196 【身内】迷子の貴方と帰り道の行方
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− 回想:館について −
[僕が自分の館を持つと決めた時
手伝ってくれた魔法使いがいた。
彼は変わり者で、発明が好きで、頓珍漢な物から
役に立つものから色々楽しそうに作っていた。
そんな彼に頼まれたことがある。
どうしても、病弱な少年の願いを叶えたいと。
僕の魔法使いとしても能力をあてにして
この館を作るのの手伝いを対価に
僕も彼の願いを叶えた。]
[この館で、魔法使いじゃない彼女が
なぜ魔法を意のままに使っているのか。
それはこの館と契約させたからだ。
ほんの数個だけ創り上げた特殊な魔道具
一つにつきたった一人にだけ使える魔法。
契約が出来て、その契約者は魔法の恩恵を受ける
その内部にいれば、体や心が魔法で守られ続け
そして魔法使いのように振舞える。
魔法がそこまで万能かと言われるならそうだね
そうじゃない。けど、
僕は特殊だから
、ね。
はたから見れば彼女は魔法使い。
この場ではそれでいい。]
[流石に危険だと思ったから
特殊魔道具の存在は僕と彼の秘密だ。
彼はその病弱な少年に汽車を与え
夢だった空への冒険の旅に出た、とか聞いた。
僕はそれを、死にそうな少女に使った。
その少女はきっと自覚していない。
守られているからこそ、今でも心が元気な事を。]**
[体型維持の魔法は好まれるのですね。
まぁ気持ちは分かります。]
何でも魔法に頼るのはよくありませんわ。
[席に着くと、
今日はまだ男性と出逢っていないことに気が付きます。
朝は遅めなタイプでしょうか。]
[食事に関しては問題はないよう。
栄養補給ではなく、完全に娯楽という位置づけですね。
苺のパンケーキはとても美味しそうでした。
試しに手を伸ばしてみましたが、触れることは出来ません。]
飛べるのは最初は楽しそうですが、
実体がないのは味気が無いように思えますね。
[とは言え、それはわたくしが今、健康体であるから。
怪我や病気で不自由な方にしてみれば、
これほど有難いことはありません。]
(やっぱり、彼女たちを悪と断じることは出来ませんね)
[
ん?今なんでもって言いましたわね?
昨日は余り詮索するのも……と遠慮をしましたけれど、
こうなってしまっては話が変わってきます。
場合によっては一生(?)の付き合いになる訳ですし、
訊かない手はありませんね。]
まずお聞きしたいのですが、
貴女のお兄さま、
赤い髪の男性の名前を教えて頂けませんか?
なんとお呼びしたらいいのか分からず、
不便しております。
ネリリさんは
ここで生まれ育ったわけではないようですが、
どのくらいこの屋敷で生活していらっしゃるのですか?
あと気になっていたのは、
魔法使いは国に厳重に保護されると聞いております。
何故ネリリさんはここで暮らせているのでしょうか?
[ネリリさんは、そもそも生きていると言えるのか?
というのは流石にデリケートな問題ですので、
男性の方に聞きましょう。**]
[そっか、偉いね〜、と楽しそうな声が響く
青年の方は朝が遅めもあるが
同席を遠慮したというのは余談である。]
……そっか、エルメスお姉ちゃんは
味気ないって思うのか。人って色々だなぁ
ぼくにとって体っていらなかったしなぁ
だからいやがる人がいたのかなぁ。うーん、わかんないや
っと? あれこれやっぱ聞きたかったんだね
いいよ。順番にこたえるね。
えーとまずはあのお兄さんの名前だけど……
……あれ?
待ってね、えーとんーと
ごめんね、よく考えたら
聞いた事なかった
ええとね、他の人も聞いた事あったけどね
名乗らなかったし管理人さんと呼ばせてたり
お兄さんだったりはあったけど……
本人に聞いて♡
……ごめん
ええと、次ね。どのくらいここにかぁ。
んー、体がこうなってから時間感覚がふわふわで
具体的にはわからないんだよね。
ただずーっと長いのは確かかな。
エルメスお姉ちゃんよりはずっとずっと生きてると思うよ。
あ、でもお姉ちゃんはお姉ちゃんね。
あ、国の事はね、えーと
『ここで生きるのは国の許可はとってある』
『だから心配することはないよ』
『役割は果たしているから』だって!
