［朝になれば、楓よりも先に目覚めてカップを片付けていることだろう。それまでは、あたたかい腕の中に収まって、静かに寝息を立てている。］**

［朝早くに目覚めて、わずかに名残惜しさを覚えながらも楓の腕の中から抜け出した。

　楓の膝にブランケットをかけて食器を片付け、軽くシャワーを浴びる。クローゼットで見つけたボルドー色のカソックめいたワンピースに着替え、さて何をしようかと考えて、とりあえず掃除をすることにした。

　楓を起こさないように足音を忍ばせながらあちこちを磨いて、片付けて、そうすればやや重たかった心も少しは晴れる。］

　　お野菜と卵はできてるわ、
　　他に何か要るかしら。お肉も焼く？


［尋ねつつ、小皿に盛った卵と野菜をテーブルに運ぶ。マテ茶も温かいものを淹れ直した。
　何でもない日常のひとこまに見えて、自分たちには得難いものであることが少しかなしい。
　もうすぐ終わる夢ならば、今くらいはこの日常に浸っていたい。そんな気もする。］