人狼物語 三日月国


77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】

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視点:


【人】 鬼 紅鉄坊



[ 腕の中の若者の母親は──恐れを知らず強情な娘だった。
 望まぬ許嫁と結ばれる未来を憂い、
 その輿入れにより益を与える家のことも嫌悪していた。

 鬼に懐く程、村に居場所を見つけられなかったのだろう。
 いつしか己に会いに来ることも山に踏み入る目的となってしまい
 何度もこうやって抱え、探しに来た家の者に引き渡したものだ。 ]
(37) 2021/06/23(Wed) 1:49:14

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 抱けぬ筈だったあの娘の子供の重みを感じていると、
 やはり鬼などの元に置いてはおけないと強く感じた。

 ──母親が叶えられなかった夢を、継がせてやろう。 ]
(38) 2021/06/23(Wed) 1:50:04

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 暴れも嫌がりもせず、大人しく抱えられているのは>>1:139
 この行いが正しいからこそであると、鬼は思っていた。
 繰り返す言葉が何をその胸に与えているのか、気づくことはなく。

 知らぬ過去があれば、その想起は読めまい
 過去を見ていれば、側にいる者の心は分かるまい。

 互いに互いを分かっていたつもりになっていた鬼と鬼子、
 今この時はそこに通い合うものは、失われている。 ]
(39) 2021/06/23(Wed) 1:50:18

【人】 鬼 紅鉄坊



さあ……着いたぞ
ほら、此処から先は山の外だ。初めて見たのではないか?

[ どれ程歩いたのか、廃寺のある辺りからは反対側。
 優しく下ろしてやり、口を開く。
 途切れた木々の並びの先に見える開けた世界は、光に溢れていた。 ]

私も実際に見たわけではないのだが、
真っ直ぐに歩いて行けば、半日程で村に着くらしい
山と比べてずっと歩きやすい、思うよりはきっと辛くないさ

そこはお前のことを知らない者達の住む場所だ
誰にも虐げられないところから、新しく始められる

本当はもっと、時間を掛けるつもりだったのだが
……否、きっとこれでいいのだろうな。こうなる定めだったのだ

[ 千太郎と暮らし始めてから鬼は少しは饒舌になった。
 それでもここまで口を挟ませずに一方的に語ることは無かった、
 無論、意図的なものだ。 ]
(40) 2021/06/23(Wed) 1:50:34

【人】 鬼 紅鉄坊



心配するな。千太郎は賢いし、怠け者ではない
髪は戻してやれなかったが……もう身体もあの頃とは違う
少しばかり口に気をつければ、働き先は見つけられるさ

お前の母親は、村から出て自由になることが夢だった
彼女の……さとの叶えられなかった夢を、果たしてくれ

[ 寺の外に千太郎を置き、勝手に包んで来た荷
 持ち込んだ品と共にあの書物も入れておいた。
 例え嫌がられても強引にでもしっかり抱えさせ、両肩に触れる。

 常のように加減した力は容易に緩み簡単に離れ、鬼は背を向ける。 ]
(41) 2021/06/23(Wed) 1:50:50

【人】 鬼 紅鉄坊




既にあの寺はお前の家ではない
再び山に入れば、私の同胞に殺されると思え

[ 低い声を更に低くし、はっきり聞こえるよう脅しを掛ける。
 望んでいるのは役目を与えた者に求められること
 ならば、ただ死にたいわけではない筈だ。 ]

お前との日々は、とても幸せなものだった
人間たちと共に暮らし、同じ気持ちを感じてほしい

[ 何を見ても何が聞こえても振り返ることなく、
 本来の歩幅と歩調で慣れた山の中に消えて行った。 ]*
(42) 2021/06/23(Wed) 1:51:10

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 仕方なかった。生きる世界が違った。
 最初から理解し目的を定めていた筈なのに、
 脳裏に何度も言い訳のような──自分を慰めるような言葉が浮かぶ。

 これ以上共に在れば、いつか喰い殺していたかもしれない。
 この選択が間違っているわけがない。

 今日からまた独りになる廃寺、不要になる品をどうするか考えねば
 しかし何故か帰る気にはなれなくて、
 大木を背に座り込み、色を変えていく空を見上げていた。 ]
(53) 2021/06/23(Wed) 1:55:08

【人】 鬼 紅鉄坊


[ さとによく似た形の目が、
 呆然とこちらを見上げていたことを思い出す。>>44

 そこまで喰われたかったのか、
 生きたくはないのかと思うと心苦しい。

 共に過ごした時間、幸せだったのは自分だけだったのだろう。
 ならば新しい村で、今度こそ幸せを見つけてくれたらいい。 ]
(54) 2021/06/23(Wed) 1:55:52

【人】 鬼 紅鉄坊



なんだ……?

