人狼物語 三日月国


29 【2IDソロル+ペア混合】交換日記【完全RP村】

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【人】 軍医 ルーク

[ 此処に奴らが押し寄せてきたなら、
 どこにいたって逃げ場なんてない。
 どれほど基地の奥、堅牢な一画に身を寄せようと同じこと。
 けれど――…

 敵は近づけさせないと、そう彼は言ってくれた。
 外壁から見えた敵の数がどれ程多く、
 その一体一体が、どれだけの力を有していたとしても、
 その言葉を、何よりも、強く信じている。
 歩き出そうとした、そのとき。


   
ぴしり
、と、
 
 乾いた音を立て、
 足元の床を、
銃弾
が穿った。]
(52) 2020/05/28(Thu) 0:01:31

【人】 軍医 ルーク

 

  『何処に行くつもりだ?』


[ その声に、振り向く。
 開いた扉の前、銃口を真っすぐに此方に突き付け、
 戸口を塞ぐように佇んでいる人影がある。

 ――覚えのある犬耳が、逆光の中、揺れた。]
(53) 2020/05/28(Thu) 0:01:53

【人】 軍医 ルーク

[ ぺんぎんを後ろに庇い、男を睨みつける。]


  そんなことをしている場合か?
  外に何がいるか、分かっているだろう、
  確か防衛部隊の所属だったな、
  何故いま、こんなところにいる?


 『その言葉、そっくりそのまま返そうか?
  お前が外壁から降りてくるのが見えたんでね。
  ああ、やっぱりそうか。
  そういうことなら、
  もう答えを聞く必要も、ないよなあ』
 
    
[ こつり、軍靴が鳴る。
 一歩の距離が近づく。
 自然と後ずさろうとする足を、
 “動くな!”と吼えるような恫喝と、
 かちゃりと鳴らされた銃が遮る。]
(54) 2020/05/28(Thu) 0:02:49

【人】 軍医 ルーク

 
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・
  『またお前があれを呼び込んだんだろう?
   第二研究所がああなったのは、
   機獣の武装が暴走したから――
   そんなことは大嘘だ。
   お前が、スパイを呼び込んだ。
   あの研究所には“何か”がいた、そうだろう?』
 
 
[ なにを、と聞き返そうとして――…
 思考が奔る。
 いま漸く、この男の耳まで届いた『噂』が
 どのように捻じれていたかを、察する。
 何処から嗅ぎ付けたか、この男は上が想定しているよりも、
 真実に近づいているのだろう。
 けれど、それは違う。

 また、一歩。
 逆光の帳から踏み出した男の顔が、露になる。
 其処に深く、昏くぎらついているものは――
 焦燥と、“恨み”]
(55) 2020/05/28(Thu) 0:03:58

【人】 軍医 ルーク


   違う。
 

[ これまで何を言われても、否定することはしなかった。
 “天の向こうには、機獣を送り込んでくる者たちがいる”
 その真実を、人に知らせてはならないと、
 そう言われていたからだ。
 上は恐らく、彼らの目的をいくらかは察しているのだろう。
 ――“彼女”から、血肉と命ごと毟り取った情報で。

 探ろうとする相手に何をされたところでどうでもよいと、 
 踏みつけられる人形を他人事の目で見るように、
 そう思っていたからだ。
 けれど、いまはもう、駄目だ。
 明確に否定の声を上げ、男に向き直り、睨みつける。]
(56) 2020/05/28(Thu) 0:06:00

【人】 軍医 ルーク


  『警告は終わりだと言ったはずだ』


[ 男はそう言って、引き金に指をかける。
 怒りに煮えながら、それゆえにどこか平坦な口調で。
 
 そうして、引き金をひとつ、引いた。]*
(57) 2020/05/28(Thu) 0:06:17

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
[ 霧がかかっていたとは言え、
  私の部屋や学校の図書室は見慣れた風景だった。
 
  そして今 きょろきょろ、と視線だけ動かして。
  視界の片隅には、点滴を吊るすスタンドが見える。
  ああ、ここは病院の一室なんだなって思った。


          見慣れた風景と知らない部屋
          ───── どっちが 現実 ?
            それとも、まだ夢の続き ?
 
