内は一緒に苦労しようじゃねえのロメオ君」

言いつつガーリックソルトのラスクを抓み、
水分が奪われた口内をビールで濯ぐ。やっぱこれだね。

「俺達にできる一番の事は現状維持だ。
 アレさん達が引っ張ってかれたのはキツいが……
 ここまですっぱ抜かれる人数抑えられてるだけ上々だろ。
 後はボスが戻って来るまで耐えるだけだ」

「俺も誰か殺して終わるならとっととド頭ブチ抜いてたわ
 いやあの署長代理殿をやっちまえばいいのか…?でもなあ」

それこそあの法案が支持されかねないな、と呟いてやめた。
酒が入っているのもあり過激な発言がどんどん出てくる。
(-473) unforg00 2023/09/22(Fri) 23:51:15

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

「はーん。なるほど……」

予知夢なら見てから防ぎようがある。正夢ならない。
確かにそうだ。防げるものならいくらでも防ぐだろうし。
その後の愉快そうな語り口には、興味のありそうな声を出した。

「イレネオ……ああ。初期にとっ捕まってたサツですか。
 身内切りねえ……泣いて馬謖を斬ったって雰囲気でも無さそうですしね。そいつに何か因縁でもあるんすか?」

込み入った話なら聞きませんけどと付け足して、
アヒージョのマッシュルームにピックを刺して口に放る。

「あ、うま……分かってんですけどねえ、持久戦だって。
 ボスがうまくやってくれるんでしょうけど」

「そう、オレも最初それ思ったんすけどね。逆に調子乗らせるかなーって……。
 ボスがお手上げで戻ってきたらムショに火でも放っちまおうかって思ってるとこです。中荒らしてから関係ない奴まで叩き出して」

同じように話題から発言まで火力が強まっている。
摂取したアルコールに思想が引火しているのかもしれない。

「普通に腹立ってんすよね。弟とっ捕まってんで」
「血縁じゃないすけど……」
(-477) susuya 2023/09/23(Sat) 0:09:39

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「ノッテ印のタピオカドリンクですよ。
 
もういっそボスの顔を刷ってマスコットにしましょう


誰かに聞かれたら怒られるどころでは済まない冗談。
自分の手の届く範囲にいる大切な人間をぜんぶ掬い上げて、幸せな温かい南の国へ。
そうなればいい、いざとなったらそうしてやる。
半ば夢のような言葉は、約束にするには非現実的すぎた。

珍しい貴方の弱音をじっと静かに聞く。
共感を覚える点もあるし、そうではない点もある。

「じゃあとりあえず、俺を信じてください。
 絶対捕まらないで逃げ切ります。頑張ります」

「もしバラバラになったら俺が皆を迎えに行きます。
 来年には免許も取れるから、ピカピカの赤い車で」

そうならない方がいいのは承知の上。
何の根拠もない言葉だ。この男には強固な後ろ盾も、何か特別な力があるわけでもない。金も権力もなにもない。
貴方が何を抱えているのかも、知らない。

「そうしたら、怖かった気持ちが分からなくなるくらい、
 ロメオさんはずーっと幸せになれるかなあ」

そうした気持ちは、祈りと呼ばれるものだった。
(-483) NineN 2023/09/23(Sat) 0:27:08

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「あいつ、訳は知らねえが随分な過激派でな。
 前に一回とっ捕まって酷い目に遭わされた。
 普通尋問中に根性焼きなんかするか?されたんだけどよ」

「A.C.Aの連中から睨まれたのも多分そういうとこだろ」

まだ痕残ってんだよなあ、と首元を指先で叩く。
巻かれているのは喉仏を隠す為の包帯でもあるが。

「世の中はそう簡単にはいかねえな。そんならいっそ
 署長代理殿一人ぽっちやるよりは盛大にやっちまった方が
 よっぽど気分良いかもしれねえな。
 いよいよ半グレから一般市民まで不満も高まってるだろうし」

ちょっとした暴動くらいは起こせそうだ。
とはいえボスでもお手上げだったら、のたらればでしかないが。
いい感じに酒の回った人間の会話だ。

「ふうん、弟ねえ……弟分ってとこか?
 俺もダヴィードの奴がとっ捕まりでもしたら
 流石にじっとしてられねえかもな。ま、善処はするが」

「じっとしてられなかったら一緒に車でムショに突っ込むかあ」

とんでもないランデブーのお誘いもあったものだ。
このままだと最悪4チーム率いる事になりそうだしなあ。
呟きつつフライドポテトを抓んだ。善処はするつもりだ。
(-491) unforg00 2023/09/23(Sat) 0:51:10

