情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 六鹿 賢斗 [ めちゃくちゃ、あのときは緊張した。 薄手の着物を着ていた彼女の手を握って、 別れ際に告白。 1ヶ月くらいで、と言われたら 元も子もないけれど 他の男に盗られる前に 振られても友達でいたかったから。 でも、彼女は少し驚いていたけれど、 首を縦に振ってくれたことを覚えてる。 大学では洋装、私生活では和装なんて、 ギャップがとてもいい。 そこから、 僕たちは恋人として過ごし始めた。 ]* (4) 2020/09/01(Tue) 13:17:28 |
【人】 宮野 利光[ あの人の俤を待ち、探して焦がれ、 夢を貪り彷徨っているうちに ゆらり辿り着いたこの土地に 大層立派な宿が建ちましたのは 今からほんの300年ほど前のことでした。 個の肉叢などとうに朽ち果て あぁあの世とか言う極楽浄土には やはり行けぬままであったなぁとぼんやり 花の色が移ってゆく様を眺めているが常 消えつ浮かびつする斑な記憶の中で 時折浮かぶ、 (6) 2020/09/01(Tue) 13:29:44 |
【人】 宮野 利光[ なによりも大事なはずの女子の亡骸を この目にしながら共に死んでやることも出来ず ようよう腹を切って死んだのは出奔してから 幾年も経ってからという為体。 弔いもないままに ふうわりと漂うだけの亡魂に成り果て 負うて川を渡ってやると言った あの日の契りも叶えられず この愛しい名の宿に縋るように ただただここに居るのです 同じように可憐な ]*何代目かの女将に出逢うまでは。 (7) 2020/09/01(Tue) 13:32:05 |
【人】 六鹿 稀 [ 夫と出会ったのは運命と言えるだろう。 大学で声をかけてきた人が、 優しい彼でなければ、多分熱海から距離を置いた。 温泉が好きだった彼女。 美鶴荘には、流石に行ったことがなかった。 老舗旅館は泊まるだけでお金が飛ぶ。 故に彼女は 日帰り温泉巡りを楽しむ性分になっていた。 ] 私でよければ、よろしくお願いします。 [ 5月のある日曜日。 次の日からまた学校と言う夕暮れ。 告白の答えを出したのち、 彼の唇が、彼女の唇に重なった。 ゆっくりと離れた彼を見つめながら、 彼女の体は、温泉あがりとは違う、 火照りを感じていた。 それから、山あり谷ありで 夫婦になる運びとなった。 ] (8) 2020/09/01(Tue) 13:49:23 |
【人】 六鹿 稀 [ 時が過ぎて結納の日。 老舗旅館 美鶴荘はとても広く、 隣に並んでいた彼の手を 不安でギュッと握ってしまった。 自分が、この旅館の女将として 将来切り盛りしなければならないのかと、 重圧を感じていたから。 ] …………え、? [ 六鹿 稀。まだこのときは唐草 稀。 見えてしまったかもしれないけれど、 そんな噂を聞いたことはないから、 見間違いだろうと思いながら、 廊下を六鹿家と唐草家で歩き進めるのだった。 ]* (9) 2020/09/01(Tue) 13:55:30 |
【人】 宮野 利光[ いつもは静かなこの宿が いつになく賑やかな。 例えば春の穏やかに暖かい風が 優しく辺りに満ちているような そんな日のことでした。 何事かとふと目をやれば、 心なしか誇らしげに見える様子で 歩を進めるこの宿の跡取り息子と その隣には少し不安げな顔の女子。 ぼんやりした頭ではありますがそれでも、 ああ祝言をあげるのかと悟ることが出来ました。 後ろにその家族と思わしき面々が それはそれはにこやかに歩く様が 見えたからでもありました。 ] (10) 2020/09/01(Tue) 14:26:31 |
【人】 宮野 利光[ なにやら胸にちくりと棘が刺さるような 妙な気も致しましたが、 それならばなおのこと。 幸せそうな空気に触れるのも良いと、 美しく控えめな和服のその女子に するり近づいて見たのです。 ] (11) 2020/09/01(Tue) 14:33:15 |
【人】 宮野 利光[ 魂消る思いがして息を飲みました。 そんなはずはない、と頭ではきちんと わかっているのですがそれでも 擦れる声を抑えることは出来ずに。 ] [ つう、と視線が合うたような気がしたのは、 都合の良い思いでしたでしょうか。 ]* (12) 2020/09/01(Tue) 14:36:48 |
