懐から月桂樹の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。
つける勇気はなかったんだ。
だけど、
お守り代わりにはなっていたよ。
未来が、
それなりに
惜しくなるほどに。
「狡をしている気分だな……」
それだけではないとしても、破滅願望を理由にここにいる。
誰かを傷つけるように選択した人間が、
何かを掴むことなど、許されるとは思わない。
……だけど。
「…俺を甘やかす人間に文句を言って欲しいね」
冗談めかすように笑いながら、独り言ちる。
その言葉を聞く者はいないから、本当にただの独り言。
手の内でブローチを弄んで、考えるように手を止めた後、
テーブル上に置かれた小箱の中にそっと仕舞う。
お守り代わりではあったが、この先に持っていくには壊れそうだ。
家主の留守を任せるように、それは置いていくとしよう。
代わりに、彼女から最初に貰ったヘアピンで前髪を飾り、
さっさと床にでも
寝転がってしまいたい気分を抑えて立ち上がる。