242 『慰存』
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[不燃ごみの日、七海のゴミの中にあの玩具があった。こちらからの言いつけを守っているという意思表示なのか、隠していた盗聴器で聴いても、カメラを覗いても約束を破る様子は見受けられない。
健気でいい子だと思う。
いい子が過ぎてつい壊してしまいそうな程に。]
[約束の日まであと半分、ちょうど折り返した頃。
葉山はもう一度だけ彼女の部屋へと忍び込んだ。
時刻は日付も変わった深夜、目的はもう分かりきっているはず。見覚えのある首枷と手枷、目隠しはその日の夜のことを雄弁に語り尽くしているだろう。
そう、これはご褒美という建前に隠れた、お仕置きだ。
今も他人のふりをして遠回しに干渉してくる行為はまだこちらに堕ちていないと示しているかのようだったから。
ストーカーとしての激情など今となってはまだ足りない。ストーカーは他人以上には決してなれないのだから。]
[あの日と比べたら乱暴に彼女を責め立て嬲る姿はあの時リクエストされた小説を思い出させるかのようで、しかし小説とは異なり、妊娠させるための卑劣なシリンジはなく、七海の身体を絶頂には運んでくれない。
乳房の花を強く摘み、一番強い振動に設定した玩具で敏感な場所を責め立てていく。
強引なのも、道具で弄ぶのも変わらない。
しかし永遠とも思しい責め苦も、常に絶頂の一歩手前で止め、中への挿入はおろか、指でさえ半端なままに止めてしまう。
理不尽な、まるで八つ当たりのような責め苦の夜。
葉山は初めて彼女に自らの下劣な感情を見せたのだった。]
[しかし七海に向けたのもそれが最後のこと。
何事も無かったかのように監視し、監視される歪な関係は続く。
そしてその節目と言わんばかりに、その日はやってきた。]**
***
[約束の日、集合場所として家の前を提示したのだが七海はどうだったか。互いに示し合わせたその場所にやってくる葉山はいつもとは異なり外行の服を纏っていた。
当然だ、今日ほど楽しみな日なんてないのだから。
彼女に会えれば葉山は微笑みその名前を呼ぶことだろう。]
[仲が良かったと思っていた人から
別に自分はそう思ってなかったと掌を返される。
自分から想いを伝えるなんて
ただ傷つくだけで、いい事なんてなんにもない。]
[もし、相手の想いを確信する術でもあったなら
この行為をやめることも出来たかもしれませんが。]
[好物を人知れず置いていくのは
要らないって言われるのが怖いから。
黙って置いていけば
もし受け取ってもらえなくても言い訳が出来るから。
ストーカーが私だと知っていて
通報も報復もしないのなら受け入れてもらえてるはず
そう、思いたいけれど。
私なんかが、誰かに好かれるわけがない。
幼い頃に刻まれてしまった呪いのような認識は
自分で崩すことができないのです。]
[約束の日まであと半分になった頃。
自慰を禁止された私は、欲を誤魔化すように
早めに寝ることが増えていましたから
侵入されてすぐは気づくことが出来ず、
拘束されてからようやくあなたの存在に気づいて。]
[強引に拘束されて、責め立てられるこの状況は
私がリクエストしたあの短編みたいで、
でも、あの小説と決定的に違うのは、
決して絶頂が訪れない事。
しばらくぶりに感じる玩具の振動は
一番強い設定なことも相まって
刺激が強すぎて、すぐに波に呑まれそうになるのに
一歩手前で止められてしまってずっともどかしいまま。]
ごめんなさい、ゆるして……
いや、もうイけないのいや…………
[涙で目隠しを濡らしながら
懇願しても、永遠のような責め苦は止むことなく。
赦しを乞う気力さえなくなって
掠れた喘ぎ声と、水音だけが響いていました。]
[解放された後も、あなたの真意を理解しないまま
ストーカー行為は続けていました。
そうして、約束の日が来るのです。]**
***
[ようやく食事に行く日。
朝にあった講義なんて上の空でした。
家に戻ってきた私は、ハンガーにかけてあった
可愛らしい服を手に取るのです。
ピンクのふんわりしたブラウスには
胸元に黒いリボンがついているタイプのもので
黒いスカートを合わせれば、サイン会のあの日と
服の雰囲気は似ていたかもしれません。
上にカーディガンを羽織ると
待ち合わせ場所に向かうのです。
……と言っても家の前なんですけど。]
お待たせしました……。
[柔らかな微笑みと、いつもと違う服に
少し反応が遅れてしまって。
……名前で呼ばれた私は
どう返していいか一瞬分からなくなってしまうのです。]
[伺うように見上げながら聞いたのですが、
不安と怯えが滲んで、小さな声になってしまいました。
いいと言われたなら安心したように微笑んで
もう一度名前を呼んでから。]
