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81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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「……そっか。結構人いるもんね。
オレは争いは、やだなあ。早く助けがきてほしい」
ガタガタと揺れる窓の外、吹き荒れる風景の
ずっと遠くを見ている。灯りは見えない。
「我慢するのは慣れてるよ。
ちょっとお腹減ったくらいならまだヘーキだし」
決して家は裕福ではなかったから。
けれど頑張ったらどうにかなるものなのかと逡巡して
「じゃあオレは、いい子にしてるよ。
手伝えることがあるなら、手伝います」
脅かされなければ、苦しめられなければ
メイジはまだ大丈夫だ。
「……では、…………」
言葉は続かない。
悩んでいた。子供を加担させるべきか否か。
この先、生存者を出していくには、避けられないのだから。
「…………メイジくん、包丁を扱ったことはありますか?
実は流されてきた猿を数匹見つけたんです。
ある程度は僕が解体しますから、
細かく切る作業をお願いしたいんです」
この村で育ったなら知っているはずだ。
……
この近辺の山に、猿はいない。
けれど、もしかしたら。
遠くから流されてくることだって、あるかもしれない。
![](./img/kamishino/roku_03.png) | >>33 ニエカワ 「そうかい、しんどくなったらすぐ言いな」 早めに切り上げて部屋に戻した方が良いだろうか。 ……本人は慣れっこの様だが。そう考えつつ口を動かす。 「覚えるのは苦手じゃねェんだ。 家と病院……あァ、その熱でか。風邪とはちげェのかい」 (40) 2021/06/28(Mon) 17:04:13 |
![](./img/kamishino/roku.png) | >>34 メイジ 「そうかい」と姿勢を崩さぬまま柔やかに相槌を打って。 唐突に顔を伏せて小さく呻いた。 それから、殊更に声を顰めて話の続き。▼ (41) 2021/06/28(Mon) 17:06:47 |
![](./img/kamishino/roku_03.png) | >>37 セナハラ 「服まで貸してくれンのかい。 いよいよ張り切って働かねェとだなァ」 手伝う内容を聞いて、雨の溜まった容器を思い浮かべる。 空き部屋を探した際に幾つか見たような気もする。 「はいよ、雨漏りね。 捨てンのは適当に外でも――と、」 ふと何か気づいた様に言葉を止め、くいと指先を動かす。 『耳を貸せ』の動き。 (42) 2021/06/28(Mon) 17:30:57 |
| (a16) 2021/06/28(Mon) 17:59:40 |
| (a17) 2021/06/28(Mon) 17:59:55 |
「猿?」
メイジは、小さな頃はよく山に遊びに行って
傷を作って帰ってきたものだ。
当然猿なんて一匹も見たことはない。
……ないが、特に深く考えることはせず、笑う。
「切るくらいならできるよ。まかせてー
オレ鉛筆削るのとか得意だし。わりと器用」
それが猿以外である可能性には思い至らない。
「セナさんも解体できるなんて、すごいね。
山で暮らしてたこととかあるの?」
| (a18) 2021/06/28(Mon) 20:17:15 |
悟られなかったことが幸いなのか、災いなのか。
今の男には、理解できなかった。
「山というよりは、密林のような場所で育ちました。
外地の生まれなんです、僕。
戦況が悪化して、皆何でも食べてましたから……」
虫から木の根まで、
食べられそうな物は全て喰らった。
それは墓の下まで持っていく筈の秘密で、
二度と侵さないと決めた領域だ。
「鶏とかいれば、絞め方を教えられたんですけどね。
猿はどうしても、見た目が人間に近いですし」
![](./img/kamishino/roku.png) | >>45 ニエカワ 「ンならもうちっとこうしてても問題ねェか」 納得した様にそう言って、ニカリと笑い返す。 「ン、おれかい。 おれァ風の吹くまま気の向くまま。一人旅の途中だよ」 (50) 2021/06/29(Tue) 9:46:33 |
メイジは驚いたようにぱちぱちと瞬きをした。
「……そうなんだ。なんでも食べなきゃ
いけないくらい苦しかったの?」
戦争って大変だね。口ではそう言うが、深くまでは知らない。
なんでも。虫とか、草とか、その辺りまでは想像できる。
メイジはそこまで飢えに苦しんだ経験はないから。
「人間に近いと何かまずいことでもあるかな。
