──鈍色の記憶2──
[怯えた者たちも立派に努めを果たし、
兵達は戦果を上げて帰郷した。
家族があるものは、再会を喜んだ。
友や恋人、知人を持つものも喜びを顕にした。
無愛想な少年を待つ者は普段はいない。
だが、伝えたい事があるのだと、妙齢の女性が少年に近付いた。]
『シグマ!わたし、結婚することになったの!』
[世話になったし言っておこうと思ってと、幸せそうに笑う女。
祝事に少年も喜びを浮かべたが、
同時にズキリと痛む頭を押さえ。
“おめでとう”と言葉にはして幾つか話したが、
すぐに回復しなかった少年は体調が悪いと言い、
日を改めて祝儀を持って行く約束をして、女と別れた。
あの人が幸せで、嬉しい事に偽りはない。
全部忘れて、きっとそれで正解だった。
あの人に呼んで欲しかった存在を捨て去っても。
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