【人】 厨房担当 マシロ[ 私にとって 恋 は貴方の形をしている私の世界で 愛 はうさぎ穴の味をしている見えないもの 触れられないもの ────……捨てられ"なかった"もの 三年掛けて、輪郭のないそれら全てを飲み込み、 私は今度こそ生まれ変われる。 ] (6) 2023/03/15(Wed) 11:31:49 |
【人】 厨房担当 マシロ[ ────ところで。 他の料理人に対してのライバル心は、職業病。 今まで調理される食材を"美味しそう"と思ったことはあれど 自分が食べられる側に回るなんて想定外。 いや、"そういうコト"をするのは分かっていても あんな錯覚を抱くことになるなんて、考えていなくて。 やさしい料理人に美味しく食べて貰えたか?>>6:+414 ……ノーコメントです。特に前者。 砂糖と熱を浴びすぎて焼けたように掠れた声では 答えを言っても聞こえないかもしれませんが。 据え膳の上に乗ったまま眠ったあの日と違い、 骨も残さず食べられてねむる、いま。 ] (7) 2023/03/15(Wed) 11:31:58 |
【人】 厨房担当 マシロ[ なんと! 今日は一日おやすみの日! だから私が起きるのは、貴方が起こしてくれる時か 体が自然と目覚める時のどちらかだったはず。 その時、きっと傍にいてくれた貴方を見て 私は羞恥と照れを混ぜ込んだような薄桃の頬を晒し、 布団の中で丸くなる羽目になった。 ] …… やわたさんの、ばか [ ぽつ、と落とした声がかすれていたから 「お水ください」と甘えるように腕を伸ばす。 なんでもない日の、なんてことない朝。 ──これから二人の普通になっていく、始まりの一幕 ] (8) 2023/03/15(Wed) 11:32:02 |
【人】 厨房担当 マシロ[ そうですね、朝ごはんは動けるようになったら 気持ちを切り替えるためにお風呂を借りた後で 一緒に作るのも良いと思うのですが、どうでしょう。 貴方のお仕事と予定さえ空いていれば すこし、買いに行きたいものが、出来ました。 ……午後のおやつ時にぴったりの 特別な朝を迎えた一日に相応しい、デザートを。** ] (9) 2023/03/15(Wed) 11:32:06 |
【人】 厨房担当 マシロ……起こせない、って言ったら 起こしてくれます? [ ばか、と言った私も、まだ熱に浮かされてばかみたいだ。 くすくす笑う貴方の顔を見るのも恥ずかしくて>>10 「ぅぅ…」とかすれたちいさな声を零しながら 水を取りに行く背中を見送りさえ出来ず、布団へ潜り込む。 これは。俗にいうところの。……あれでは? あれはつまりその、あれ。 自分で考えたくせにいざ言葉が思い浮かぶと 途端にしんでしまいそうなのだから、本当に、ばか。 ] ( …こんなの、慣れるわけなくない……? ) [ 友人たちの話を聞いていた時、彼女たちは 至って平然と、「慣れれば恥ずかしくない」とか そんな風に言っていたが。 絶対嘘。 ] (18) 2023/03/15(Wed) 13:29:05 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 特別な"なんでもない日"おめでとう。 三月うさぎも帽子屋も、きらきら光るコウモリさんの詩も なんにもない、私たち二人の記念日。 貴方が戻ってくる気配を感じれば>>11 ようやく布団うさぎをやめて、もぞ、と顔を出す。 開けやすいように緩められたペットボトルの蓋を回し、 ストローを差し入れて喉を潤せば そこでやっと 日常に戻れたような気がした。 ] ん、……おやすみです 確か、私が急に夜入るかもって言ったのもあったような… でもシフト入れなかった、から。 [ 何せ最近は少しシフトに穴が開くことも多かったり、 店長ヘルプを出すくらいランチも忙しかったりしたので。 確実に合う休みを、とあの時相談していたから 今日は一応、彼の原稿も考慮し除外した気がする。 本当に今日が休みで良かった。 正直、いつものように働ける自信が全く、ない。 ] (19) 2023/03/15(Wed) 13:29:16 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 仕事用の白シャツは首元が隠れるものを追加で買うべきだ。 