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「アハハハハ。ボスにも金払わなきゃな」

浮かれた妄想に過ぎないのだ。
きっとこれはそうで、それでも貴方がいざとなったらそれでも叶えようとするのならば、ロメオもきっと一緒になってそうするのだろう。夢は夢。夢は叶えたいから夢なのだし。

笑い声を上げた後、貴方の言葉をじっと聞いていた。
貴方の希望に溢れた言葉を聞いていた。
眩しかった。どうしてそんな事を言えるのだろう。
どうして保証もないのに言い切れるのだろう。

「………どうだろう」
「どうだろうな。でも……そうか」「うん」
「やっぱお前、いい男だよ」

『人並み』に背を睨まれている。
『幸せ』に後ろ指を指されている。
それは、それらがそこにあるから。近くにあるからだ。
もう失うのが怖いと泣いている心の内のこどもを、
そこにあるものたちがせせら笑っている。
期待をするなと蔑んでいる。

けれど。


「そう思ってくれるんなら、そうなるかもなあ」

ロメオは祈らない。自分の祈りに意味は無いから。
けれど、貴方の祈りには意味があればいいと思った。

「お前の幸せも続けばいい。ずっと」「手伝うよ」
(-495) susuya 2023/09/23(Sat) 1:07:18

【秘】 路地の花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

あなたの言葉を聞きながら、鼻を鳴らす。
涙は止まってくれなくて、嗚咽が漏れている。

肯定された"許せない"。
裏切られたこと、その相手に対する感情が正当であると言われたような気がして。
そして極めつけに。
フィオレという小さな花は、マフィアとして役に立てていない自分に劣等感を抱いていた。
囁くようなその声が、小さな
火種
に変える。


頼りきっている大事な大事な"ファミリー"のあなたの言葉を突っぱねる選択肢なんてハナから存在しない。
この女は、あなたの思惑通りに。



「……逮捕されたら、死んだあの子達は救われるの?」
「違う……そんなわけない」

「……私、あいつを――――ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリアを、殺してやりたい」


初めて、明確な殺意を。
憎悪を滲ませたような表情を、見せるのだ。
(-498) otomizu 2023/09/23(Sat) 1:17:13

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

そうでしょう、お疲れ様、
食べられそうですか。
何かしてほしいことはありますか。


心地よさそうに降ってくる言葉を受け止めて、目を細める。
自分がしたいことなんて、ずっと決まってる。
だけど今言ってしまえば何処にも歩けなくなってしまうから。


「……俺を抱」

「…………」

「高い高いしてから膝に乗せて頭を撫でてくれ」

この男はその姿勢から微動だにせずそれを言い切った。
(-499) toumi_ 2023/09/23(Sat) 1:20:31

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

「ふーん……『やりすぎ』って奴すか。嫌っすねえ。
 そら尋問じゃなくて拷問……」
「……いや。牢屋の中で私的にそんなことしてないだろうな」

ふっと湧いた嫌な可能性に思わず眉を顰める。
行き過ぎた奴は行くところまで行くんだよな、なんて考えて、
まあ、まさかなと首を振った。

「あー。あーははは。いいですね。
 もしやるなら絶対お供します。一番楽しそうだし。
 そのまんまどっかに逃げましょ」
「ほとぼりが冷めたら帰ってそこに建った慰霊碑でも見ながらピクニックしますか。ホットドッグ持って……」

少し戯言が過ぎてきたかもしれない。
本人はそんな事は思っておらず、今度はラスクに手を付ける。

「そんな感じです。ホントにやな事してくれましたよぉ……
 つか善処してくれるんすね。寛大だな」

「やってやりましょうよ。どこでもお供しますよ」

ランデブーには大いに乗り気で、
気に入らない奴らを好きに出来れば何でもいいらしかった。
溜まった鬱憤の捌け口がこの方向なのかもしれない。

「ま、これ以上逮捕者が出ないのが一番なんでしょうけど。
 そんな事はきっと無いので、どうにかします」
「オレも部屋片付けとこうかな……」
(-501) susuya 2023/09/23(Sat) 1:30:30

