188 【身内P村】箱庭世界とリバースデイ【R18RP村】
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私の力は、平穏に導くための道程を用意するもの。
仰々しいですが、実際は破壊のための力です。
命だって刈り取ることが出来る。
……まるで、私の方が『死神』のようではありませんか。
時に思うのです。
『教皇』である私と 『死神』である貴方。
私達は本来持つべき力を
神が取り違えられたのでは、と。
私こそが、本来の貴方であったのでは無いか、と。
[ タンザナイトが埋め込まれた聖杖を
『死神』の首元にぴたりと当て、口元を歪ませ嗤う。
・
・
ぼろり
・
聖者の仮面の欠片が、音も立てずに堕ちていく。
]
私は、貴方のことが羨ましかった。
私より余程清らかで、慈悲深く、汚れ無き存在の貴方が。
……いつの頃からか
妬ましく思えていました。
今この瞬間の、言葉だってそうですよ。
己の身が危険な状況であれど
案じているのは、貴方の命ではなく
…………私の事なのですから。
貴方の云う通り、私はこの程度の者でしかないのですよ。
[ 神が私に与えた “贈り物” は
間違っていなかったのでしょう。
間違えたのは、私の方。
]
[ かつて死神が師のように慕った“慈愛の聖者”の仮面は
狂気を孕んだ声と共に崩れ落ちました。
死神はどのような表情をしていたでしょうか。
どのような表情でも、態度が変わる訳ではありませんが。
やがて『死神』の首筋に向けたままの杖先から
顔色一つ変えず、爆発を発生させました。
しかし、僅か数秒後に知ってしまいます。
この爆発だけでは、終わりが訪れないことを。
『死神』の再生の力の賜物でしょうか。
それとも、肉体のみならず
魂まで消滅させたかったのでしょうか。
『教皇』はそれはもう念入りに
ぴくりとも動かなくなるまで
幾度となく攻撃を続け、殺害しました。
その時の形相といえば
悪鬼羅刹の類のそれと言えたでしょう。
後世、なかなか『死神』の証を持つ者が
生まれ落ちなかったのは、通説の
「22人揃わないようにと考えた人に殺された」他に
この悲しい出来事の影響もあるのでは、と
唱える説もあります。*]
[ 『節制』は、箱庭を愛していました。
世界を生み出した神様を愛していました。
自分と同じように箱庭に生み出された子らを、
それぞれに大切に想っていました。
相反する性質を持つ者たちの集う箱庭では
諍いが度々起こりました。
彼らが諍いで互いを傷付けすぎてしまうことのないよう、
一たび争いごとが起きたなら駆け付け
仲介役を進んで買っていました。
神様が『節制』へ贈った贈り物は「虹」
相反する二つの性質の間に立ち、
それらを結び付けることの出来る贈り物でした。
特別安らげるのは、親友である『隠者』の傍。
『隠者』は思慮深く、慎重で、思い遣りに満ち
誰よりも『節制』の性質を理解してくれます。
『節制』もまた『隠者』を誰よりも大切に想っていました。
晴れた空の下、よく二人だけのお茶会を開きました。
湖畔で涼やかな水音を聴きながら
アイリスの花を眺めるのがいっとう好きでした。]
[『節制』は規律を重んじ、節度を弁え
慈愛を尽くすためならば自己犠牲をも厭いません。
東に呼ぶ声あれば飛び、西に呼ぶ声あれば駆け
求められれば求められるがままに献身し、
皆の幸せを心から願っていました。
最初はきっと興味本位で始められたのでしょう
『運命の輪』の手による幸運と不運の流転。
やがてどちらをも楽しむようになってしまった
『運命の輪』のことを、その勝気な奔放さを
『節制』はどうしても理解できません。
初めこそ純粋に心配をしていましたが、
徐々に苛立ちを覚えるようになってしまいました。
『節制』が戒律し、己を戒めていましめて
とても出来ずにいるようなことをも
無邪気に成し遂げてしまうから。
羨望の色を孕んだ、醜く身勝手な苛立ちでした。
『節制』は自分が『運命の輪』を嗜められる気がしません。
『正義』に任せて、距離を置くことにしました。]
[ わたしは神様を愛しているのに
神様の創りたもうた子に苛立つなんて!