後で通販サイトで目星をつけておくことを決意し、 今はひとまず、彼の服を借りることにして。 ] ぁ、と……あんまり、その、… 動けないので 材料を買うだけで、いいんです ケーキ。 …………今日、作りたいなって、思うんですけど 三時のおやつに ……どうですか? [ ふにゃん。と笑いかけ、小首を傾ぐ。 自宅へ送ってもらい、タートルネックの服に着替えて 近場のスーパーへ買い出しに行くだけの休日。 そんな、きっと他の人から見れば他愛ない一日を "特別"の色で彩りたい。 ……貴方と一緒に、一歩ずつ。** ] (21) 2023/03/15(Wed) 13:29:37 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 母に作ったケーキは、シンプルなショートケーキだった。 好きな味もフルーツも知らなかったから、 "母の日に贈られるケーキランキング"を調べて そういうものなんだ、と思い、それを選んだ。 どうせ次の日も同じまま残ってるのに? そんな風に思いながらケーキを作る過程は、 全然、なんにも楽しくなくて。 不安と、怖さと、諦念。 思い返せば、あの寒々しい家の中で何かを作る私は 気付いた時には、咲うことも無くなっていたな。 ] (34) 2023/03/15(Wed) 15:25:28 |
【人】 厨房担当 マシロ[ お菓子を作る時、咲えなかった。 楽しいなんて気持ち、ひとつもなかった。 ──ああ、でも 頭を過る 二度目の勇気 一緒にクッキーを焼いたあの人 あの時の私は確かに、笑えてたよ。 今も、今でも信じてる。 "大咲真白"を否定しなかった"速崎璥"を。 ] (35) 2023/03/15(Wed) 15:25:37 |
【人】 厨房担当 マシロ[ ごめんね を言いたいんだ、と気付いた。 勝手に傷付いて、勝手に傷付けた速崎に。 それからもう一度 笑い合いながら きっと誰かの笑顔のために作れるようになるはずの、 あまくて幸せなデザートを作りたい。 少食の遠藤にも楽しんでもらえるよう考えて 可愛いを愛する知恵にお墨付きを貰って 密かに兄のように慕う瑞野にソースアートを教わって 谷底から自力で這い上がった美澄へは歓迎代わりに。 デザート類を得意とする黒原にも笑って欲しい。 店長に、もう大丈夫です、と示したい。 ] (37) 2023/03/15(Wed) 15:25:54 |
【人】 厨房担当 マシロ ― 一歩、 ― [ ケーキ作りの為に彼の家へ帰って来た頃には、 幾分か体の軋みも重さもマシになっていた。 買い物の最中は腕に寄り掛かり、腰を庇う羽目になったが 自力でキッチンを往復出来る程度には回復し 「待っててください」と彼へ告げ。 ] …………よし。 [ 髪を高い位置で一つに結び、気合を入れると 肌身離さず持ち歩いているクッキーの写真を撫で、 邪魔にならない位置へ置き直す。 オーブンは180度に余熱し、ケーキ型へ敷き紙を。 常温に戻した卵を卵黄と卵白へ上手に分け、 別のボウルへまずは卵黄だけを移し替える。 ] (40) 2023/03/15(Wed) 15:26:11 |
【人】 厨房担当 マシロ[ グラニュー糖を適量加え、白っぽくなるまで 泡立て器でしっかり混ぜ終えれば また別のボウルへ卵白を入れ、同じようにグラニュー糖。 ツノがしっかり立つまで泡立てる。 卵黄を混ぜ終えたものを同じボウルへ投入し、 二つが一つに戻るようによく混ぜ合わせて。 薄力粉をふるい、気泡が潰れないよう底面からすくいあげ その作業を何度も繰り返す。素早さが大事。 牛乳と一緒に溶かしたバター半分を加え 手早く生地を回し、 残り半分のバターも追加投入し、更に混ぜ。 粉がないのを確認し終えれば、型の中へ流しこもう。 とんとん、と型の中の生地を軽く均して空気を抜き 爪楊枝で表面を軽くならし、オーブンへ。 ] (41) 2023/03/15(Wed) 15:26:17 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 焼き終えたら粗熱を取り、いったん冷蔵庫の中へ。 寝かせる時間が長ければしっとりするけれど 今回は、この恋みたいに ふわふわした生地がいい。 ある程度冷ましたら、三枚にカットして。 続けて鍋へグラニュー糖、水、ブランデーを少量。 