えっと……行きましょうか。
[一瞬手をのばしかけて。
自分から手を繋ぐなんて出来なくて
すぐに引っ込めてしまいました。]*
[待ち合わせ場所に先に着いたのは葉山の方だった。しかしそこまで長い時間と待たされたという話でもなく、気にすることでもない。
とはいえ八つ当たりをされてしまったことが堪えたのか、それともこちらが一歩踏み込んだから同じくらい踏み込んできただけのことか、七海が口にした言葉が答えに近しい。]
いいよ、好きに呼んで。
[引っ込められた手を取り、目的の場所へと歩き始める。
本当のメインイベントはもっと先だと知りながら、教会の祭壇を登り聖なる祝杯をあげるかのように時間を焦らしていく。
受け入れられるわけが無いと諦めに捨てた心と、耐え忍んだ身体が眠りにつかないように、店に到着する頃、葉山は小さく呟いた。]
[何を怯える必要があるというのか、あれほどの狂気を身に宿しながらこういう所では人間的、それが七海という人物のイメージ。
嫌われたくない。簡単に言えばそういうことで、それでも嫌われるかもしれない狂気は隠さない。この矛盾が葉山にとっては実に可愛らしい。
感情の赴くままに前へと進みたいという欲望と、抑圧され生まれた理性が壊れる瞬間は、人が一番美しく舞うのだ。]
***
[それから店を離れると、夜風に当たりながら自宅へと向かう。
流石に代金は自分が負担してあげたのだが、それはそれとして少し飲みすぎたような気もする。気分がいつも以上に昂揚しているのもそのせいだ。
まだ泥酔する程じゃないからしなんとかなりそうだが、七海はどうだっただろうか。
帰りながらふと思い出したように予定表に目を配らせる。]
[七海は怒るだろうか。軽蔑するだろうか。
彼女を堕とすまでの全てを、小説に書き起こすだなんて。
彼女がしてきた事の全てと、自分がしてきたことの全てを記し、この狂気を完成させる。
その大きな役は彼女にしか頼めない。彼女の狂気は常識と羞恥を捨て去れば自分など優に凌ぐ程のものだという確信があった。
それほどまでに彼女の独善的で哀しい狂気は葉山の心を射止めたのだから。]
[新刊となる小説のタイトルも考えた。
構想も、登場人物の名前も考えてある。
後は主人公になる彼女自信に、演じてもらって完成だ。]*
[どうせ好かれないから何をしても一緒。
どうせ好かれないのに好かれたい。
酷く矛盾していて受け入れがたいはずの行動を
あなたがどう思っているかなんて
分かるはずもありません。
普通なら拒絶されるはずの行為が拒絶されていない、
それはあなたにとっては答えかもしれなくても
私は確信を持てないままで。]
[小さく呟いた声は届いたでしょうか。
引っ込めてしまった手を自然に取られて
頬を赤くしつつも振り払うことはなく、
握り返して、ついていくのです。
もっといいことをしてあげる、
そんな甘い誘惑の方が今日の本題なのだと
分かってはいたものの
食事だって楽しみにしていた私は
逃げ道を塞ぐようなあなたの言葉に
目を泳がせてしまって。]
***
[お店を離れる頃にはすっかり酔っぱらっていました。
あんまり飲んでは迷惑をかけてしまうと
分かっていても、隣で飲んでいる人がいるのに
全然口を付けないのも嫌で、
ご飯が美味しくてついつい飲んでしまって。
考えがふわふわと纏まらないまま
ただただ、隣に好きな人がいて幸せだな、なんて
機嫌よくにこにこ笑いかけて
自分から手を繋いで指を絡めてみせました。]
おいしかった……ごちそうさまでした!
また、行きたいな……。
[今の私を見れば本当にただの大学生でしょう。
きっと誰も気づけません。
私がストーカーをしているだなんて。]
新刊、早く読みたいな……
[思考がまとまらないせいで
話がすぐ別方向へと飛んでしまいます。
普段ならこんな喋り方しないのに。
新刊がどんな内容なのか知りもしない私は
まさか私がしてきたことが
小説に書き起こされるなんて考えもしていません。
仮に知っても、怒りも軽蔑も抱かない。
ただ、小説の題材になるほどのことを
自分がしていたのかという疑問と
何故数ある題材の中からそれを選んだのか、と
混乱はしてしまうでしょうけれど。]
[―――――好きな作家さんに主人公を頼まれるなんて
光栄なことだとは思いませんか?
怒るわけ、ないでしょう?]
[あなたと話していれば、
家まで戻ってくるのはあっという間でした。
火照った頬に当たる夜風の心地よさに
ほんの少しだけ酔いがさめたような気もします。]
裕太郎さん………
見てたんでしょう?
私、ずっといい子にしてましたよ?
もう、お預けは嫌なんです……。
―――――あなたのことが欲しい。
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