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

──いいね!
最高の女だ。
 あんた本当に美人だよ……」

肩に回した腕に力を込めて寄せる。
ロメオは途端に笑顔になって、その決断を肯定した。
冷たい憎悪が差し込む貴女のその表情。
そこにはいつもの可憐な雰囲気とは違う、ぞっとするような美貌があった。それが本当に綺麗だと思った。

「その言葉を聞きたかったんだ。
 心配するなよ、メインディッシュは勿論あんたに譲る。
 それ以外の事は全部オレがサポートしよう。
 車、武器、情報、シチュエーション……
 できる事は全部やろう」

「上手くやろう。上手くだ。
 あんたはできるよ。なんせノッテの人間だ」
「もう正義も悪も関係無い。道理と因果がここにある」

甘言。教唆。それ以外の何物でもない。
しかしそれが相互利益に繋がるだろうと。

「一花咲かせようぜ。フィオレ」
「とびきりのやつをな」

果たして燃え上がった復讐がどんな花を咲かせるのか。
冷たく尖った殺意は、仇の命を狩り取るのか。
それを知りたいがために、貴女の背を押した。
(-506) susuya 2023/09/23(Sat) 1:57:49

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ


「…………」
「いいのに」


「難易度高〜。二つ目と三つ目は出来ますけど」

ふ、と笑ってそれを許した。
そっと貴方の腕を解いてソファの正面へ。
「動かしますよ」と許可を取ってから、
貴方の身体を起こそうとするだろう。
自分で動けるのなら、それはそれでいい。

そのまま自分がソファに座って、

「ほら」

貴方が許すのなら、そのまま自分の膝に貴方を倒そうと。
──勘付いてもいい。膝枕をする気だ。
その上で頭を撫でようとしている。
貴方がそれを許さないのであれば、NOを示せば止まる。
何も無ければそのままだ。
(-509) susuya 2023/09/23(Sat) 2:07:28

【秘】 食虫花 フィオレ → 渡りに船 ロメオ

引き寄せられて、あなたの顔を見上げる形になる。
首に腕を回すと。顔を寄せ、頬に口付けを落とした。

「ありがとう、ロメオ」
「私、何でもするわ。だから、教えてくれる?」

手段を選ぶ必要がないなら、今得意なものを使用してもいいし。
逆にもっと手に馴染む手段があるのなら、利用してもいいと思っている。
それも含めて、"殺しの手順"を学ぼうと言うのだ。

ソルジャーとアソシエーテ、直属でないにしろ。
マフィアとして正しい在り方、正しい行動だと思って。

「ファミリーに入るって決めた時から、私は」
「とっくに、正義も悪も捨ててしまっているわ」

そこにあるのは、ファミリーに仇なすかどうか。それだけで。
そのためなら尋問の末に殺すことは出来たのだ。

自分のためにそうすることが、なかっただけで。
だから、きっかけさえあれば。躊躇いもなく、このように。

「最期に、一番綺麗な花を見せてやるのは」
「癪に障るけどね」

それは、毒を吸って成長する食虫花。
かかった獲物は、全身に毒が回って死に至る。
獲物を取り込んで、それは美しく咲き誇るのだ。何よりも、どんな花よりも。
(-514) otomizu 2023/09/23(Sat) 2:25:36

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「流石に牢の中の事まではわかんねえな。
 まあ金でも握らせない限りは流石に看守が止めるだろうが……
 暇な内にツラ拝みに行ってやりゃよかったな」

あの日はあの日で忙しく、今日は今日で忙しかったのだが。
暇があれば間違いなく面会に行っていただろう人物の一人だ。
あの手合は自分が正しいと思ってるんだよなあと思いながら。

「今世紀最大の馬鹿、ナルチーゾ・ノーノここに眠る…ってな
 おう、何処までも一緒に逃げてやるぜamoreダーリン
 ついでにクラッカーも買って行って鳴らしてやろう
 パーティーハット被って自撮りしてSNSに上げてやってもいいな」

戯けた調子で一番スカッとしそうなもしもを挙げ連ねる。
この所ストレスは溜まる一方だったのだから、
これくらいは許されたい。

「ま、善処しなきゃ筋が通らねえしな。
 ボスがあの七面倒臭え目の上のたんこぶさえ退かしてくれりゃ
 とっ捕まった奴らも出してもらえるだろ。
 そしたら俺達も慰霊碑の前でパーティしなくて済むんだがなあ」