【人】 六鹿 賢斗[ 彼女と付き合い始めてから、 いろんなことを考えるようになった。 いつ、自分が老舗旅館の跡取りなのかを 伝えるのか。 いつ、彼女とひとつになりたいと 伝えるのか。 考えることは沢山ある。 だからだろうか。 いつも彼女のマンションにお邪魔してるとき、 時々それで怒られていた。 ] 稀、お宿は好き? [ 偶に、こうやって怒られながら 質問を投げかけて、 稀の悩む姿をみていた。 ]* (13) 2020/09/01(Tue) 14:38:13 |
【人】 六鹿 稀 [ 結納のあの日。 稀は、春先ということで 白に薄桃の桜が裾にある着物を選んでいた。 何故彼女がこれほどまでに着物を所有しているのか。 それは、彼女の実家が呉服屋だからだろう。 初めて、彼の両親に会ったときにも、 呉服屋の娘ならば、大丈夫だろうと 両親公認の付き合いになったことを覚えている。 ] しっかり、働けるのかしら…… [ 結納に駆けつけたのは、両親と弟。 小さく呟いていた言葉を、 誰かに聞かれたような。 しかし、隣の彼も誰も彼女に反応を示さない ] ………………? [ 代わりに、誰かが誰かの名前をささやいた。 この宿と同じ名前を。 もし、本当にいるのならば、 また会うことになるのだろう。 ]* (14) 2020/09/01(Tue) 14:48:49 |
【人】 六鹿 稀 [ 彼が家にいるときは、よくくっついてくた。 かといって、付き合って最初の頃は 何をやるわけでもなくお昼寝をしたり、 テレビを見たりするだけだった。 しかし、時折難しい顔をして、 何も言わなくなってしまうことがあった。 そんなとき、彼女は彼に対面で抱きつく。 ] 賢斗さん、聞いてます? [ 特に何も話していなかったけれど、 こういうと、彼の意識がこちらに戻って、 ごめんね、と言うのだ。 そしてまた、質問が飛んでくる。 ] お宿は好きだけど、それが…何か? [ 温泉が好きなのだから、当たり前に宿も好き。 そんなこと、毎週末温泉巡りを 一緒にやっていた彼が知らないわけがない。 どうしたのだろう、と不思議に思って 彼の頬を撫で、顔を近づけるのだ。 ]* (15) 2020/09/01(Tue) 15:01:16 |
【人】 宮野 利光[ 可憐な彼女にとても良く似合う、 白地に薄桃の桜が咲いた着物は控えめで それでいて質の良いものだと 一目で見て分かります。 いつか二人で見たあの桜が、思わず閉じた 瞼に色鮮やかに浮かんでは消えて この歴史ある宿に嫁いで、 上手く働けるかと案ずる小さな小さな声が 己の耳に触れれば、 ] 困ったことがあればなんでも言え、 助けてやるぞ、と言えれば良いのですが… [ と、知らず知らずのうちに 困ったような笑みと共にそう呟いてしまうのでした。] (17) 2020/09/01(Tue) 16:11:56 |
【人】 宮野 利光[ それからと言うもの、彼女を見かけては ついと近くに寄ってしまうのです。 花を生ける彼女を見掛ければ、そうっと 起こす風で切られた茎を纏めてみたり、 掃除をする姿を目にすれば、 雑巾を静かに畳んでみたり、 散りゆく桜の花びらを目にした時には、 ふわりと舞うそれをそっとつまんで 彼女の肩に乗せてみたりしたこともありました。]* (18) 2020/09/01(Tue) 16:15:28 |
【人】 六鹿 賢斗[ 質問に対して、稀は首を傾げながら答えた。 そんな彼女も可愛くて、 また今度話すね、とだけ返した。 ] どういうところに就職したいとか、 今のところ考えはある? [ 対面になれば、軽く口付けながら。 もし彼女が、まだ何も考えていないと 言ってくれるのなら、話を切り出そう。 そう思いながら、 柔な彼女を抱きしめる。 ]* (19) 2020/09/01(Tue) 17:56:14 |
