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【人】 封じ手 鬼一 百継■マスターシーン かなめ石の前にひとり座して、しめ縄を巻かれたその岩を眺めていた。 耐え忍びつつ平穏であった9年間に比べ、あまりに短い直近の十数日は、まさに激動の其れだった。 儂が見ていた世界はがらりと色を変え、信じていたものの一部は夢と消えた。 毅然とした当主であろうと努め、己を高めていた筈の、自分の正体も知った。 心は丸裸に剥かれ、自らの弱さ、幼さ、見苦しいばかりの悪辣を眼前に叩きつけられた。 仲間の一部は去り、二度と戻らぬことを知った。 それでも今、何故か、心は凪いでいた。 理性は「何を呑気な」と叫んでおる。 封印の術が使えぬことに対して、焦るべきなのだろう。 儂は鬼一の名を、この都の民の命を負う責があるのだから。 実際、自分が封じ手として未完成であると知った時は大いに慌てたものだが……。 目を閉じる。 焦燥や無力感のかわりに、絆を繋ごうと手を差し伸べてくれた者たちの声が蘇る。 それは確かな力になり、かつて腹の内で燃えていた暗い焔の代わりに、あたたかな光を宿してくれる。 (30) TSO 2021/04/24(Sat) 17:07:01 |
【人】 封じ手 鬼一 百継――オレが百継様を御守りする。 ――どんなことがあっても、百継、お前を守る。 「揃いも揃ってのう」 くっくと喉を鳴らして笑う。 心がくすぐったい。ああ……ただ、嬉しいのだ。 人のようなあやかしも、あやかしのような人も知った。 憎しみを糧にしていた自分はもういない。 只、封じ手……否、此処の護り手として、やはり儂は人の世とあやかしの世を分けようと望む。 (31) TSO 2021/04/24(Sat) 17:07:52 |
【人】 封じ手 鬼一 百継あやかしに、人を惹きつける快楽、愉悦の姿が見て取れることは、最早否定はすまい。 そちら側の世界に焦がれ、自ら飛び込む者もいる。 しかしそれは、大麻の、あの妖しい薬のもたらす歓喜に似て、弱い者から虜にする。 儂の都には不要である。 (32) TSO 2021/04/24(Sat) 17:08:17 |
【人】 封じ手 鬼一 百継「とは言うものの、じゃな。 未だ儂は術を行使できんままなのかのう。 文献を漁り、日々色々試してはおるが、結局、何を以って可能となるのかも解らんままじゃ」 よっこらせ、と立ち上がる。 「どうしたものかのう……教えてくださいませよ、父上」 そして、何の気なしに、かなめ石に触れた。 ――刹那。 「!?」 稲妻のように、身体の中を衝撃が駆け抜けた。 両手を見下ろす。 何かが、つい数瞬前とは何かが違う。 決定的な変化が、自分の身に起こったのが解った。 もう、大丈夫だ。 根拠はないが、確信がある。 自分は、"成った"。 突如訪れた進化の原因はきっと、他でもない…… 「儂は、あの2人に、また礼を言わねばならんらしい」 静かな感動に震えながら、両手を合わせ、暫くそのままでいた。 [鬼一 百継の能力【稀代之封血】が行使可能になりました] (33) TSO 2021/04/24(Sat) 17:13:50 |
鬼一 百継は、一葉が安定の一葉(最早そういう安定剤) (a12) TSO 2021/04/24(Sat) 20:08:07 |
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