人狼物語 三日月国


96 【第38回TRPG村】Purgatorium-煉獄-

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視点:


【人】 聖杯のジン ナディル

>>2:9の前段として

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───微かな歌声が聴こえる。

腕に刻まれた鎖を通して届くのか
砂漠を渡る乾いた風に乗って届くのか
それはたとえ知らない旋律であっても
祈りの歌であることだけはわかって
ナディルの耳にはよく慣れたものだった。

泣きたくなるほど穏やかな
遠い日々の記憶がナディルを揺り起こす。
 
(1) kintoto 2021/09/23(Thu) 17:56:00

【人】 聖杯のジン ナディル


母が亡くなる日、
ナディルは
姿を失いかけた


少女のような若く美しい容姿を保っていた
ナディルの母であったが、
既に寿命が近く床に伏せっていた。

いまにもその生命を終えようとする母の傍らで
まだ少年の背丈しか得ていなかったナディルは
母の手を握ったまま泣きじゃくっていた。

これまで何度も何度もしたように
指を鳴らして試みるが、
ナディルの『願い』は叶わない。
母は薄らと瞼を持ち上げ、
赤く擦れて皮が剥けたナディルの指を
優しく撫でてその所作を止めた。

『神の思し召しに従うのです……、
 ナディル──私の愛しい宝物。
 私は貴方を得て幸福でした。
 どうか、多くの人を導く尊きジンに……』

ゆっくりと告げながら、
母の魂がその身体から抜け出ようとする。
その瞳に最期の『願い』を映すべく、
──ナディルの姿は淡い光に包まれた。
 
(2) kintoto 2021/09/23(Thu) 18:01:59

【人】 聖杯のジン ナディル

 
母は最期のときに神を想ったのだ。

その時、父たる神が舞い降りなければ
ナディルの姿はを映していただろう。

ナディルを包む淡い光はすぐに治まり、
愛するに抱かれるようにして
母の命は幕を閉じた。

父は母の魂を腕に抱き、
これまで幾度となく繰り返されたように
ナディルにその使命を告げた。

『──我が子『願望の器ラグヴァ・シトゥラ』よ。
 人間を幸福に導きなさい。
 さすればお前の魂も天へと迎えよう。』

母を連れ去る父のまえで、
ナディルはただ……哀しみのなかで頭を垂れた。

父たる神は、一度も彼を
『ナディル』とは呼ばなかった。
 
(3) kintoto 2021/09/23(Thu) 18:07:35

【人】 聖杯のジン ナディル

 
───微かな歌声が聴こえる。

砂埃に巻かれながら、
少し崩れたバランスを保とうと不器用な足取りで
彼はナディルの後ろを歩く。
振り返ると、何が嬉しいのか満面に笑む。


その背に残された白い片翼は
ナディルには枷にしか見えなかった。


[〆]
(4) kintoto 2021/09/23(Thu) 18:09:01

【人】 聖杯のジン ナディル

■『自由』



全ての戦いが終わり、
最後に立っていたのはファルーサだった。

ああ、また、繰り返すのか。
あの残穢のような日々を。

悄然と立ち尽くす俺の目に
腕を拡げたラナーの慈愛に満ちた笑みが映る。

『さあ───いきなさい。愛しい魂たち』


視界が白い光に覆われて、それで───
 
(13) kintoto 2021/09/24(Fri) 0:13:47

【人】 聖杯のジン ナディル

「あ……れ……」

人通りの絶えた真夜中のバザール中央広場。
あの日、流星に撃たれたその場所で
俺は目を覚ました。

天の瞬く星々と、大きく白い月。
どうやら仰向けに倒れているようだ。

ここには珍しく贅沢な噴水が設置されていて、
傍らでキラキラと月灯りを反射する水飛沫が
辺りをほの明るく照らしている。

───地上に戻ってきたのか。

そう気づいた途端、
右の肩から腕へ灼けつく痛みが走った。

「っぐあ……ッ、…!!」

腕が焼け焦げて燃え落ちるような感覚に
思わず呻き声をあげて悶える。

「あ゙あ゙あ゙あ゙……ッ、
あ…っ!!」

ごろごろと転がり、地面をのたうち回り
痛みが落ち着く頃には
全身に冷や汗をかいていた。
(14) kintoto 2021/09/24(Fri) 0:18:29

【人】 聖杯のジン ナディル

起き上がろうと手をつくと、そこには
手首から肩まで登り巻きつく大蛇の姿が
くっきりと刻まれていた。

──堕天の印。反逆の証。


何故、と思う間に、
月光を遮るもののないはずの大地に
フッと影が落ちる。

ばっと振り仰ぐ、受け止める間もなく
腹の上にどすんと落ちてきたのは

───愛しい俺の堕天使だった。

 
(15) kintoto 2021/09/24(Fri) 0:24:45

【人】 聖杯のジン ナディル

「えへ」

鳩尾に喰らって声も出せない俺の上で
金髪の恋人は小さく笑う。

「……おま……()」
「すみません、まだうまく馴染まなくて」

背中の影をぴるる、と震わせる。

「本当に堕ちてきたのか……」
