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【人】 桧垣 やよい[ 無口で真面目だったお父さん やさしかったお母さん。 当時のことは鮮明に覚えてる。 とある夏の日。 ザァァ、という雨の音と、 だんだん暗くなる外の景色 お気に入りの 猫の ぬいぐるみを抱きしめて、女の子がひとり、両親の帰りを、待っていた。 ずっと、ずっと、ずっと。 ずっと、ずっと、ずっと 待っていたんだ。 『 夏祭り、楽しみだね! 』 家族3人で交わした約束は二度と叶わないことを まだ知らないまま ……──── ] (1) 2023/02/19(Sun) 0:26:45 |
【人】 桧垣 やよい[ 交通事故だった。 ひどい雨で夕方薄暗くて視界が悪くて。 高所から転落したから即死だっただろうって。 いつもだったら3人でお出掛けするけれど、 その日は見たいテレビがあって、 「やよい、もうお姉ちゃんだからお留守番できるよ!」 なんて張り切っちゃって ………… すぐに帰るよって言われたのに、 見たかったテレビの方が先に終わっちゃった。 お母さんとこねたハンバーグは赤いまま、 晩ご飯の時間も過ぎていった。 いつもより広く感じる部屋に電話の音が鳴り響いて ………… その後のことを思い出すと 今でも心が千切れてしまいそう。 ] (2) 2023/02/19(Sun) 0:28:38 |
【人】 桧垣 やよい[ 沢山の大人に囲まれて、 みんながわたしをどうするか、話を繰り返していた。 うちは子供が3人いるから、とか うちはそんなに付き合いなかったし…とか、 両親が亡くなった子のケアなんて無理よ、とか。 ぜんぶわたしの話なのに、わたしはそっちのけで、 子供だから分からないって思われたのかな。 聞きたくない言葉も全部わたしの耳には入ってきたの。 わたしのお父さんとお母さんが死んだのに、 騒がしさの中でぽつんと取り残されたみたい。 ] (3) 2023/02/19(Sun) 0:29:00 |
【人】 桧垣 やよい[ その時だけは、ひとりじゃないって思えたけれど 結局すぐにお別れが決まった。 わたしたちは自分で何かを選ぶことはできない、 小さな小さな子供だったの。 ] (6) 2023/02/19(Sun) 0:30:21 |
【人】 桧垣 やよい[ それから、どこへ行ってもうまくいかなかった。 親戚の家をたらい回しにされながら、 短い期間で転校を繰り返した。 わたしはずっと、独りだった。 ずっとずっと、孤独だった。 感情を殺して、息だけしてた。 ] (7) 2023/02/19(Sun) 0:30:58 |
【人】 桧垣 やよい「 わたしと、友だちになってくれますか 」 [ 国語のノート、犬の絵の横に綴られたメッセ―ジ。 自分でも自分が分からないわたしに、 彼女は名前をくれた。 白黒で温度のない毎日に、彩と温もりをくれた。 ] (10) 2023/02/19(Sun) 0:32:45 |
【人】 桧垣 やよい[ 高校生になって朔也くんと再会した時は驚いた。 もちろん、ずっとちゃんと覚えてたよ。 忘れられない、特別で大切な、幼馴染の男の子。 彼に告白された時、戸惑いながらもすごく嬉しかった。 花束みたいなキャンディも、 テディベアの小さなぬいぐるみのキーホルダーも。 全部、すごくすごく嬉しかった。 ただ、入学式に助けてもらったって話を聞いて、 すぐに分かったの。 ] (14) 2023/02/19(Sun) 0:37:40 |
【人】 桧垣 やよい[ うまく伝えられなくて結局、 彼にはわたしとやよいちゃんのこと、全部説明したの。 朔也くんなら分かってくれるかなって甘えて。 それから、お父さんを紹介してもらって、 カウンセリングを受けるようになったんだったよね。 全部を知っても尚、わたしを好きだと言ってくれる そんな彼に説得され、半ば流されるように わたしたちは付き合うことになった。 ] (16) 2023/02/19(Sun) 0:40:18 |
【人】 桧垣 やよい[ だけどね、 わたしはこのことをやよいちゃんに言えなかった。 なんでなのかな。 どうしても、メモに残せなった。 「朔也くんがやよいちゃんを好きだ」ってこと、 わたしはやよいちゃんに、秘密のままにしてしまったの。 ] (17) 2023/02/19(Sun) 0:41:06 |
【人】 桧垣 やよいえ……? [ たこ焼きは残り半分。 今なら冷まさなくても口に頬張れるだろうけど、 わたしの手は止まったまま。 全ての神経は、彼の一挙一動へと向けられていた。 わたしといても、楽しいと言ってくれるのは、 彼の優しさだろうか。それとも ――― ] (19) 2023/02/19(Sun) 0:41:27 |
【人】 桧垣 やよい…………………… [ わたしがいなくなったら、悲しんでくれる人がいる。 それはね……分かってる。 だけど、分かってるつもり≠セったのかな。 顔を浮かべてしまうと、 ――― 痛む。 ] (20) 2023/02/19(Sun) 0:42:31 |
【人】 桧垣 やよい[ 人の気持ちが分からなかったという愛智くん。 そんな風に見えなかったから、 わたしは意外そうな目を向けた。 やよいちゃんは……そういう話もしてたのかな。 今の愛智くんはそれらを見つけられているのなら、 それもきっと、やよいちゃんの力じゃないかな。 少し悲しそうな微笑みから感じる。 彼はきっと、わたしが思っているよりずっと、…… ] (21) 2023/02/19(Sun) 0:43:02 |
【人】 桧垣 やよい[ きっとね、愛智くんは 「どうして自分なの?」って思うかもしれないけれど。 わたしはやよいちゃんを安心して託せる相手がいなければ、 やよいちゃんを置いてはいけなかったから。 だから愛智くんに、選んでほしかった。 彼にしか、わたしを殺せなった。 ] (25) 2023/02/19(Sun) 0:43:59 |
【人】 桧垣 やよい[ その声が震えていることに気が付いた。 こんな選択をさせてごめんなさい。 もっとスマートにしなきゃいけなかったのに…… ごめんなさい。だけどね、 ] (26) 2023/02/19(Sun) 0:44:07 |
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