「また誰か持ってかれたら穴埋めは頼んだぞマジで。
 人手不足で首が回らなくなればなるほど
 お前みたいな器用な奴が必要になる。
 ルチアーノが持ってかれたらフィオレの面倒も見にゃあならん」

「ハア。俺もこれ飲み終わったらぼちぼち
掃除
しないとな」
(-517) unforg00 2023/09/23(Sat) 2:39:41

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

素直に腕を解かれるとものさみしげに貴方のことを見返したが、
触れられ促されるままに体制を変えればなんとなくその先を理解した。

「……あれ、されたことないんだよなあ」
「旦那に頼めばしてもらえるかね……面倒くさがりそうだ」

重力に逆らわず膝に落ちると声は少し控えめだが普段と変わらぬトーンに戻す。
ぐったりと体を預けて動く様子もない。抵抗も、文句もない。

何処か己の価値に対して無気力なところは似ていると思ったのに、本当に貴方は自分と何もかも違う。
丁寧に都合良く振る舞う貴方と更に違うところは、その献身の先に何を見据えているのかということだ。
どうして救おうとするのかわからない、自分に手を差し伸べて何が変わるのだろう。


「なんで来て……いや…………すまん」

これも俺が来させたようなものだったな。
自惚れて期待するには、貴方は都合が良すぎて困った。
(-519) toumi_ 2023/09/23(Sat) 2:41:40

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

「旦那ならできるかもしれないすね。
 オレじゃ腕の力が足りない」
「やってくれるかどうかは別か。ハハ」

自分の膝に貴方の頭がされるがままに落ちた。人の重み。
そのまま視線を下ろせば顔を合わせる形になる。
長い髪がカーテンみたいに揺れている。
しばし見つめて、そっと頭を撫でた。

ゆっくり、ゆっくり貴方の頭の上を滑る大きな手。
大事なものを扱うかのような、穏やかな手だった。

「心配だから来ました」
「部下の方から最近の様子を聞いて。……ああ、白猫は家に。
 餌食べたらスヤスヤ寝ちまってね」

「甘やかしに来ました」
「来てよかったですよ。そのまま放っとけない……」

疲れましたね、とまた言葉を落とした。
(-547) susuya 2023/09/23(Sat) 8:48:18

【秘】 渡りに船 ロメオ → コピーキャット ペネロペ

「……オレも面会したい人ばっかだったんすけどね。
 そいつがヤなやつって事は覚えましたよ」

下っ端の自分でさえ行く暇を見つけられなかったのだ。
貴方であれば猶更面会に行く時間は無かったのだろう。
願わくば牢の中の再会にならない事を祈るばかりだが。

「不謹慎極まってて面白いな……ぜってー炎上する」
「ま、馬鹿が死ぬのはめでたい事ですからね。
 多分国民の祝日に制定されるからセーフか」

もしかしたら自分達以外にも
こんな事を話している人間がいるのかしら。
このまま検挙が続けば、案外笑い事には
ならなくなるのかもしれないな、なんて思った。

「大抵の事はやらせてもらいますよ。
 大抵の事やってきたんすから、穴埋めにはなれます。
 身は一つですけど。マルチタスクならできますからね。
 指示出しは流石に立場的には無理すけど」

「オレがいなくなったらそれはそれで。
 上に響かなけりゃ一番いいです」

任せてくださいよ、と缶を置いた。
そのまままたフライドポテトを数本纏めて口に入れる。

「ちゃんと現状維持に努めます。
 最後までここに残れるようにはするんで……
 持ち堪えられたら帰って来た後褒めてください」
(-559) susuya 2023/09/23(Sat) 9:25:35