【人】 六鹿 稀 [ 結納の後、彼女は少しでも慣れるために 美鶴荘で働き始めた。 勿論、右も左もわからないから まずは仲居から。 ありがたいことに、若い人が多めで、 彼女は可愛がられていた。 ] あの、…このお宿に、………… 幽霊が出るなんて、お話聞いたことは……? [ ある日の休憩時間。 彼女は意を決して、先輩仲居たちに聞いた。 すると、彼女たちは首を縦に振った。 聞いてみると、お客と従業員と、 様々な人が見たことがあるということだった。 人によっては、優しく扱われただとか、 何かを手伝ってもらっただとか、 悪さをする幽霊では無さそう。 ] そう、よね…あの時に聞こえた声が、 本当なら……うん…… [ 彼女は、それから何度か不思議なことに 出会っていた。多分、彼女の成長を 見守ってくれているのだろうと思うと、 特に嫌な気分にはならなかった。 ] (20) 2020/09/01(Tue) 18:14:58 |
【人】 六鹿 稀 [ 2年目過ぎた頃、稀は賢斗と一緒に 新しい旅館経営について 話を詰めていた。 というのも、輿入れした後間髪入れずに、 彼の両親が近いうちに引退したいと 決意表明をしていたから。 ] 今のご贔屓様を蔑ろにする ということにならないかしら…… [ コンセプトをそのままにしつつ、 新しい風を入れようと思い、 言ってみれば隠れ宿で 乱交パーティーを催すという おかしなことをやろうとしていた。 代替わりのときにあわせて、 パーティーを開くついでに、 その色を顕著にさせたいと。 ] (21) 2020/09/01(Tue) 18:33:08 |
【人】 六鹿 稀仲居さんたちは、どうしましょう…… [ 勿論、従業員にも危険というか、 手は伸びることは目に見えている。 先輩仲居たちの中には 既婚者だっている。 彼とは偶に、 喧嘩のような状態になったこともあった。 そんなときには、大体中庭に出ていたが、 何故かふわっと風を近くに感じた。 一瞬だけのこと。 誰か、近くを通ったのだろうかと 考え始めたのは何度か経験してからのこと。 ]* (22) 2020/09/01(Tue) 18:34:11 |
【人】 六鹿 稀 [ 就職。 彼があの質問をしたのは 大学2年の冬くらいのことだった。 そのとき、稀はそこまで考えていなかった。 実家に戻って呉服屋の手伝いをすると 思っていたから。 ] どこに、とかはあまり…… ……賢斗さんと離れちゃうのかも。 [ 本心というか、可能性はあるから、 ついつい口にしてしまった。 彼といる時間は、甘くて幸せが詰まってる。 だから、もう少しだけ、と 彼をねだってねだって離したくない。 働くことは、なんだって利害関係だと 家族からは教えられてきた彼女だから、 彼の負担になるようなら別れることも 辞さないという心持ちだった。 ]* (23) 2020/09/01(Tue) 19:17:35 |
【人】 六鹿 賢斗[ 結婚してから、半年で彼女は若女将になった。 毎日、しっかりと業務をこなしたいたから 当たり前と言えば当たり前だろう。 そんな彼女に将来の経営形態を 話始めてしばらく。 勿論、喧嘩というのか話し合いというのか、 そういう時間が増えるようになった。 ] 既存のご贔屓がお泊まりになるときには、 通常の旅館として回せばいい。 毎日がそんな日だと思われても困るからね。 仲居たちには、契約書の更新をしよう。 そこで同意を得られなければ、 新しい職を提供する。 新しく雇う人間は恋人の有無も条件にする。 勿論、背徳的なことが好きな人間は こちらに責任を負わせないことを条件に。 (24) 2020/09/01(Tue) 20:11:03 |
【人】 六鹿 賢斗 [ 真剣に考えてくれているからこそ、 彼女の言葉のひとつひとつは重い。 何故、いつもの旅館経営から おかしなものにかえようとしたのか。 それは、 半分気まぐれ。 わざわざ高い金を払ってくるのだから、 どうせなら、楽しい思い出にしたい。 そして、ご贔屓を増やすなら これから先がある若い層で増やしたい。 故に。 代替わりの際には、 新しい風を入れたかった。 話せば彼女も 大方の理解を示してくれる。 だからこそ、意見の食い違いも 大切な時間だといつもおもう。 ]* (25) 2020/09/01(Tue) 20:19:51 |
