魔王軍幹部 フォルクスは、メモを貼った。 ![]() (a1) 2020/10/21(Wed) 10:12:42 |
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![]() | 【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 見上げるのは白い天井、視界の端にも同色の壁。 狭い寝台に横たえられている身体の脇の腕を、繋ぐもの。 天を突く如く伸びる鉄や硝子の箱。 考える前に身体が動いた。 拘束から逃れ、この部屋から早く────] (49) 2020/10/21(Wed) 23:22:09 |
![]() | 【人】 魔王軍幹部 フォルクス「おい、やめろ暴れんな! フォークこの野郎また寝ぼけてやがるのか、 いい加減にしねーと担当降りるぞ!」 [ ややくぐもって届く罵声、慌てて駆け寄ってきた不可思議な姿。 長方形に海を切り取り持ってきたように、不自然に水が独立している。 その中に泳ぐ様々な種の魚たちの向こう側、見える痩せた男。 冷え切った両腕が伸びて、肩を掴み揺さぶった。 冷たすぎて痛い程で、気泡より細かく早く投げつけられる罵詈雑言が これが現実であることを何よりも示す。 ] (50) 2020/10/21(Wed) 23:22:23 |
![]() | 【人】 魔王軍幹部 フォルクスすまん、すまんオルフェウス、申し訳無い許してくれ。 大丈夫だから本当に悪かったからやめてくれ、酔う……っ。 [ オルフェウスは城に勤める水人族出身の研究員、 陸上で生活する為に自身の周囲を水で覆っている。 エルフ族同様の、竜族に次ぐ高知性高魔力の長命種族。 しかし代償の如く非力で、歴史上人類に狩られた記録は少なくない。 彼らは水人を人魚と呼び、その肉を喰らえば不死になると思い込んだ。 とはいえ寝起きの相手の視界を存分に乱す程度の腕力はある。 初めて会った時も暴れに暴れてぶん殴られた。 ] (51) 2020/10/21(Wed) 23:22:45 |
![]() | 【人】 魔王軍幹部 フォルクス[ 丈の長いシャツのような白い装束を 質素な服装の上に釦を留めずに羽織るこいつの姿が、 教会の使徒達の聖衣とよく似ていたから。 ] (52) 2020/10/21(Wed) 23:23:08 |
![]() | 【人】 魔王軍幹部 フォルクス──魔王城・地下研究施設── [ 手首から伸びる透明な管と、その先に繋がり吊るされた袋を眺めた。 描かれている魔法陣が仄かに光るのは中の液体の鮮度を保つ為、 これは血だ。人類のものと比べ、やけに明るい赤色をしているが。 ────拘束だなどととんでもない寝惚け方をしたものだ。 これは、自分が自分であり続ける為に必要な行為だというのに。 病んだ血液を排出する、瀉血と呼ばれる医療行為は存在したが 専門職ではなく刃物に長ける散髪屋がする仕事であり、 殆どの場合聖魔法や薬草を用いたのがあの頃の人類。 女神が与えた器の血を、他の器に移し替える行為は冒涜である。 試みて背信者として追われた者も、結局は患者を死なせたという。 その程度の知識と道具しか、ありはしなかった。 これは教会に意図された世界文明の停滞の一つ。** ] (53) 2020/10/21(Wed) 23:23:28 |
![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス──終わりに至る始まりの先── [ 神託を受けた始まりの勇者は、世界に光を取り戻した。 しかし魔の根絶に至らず、生き残った邪悪なる者達は 氷雪に閉ざされし不毛の地へと逃げ延びたという。 志を果たせず倒れた勇者、しかしその死は無駄ではなかった。 女神の降臨と共に彼の身に浮かんだものと同じ痣のような紋様が、 喪われた友の命に嘆く青年に宿ったのだ。 ────人類は既に諦観を忘れた。 女神に見捨てられてなどいないことを、新たな勇者が知らしめた。 これが、女神暦1年の出来事であると、 聖木を守り勇者を育むことこそが我々の役割であると、教会は語る。 ] (129) 2020/10/22(Thu) 23:20:45 |
![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ しかし、希望の訪れから永い時が経っても 人魔の争いに決着はつかず、数え切れない勇者達が死んでいった。 闇より出る不浄の化身達は、牢獄の如く極寒に追いやられて尚 絶望的な程に強力な異能を持ち合わせていたのだ。 苦しい戦いを強いられた人類を、女神は見ていたのだろう。 遥かなる大樹が世界の中心より根を伸ばし、力を与えるようになった。 勇者は聖都から旅立った後代々、 各地で地表から露出する十三の聖木の根を巡ることも務めだ。 しかし根を孕む土地は、勇者を阻む為か強力な魔物が多く 時には魔族が現われることすらある大変危険な環境だ。 故に周辺の教会は、魔法の素質を持つ人材や、優秀な騎士を育て 最も優れた者を“勇者の仲間”として引き合わせるのが義務とされる。 ] (130) 2020/10/22(Thu) 23:21:04 |
![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ 神託を受け、聖木の根から力を授かる勇者達は 代を重ねる毎に強くなり、魔族の土地に────魔王の首に近づく。 それは死した勇者の器が地に還り、再び聖木に戻るから。 お前は彼らの未練と力を受け取るのだ。 そして例え念願叶わずとも、お前の想いも次代に受け継がれる。 誇りに思うべきだと、変わらない優しげな微笑で使徒は言った。 ] (131) 2020/10/22(Thu) 23:21:24 |
![]() | 【人】 ヤドリギの勇者 フォルクス[ 田舎者でも知っているようなこの世界の理、 勇者となった身にはこれからの試練と未来を示す内容。 旅立ちを前に、改めて聞かされながら。 歪に作られた人形みたいに、ただ何度も何度も頭を垂れた。 頷くというにはきっと、酷く不格好な仕草だった。 聞いているのかいないのか、自分でも分からないその時間に 教会前で家族と語らい、抱いた決意を思い返していた。 他のことを考えないように、したかったのだと今は思う。 ────神託の後、顔を合わせた者達は 皆嬉しそうにしていて、時には感動を身体で示す如く抱きしめられて。 あの部屋で起きたことについて口にする機会は、一度も無かった。** ] (132) 2020/10/22(Thu) 23:21:45 |