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

教えがいが出るなら何よりだなって。
嬉しいを素直に形にしてもらえたことに、こちらの胸にも嬉しさがまたひとつ。

「じゃあオレだって内緒するし〜」

何の張り合いだろう。
でも、貴方に言えないことがあるのならそれでいいとも思っている。
その裏にあるものがなんだって変わらない。

きれいじゃなくても、あなたがだいすき。


合わさる視線の先にはきっと己と似た表情が。
通じ合っているみたいでしあわせだった。

「……すっごくチョコミント。
 でも、うん、おいしい」

これまでに口にしたカクテルのどれよりも。
甘くて、おいしくて、忘れられそうにない。
……ううん、忘れたくないのだと思った、ずっと。

[1/2]
(-561) mspn 2023/09/23(Sat) 9:29:36

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ


──そうやってもう少しの間、お酒を飲んだのち。

貴方の隣に出来上がっていたのは、どっぷり酔ったらしい弟の姿だった。

「……あはは、ねむた〜い……」

普段からそうお酒を嗜むことがない身体に、度数の高いお酒を入れ続けていたらまあこうもなる。
触るのが苦手、とはいっていたが、元々そうでなければくっついているのが好きなのだろう。
ずっともたれかかったままだ。むにい。

「ねていい〜?」

赤らんだ頬に、浮かべる笑みはへにゃへにゃと蕩けたもの。
そんな状態で貴方を見上げ、首を傾げてたぶんだめそうなことを尋ねた。

[2/2]
(-563) mspn 2023/09/23(Sat) 9:30:31

【秘】 渡りに船 ロメオ → 路地の花 フィオレ

グイと引き寄せられた先、
頬に感じた感触に目を細めて「ハハ!」と笑った。
かわいい犬にじゃれつかれたみたいな気分になったからだ。

「いいよ。あんたが知りたい事、なんでも」
「オレが教えられるのにも限度があるけど……
 あんた、どこでどうやって殺したい?」

希望があればそれを聞こう。
それに沿った事を教えるのがいい。
直属でなくともファミリーなのだから、
そのくらいの事は喜んで教えよう。

「いいね。そういう人間は好きだ。
 正義だ悪だ言ってる奴は皆病気だからな」

機嫌が良さそうにそう言って、
残ったボンボローニを口に運ぶ。

どんな色の花が咲くのかが楽しみだ。
花は咲き続けるのか、それとも──咲かずに終わるのか。

「ま、まずは奴さんがムショから出てくれねえとな。
 牢屋の中の人間をやるにゃ骨が折れる」
(-574) susuya 2023/09/23(Sat) 10:27:07

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「着ぐるみ作って?全世界チェーン展開……?」

いつぞや貴方に言ったように、今はまだそれを実行に移すことはない。
本当にしようとした時に挫折や苦しみを知ったとして、貴方が隣にいてくれるなら、怖いことなんて半分くらいに減るだろう。
男はそう思った。

「へへ、そんなに褒めても……何か出るかな……
 うーん、なにもない……」

ごそごそとポケットを漁るが端末しか出てこなかった。チョコの一粒でも残っていればなあ、と残念そうな顔をする。

男はずっと、ある意味では祈り続けているのだろう。
仲間の眠りが安らかであり、食事がきちんと取れているか周りの人間から気にかけられ、心から愛されているように、ずっと。
貴方たちが幸せでありますように。

「やった。
 じゃあ、ロメオさんも捕まったりとか……
 どこかに行っちゃったりとか、ダメですからね」

祈りが天に届くだとか、そういったことは深く考えていないのだろう。
神様は助けてくれなかったから、祈り続けていればいつか人が動いて現実になる。
その『人』に自分がなれるなら一番いい。
(-575) NineN 2023/09/23(Sat) 10:28:50