オレそれくらい平気だよ、セナさん。だって猿なんでしょ」
未成年だから、気を使ってくれているのだろうか。
でも、人間に近いだけで、人間ではない。
……ふと、真新しい自分の腕の傷を見つめた。
![](./img/kamishino/roku_03.png) | >>51 ニエカワ 「ン? まァ、ある。 坊チャン、都会に興味があンのかい」 あるもなにも、男は東京に住んでいた。 その事実は伏せた儘、 「知ってることでよけりゃァ話してやるが」と言い添える。 (57) 2021/06/29(Tue) 15:07:29 |
「動物の解体って、大丈夫だと思ってても案外辛くなるんです。
医学校の実習で人を開く授業があったんですけど、
必ず何人か吐く人がいます」
嘘ではないが、本音でもない。
どこまで加担させるべきか、未だ悩んでいた。
「だから先ずは、バラバラにした段階から。
大丈夫であれば、一緒に始めから解体しましょうか」
→
「……これはね。
メイジくんが話したくなかったら、話さなくて良いんですけど」
そんな様子を見つめ、口を開く。
手を汚させるなら、せめて何か報われてほしい。
贖罪にも似た心地だった。
「転んだりぶつけたりすると、怪我をしますよね。
そういった傷は、肘とか膝といった関節にできます。
……言い返せば、」
→
「それら以外の場所にある怪我は、大抵意図的なものです」
![](./img/kamishino/roku.png) | >>セナハラ 「そンじゃ、これにて。 おれは二階に行ってこようかね」 潜めていた声を戻して。 ヒラリと手を振って件の雨漏りを確認しに向かった。 (58) 2021/06/29(Tue) 18:17:38 |
今度は、瞬きも忘れて数拍、動きが止まった。
「……あはは……」
気の抜けた笑いが出た。そりゃあ、バレるよね。
さすがお医者さん目指してる人だ、と零す。
「……たぶん、セナさんが考えてるとおりで
合ってると思うけど……」
視線を逸らし、あなたの首元。
手持無沙汰にくるくると自分のくせ毛をいじりながら
躊躇いがちに、ぽつり、ぽつりと話し始める。
ここまで言われてるなら、もういっか、と思った。
「………オレさ、」
「小さい頃から親父に暴力振るわれてたんだ」
「……情けないから、自分でつけた傷ってことにして……
ごまかしてたんだけど、むずかしいね」→
「親父、ずっと家に閉じこもってて、酒ばっか飲んでて
なんかあるとすぐ怒鳴るし
何考えてるのかわかんない人だったなー……」
この小さな村だ、近所によくない噂は伝わっていた。
戦争から帰って来てからずっとそうだった、と。
「母さんはね、昔は優しい人だったって言ってたけど
オレにはそうは思えなかったな。
そんな母さんは勝手にしんじゃったしさ
オレにはなにも理解できない親父だったよ」
そして親父のことを過去の人間のように語った。
「セナさんはオレのこと心配してくれてるのかな。
それとも情けない男だと思ってるかな。
でも、きっと、オレのこと軽蔑しちゃうよ。
オレ、そんないい子じゃないからね」
そう、これは腕の傷と直接関係ある話ではなかった
メイジは、まだ隠していることがある。
言葉にずっと耳を傾けていた。
荒んだ生活を送る帰還兵は珍しくない。
戦場が人の精神を削り、形を変えてしまうことをこの男は知っている。
「心配してるんですよ、勿論。
情けないなんて、これっぽっちも思いません」
片膝を着き、貴方を見上げる。
もう父親がこの世にいないような話し方をすることに気付きつつ、口には出さなかった。
「……メイジくんの家は、戦場だったんですね」
「いい子のままじゃ、戦場は生き残れません。
もし何か悪い事をしたとしても、それは生きる為にした事です」
まるで説得するような抑揚だった。
尤も、それは自分に言い聞かせていたのかもしれない。
「そう思わなければ、きっときみのお父さんのようになってしまう」
![](./img/kamishino/roku.png) | >>59 ニエカワ 「あァ、“超特急”だっけか。 秋にはうごくんだったかねェ」 思い返すようにちらと上を見てからそう口にして。 視線を戻せば、少年からの期待の眼差し。 それに僅かにたじろぐ。 「アー、この辺になさそうなモンっつったら、 それこそこれだな、き――…… ――いンや、東京五輪だったか。めでてェよなァ」 言いかけた何かを呑んで、話を続けた。 (61) 2021/06/29(Tue) 21:40:50 |
![](./img/kamishino/roku_03.png) | 受付カウンターの上、工具をガチャリと置いて。 これを回収に来る筈の駐在警官を待っている。 (63) 2021/06/29(Tue) 22:18:01 |
