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【人】 高野 景斗[ アラームの音で目が覚める。 昨晩も遅くの帰宅になり、コンビニで 出来合いのものを買って、酒を飲んで 眠りについて。 僅かに酒焼けした喉に炭酸水を流し込んで 無理やりこじ開けても食欲など湧きようもない。 それでも何も口にしないままだと、 体も脳も覚醒を拒否するからネットスーパーで 箱買いした野菜ジューズを流し込み、 シャワーを浴びて出社する。 通勤ルートの途中に、パン屋があっても、 定食屋があっても、心惹かれる事はなく。 出社して雑務をして、殺陣の稽古をして 昼近くになり漸く、何か腹に入れる余裕が出てくる。 田舎から飛び出してきて、無我夢中で 夢への道をひた走り、寝る間も惜しんで 生活のため働く研究生の面倒見る振りをして 昼食に連れ出し、勢い良く平らげるのを見て 自分も、食事に手を付ける。 ] (4) 2023/04/03(Mon) 14:26:35 |
【人】 高野 景斗[ この恩忘れません、別にそんな言葉が 欲しかったわけじゃない。手を差し伸べたい 気持ちがない訳では無いが、 誰かと共に食事に来て、 自分だけ食事をせずにいれば相手に無用な 心配や不安を与えてしまう。 その状況を作るために連れ出していた、 それを知るものは既に、デビューを果たし テレビ、ラジオ、舞台の中だけの人間になっている。 ――それでも時たま、感謝や弱音を口にする相手に 自分を選ぶような後輩もいる、人への感謝を 忘れない。それもまた業界人として成功するために 必要な事だと思う。天狗になった瞬間に、 その椅子は 音もなく 、消えていくものだ。 ] (5) 2023/04/03(Mon) 14:27:02 |
【人】 高野 景斗[ 午後、収録日にはラジオ局に向かい、 当たり障りのないトークの中、 しれっと、旬の食べ物の話題も出すが、 それを選んで食べることはあまりない。 週に一度から二度、あの店に顔を出す時以外は。 仕事を終えれば、スタッフと共に、 食事に向かう事もなくはないが、 大抵は、自宅に戻るまでの間に スーパーやコンビニに寄り、出来合いを買って という生活だった。 同じことの繰り返しで、恐ろしく早く歳を重ねて いるような気がしていた。 それでも何かを変えようと思えるほどの、 熱意も切っ掛けも、若さもないと、思い込んで ただだらりと、生きることを全うしていた。 ] (6) 2023/04/03(Mon) 14:27:19 |
【人】 高野 景斗[ そこに色を差したのが、あの日だ。 味気ない日常にふっと湧いた悪戯心 内緒話をするように、そっと顔を寄せて。 名前を問われて、答えたあの日。 あの日帰り際、良いものが見れたと そう言った。悪戯の行方のことではなかった事 それは伝わらなくても当然のこと。 良いものがみれた、 君の良い顔がみれた そう伝えるには少し照れくささが勝ったものだから。 差された色は目の覚めるような赤でも、青でも、 黄色でもなく、黒に青が少し混じるような、 優しい色。久しぶりに黒以外を見るには ちょうどいい、 優しい 色だった。 ] (7) 2023/04/03(Mon) 14:28:10 |
【人】 高野 景斗[ 味気ない日々に色が差したことに 自分より先に、周りの人間が気づいた。 なにかいいことあったんですか そう問われて不思議そうな表情を浮かべて 自分で気づいてないんですかと笑われて 例の企画のことでしょうなんて言われて そうだね、と曖昧に頷いて。 自分で理由を探し当てるより、 店に顔を出す頻度が増えたほうが、先だったが 名前を教えて貰ったときには、理由にも 心当たりができていた。 ] (8) 2023/04/03(Mon) 14:28:29 |
【人】 高野 景斗[ 会うたびに一つ知り、二つ知りたくなり。 よそ行きの顔ができなくなって。 会わない日々を数えるようになり 気持ちが抑えきれなくなって。 撥ね付けられる事がないから 欲に際限がなくなって。 二人で過ごすことのできる日々が増えて 好きと伝えてもいい関係になっても 思いは尽きるどころか、増す一方で。 今日もまた、知らない事を一つ埋めて ほくそ笑んで。 ] (9) 2023/04/03(Mon) 14:28:49 |
【人】 高野 景斗[ 旅行から帰った後の日常。 一年前と比べれば、全く違うが、ここ最近と 銘打てば、そう変わりはない日々だった。 アラームの音で目が覚める。 昨晩も遅くの帰宅になったが、作り置きの おかずと、タイマー機能で炊いた米、 春キャベツはレンジで軽く熱を加えて 塩昆布とごま油で和えて。 ゆっくり食事を楽しんだ後、入浴して 眠りについて。 目が覚めたら、炭酸水を流し込んで 体と脳に覚醒を促して、コーヒーマシンの スイッチを入れ、トースターにパンを押し込み 顔を洗って、歯を磨いて、昨晩の残りと マーガリン、いちごのジャム、を塗ったパン、 粉末のスープ、で軽い朝食を取り、出社する。 通勤ルートの途中のパン屋には、 帰りによく寄るようになった。 ここの食パン、彼も気に入っているから。 明日の朝食は、これに決まりだ。 ] (10) 2023/04/03(Mon) 14:30:12 |