【人】 六鹿 賢斗[ 就職のことはあまり考えていないらしい。 甘えてくる彼女は、誰にも見せない。 聞けば、彼女は恋人がいたことはあるけれど 関係を持つまでにはならなかったとか。 高校生だから当たり前と言えば当たり前か。 だから、初めての時は可愛かった。 ] 就職先、僕の家なんてどう? [ その一言を皮切りに、結局話してしまった。 すっごく驚いた彼女は 僕のほっぺむにむにして痛かった。 言い方が悪かったとも後から思った。 プロポーズととられても仕方がない台詞。 訂正を入れて、 いや、あんまりいれなかったような。 ]* (26) 2020/09/01(Tue) 21:30:33 |
【人】 宮野 利光[ 難しい話はわかりませんが、いつの世も 新しいことに挑もうとする者がいて、 そうして時代は変化して行くのだと思います。 不安げな様子だった彼女もいつしか その表情はきりと凛々しさを感じるほどになり、 それでいて残るあどけない少女のような 笑みから目を離せずに。 好いた女子に悪戯をするような幼子の如く ふうわりふわりと彼女の後ろをついてまわっては ちょっかいを出すのでした。 ] (27) 2020/09/01(Tue) 22:28:38 |
【人】 宮野 利光[ その季節が幾度か廻るうち、 仲の良い若夫婦である彼らにしては 珍しく、何やら宿の行末について 意見を違えるような声を 耳にすることが度々ありました。 大抵そのような喧嘩のあとは、彼女は ぼんやりと中庭に佇んでおりました。 小さく笑って隣にそっと寄れば、 絹のような髪を揺らす風が吹いたでしょう。 叶うならば、声をかけて。 心穏やかでない様子の彼女のその髪を そっと撫でてやりたいと、 いつだってそう思うのです。 ]* (28) 2020/09/01(Tue) 22:32:02 |
【人】 六鹿 稀[ 彼は、賢い。 だから、しっかり話せば事は収まる。 それでも偶に、 話していることが嫌になる。 話を切り上げて、彼と距離を取る。 勿論物理的な、距離。 ] ……なら、明日は書類作りです。 私は少し席を外しますので、 追いかけてこないでくださいね。 [ こういうと、彼は追いかけてこない。 それがわかっているから、 頭と心を落ち着かせるために、 また中庭に向かった。 ] (29) 2020/09/01(Tue) 22:45:34 |
【人】 六鹿 稀ふぅ……賢斗さんと、また喧嘩になっちゃった。 …………聞いてくださる? [ 風を感じた彼女。 誰がいるのか分からないけれど、 ぽつり、ぽつりと事の次第を話す。 彼に声を荒げて質問をしたら、 落ち着いた声で返事が返ってきた事。 そんな場面を作った自分が 子供っぽく思ってしまった事。 落ち着いたら謝ろうとは思っていることを。 ] 私、少しだけ怖いの。 まだ未熟なのに女将なんてやれるのかと。 勿論、賢斗さん含めて、大丈夫と 言ってくれるけれど…ね。 [ 誰かに話しているかのような独り言。 受け止めている人が近くにいるとは知らず。 休憩も兼ねて、彼女はもう暫く中庭に 佇むことだろう。優しい風を感じながら。 ]* (30) 2020/09/01(Tue) 22:48:49 |
【人】 宮野 利光[ ぽつりぽつりと話す彼女の瞳は こちらを向いてはおらず。 それでも独言と言うには少し不自然に 鈴の音のような澄んだ声が風に乗ります。 声を荒げても丁寧に返されたと話す彼女は 自身の幼さを恥じている様子だったけれど、 それがなんともいじらしく可愛いなどと 口の端が上がる思いが致しました。 ] …素直に謝ると言うのは良い女だ。 [ 見えてはいないでしょうが笑みを浮かべて。 ]* (31) 2020/09/01(Tue) 22:58:51 |
【人】 六鹿 稀 [ 誰に向けて話すわけでもないけれど、 誰かに向けていると思って話せば、 少しずつではあるけれど、 落ち着きを取り戻すことができる。 彼と良い旅館にしたいと思うから、 ここまで思い詰めるのだろうか。 ] 賢斗さんの考える新しい旅館、 とても良いものだとは思うの。 だって…知らない方と一夜の営みを楽しむのよ。 私は賢斗さん以外は、…… そこまで興味もないけれど、 人の中には、いるものでしょう? [ 乱交。乱れ交じること。 見ず知らずの人間と取っ替え引っ替えに。 稀は小さな声で、みてみたいわ、 なんて呟いただろうか。 ]* (32) 2020/09/01(Tue) 23:09:22 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新