【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介そういうのを、冷やかしってェんだよッ。 [にっこり笑う彼女につい、 つられて笑いながら突っ込みをいれる。 赤い花、と形容したお嬢さんは 思ってたよりエキセントリックな人で、 初めて会った時の人見知りみたいな 印象は何処へやら。] 俺ァ甘ェのは食わねンだ。 [そう応えて粗茶を啜る茶器の向こう、 お嬢さんはそれでもニッコリ笑って クッキーをぱくり。 その上品な所作は、どれだけはすっぱにしても 消しようのない令嬢の証だと思う。] (54) 2021/05/18(Tue) 22:27:16 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[で、と話を切り替えられて 俺はそっと目線をそばの掛軸へ逸らせた。 掛軸の中、恵比寿天が呑気に笑っている。] いつ来ても、返事は同じだよ。 「俺じゃねェ方がいい」って。 [この店に彼女が来た時の、 青天の霹靂たる一言のせいで 噴き出した茶の飛沫が 恵比寿天の余白にシミを残している。 視線をお嬢さんに戻したら、ため息ひとつ。] 来週来ても、再来週来ても同じだッつの。 [赤いリップの似合う彼女には もっと歳の近しい、育ちのいいやつがいい。 こんな古びた道具に囲まれてるやつよりは、絶対。 ふつりと切り揃えられた前髪をくしあげ、 そのおでこにぺしん、としっぺをひとつ。] (55) 2021/05/18(Tue) 22:28:09 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介いいかァ。よく聞けェ、あのな…… [難しい顔を作って、キッ、と睨んでみたものの あどけない顔に言葉が見つからなくて 俺はそっと目線をそばの古い花瓶に落とす。] ほら、ひび、入ってるだろ、ここ。 [白磁の肌を切り裂くように入ったクラック。 前の持ち主が何とかしようとしてつけた 接着剤が黄ばみを残して 膿の出た傷跡のようにも見えた。] 傷がつけば、跡が残る。 生き物も、花瓶も、人生も。 ……こんなオッサンにかまけてるのが アンタの人生ニャ傷になっちまうよ。 [もっとキラキラした恋愛を経験してもいい。 それとも、たったひとつ、本当に好きな人間と 好きあって、結ばれて、幸せになっても。 でもそれは、きっと俺とじゃない。] (56) 2021/05/18(Tue) 22:37:42 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介分かったら、ホイ、デートでも行きな。 それかガラクタのひとつでも買ってってくんなァ。 [そう言って、しっしっ、と手を振るが それ以上の言葉や態度で 彼女を諌めることもせず。 結局、こうして会いに来てくれる彼女を 嬉しく思ってしまう俺自身 大人にとして割りきれていないのだ。]* (57) 2021/05/18(Tue) 22:46:04 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介 ー 腐れ縁の紅茶屋店主 ー [コーヒーを飲みに訪れた店で からん、とドアベルを鳴らした時に 「おや?」と思った。 別に閑古鳥が鳴いているような店でもないのに 店主が目をキラキラさせながら此方を向いて 目が合った瞬間、その輝きは 掌に載った雪粒みたいに消え失せる。 女の子と見りゃすぐ相貌崩すような 軟派なやつではない。 一度酷い女に騙され、しょぼくれていた親友殿にも そろそろ春の訪れだろうか。 (時期はもう栗のうまい季節だというのに) 言わずとも俺の考えが透けていたのか 俺を見る店主の瞼は、 眼鏡の奥で、すぅ、と細まった。] (58) 2021/05/18(Tue) 22:47:28 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介なァに?気になる女の子でもできたんか。 [そう問えば「なんでもないったら」と言う。 一歩踏み込めば後ずさる。 俺はつい楽しくなって、ずいずい店の中へ 入っていくとカウンターに腰を下ろして 目的のコーヒーを注文してやるのだ。 逃げ場のない親友殿は、もう厨房くらいしか 行く場所もなく、しぶしぶケトルを火にかける。] 「別に、そんなんじゃないよ。 名前も知らないしね」 [ビンテージのティーカップを磨きながら 店主は口を尖らせた。 ということは、客か、俺の同業か。 何となく、客にベットしておこう。 