【人】 高野 景斗[ 翌日は休みだと連絡を取り合って 彼を迎えにいく事にも、随分慣れた。 ――従姉妹殿の、あたたかい目線にも。 寝坊しても構わない日の前の晩、 提案を受け、少し考えるように顎に手をやり ] 唐突だね? いくつかあるけど、特にこれってのは 決めてないな。 君が見立ててくれるの? じゃ、君のは俺が見立てようかな。 [ 君の場合は職業柄、仕事中に使うことはないだろうけど まず間違いなく、その香りに触れる回数は、 自分が一番多いと自負しているし。 自分が使うとしても、相手もそうなるだろうから 君が見立てる、なら少なくとも君にとって 良いと思えるものを選んでくれるだろう。 長く使えるようにオーダーメイドにするのも 良いかもしれない。 ] (11) 2023/04/03(Mon) 14:30:39 |
【人】 高野 景斗[ 君が家に泊まる時、 浴室から出てきた時なんか特に、 自分と同じシャンプーの香りがしたりして 密かに、どきっとしているのは、 まだ言っていない。伝わってはいそうだが。 なにせ浴室から出てきた後、 必ず、短い時間でも、ぎゅうと抱きしめているので。 そんな君が、俺の選んだフレグランスを纏う というの、なんだかとても、らしいことをしているように 見えて、胸が踊ったものだから、 乗り気、という返事をして。* ] (12) 2023/04/03(Mon) 14:31:01 |
【人】 高野 景斗[ 人は一人で死ぬものだ。 その考え方自体は大きく変わっていない。 無理心中したところで、その死体が 引き上げられたら、個と個で。 同じ棺に入ることも、なければ あちらで再会できる保証も一つもない。 だから、 ひとりでいい 。だから、ひとりが こわい 。相反する思いはいつまで経っても 解決することはない。それでも、その声が その存在が、怖さを消し去るほどの愛しさを 教えてくれるから。 ] (24) 2023/04/03(Mon) 22:48:40 |
【人】 高野 景斗[ これまでに何度か、自宅で過ごしているところ 掛かってきた電話に出ることがあった。 どこで目にしたのか、あの厳格な父が MVの話題を出し、開口一番、 "姿勢が悪い"と言うものだから、笑ってしまった あれは撮影だからどうしたって見栄えが重視される だとか、散々っぱら話したあとで、父は "ちゃんと食べているのか 困っていないか"と そう口にした。実に7年ぶりに会話したのを それを聞いて、思い出したくらいだ。 ちゃんと食べている、生きている。 そう伝えた後、入院している時 意地を張らずに顔を見に行けばよかったと 父母二人共えらく後悔したんだと聞かされて 近いうち、顔を出すと約束したときも、 彼はすぐ近くで見守るようにしてくれていたか。 ] (25) 2023/04/03(Mon) 22:49:20 |
【人】 高野 景斗[ 料理を覚えたと言えば、野菜を送ってくるようになったし 母は"連れてきて"とうるさくなった。 何一つ伝えてはいないのだが、 察するものがあるらしい。 フレグランスの話をしていた時だったか その後の話だったか。 夏には蛍を、その話を覚えてくれていたのか 彼の方から、祖父の家の近くが良いと 言われ、僅か思案するような顔をした後 ] 嫌じゃなければ、祖父母の家に行かない? だだっ広いだけが取り柄みたいな家だから。 (26) 2023/04/03(Mon) 22:49:48 |
【人】 高野 景斗[ そう口にした。否と言われれば近場に 宿のあてはいくらでもあると告げるだろうが。 ――そもそも、こそこそと隠れなければ いけない事も、ないと思って。 世間的には冷ややかな目を浴びることも あるのだろうと理解はしているつもりだが。 ] 爺さんも婆さんも、孫には甘いから。 稽古の時以外はね。 [ 彼のおかげで、ひとりではなくなったのに それをひた隠しにしなければと考えること自体 少し我慢ならない所もあって。 ――とはいえ、父母、祖父母世代には デリケートな問題かもしれないけれど。 話してもいい?と聞き、許可を貰えたなら 父母には話してしまうつもりでいた。 ] (27) 2023/04/03(Mon) 22:50:07 |
【人】 高野 景斗[ 共に休みの日、出かけることも 少しはあるが、大掛かりな買い物、は これまであまりなかったと思う。 要所要所、販売員の手を借りながら 選ばれたそれは、勝負の時にも 大いに役に立った、と言える。 大晦日、父母には出演の話はしてあるから 祖父母もきっと、テレビにかじりついていることだろう。 舞台袖から電話を掛けて、 声と愛をねだり、受け取った後。 一歩踏み出すその時にも、 その香りが背を押してくれた。 黒のボトル、その香りの名は「英雄」 卒業するには、うってつけと言えるだろう。 君の思いを背に、その席を自ら、蹴り壊すには 似合いすぎるくらいだった。 ] (28) 2023/04/03(Mon) 22:50:40 |