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「なーにをナイショにすんだよ」

そんなもんあんのか、と肘で小突いた。
あったとしても責める気は無いし、聞き出す気も無いけど。
人に触れられたくない部分があるのは、
当たり前だと思っているから。

爽やかで、まったりとして、甘やかで。
たまにはこういう時間も悪くないと思った。

『幸せ』に後ろ指を指されている。
お前にそんな資格はないと。早く孤独を思い出せと。

今はその声を、無視することにした。


(-577) susuya 2023/09/23(Sat) 10:36:08

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「よくないで〜〜す……」

どうしようかな、と思っていた。
自分は酒は飲むが、一定のラインを超えると逆に酔わない方だった。酔い方に波が無い。少しふわふわする程度に留まる。

「お前、そんな酔い方するんだ……」
「ここで寝ないよ。帰るか、フレッド」

てろてろな貴方をよっこいせと剥がせば、
きっと酒のせいでより体温が高くなっているのだろう。
子供か、なんて胸中独り言ち。

「立てる? なんならおぶるか?」
「家行けっかな……オレんちでいいか……」

お泊り会は案外早く来るかもしれない。
(-578) susuya 2023/09/23(Sat) 10:36:36

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「名がデカくなるな……」

今はもしも話でいい。
逃げずに現状維持ができるのが一番なのだ。
今が一番いい。ロメオはそう思っているのだから。
けどまあ、慰安旅行くらいなら現実的かもな。

「良いよ出さなくて。ハハ……」

案外、ロメオは祈りに護られているのかもしれなかった。
穏やかな願いがヴェールになっているのかもしれなかった。
祈りのそれだけで、十分幸せに値する。
贅沢だ。

「……そんなつもり無いよ。必要がなけりゃね」
「オレは替わりが利くけれど、
 それはオレが消えていい理由とイコールにはならない。
 しっかりしがみついて、皆の言うこと聞いてるよ」

使い捨ての駒にされても構わないけれど、
そうされなければいいな、と思っている。
貴方も、自分も。

「捕まっても帰って来るよ」「オレはしぶといからね」
(-582) susuya 2023/09/23(Sat) 10:54:08

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 渡りに船 ロメオ

「……、っ……」

やけに、わざとらしいな。本当に"あいつ"みたいじゃないか。
幻のように付き纏う幻影をよりくっきりさせたような、否、違う熱で上書きするその手に背筋が震えた。
大人しく撫でられていた男は思わず貴方の腕をつかんで、そのまま動きを止める。

「……人を甘やかす天才だなあ、お前。
 何が目的だ、俺を放っておけないのは俺が病人だからか。
 さっさと食うものを食って、治ったらもう構わんな?」

流されそうになる、この体に染みついた"教え"がその手に媚びることを覚えている。
表に出すまいと隠し通していた失態をあんなふうに晒すとは思わなかった。
その上で何の反応も示さないどころか、願い通りに甘やかしてくるこいつはいったい何なんだ。

もっと、と次を求めるような乾きがのどまで出かかった。
まるで大事にされていると錯覚しそうになって。
どうせ置いていくくせにと、いつかの己が心の中で叫んでいた。
まったく女々しいったらありゃしない、そんな他人行儀と不信を隣人に抱え理性は保っている。
(-583) toumi_ 2023/09/23(Sat) 10:59:07

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

「なんで……」

なんでではない。
剥がされると中々に不満そうだった。
勿論回るアルコールのせいで体温はさらに高くなってしまっている。
冬のカイロにちょうどいいぐらいだろう。

「たて、ぅ」

それでもできる?を尋ねられると、できる!を言いたくなるのが子どもというものだ。
立ち上がろうとして……当然のようによろめいて。
目の前で貴方が見てくれていたので、多分支えてもらったりしていたのかもしれない。

「……たててる……」


だめそう。
やっぱりお泊り会は案外早く来るかもしれない。
(-584) mspn 2023/09/23(Sat) 11:05:57

【秘】 渡りに船 ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ

「、ん?」

腕を止められた。抗議の意か。やはり気に食わなかったろうか。
貴方の心中を察する術はない。
それでも表情は変えずに、あなたを見下ろしている。

「あんたを放っておけないのは……なんででしょうね。
 あんたにどっか行ってほしくないからかな……」
「食うもん食って元気になるならそれがいいです。
 体調もきっと悪いでしょう。回復してくれないと」

貴方に抱いている仲間としての深い情。

「オレの目的はオレに無いですから。
 あんたの望みがオレの目的。
 オレはあんたのいいようにしたい」

それから、道具としての本能。

「ここにはオレとあんたしかいませんよ」
「別に、見栄張らないでいいんです」

ゆっくりと、緩慢に首を傾げた。 

「ね」

だから求められれば求められるだけ与える。
こちらに際限は元より無い。度外視されている。
掴まれた腕も従順に、そのまま動きを止めたまま。
(-591) susuya 2023/09/23(Sat) 11:30:58