『節制』は自分の中に生まれた矛盾に苦しみました。
こんな自分は『隠者』にだけは知られたくない。
ひとり苦しむうちに、ぽきり、と何かが折れました。
どんなに仲介役を続けても
ただその場では丸く収まるというだけ。
争いの火種がそれぞれの個性に在る限り
諍いが完全に絶えることはありません。
……つかれたな。
ふとそう思いました。
仲人役を務めることが虚しくなってきましたし
自分の存在は箱庭に必要がないような気もしてきました。]
[ やがて思いました。
わたしが間に立とうと、立つまいと
さして結果は変わらないのではないか?
愛する神様からの贈り物を使いこなせない己に
『節制』は、失望しました。
必要がないのなら、わたしが生み出された理由は何だ。
「わたしは、神様から愛されていないのではないか?」
奇しくも『運命の輪』と真逆の発想に至りました。]
[ 神様を、箱庭を愛するがゆえに積み重ねてきた
丁寧な暮らしが荒れるようになりました。
箱庭の何処かで諍いが起こっても
知らぬ存ぜぬを貫きました。
昼夜は逆転し、好きなだけ酒を煽り、殻に閉じこもり
美しかった紅い翼はぼさぼさになってしまいました。
そんな情けない自分を誰にも見られたくなくて
『隠者』には特別見られたくなくて
もしも『隠者』が自分の元を訪ねてきてくれても
ひとりにしてほしい、と拒んでしまいました。
そんなある日のことでした。
『悪魔』が、『愚者』を殺しました。
どんなに諍いが続いても殺し合いに発展することはないと
『節制』は心の何処かで油断していました。
だからこそ見て見ぬふりをしていました。
──取り返しのつかないことが起きてしまった。
わたしが間に入ったとて
止められはしなかったかもしれない。
だが、『愚者』の死は防げたのではないか? ]
[ 自責の念に駆られた『節制』は我に返りました。
神様が愛した、穏やかな箱庭を取り戻すために。
混乱に陥った箱庭を鎮めようと
『節制』は、再び諍いを仲介し始めました。
そのうちに誰かが刃を持ち出しました。]
──いけません
わたしたちがわたしたち同士で
傷付け合ってはなりません……!!
[『節制』は仲立ちを試みながら
どうにかして刃を奪い取ろうとしました。
力任せに奪い取ろうとしたその弾みで
『節制』の身体は場外へと投げ出され、
掌の中の刃は──── ]**
| [ 言い表せない、天地がひっくり返るほどの 多幸感を味わった事、少し後悔している。 離れがたくなってしまう。だが、こうなると 知っていても尚、僕は貴方様の胸にすり寄って >>0 いただろう。 そっと御手が、肌に触れる。 途端に、溢れ出した涙は 久方ぶりに、悲壮や悲観、不安からではなく 幸せの色をしていた。 言いたいことも聞きたいことも山ほど あったはずなのに。今この時、 それらはすべてどうでもいいことのように 思えた。 さようならを口にしたことすら、悔いている。 その背を追いたい。やはり間違っていたと 手のひらを返したい。 それでも 呼び止める声は出なかった。 ] (91) 2022/12/20(Tue) 17:26:45 |
| [ ぽたり ぽたり
素足に落ちる頃に、涙は温度を失って 冷たくなっている。
ついていけたなら、きっと楽なのだろう。 己の抱える苦しみなど、塵のような些事に 様変わりするのだろう。
それでも、崩壊を願わない 誰かがいる。
では、その誰かのために?