アンティークの食器の並ぶ店内には 焼き菓子と紅茶の匂いが満ちていて 中庭を臨む窓からは、冬の気配の近付く 色彩を抑えたハーブガーデンが覗いている。] (59) 2021/05/18(Tue) 22:48:19 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[今度は、今度こそは、 この朴訥な親友殿と結ばれる女性は こんな店が似合うような、いい人であって欲しい。 かつての出来事を知る俺は そう願わずにいられないのだった。] また、変なの掴むなよ。 [コーヒー入りのマグを出された時に そうひとこと釘を刺すと 「本当に、そんなんじゃないから」と 店主は口をへの字に曲げてしまう。] じゃあ今お前は誰を待っていたんだよ。 悪い奴で自分からそう名乗るやつはいないぞ。 心の中で付け加えると、店主は まるで心の中を読んだかのように まだ幼さの残る頬をぷっと膨らませて] 「江戸川は、ちょっとお節介なんだよね。 時々母さんみたいって思う」 [と減らず口を叩く。 俺はくすくす笑いながら 「腹を痛めて産んでやったのによォ」と わざとらしく泣き真似なんぞをしてやって。] (60) 2021/05/18(Tue) 22:50:17 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[─────お節介。 何度かこの親友殿から そう評価されることはあった。 でも、ほっとけないじゃねェの。 せいぜい両手を拡げたくらいの範囲の人間しか 手を差し伸べてやることは出来ないんだ。 掌からこぼれ落ちた砂粒は もう二度と掌には返らないんだ。 黙って気にされててくれよ。 頼むからさ。]* (61) 2021/05/18(Tue) 22:50:48 |
【人】 西園寺 飛鳥ふーん?W冷やかしWとは目的もなく 店を訪れる人のことじゃなかった? [目的があるのだから、やっぱり冷やかし なんかじゃないな、と微笑みかけて、譲らない。 まさか彼から奇矯だと思われているなどつゆ知らず 私は当然のようにここに座ってお茶を飲んで それから、彼に問うのだ。 先日の提案に対する答えを。 ───まあ、その言葉はあのときと まったくおなじ、つれないものだったのだけど。 私はわかっていたかのように眉頭を少し上げて、 それから下げて、またひと口お茶を啜る。] (62) 2021/05/19(Wed) 0:41:36 |
【人】 西園寺 飛鳥ふふ、どうして言い切れるの? 明日には考えが変わってるかもしれないのに。 [いつきても同じだという彼に、余裕の笑みを 向けたのに、その手がこちらに伸びるから。 すこしどきりと心臓が跳ねて、身構える。 頬に手が添えられる? それとも頭を撫でられる? なんて期待して目を閉じたのも束の間、べし、と 額に走った衝撃にびくん、と肩を跳ねさせてから 抗議するような視線をそちらに向ける。 じぃん、と痛みの余韻が残る額を覆いながら 唇を少し尖らせた。 キッと睨む視線にこちらからも睨み返して じぃ、とその目を見つめていたら 先に折れたのは彼の方だった。] (63) 2021/05/19(Wed) 0:41:53 |
【人】 西園寺 飛鳥[ふふん、と少々の優越感を感じながら、 視線をそちらに落とせば、そこには古びた花瓶。 修繕の跡だろうか。ぴしりと入ったヒビに 残った黄色いシミに、目を落として、 無機物なのに「痛そう」だと思った。 彼の言葉を黙って聞いて、区切られれば、 視線を上げてまた真っ直ぐ見つめる。] 傷になるかどうかは私が決めるし 傷になりそうだと思ったら近づかない。 私が好きなものは私が決める。 [そうしてきた。おばあさまのいうことを聞くのを やめて、自分で好きなものを選ぶようになった わたしだから、恋だって選ぶ。] (64) 2021/05/19(Wed) 0:42:10 |
【人】 西園寺 飛鳥私は江戸川さんが好き。 恋人になってほしいって思ってる。 ───だから、来週までの間、 今度は江戸川さん自身の気持ちを考えて。 [そうじゃなかったら強硬手段に出るから、と にっこり笑いかけて、席を立つ。] デートはないけどクラブにいってくる 今日友達が回すから。 [そう言って。] (65) 2021/05/19(Wed) 0:42:24 |
【人】 西園寺 飛鳥今度江戸川さんも一緒にいこーよ [と、にひひ、と笑った。] 次来る時は、コーヒー、もってくるね [じゃあ、ごちそうさまでした、と告げて くるりと踵を返せば、扉の方へと向かう。] (66) 2021/05/19(Wed) 0:42:40 |