「…………そう……」
見開かれたままの片目が、色のわからない細い目を見下ろす。
説得するような声色からは、あなたの今までの経験を
物語っているように思えた。
「そっか、生きる為、か」
生きる為なら何をしてもいいんだろうか。
脳裏を過った言葉は声にはならなかった。
「本当の戦場のことなんて表面上でしか知らないけど……
親父みたいにだけはなりたくないって思ってるんだ」
──父親のようには絶対なりたくない。
それは何かの呪いのように、ずっと己の影につき纏っている。
「……心配してくれてありがとう、セナさん。
こんな話、はじめて人にしちゃったな〜……あはは……」
表情は相変わらず薄笑いを浮かべている。
まだすこし濡れたままの髪から、水滴が落ちた。
| (a21) 2021/06/29(Tue) 23:58:59 |
| (a22) 2021/06/30(Wed) 3:07:31 |
| (a23) 2021/06/30(Wed) 3:11:04 |
| (a24) 2021/06/30(Wed) 3:11:30 |
| ロクは、お前そういうことするンだ…という目でタマオを見た。噛んだのは気にすンな。「『腰紐』」 (a25) 2021/06/30(Wed) 3:21:14 |
薄く笑う貴方の頭を撫でようとして、やめた。
そんな資格、自分には微塵も無い。
「……そう思っているなら、大丈夫ですよ。
では、この事は内密にしますね」
立ち上がると、深く息を吐いた。
覚悟を決めるかのように。
「大まかに解体して来ます。
用意ができたら呼びに行きますけど、今日使う部屋は決めてますか?」
「……うん」
じっとあなたの一挙一動を見ていた。
「部屋は、決めてないな。
使っていい部屋知ってる? そこにいるよ」
「使って良い部屋は幾つかあるんですが、
一階の空き部屋だと助かります。宿直室が近いですから」
手術室へ向かいやすい、とは言わずに一階を勧めた。
貴方が手伝っていることを、極力知られたくないからだ。
「あと、できればこの手伝いの件は内密にお願いします。
食べ物があるとわかると、その……、
揉め事が起こるかもしれませんから」
そう言い残せば、手術室へ歩き出す。
![](./img/kamishino/roku_03.png) | >>65 ニエカワ 「ン? そうだなァ、見物にいくのも悪かねェかもなァ」 悪くないと言いつつ、余り行く気の無さそうな声。 「お前サン、うちの外にも出れねェんだったか? だとすりゃアそいつは退屈だよなァ」 (67) 2021/06/30(Wed) 15:14:03 |
あなたのお願いに素直に頷けば、
「ねえ、セナさん」
その背を一度呼び止めた。
あなたがどう反応しようとも言葉を続ける。
「今度、セナさんの話も聞かせてね」
それはなんでもない身の上話かもしれないし
親父に教えてもらえなかった戦時中の話かもしれない
そしてまた後でね。と笑った。
やがてメイジも言われた通り、一階の部屋へと向かう。
……妙な胸騒ぎと違和感を覚えながら。
ぴたり、一瞬足を止める。
「……ええ、勿論」
小さく呟き、再び歩き出す。
手術室へ入れば、手術台を見て眉を顰めた。
メスを用意する。
容器を運ぶ。
思い出す。
「父さん」
「母さん」
「どうか、許してください」
![](./img/kamishino/roku.png) | >>68 ニエカワ 「ハハ、ンなら行くかァ」 やっぱりそんなに行く気は無さそうな声でそう言って。 不満そうな姿に、無責任に同意する。 「カンキンかァ。お前サンからしたらちがいねェわな。 ちっとの散歩くれェよさそうなモンだがねェ。 ……と、もうこンな時間かい」 不意に腕を上げ、何も付けていない手首をチラリと見る。 時計を確認する様な仕草。話を切り上げる為の道化だ。 「悪いね坊チャン、今日はこれにて。また話そうや」 (69) 2021/06/30(Wed) 17:10:21 |
![](./img/kamishino/roku.png) | >>73 ニエカワ 「ハハ、ガキが一丁前に気ィつかわねェで結構」 軽く下げられた頭をクシャリと撫でる。 「はいよ、次は腰すえて話してやらァ。 ――あァそうだ、集まってカードあそびなンかも楽しかろ。 どうせ明日も明後日もやるこたねェンだ、 ちっとばかし愉快に過ごそうや」 壁から背を離してそう言い残し、少年の左隣は空になった。 (74) 2021/06/30(Wed) 20:10:15 |
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