これでいいかな? 他にあるならどうぞ?
[どうやらネリリの知る情報には限りがあるようだ
国の保護についてはまるで諳んじるような
そんな響きがある。]**
[赤髪の彼の名前を、
ネリリさんさえも聞いたことがない?
家名であるならまだしも、
ファーストネームすら知らないとは。]
成程、分かりました。
ご本人に直接伺ってみます。
[にこりと笑って流しましたが、
恐らく本人に聞いても答えてはくれないでしょう。
名前を隠す目的は、正体を隠すことに他ならない。
つまり彼は、
相当名の知れている存在なのではないでしょうか。
まぁ、それだけでは
全く当たりのつけようもありませんけれど。]
[時間経過に関しては、
具体的な答えが返ってくることを
期待していた訳ではないので、
頷きながら聞いていました。
国に対してはきちんとしているようですが、
やっているのはあの男性のようですね。
役割を果たしているのも彼だとしたら、
魔法使いであるのはあの男性の方なのではないでしょうか。
名を名乗れぬほどの、大物であることが予想されます。
(個人的には、偽名を使った方が良いのでは?
と思いますが)
ネリリさんは勿論、
あの男性の見た目年齢もあてにはなりません。]
今ここには、どのくらい人がいるのでしょう?
意識の寿命と言っていましたが、
それはどのくらいなのですか?
ネリリさんは、どのように魔法を習得したのですか?
[しかし質問するのも難しい状況ですね。
男性に聞けば、はぐらかされるでしょうし、
かと言ってネリリさんに聞いても、
具体的に把握していないので、
要領を得ない回答になってしまう……。
色々聞きましたが、
ネリリさんへの質問はこんな所でしょうか。**]
うん、そうして。
ごめんね〜役にたてなくてっ
ううう〜……
どれくらいの人、か……
ん〜〜どう答えれば正解なのかな……
今いる“人”は一人……
いや、お姉ちゃん入れて二人が正確かな。
ぼくは人とは外れた存在なのはわかってるし
[自身の存在が普通でないのは
ネリリはなんでもないように受け止めている
故にけろりと告げた。]
ぼくと同じ存在だと……
もう寿命間近の人しかいないからなぁ
いるけどいないのかなぁ
うう〜〜うまく言えないごめんっ
意識の寿命はまあ大体人間の寿命と同じ位かな
それくらいが精神の寿命ってあの人も言ってた。
ぼくが魔法を習得したの?
……あ〜
これは内緒だっけ?
まぁいざとなったらあの人が対処するからいっかぁ
───── ……正確に言うと気づいたら
館に来てからだったのは確かだよ。
ぼくじゃ全然答えになってない事ばっかだね
ごめん〜〜〜
答えてくれるかはわからないけど
あの人のがいっぱい知ってるよ。
今はまた庭にいるみたい
行ってみる?
あ、そうだ。
お姉ちゃんの? じゃないのかな?
お名前違いのハンカチ あの人がもってるよ
[庭に行くならそれを引き留めはしない。
まだ話したい事があるなら
ネリリは喜んで会話を続行するであろう。]**
[どこか恐縮している様子のネリリさんに首を振り。]
いいえ。
"分からない"というのも、重要な情報ですわ。
[実際話を聞けばどんどん、彼の輪郭が露わになる。
結局の所、彼が具体的に何者であるのか、
それ自体が重要なのではありません。
ネリリさんの行いを、咎めはすれど止めはしない。
彼ほどの人なら、きっと本気になれば止められる筈です。]
[証拠がある訳ではありませんが、
想像を広げれば広げるほど酷く
歪
に思えて、
何とも胸が痛くなるものですね。
わたくしの表情にも、影が差しました。]
[ハンカチのことを言われれば、
慌てて洋服のポケットを探りますが、
やはりわたくしが落としてしまったよう。]
最後に聞かせてください。
ネリリさんは、今幸せですか?
[それだけ聞いて、「有難う御座いました」と言えば、
赤髪の彼に話を聞こうと庭へ行きました。]
[再び庭へ出ると、
すぐに彼を見つけることが出来たでしょうか。
花の香りを楽しみながら、澄んだ青い空を見上げます。]
お早う御座います。
わたくしの落とし物を、
預かって下さっていると聞きました。
[まずは落とし物を回収しましょうか。
お話しはそれから……。**]
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