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「おっと」「いや……立ててないですケド……」

よろめいた所を咄嗟に支えて、
やれやれとため息まじりに笑った。
マスターに退店を伝えて会計を済ませる。
その最中も貴方を支えていた。

「……ほら。おんぶ」

まるで子供にするみたいに、
貴方を立たせてから貴方に背を向けて少し屈む。
腕を伸ばしてくれるなら、そのままおぶり上げるだろう。

「帰ろ。帰りは寝てていいから」

呼ぶならタクシーも呼べるのにそうしないのは、
自分もやってみたかったからだ。
今なら人通りも少ないし、見られることもないだろう。
(-595) susuya 2023/09/23(Sat) 11:39:30

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「有名になりすぎてバレちゃうかも……」

そうしたらまた逃げる。皆で。
……そんな夢のような御伽噺が現実になることはない。
皆でこの場所を守るのだと、少なくとも今この二人は信じているから。

おせっかいの心配性、寂しがりやの男はきっと、何かできることがないかと思案を巡らせている。
そんな想いがまた積み重なり、貴方を守る祈りになればいい。

「役割としての代用はきいても、
 ロメオさんの代わりはいないってことですよ。
 ここめちゃくちゃ大事ですから、分かってくださいね」

念のため、念のため。
弟さんが泣くかもしれない。俺だって泣く。

「俺はその分、頑張って捕まらないように逃げますから。
 ……約束、ですよ」

きゅ、と目尻を下げて笑った。
(-599) NineN 2023/09/23(Sat) 12:10:31

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「解ってる、解ってるよ。
 こんなオレでも、オンリーワンではあるらしい」

不思議な話だよな、なんて皮肉ったらしく笑った。
自分に何かあれば、確かにあいつは泣くかもしれない。
貴方も泣くかもしれない事は、
ロメオはまだピンと来ていないけど。

「おう。約束」
「……悪いな。愚痴っぽくなって。お前も愚痴とかないの?」

目を細めて、穏やかに笑んで。
それからお詫びに聞きますよ、と貴方に問いかける。
(-618) susuya 2023/09/23(Sat) 13:47:32

【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ

立ててない指摘には、たててる……とまた主張していたものの。
一人ではろくに歩けそうにない男は貴方に支えられたままだ。
そうして目の前に向けられた背を見つめると、ゆっくりと瞬きを一度、二度。

「…………おんぶ」

してもらうの、いつぶりだっけ。
わからないけれど両腕を伸ばすことに抵抗は無かった。
そうして貴方がおぶり上げれば思ったよりも軽いと感じるかもしれない。女子よりは当然重いのだが、男子にしては発育が良いわけではないので。

「あはは、おんぶ」

笑いながらぎゅぅと腕に力を込めたのは、落ちないようにというよりはうれしくて。
緩む頬に癖のあるひだまりの髪が触れて、くすぐったくて、しあわせだった。

「かえる、かえろー、ろめおにい」

呼んで、その内に貴方が歩き出してくれることだろうか。
規則正しいリズムに揺られるのは揺り籠にも似ていた。
少しの間はふにゃふにゃと起きていて、言っていることは「ろめにい」「ろーにい……」となにやら改めての呼び方の模索だったが。
じきに穏やかに寝息を立て始める、安堵し切った子供と同じ。
(-620) mspn 2023/09/23(Sat) 13:55:03

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

「うんうん、それが分かってるなら大丈夫です」

「……愚痴、かあ。
 愚痴かどうかは、分からないんですけど」

しばらく考え込み、ぽつりぽつりと話し出す。

「俺、小さいころに色々あって。
 アレさんとペネロペさんに拾ってもらって……
 ずっとあの二人の役に立ちたいって、生きてきて」

でも、こんなことが起きて。
『俺の命は貴方達のものだ』って言ったら、怒られてしまった。
使い方を決めるのは俺で、ちゃんと手綱を握った上で二人のためを考えて行動しろって。
だから、俺がちゃんと考えられるようにならないといけない。
どうしたらいいんだろう。

そんな、愚痴というよりは相談事だった。
(-634) NineN 2023/09/23(Sat) 15:01:40

【秘】 渡りに船 ロメオ → 門を潜り ダヴィード

「───ふうん。なるほど」

少しずつ語られる、貴方の相談事。
役に立ちたいという気持ちも、命を捧げようという気持ちも、
ロメオには心当たりがあり、共感できるものだった。

「……観察かなあ」

首を傾げながら、思考しつつ口を開く。

「別にオレは目標とかも無くて、生きんのに必死で
 気が付いたらこんなスタイルの生き方になってたけど。
 まずオレみたいな生き方をしたら殴られると思え」

「人の為に生きるなら、人が何を欲してるか知らなきゃ。
 何が嫌で、何をしたら喜ばれ、何をしたら役に立つか。
 人を観察して、そういうのを吸収する。
 人間が正しく自発的な行動がとれるようになるのは、
 経験と知識があってこそなんだよ。挑戦するのもいいが。
 未熟者の挑戦は無謀と同義になる事もある。
 この世界でそうなると、死ぬ事もあっから……」