[ 風もないのに森がざわめく。
 同胞たちの気配の幾つかが、同じ場所に集まっている。

 昼間の熱が半端に冷めたような、生暖かい空気の中
 鬼は来た道を戻るように、気配の元を辿っていく。

 本当は暫く独りになりたかったのだが、
 どうしてかとても気になってしまった。 ]
(55) 2021/06/23(Wed) 1:56:11

【人】 鬼 紅鉄坊

[ どこぞの娘が一人で山に入り込み、
 奥まで行ってしまった時も確か────

 はっと目を見開いた鬼は歩みを早め、やがて走り出した。 ]
(56) 2021/06/23(Wed) 1:56:22

【人】 鬼 紅鉄坊




「捨テタ!捨テタ!紅鉄坊ガ花嫁ヲ捨テタ!」


   「喰ッテモイインダナ!」

            「男ハ美味クナイケドナ」


  「人間ハ中々喰エナイ、ワシハ男ノ肉デモイイゾォ」


[ 興奮した様子の妖怪らは──より異形を持った鬼たちは
 喚くように叫ぶように同胞と言葉を交わし合う。

 一番先に会った一体が、転んだ獲物の上に伸し掛かるように乗り
 手に比べ長細い指の先の鋭い爪を、その首に向けて振り上げ── ]
(57) 2021/06/23(Wed) 1:56:43

【人】 鬼 紅鉄坊

やめろ!

[ 近付いてきた草を掻き分ける音の正体が、鬼がそれを掴み上げ近くの木に叩きつけたことで阻まれた。]

違う、違う!私は千太郎を捨ててなどいない!
帰れ、お前たちにこの子を喰らう権利はない!
──聞こえないのか、散れ!

私はお前たちを叩き潰す為にあの方に口添えしてもよいのだぞ!

[ 口々に上がる不満の声。繰り返される「捨てた」
 同胞と千太郎の間に立ち塞がりながら、声を荒げ怒り言い争う。

 両者にある隔たり、どちらも互いの言葉を真実と認識している。
 その中で同胞が引くことになったのは、
 実質的な山の主を引き合いに出したが為に。 ]
(58) 2021/06/23(Wed) 1:57:02

【人】 鬼 紅鉄坊


何故だ、何故帰ってきてしまったのだ……
私はあれ程言ったではないか

[ 漸く静かになった闇の中。

 膝をつき抱き起こしながら、鬼は嘆く声を上げる。
 夜目の効く紅色が見下ろした顔は、どんな表情をしていたか。 ]**
(59) 2021/06/23(Wed) 1:57:17

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 予想外の一言が鬼の思考を停止させ、>>91
 昼間の意趣返しの如く口を挟めなくなる。

 数多の言葉が山の中、大きな身体に降り注ぐ。
 いつか誰かを刺した罵りではない、
 小さな人間の中に溜め込まれ吐き出された想い。
 鬼が知らず置き去りにしてしまった遣らずの雨。>>92
 身を濡らすことはないまま深くに染み渡り、頭を冷ますようだった。

 望みを叶えない鬼との生活は、嫌ではなかったというのか。
 相手のことを考えていたつもりで、自分勝手になっていたのか。
 真にこの若者から自由を奪ったのは、己だというのか。

 軽すぎる拳が、何より重い。]
(94) 2021/06/24(Thu) 2:00:18

【人】 鬼 紅鉄坊



そうか、そうか、……

[ 腕に収めていなければ届かない、囁きめいた大きさで
 見目に不似合いな幼い響きが落とされた。
 頷きあやすように背を撫で、叩き付けられた全てを噛み締める。 ]
(95) 2021/06/24(Thu) 2:00:58

【人】 鬼 紅鉄坊


すまなかった……千
私たちは互いに、言葉が足りていなかったな

[ 恐ろしい思いをさせてしまった理由も、呼び名も
 きっとこれが正しいのだと、すんなり受け止めることが出来た。

 両親に愛され真っ直ぐに育った可能性の中の千太郎を想い
 親無し子で歪んだ男を哀れむのではなく、あるがままを視る。
 此処にいるのは千であることを受け止める。

 押し潰さず、添えるだけでもない力加減で抱き締める。
 誘われるまま犯しそうになった過ちと近い距離
 今は本能はざわめかず、ただただ胸に満ちるものがあるばかり。

 他者には捨てたようにしか見えない行為をしながら、
 何故あんなにも憂い足を留めてしまったのか、今なら分かる。 ]
(96) 2021/06/24(Thu) 2:01:07