――否である。 ] (92) 2022/12/20(Tue) 17:27:02 |
| [ 苦しみを捨てることよりも、 苦しみと共に生きることでしか、
なし得ないなにかがあると、 身をもって教えてくれた人がいる。
苦しみを乗り越えること、罷りならずとも 苦しみを伴っていたからこそ、
過ごせた時間がある。
それらを全部なかったことにしてしまうには
この生命を、謳歌し過ぎた。 ] (93) 2022/12/20(Tue) 17:27:22 |
| [ 壊れてほしくないものがある では、生きよう。彼らと共に。 なくしてほしくないものがある。 なら、生きよう。彼女らと共に。 実にシンプルな答えを得てしまった故に、 僕は貴方様の背を追えない。 涙に彩られたまま、 月 夜の散歩へ 戻るとしよう。なにせ今夜は、月が綺麗に 見える夜だ。* ] (94) 2022/12/20(Tue) 17:28:31 |
| ―― 翌朝のこと ―― [ もしかしたらその後か、 集められる前に、誰かと喋ったりしたかもしれない。 細かな傷を拵えた素足を、 薬師に自ら診てもらいにいったりも、 したことだろう。 再び玄関ホールに集まるようにとの達しが 届けば、重い足取りで玄関ホールへ向かうだろう。 ――どのような結果になるやら、 神妙な面持ちで。 皆が揃った後に、神が呆れたように 口を開いた。滅ぼすのはやめにしよう >>3、と。 ] (95) 2022/12/20(Tue) 17:29:23 |
| [ どうしてだ、と問うような声に、 返す言葉は持ち合わせていない。
きっと、何を言ったとしても、 選択が覆る事はなく、また
貴方の思いも変わることはないのだろうと 思った故に。 ]
……共が必要ならば そう言えば良かったのです。
――けれど、全員でないと、 きっと貴方は満足しないのでしょうね
誰でもいいなら、 一人でいいなら、僕などいかがです
[ そうすると思わなかったからこそ、 口にした言葉を誰かに咎められる事は あっただろうか、あったとしたら バツの悪そうな顔をしてみせた。 ] (96) 2022/12/20(Tue) 17:29:48 |
| そうですか――……… [ いらないと神が言う。 ずきり、と心の奥で破裂音がする。 こころがいたい。 けれどきっと、貴方のほうがもっと痛いの ではないだろうか。 やがて貴方がさようなら >>7、を口にする。 昨晩己も言った言葉であるというのに、 貴方からそう言われると、身を引き裂かれるような 心地がした。 ] ――ああ!! [ そうして彼の体が崩れ落ちる。 側近くにいれたなら、その体を支える手伝いを 申し出た事だろう。* ] (97) 2022/12/20(Tue) 17:30:09 |
[ ひとりきりの恋人たち。
胸の証はとある楽園の模倣。
蛇の奸計で林檎を口にし追放された者たちの烙印。
その意に破綻をも内包するそれは、
夢を見なければ生きられない程に、
最初から完璧ではなかった証。 ]
[ 知っていた。識っていた。
完璧な器に完璧な魂。
それでも足りないのです。
足りないと思ってしまうのです。
或る日神に問いました。
「どうしてわたしたちを完璧に作ってくれなかったの」
造物主は答えます。
「そのままのおまえを愛している」と ]
[ 『恋人』が何をしたとて何を思うとて、
永遠の不完全に絶望し身を投げたとて、
正気の果てに箱庭の全てと心中したとて、
何をしても愛しいのだとその瞳は告げるのでしょう。 ]
──── ああ、反吐が出る。
自分で作った可哀想な人形を愛でるその目が煩わしい。
わたしたちが欲しいのはそれじゃない。
[ 『悪魔』の愛は禁断の果実でした。
そこにあり、魅力的で、どうしても欲しいと思うのに、
手を伸ばせばその愛は終わってしまうのです。
わたしたち、ふたりでひとつの完璧な存在。
だのにこの身の外に抱いた愛に気付いた時、
『恋人』の『完璧』は永遠に失われてしまう。
だから見ないようにしました。
『完璧』であるならば、『悪魔』は愛してくれる。
何故、と思えば問うたことはありませんでした。
向かい合うことを避けていたようにも思います。
心で想うことだけは、この心だけは自由だ、などと、
そんな都合のよい夢を揺蕩っていたかったのです。 ]
[ だから、箱庭の黄昏を招いたのが『悪魔』だとしても
それは構いませんでした。
愛とは許しで、愛とは受容で、
愛とは存在を肯定するものだと信じていたからです。
彼がどれだけ血に染まろうと罪に塗れようと、
望むものを得る道なら何がどうなろうと構わない。
わたしたちの終わりですら──
きっと完璧なまま終わらせてくれると信じたから、
どうでもいいと思えたのです。
彼が真に求めるものが何であったかさえ、
知ろうとしないままに。 ]
[ けれど、狂気のままの精神は擦り切れる寸前でした。
生まれた時から『完璧』ではないと知りながら、
それでも『完璧』を偽り生き続けるのは地獄でした。
だから、それは確かに救いだったのです ]
── ねえ、『悪魔』。
こんな最期を少しくらいは惜しんでくれるかな?
わたしたちも少し残念だ。
最期だなんて言わず、
最初に殺してもらえばよかったかな、なんて。
ああ、でも。
きみに浮かぶ失望の色を見ることがなくてよかった。
きみの愛を失う前に、死ねてよかった。
[ そうして瞼を下ろします。
そこには音もなくただ優しく広がる夜がありました。
『恋人』はその不本意な死にも関わらず、
眠るように穏やかな顔をしていました。 ]
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