目標があればいい、理想があればいい。
その真似をしてみるのもいい。勿論背丈に合った方法で。
そういう事を、ロメオは言った。

「何かある?そういうの」
「どうありたい……とかでもいいけど」
(-636) susuya 2023/09/23(Sat) 15:25:54

【秘】 コピーキャット ペネロペ → 渡りに船 ロメオ


「いいねえ、祝日が増えたらそれは
 署長代理殿最大の功績と言ってやっても良い」

実際、街ではひそひそとゴシップに興じる者も多い。
何か一つでも火種さえ落とされれば、
案外火の手は早く回ってしまうのではないだろうか。

「そのマルチタスクがその辺の奴はなかなかできねえんだよなあ。
 便利な人手があって助かるわ。
 指示出しはまあしゃあねえ、俺が居なくなったら
 親父とその部下が引き継ぐはずだ」

「俺ァお前がとっ捕まっても悲しいがね。
 あ、これオフレコな」

気軽に酒飲める奴減るし、と一瞬で発言を台無しにして。
もう一枚、ラスクを抓む。

「おうよ、俺は良く出来た犬は好きだからな。
 ぜーんぶ片が付いたら嫌ってほど褒めてやるよ」

へらりと笑って、また酒を呷った。
(-641) unforg00 2023/09/23(Sat) 15:56:54

【秘】 門を潜り ダヴィード → 渡りに船 ロメオ

貴方の話を、男は静かに聞いていた。
時折頷いて貴方の話を『吸収』していく。

どうありたいか、何を理想とするのか。
それを説明するには、生い立ちを少しだけ掘り下げる必要があるだろう。
男は少し俯いて、また口を開く。

「……小さいころの、俺みたいに。
 汚い手を使わなければ助けられない子どもがいる。
 警察なんかじゃ助けられない、ちびどもが」

「俺、親が死んでから、本当は叔父に一度引き取られて。
 でも、そいつがどうしようもないクズで……」

今も体に消えない痕がたくさんあります。
そんな時にアレさんに助けてもらったんです。
叔父は死にました。俺は、それを心の底から喜びました。


「そういう助け方だって、あるんだって。
 拾われの贔屓っ子じゃなくて、恥じない生き方を……
 こう……あの……」

社会の暗部に助けられた、救われた人間であるからこそ。
贔屓されている末っ子のままではなく、闇夜を進むに相応の責任と覚悟を負った、二人に恥じない生き方を。
他人を踏み躙って今自分は生きているのだから。
……そういったことをしっかりと口にするには、語彙がまだ足りていないようだった。
(-651) NineN 2023/09/23(Sat) 16:50:17

【秘】 渡りに船 ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ

「はいはい、おんぶですよ」

あんまりにもこどもみたいだから思わず笑ってしまった。
背中に感じる重みと体温は想像よりも軽くて、それでも別の重みを感じたのだ。背負って歩けないほどではない。
けれど大切な重みだった。

「はーい。オレんちに帰るからね」

マスターに礼を言って、店の外に出ればいい風が吹いた。
火照った体にしんと染みるような涼しい空気は、
確かに秋を連れてきているのだ。

家は近い。おぶって歩くにはやや遠いか。
それでもたまにはこんな帰り道もいいだろう。
背中に聞こえる模索に、少しの気恥ずかしさを感じて。


「……〜〜〜〜〜〜♪ 〜〜♪」
「……───♪」



ふと、教会にいた頃にずっと聞いて歌っていた、
聖歌の一節をハミングする。
どうか子守歌の代わりにでもなればいいと思った。
どうかおやすみ、かわいい子。

月明り、夜道に二人の影がある。
兄弟の影だ。
ひとりといっぴきの影ではないのだと、
貴方と出会って初めて、ここで思えたのだ。
(-687) susuya 2023/09/23(Sat) 20:38:29
 


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