「傍に居ると、お約束しましたから」

腕を伸ばし、確かめるようにその頬に触れる。
 
(16) kintoto 2021/09/24(Fri) 0:28:22

【人】 聖杯のジン ナディル

「馬鹿だな……」

翼など捨ててしまえと言ったのに、
黒い翼罪の証を背負ってくるなんて。

「キミもでしょう?」

伸ばした腕の大蛇に甘く頬を擦り付けて
吸い込まれるように胸の上に倒れてくる。
その身体を受け止めて、柔らかく抱きしめた。


「そうだな──
お前の罪は、俺の罪だ。



この
自由
が罪ならば。
どこまでも背負っていってやる。


[〆]
(17) kintoto 2021/09/24(Fri) 0:34:04

【人】 聖杯のジン ナディル

【エピ議題】


■1 自分の作ったお気に入りのシーン、台詞など


ひとつ選ぶなら対アルバリの感情シーン
>>2:4 >>2:5 >>2:6 かな。
『欲望に惹かれる』ナディルの特異さと、
気紛れな奔放さ、そして2面性を絡めて表しつつ
アルバリとの距離を一足飛びに詰めるシーン。
アルバリからの素直な投げかけ>>1:78>>1:79
あってこそですが、上手く返せたんじゃないかなと
思います。

対ファルーサの感情シーン>>1:7 >>1:8 もプロローグの
仕込み >>0:104 >>0:110 >>0:149 >>0:152 >>0:186 から
綺麗に回収できて良かったなーと。

あとやっぱり対サーリフの絆シーン
>>4:13 >>4:14 における『堕天しないか?』は
もの凄く出し方に気を遣いました…()
思った以上にウケたので成功かな!
(35) kintoto 2021/09/24(Fri) 20:26:43

【人】 聖杯のジン ナディル

■2 他の方の作ったシーンで最も印象に残った場面、印象的な台詞など


アルバリ

貰った絆シーンも可愛かったんですが、
初っ端の 対サーリフ感情シーン >>1:13 >>1:15 >>1:17
アルバリの抱える人間不信、血の匂いと殺伐。
弱さへの嫌悪とニアリィイコールの自己嫌悪。
諸々が端的に表れていて好きなシーンです。
特に血の匂い…味?のとこが好きだな。
あと>>4:33 >>4:34 のサービスは最高でした(真顔)。

ファルーサ

対シャフの絆シーン >>3:32 >>3:33
文句なしのイチオシ。
獣性のファルと退廃のシャフを対比させつつ、
シャフの中の野性を引き出すシーン。
素直に上手い。
何よりふたりともめっちゃカッコイイのが良い!
自分には書けない類いで、余計に好きなシーンです。
あと対サーリフの感情シーン >>2:59
『ファルーサらしさ』もすごく好きです。
(36) kintoto 2021/09/24(Fri) 20:27:40

【人】 聖杯のジン ナディル

シャフリヤール

貰った絆シーン、秘密シーンも語り口が
すごく好きなんですが、対アルバリの
感情シーン >>2:118、からの絆シーン>>4:11 >>4:12
これ、アルバリを通してシャフも
フォーマルハウトに魅せられてるんですよね。
んでもって、シャフ的には『呪い』すら
他者を使って得るもので、この根っからの
特権階級意識というか貴族主義というか、
そこんとこが凄い好きです。痺れる。
あと>>4:20 はもうほんと大好きw

ラナー

誰が何と言おうと、アルバリに立てた
絆シーン >>3:57 >>3:58 でしょう。
『フォーマルハウトを置いていけ』って、厳しい言葉。
それでもラナーにしかできない導きですよね。
そこから>>4:3 >>4:4 とくる祈りが本当に美しい。
NPCとしてを超えて、
これは『ラナー』の言葉だよなと思いました。

サーリフ

サーリフのシーンというか言葉って、
正直いうと全部悪魔みたいに見えてました。
それもサーリフらしくて、
ナディルの愛したサーリフなので好きなんですが。
その中でアルバリへの絆シーン >>4:21 >>4:22 >>4:23
天使らしくて可愛かったです。
泣いてしまうのも…かわいい。
ナディルはキュンキュンしてアルバリに妬いてました。
(37) kintoto 2021/09/24(Fri) 20:29:47

【人】 聖杯のジン ナディル

■3 PLとして、自分のPCへのメッセージ


お前…煉獄で恋人作って帰ってきただけだけど
大丈夫か!?
まぁでも「親父の言うことさえ無視すりゃ
地上もそこそこ快適」ってことに気づけて良かったね?
友達いっぱいできたしな?
あと……もうちょっとサーリフに
素直になったほうが良いと思います…。
たぶん全然伝わってないぞ。
気持ちはちゃんと言葉にしないと伝わらんぞ…()

■4 PCとして、最後にひとこと


この地上に希望なんざ、今でも見出せない。
なのに何の因果か『地獄行きのチケット罪の証』と引き換えに
得たものが愛おしくて堪らない。

……此奴がいるなら、何処でだって生きてられる。

俺が俺である為に。
何より愛する『自由サーリフ』の為に。

[傍らの堕天使の手をぎゅっと握りしめて]
 
(38) kintoto 2021/09/24(Fri) 20:32:58