【人】 高野 景斗[ 出会って、二度目の春を前に、 冷蔵庫の中には、取り寄せた苺が 冷えている。 フレグランスを買いに行った日、 ついでに、と食器やグラス、カップ等も 買い漁って。 今ではこの部屋には二人分のモノが、溢れている。 その日も、その香りに助けられたと言える。 言葉は淀みなく、零れていたとしても、 言葉通り、緊張はしていたから。 夏か近づいた帰り道、 もうすぐ、夏ですねと次の季節を なんでもないことのように言う君が居た。 夏が逝く前、 すべてが夢だったと思わされるような 悪夢に魘されて、冷えた手を、 救い出すように握ってくれた君が居た。 ] (29) 2023/04/03(Mon) 22:51:10 |
【人】 高野 景斗[ 君に会える特別な日々から、 君がいる、当たり前の毎日へ変わりゆく頃 告げた言葉を、告げられた言葉を、 生涯、忘れることはないだろう 一つ前の季節を思い出す、 そのなんでもない日にも、 俺 の隣には、愛する君 がいる――。** ] (30) 2023/04/03(Mon) 22:51:34 |
【人】 高野 景斗[ ――コスチュームプレイを含む アブノーマルなプレイについて。 自分は興味などない方、だと思っている節がある。 節がある、というか。あった、が正しい。 同性同士のカップルだと、オーラルセックスで 十分に幸せだ、という人たちがいるらしい。 実際そういう人たちの体験記などを拝見して、 初夜に望んだ身である。 望まれれば望まれるように振る舞うことが できる、くらいに認識していた自分の性欲。 貪欲だったのだと気づかせたのは、 ほんの少し年下の、恋人。 ] (31) 2023/04/03(Mon) 23:18:32 |
【人】 高野 景斗 ……何も言わないで。 [ とある日のこと。別にそうと決めているわけでは ないが、翌日が休み、という時に彼は良く 泊まりに来るし、こちらも誘う事が多い。 互い期待している事はなんとはなしに、感じ取るから やはりそういう日は、色々な事が念入りになる。 そして浴室から出てきた彼に対し、 何も言わないで、であるから、不思議そうな 顔をされたとしても、致し方なく。 おずおずと差し出したのは、新品、 洗濯済み、のブルーストライプ柄のエプロン。 ] (32) 2023/04/03(Mon) 23:19:04 |
【人】 高野 景斗[ 調理する際に使うものについては、 彼の好みを聞いた上で、キッチンの近くに 二着、用意してある。 この頃は自分も使うことが在るもので。 ではなぜ、新品かと言うと。 ] (33) 2023/04/03(Mon) 23:19:15 |
【人】 高野 景斗 ……これ、着けた君と、したくて。 [ そういうこと、である。 痛みを伴うようなアブノーマルなプレイは 好まず。コスチュームプレイとて、 見れば見たで興奮するかもしれないという 思いはあっても、提案まではしたことがない。 ただこれだけは、別といえば別、で。 一生懸命働いているだけの君に、 覚えてしまった欲もある。 仕事している君に不埒なことをしたいなどと 呆れられても仕方がないが、 この所、そういった欲は素直に口にしているもので。* ] (34) 2023/04/03(Mon) 23:19:26 |
【人】 高野 景斗[ セルフで準備をしていると知っていたら ほぐす事から任せてほしいのにと唇を尖らせる 事もあったかもしれない。 が、羞恥を煽りすぎてもいけないし 本人が気づかないで欲しいようなそぶりを するので、そちらには気づかないふりを することにしている。 ――そうすると、彼の方からお誘いが 掛かることもあるので嬉しい時もあるわけで。 差し出されたそれ、自分に?と問われる 言葉に小さく頷いて。 一瞬、理解できないという顔をされたら ですよね、って表情を返したことだろう。 それでも瞬きいくつか分で、 したいこと、言いたいことは、伝わっただろう。 タオルで隠された顔が、ほんのりと赤い。 ] (41) 2023/04/04(Tue) 0:19:33 |
【人】 高野 景斗 うん それで、いいです。 [ 求めていることを正確に把握した君が 少し躊躇いながら、ぽつ、と返事を寄越して。 躊躇いの中、職業上身につけるものを 汚すような事をする、ことに対して 思うこともあるのだろう。 でもそれ、もう三十回ほど、俺も自問自答 しているので。口は挟まないし、 心を決めてくれたなら遠慮をするつもりもなく。 身につけるまでの間、見ないふりを しつつ視界に入る、手慣れた身に付け方に ぞくぞくする。 そう、これまできっと数え切れないほど、 それを身に着けて、自分にもそれ以外の 人たちにも料理を振る舞って、幸せに してきたはずだ。 ] (42) 2023/04/04(Tue) 0:19:46 |
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