中火で熱し、軽く沸騰するまで待てば 火を止めてシロップになった液体を冷ます。 熱が取れれば、カットした生地へしっかり塗り込もう。 生クリーム、グラニュー糖、バニラエッセンスを混ぜ 重くならない程度に混ぜ合わせる。 シロップが染みたスポンジに、生クリームを塗り スライスしたイチゴを乗せ、また生クリーム。 スポンジとイチゴを重ね終えるまで。 ] (42) 2023/03/15(Wed) 15:26:21 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 入れるフルーツは、正直買い物中に頭を悩ませた。 いつも美味しそうにご飯を食べてくれる彼の、 一番好きなフルーツはなんだろう。 聞こうとして、──ふ、と。 "特別な人に食べて欲しいケーキ"が "好きなものを共有できるケーキ"にも、なれば それはとても、うれしいことだ、と思って。 ケーキを作る間の私の顔色は、桜のように薄桃色。 重ね終えた生地全体を純白のクリームで覆い、 ふふ、と零れる笑みを抑えきれないくらいに。 ──── 楽 しいなぁ、と思えた。もう過日のように、 苦 しくない。 ] (43) 2023/03/15(Wed) 15:26:29 |
【人】 厨房担当 マシロ[ イチゴはいつかの神田スペシャルプレートと同じ。 花形へ飾り切って、合間にハート型の飾り切りも挟みつつ 見栄え良く生クリームを絞り上げる。 ひときわ大きなイチゴが数粒あったので、 薄切りにし、重なりが少しずつズレるように並べ、 端からくるくると巻いて薔薇型にもしてみよう。 "次は"うさぎクッキーを焼いて飾っても良いかも、なんて 自然と未来のケーキの構想が頭へ浮かんだ。 ] (44) 2023/03/15(Wed) 15:26:34 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 調理の途中、届かない位置に器具があれば 背伸びするより「夜綿さん……」と眉を下げて呼びつけ 取ってもらう手伝いはしてもらったりしただろうし。 体や様子を気にして、キッチンへ来ることがあるのなら 「味見します?」と余ったイチゴを差し出したり。 そんな一幕もあったかもしれないが。 ともあれ完成したショートケーキを手に、 私はぴょこん、とキッチンから出て、貴方の元へ。 ] 夜綿さんっ ……私の一番最初、もらってくれます、か? [ 二人のテーブルへケーキを置く指先は、もう クッキーの時みたいに、震えてはいなかった。 微笑んで彼を見つめる。 小首を傾ぐ。 ] (45) 2023/03/15(Wed) 15:26:41 |
【人】 厨房担当 マシロ ― ささやかなパーティの下準備 ― [ 桜の花が見頃を迎え、藤の花が咲く少し前のこと。 鴨肉の日の翌日、──いや思い出すな今は仕事中だ。 ともあれ自分がケーキ作りへのトラウマを乗り越え、 首筋を隠す襟の長いシャツに制服を改めた。 それよりは後の時期だった。 スプリングラムよりも後だったかもしれない。>>6:5 「パイ伝説の持ち主にパイ?」だの何だの頭を悩ませた 速崎の誕生日パーティの開催は、 寧ろ露骨すぎて逆に潔かったかもしれないが。>>47 いっそ自分が「ツラ貸してくんない?」を再来すれば バレなかったかもしれないけれど、それはそれ。 オーダーを通しながらパーティの準備もとなると 中々忙しく、ヘルプに回り回られ、といった具合。 だから瑞野が自然に隣へ並んだのも>>48 言葉の通り、手伝いだと思った が ] (53) 2023/03/15(Wed) 16:34:02 |
【人】 厨房担当 マシロ…………けいちゃんから何か、聞きました? [ >>3:465 速崎が瑞野に話していたことは、知らない。 ただ、仕事中は至っていつも通りを務めても 裏では少なくなった会話のことを思えば 同僚達には心配をかけていると察するのも、容易だ。 ] けいちゃんとは、まだです ──……言いたいことは、纏まったんですけどね [ 近頃の速崎は、何かと心が忙しなさそうで。 時計うさぎのように空模様の変わる心を思えばこそ 未だ、タイミングは掴めずにいた。 けれど、誕生日祝いに、自分はデザートを選べた。 機会を伺い続けてしまえば、 カラメルもそろそろ焦げる頃合いだろう。 ] (54) 2023/03/15(Wed) 16:34:53 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 兄を慕う妹のような顔で笑いかける。 大丈夫です、というように。 フランベし終えたフライパンの中のオレンジ。 無意識の緊張をゆるりと解き、 いたずらっぽく眦を緩めた。 ] 妹も心配ですよ。 こんな風にやさしくしてもらっちゃったら お兄ちゃんを好きな人に、嫉妬されたりしないかなって。 [ なんて。* ] (57) 2023/03/15(Wed) 16:35:46 |