【人】 西園寺 飛鳥[しつこい女はきっと嫌いなタイプ。 でも押していかなきゃ、彼の方からは 絶対にこっちに歩み寄ってくれないタイプ。 運命を感じたひとだから、わたしは、 ぜったい彼のことを諦めるつもりはない。 彼に恋人がいるだとか、好きな人がいるだとか、 実は結婚しているだとか!そういうわたしには どうしようもない、人と人との繋がりが そこにない限り、進まなければ絶対に あとで後悔するってわかってるから。] またね、江戸川さん♡ [ひらひら手を振ってウインクをひとつ。 扉が閉まってからも、店の前を過ぎるまでは そちらに目線を遣りながら、駅の方へと向かった。]* (67) 2021/05/19(Wed) 0:42:58 |
【人】 ぷにぷに グレザンこれは、おしゃれアイテムだな。 あいつらが喜びそうだ。 [ となりに並んでおしゃれな品々をながめた。 ほわほわ思い浮かべたのは森の友人たちだ。赤や黄の友人はよく、ぴかぴかの石やいい匂いの花を集めて身に付けている。 きっとこれを見たらほしがるに違いない。帰ったら教えてやろうと、メモを取り出して絵を描いた。半分は友人にもまかせる。協力すれば時間は半分だ。 その作業中、お店の人に何を探しているのか聞かれたので、自由研究のために街で売っているものを調べていると伝えたら、それはえらいとほめられた。思わず友人の顔を見合わせてから、ちょっとほこらしげに胸をはる。友人みたいに。やはり、これはいい自由研究になりそうだ。] (70) 2021/05/19(Wed) 4:59:45 |
【人】 ぷにぷに グレザン[ そして、次々にお店を見て回る。 中でも、甘い匂いにはふらふらと引き寄せられてしまった。ふわんと香ばしいそれは、毎日森で食べているものとは違う。お店の前でにょんと背伸びして、作っているところを見つめた。] こ、これは…… [ 真ん丸のあつあつ鉄板の上に、クリーム色の液体をおたまでとろりと流し落とす。じゅうじゅうという音と一緒に白いけむりを上げている液体は、変な形の木の棒でみるみる平べったく大きな円にされてしまった。真ん中がふつふつ膨らんだかと思えばくるっとひっくり返されて、きれいな焼き色になっている。 焼けたばかりの薄いぺらぺらに、今度は盛り付けていくようだが、その中身に思わず体をさらに伸ばした。] (71) 2021/05/19(Wed) 5:00:02 |
【人】 ぷにぷに グレザンあれは、めったに食べられない生クリーム! それを、あんなにたっぷり……! あれはいちご? ……まだのせるのか? 黒いとろとろ? あれがなにか分かるか? [ たっぷりの生クリームに、きらきらのいちごがいくつも。その上に黒いソースがたくさんかかって、さらに細かいチップのようなものが振りかけられる。食い入るように見つめたまま、隣の友人に何か分かるか聞いてみる。 はたして友人は知っていたのか。それとも、夢中になって見ていた自分たちに、お店の人が教えてくれたのが先か。どうやらあれは“チョコ”というらしい。なるほど、わからない。 完成したものをお客さんが受け取って、そばのベンチでもぐもぐと食べている。なんとも美味しそうに、楽しそうにぱくぱくしている様子を見ていると、そわそわしてしまう。やはりあれは、街でしか食べられない、とてもとても美味しいものではないのだろうか。] (72) 2021/05/19(Wed) 5:00:25 |
【人】 ぷにぷに グレザンここに来る前に話した。 街でしか手に入れられないものを買う、と。 その点では、これはまさに、街だけのものだ。 森では見たことがない。 そして、もう一つ大事なことがある。 これは食べものであり、持ち帰れない。 逆に考えれば…… 荷物がかさばらないのでは? [ 逆転の発想である。 持ち帰れないというのをデメリットではなく、メリットと考えるのだ。荷物にならないのなら、他にちょっと大きなものを買ってもいい、ということにもなる。 どやあ、とばかりにこの鋭い視点を披露してから、長い一本でメモをぽんぽんと叩く。] (74) 2021/05/19(Wed) 5:01:17 |
【人】 ぷにぷに グレザンそして、食べた感想をここに残す。 “食レポ”というやつだ。 どうだろう。なかなかいい案だと思う。 [ 早速当初の計画からズレかけているが、いい匂いには逆らえなかった。友人の賛成を得られたなら、ふたりでひとつ、焼きたての“クレープ”を注文する。 その美味しさと言ったら、思わず言葉を忘れるほどだったが、交互に一口ずつ食べてから、メモいっぱいに感想と絵を残すことにした。 初めてのクレープに大満足。小さな宝石が三つ減った。]* (75) 2021/05/19(Wed) 5:01:41 |
[1] [2] [3] [4] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新