【人】 鬼 紅鉄坊



お前が本当に望んでいるのは、喰われることでは無いな

[ 当人に自覚があるのかは怪しいが、
 思えば最初から、言葉の節々に表れていた。

 人の一生はとても短い。
 何も求められず望まれず、ただただ物のように闇に置かれる十年は
 役目を担う鬼の百数十年より、長く感じるものなのかもしれない。 ]

なら、与えることが出来るのかもしれない
帰ってきてくれ、私の花嫁よ

……あの娘やお前の為ではなく、私が望んでそう願いたい

[ 理解していない様子でも教えることはない。
 身を離し、しっかりと目を見つめながら代わりに口にするのは、

 自分の気持ちで自分の言葉で紡ぐ、千を求める想い。 ]
(97) 2021/06/24(Thu) 2:01:55

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 散らばる荷を集め、拒まれなければまた抱き上げて
 独りでは見つけられなかった帰り路を、共にしようか。

 要らなくなった物は何も無い。
 明日も廃寺には変わらない朝が来るだろう。 ]*
(98) 2021/06/24(Thu) 2:02:11

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 二度と離さまいと手を引いて連れ帰った花嫁の細やかな願い>>102
 叶えない理由は、ありはしない。

 横たわる身体の傍ら、壁に背を預け胡座をかいた。
 眠れぬようなら話でも聞かせただろう。

 さととの思い出、
 自分がどのようにして千を知ったのか、
 何故置き去る程に喰らいたくないのか、
 あの時去ってから何を思っていたのか。

 聞きたくない話もあったのかもしれない。
 しかし、鬼には今の千なら受け止めてくれるような気がした。 ]
(124) 2021/06/25(Fri) 3:31:39

【人】 鬼 紅鉄坊



[ やがて黒い眼が閉ざされても、その場に在り続けた。

 いつかは死体と見紛う寝姿に心穏やかではなかったが、
 見つめる先に彼が怪我一つない身体で眠っていることが、
 行灯の光が色の無い髪に仮初の暖かさを宿す光景が
 不思議と気持ちを落ち着かせてくれる。

 その内訪れた目の奥が沈むような感覚に身を任せ、
 座したままの姿勢で、鬼は花嫁の部屋で夜を明かした。 ]
(125) 2021/06/25(Fri) 3:32:14

【人】 鬼 紅鉄坊

── 後日 ──


小さく軽いものだからな
転んだ時、合間から落ちたのだろう
風に乗ればもう見つけようはあるまい 

気にするな。元はと言えば私が強引に事を為そうとしたのが悪い

……新しい村で過ごしても、思い出してくれたらなどと
欲を出したのも、うむ。私の責任だ

[ いつか挟んだ花のことを思い出したのはどちらだったか。
 荷は全て回収していた為、確認するまでには数日掛かった。

 その時点で望みの薄さは分かりきっていた。
 あの時千が襲われていた辺りに出向いては見たが、
 やはり見つかることは無く。
 今一度共に部屋の中を確認し、そう結論付けた。 ]
(126) 2021/06/25(Fri) 3:32:48

【人】 鬼 紅鉄坊



もう簡単に花を摘み取りはしないだろう?
なら、あれも無意味だったわけでもないさ

それに、全て千が生きていてこそだ

[ 本当に、間に合って良かった。
 そう言い添えた鬼は、太い指で不器用に白色を撫でた。

 幼子を愛でる触れ方とは違う、掬うように慈しむように。 ]

……お前も変わったが、私も以前のままとは言えないな

[ ふ、と短く息を吐き。一時逸れた目線は
 山の深くへと続く方角へと向いていた。 ]
(127) 2021/06/25(Fri) 3:33:05

【人】 鬼 紅鉄坊


[ 誰かの意味の為に摘み取られた花が
 この山の何処かで躙られ、潰えてゆく。

 それを理解しながら見ないふりをして、
 忘れぬよう刻むなどという、救いにもならない贖罪を重ねて

 手の中の一輪を、実を結ばない花だけを大切に抱える。

 鬼の両腕の届く範囲は、見目よりずっと狭かった。
 己を挟む二つの存在のどちらも捨てられず、
 選ぶことも出来ずにいた腕が唯一を見つけた。 ]**
(128) 2021/06/25(Fri) 3:33:29