【人】 厨房担当 マシロ ― あにといもうとと、こい。 ― ……良かったです けいちゃんが、誰かに少しでも話せてたの。 どんなことでも、自分だけで抱えるのは、しんどいから [ 不意の沈黙も、向けられた話題への揺れも。 "謝りたい"に帰着するまでの、感情の流れも。 この聡い先輩兼お兄ちゃんには察されているのだろうし だからこそ気にかけてくれているな、とも。>>72 他のスタッフより、瑞野の口数は少ない。 自分が笑顔で話し掛けてそれを聞いてもらうような そんな時間を過ごす方が、寧ろ多い気さえする。 踏み込みすぎず、ただ、見守っていることは教えてくれる ──そんな彼が自ら線を越えて来た。 その重みは妹も、しっかり受け止めているつもり。>>73 ] (77) 2023/03/15(Wed) 19:33:24 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 余計なお世話なんて、とんでもない。>>74 うさぎの穴で自分が得たものはあまりにも大きくて これから先もきっと膨らんでいくのだ。 "世話を焼かれる"経験は、幾つ増えても嬉しいもの。 ] ふふ。 "やりたいと思ったときが、始めどき。"ですっけ? 私、押されたがりなので。 相性良いですよ、お兄ちゃん。 [ 返された笑みの中、少しの悪戯めいた色を汲み取って くすくすとこちらも笑い返した。 何せ仔獅子を突き落としたのは、此方もなので。 緩められた双眸の色と言葉に、しっかりと頷いた。>>75 オレンジのうさぎがプレートの上で笑っている。 酸素が巡れば炎は青くなって、きっと、 ──つめたい雪も解けるはず。 ] (78) 2023/03/15(Wed) 19:33:47 |
【人】 厨房担当 マシロ[ ────ちょっとだけ、悪戯のつもり、だった。 瑞野が見たことのない色で高野へ微笑んでいたことと、 高野が"好きな人へ告白する"と言った相手は 必ずしも、結び付き合うとは限らない。 けれど何故か妙に、私は確信づいていたものだから 動揺してくれたら恋の実の色の行方を知れるのに、って 甘い計算をしていたのだけれど。 ] …………えっ [ 寧ろ 嫉妬するところが 見たい。 その後で 思いっきり 甘やかす。以下二回リフレイン。 おやおやおや、お兄ちゃん? 炎は青い方が熱くって、貴方の被っている帽子の色は 青よりも少し深い色。 零れた言葉は、炎より帽子の色より、あつい。 ] (79) 2023/03/15(Wed) 19:33:53 |
【人】 厨房担当 マシロ[ 少しの間を置いて、まなじりを緩めた。 ──……そっか。 桜咲けと祈ったあの日の願いは、花開いたのか、と。 ] 苦労しますね、お兄ちゃんの大事な人 そんなのされたら離れられなくなっちゃいそう。 [ いや、寧ろ本望だったりしますかね。 どうでしょう、お客様? コーヒー味のアイスボックスクッキーをプレートへ並べ フランベを終えたオレンジを見栄え良く敷き詰める。 仕上げのバニラアイスは、速崎へサーブする時に。 やや時間を置き、私はもう一度彼を見上げて ] (80) 2023/03/15(Wed) 19:34:03 |
【人】 厨房担当 マシロ嫉妬した恋人を甘やかして独り占めするの、 相手も離れられなくなっちゃいそうですけど こっちも相手以上に手離せなくなっちゃいますよ。 ……まあ、それがむしろ幸せだから 恋って楽しいですね、お兄ちゃん。 [ また今度ゆっくり聞かせて貰いますからね、と 念を押すことは忘れない妹なのでした。* ] (81) 2023/03/15(Wed) 19:34:09 |
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