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![]() | 【人】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ>>1:153 テオドロ 0日目 いくらか、答えに対して返る視線があった。幼いものを見るような、柔らかな目だ。 小言もこれまでとしたからには、今は言葉で伝えるものはない。 そして、それは自分だけの役割であるわけではない、今説かねばならないことではない。 ただ、今は曖昧な納得だけを返すように、長い睫をそっと伏せて笑った。 男がいくら言葉を弄そうが、今の貴方は"そう"なのだ。 「取り調べの時も、完璧な服装では出向くなと教える人もいた。 目標や被害者に話をしにいくのに、わざとネクタイを緩めたりカフェオレをこぼしたり、 隙のある人間であるように見せることで、相手の話したくないことを聞き出す術らしい。 抵抗の有る言い方かもしれないけれど、人を頼るというのも同じことだ。 もしも曖昧な感情や関係性に信を置けないのなら、そういう作用を見るといい。 ……別にこれも、計算ばかりの話ではないんだ。 安心して心を開いてほしい、無理強いしたくないというのは捜査官として不自然無い動機だ。 罪を犯していたとしたって、相手が市民であることはいつだって変わらない」 0と1ばかりの世界の話ではない。傾いた夕日が映す街のシルエットを見据えて男は言う。 ひととして生きるにあたって地続きの公と私を交えながらに、声の調子が変わったのを見て振り向く。 連れ立って商店街のついてきた足は、まだ方向を変える様子はない。 「うん? ……ふふ、そうだな。 私の買い物に一つ付き合わせる代わりに、私も君の買い物の様子を見せてもらおうかな。 ちょっと古い友人に会いに行こうと思ってね、手土産を探していたところなんだ」 言葉で差し出された順番は、実際の買い物の順番とは逆行するだろう。 自然と言い換えてしまって、己の責が先行しているかのように足を進める。 #街中 (8) 2023/09/18(Mon) 17:07:21 |
![]() | 【人】 Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ>>1:155 ロメオ 1日目 「ああ、そうだったんだね。憧れの職場、みたいなものなのかな。 目標を達成できることは、……いいことだ」 相手の風体を見る。自分よりかは当然、重ねてかなり年若くは見える。 ティーンエイジャーの残り香がやっと解けてきた頃……と思えば、よい目標だ。 嗄れたり衰えたふうには見えないまでも、男の目元には年数の積み重ねがある。 どうしたって、まるで目下のもののように見てしまうのは仕方のないことかも知れない。 「いい特技だ。客商売に向いているだろう。 叶うなら私の職場にも欲しいくらいだ、なんて言ったら店主に申し訳ないかな」 ――無為の問いかけではない。多少の、そうした意図はあった。 とはいえ、貴方だけを疑っているわけでもない。相手取っているものが相手であるから。 街に溶け込む"貴方がた"を追う以上、街の全てを疑う必要がある。 そしてそれらは、疑う相手である街を守るためでもあるのだ、だから。 この問いかけは決して敵対的なものではない。 付け加えるなら、引き抜きたいのだって少しくらいは本心だ。 「また来るよ。 次もおすすめを教えてくれたら、嬉しいな」 勘定をすませたなら、小麦の匂いのする袋を持ち上げる。 少なくともこれで男は貴方の顔を覚えたし、貴方も男の顔を覚えただろう。 いつまでも客と店員であれるのが、一番だ。 (11) 2023/09/18(Mon) 19:17:52 |
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