 
             
その答えは とても簡単で
 ]
 
(58) 2020/05/28(Thu) 0:13:45

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
 
             
………… 濃厚接触だよ ?

 
 
    [ 届け、と伸ばしていた筈の私の片手は
        しっかりと繋がれていて >>3:-68
 
           その手の持ち主に ぽつり ]
 
(59) 2020/05/28(Thu) 0:13:48

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 

 
                 
……………

 
 
(60) 2020/05/28(Thu) 0:13:50

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
 
             
………
… うん、ただいま
 
 
[ 指から伝わる、確かなぬくもり
  
  本当は、別に夢の続きでも なんでもいいの
  いつものように顔を見て、声を聞いて

  傍にキミがいてくれる
  それだけでもう ────
  この世界は 私にとっての" 現実 "なんだから ]
 
(61) 2020/05/28(Thu) 0:13:52

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
 
   なんだかね ………
   霧のかかった世界にいたの
 
   誰もいなくて
   ……… 雪也くんがいなくて さびしかったの
 
 
[ ホッ、と安心したらチカラが抜けちゃって。
  弱々しく彼に向けた言葉は 幼稚園児のような口調で。
 
  そんな私でも、彼は抱きしめてくれたのかな >>3:-69
  ベッドに寝たままの私を
  そっと抱きしめてくれたのなら
 
  涙声で彼の名前を何度も呼んだでしょう ]
 
(62) 2020/05/28(Thu) 0:13:55

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
[ それからは、
  私が目覚めた事で病室が慌ただしくなった。
  精密検査だなんだ、って。
 
          ちょっと幸せだったから
          このままひと眠りしたかったのに

 
  数日後に出た検査結果は " 異状なし "
  医師が言うには、頭からアスファルトに落下した為
  脳の障害から意識が戻らなかったとの事で?
  身体の方はとっくに完治しているらしく。
 
  リハビリで筋肉を取り戻しながら
  約一ヶ月ぐらいで退院できるでしょう、だって。

  自粛してたり入院してたり ───
  私って卒業できるのかな。登校日数少なすぎな気が。
 ]
 
(63) 2020/05/28(Thu) 0:13:57

【人】 ★中学生★ 五十鈴 雨音

 
 
    …… 私ね、交換日記してたの
 
 
[ そんな話題を振ってみたのは、
  退院も間近に迫り 彼がお見舞いに来た或る日の事。
 
  日記を書きながら
  あれほど強く願った" 伝えたい事 "も
  結局はタイミングを逃したまま、未だ伝えられてなくて

  そもそも、どこまでが夢だったのか ───
 
  だから何気なく、何気なーく話を振ってみた。
  ベッドのパイプ部分に取り付けた
  パンジーのキーホルダーを指で揺らしながら。 ]
 
(64) 2020/05/28(Thu) 0:14:00

【人】 軍医 ルーク

[ 脚部に走る強い衝撃に、痛みはない。
 けれども、武装でもなければ機能にも劣る義足の何処かが、
 ばきりと嫌な音を立て、何かが砕ける感触が伝わる。
 片足からかくりと力が抜け、揺らぎかけた身体を、
 咄嗟に手近なドアの枠に手をついて支えた。]


  少し考えれば分かるだろう、
  もしわたしが天の向こうとの内通者で、
  そのせいで研究所の事故が起こったとするなら、
  上が放っておくはずがない。
  前線送りで済むどころか
  即処刑がいいところだ。


[ そう、男が疑っているのはそういうことだろう。
 “自分が機獣から回収された部品の扱いを誤り、
 事故を起こしたという噂”
 ――真相を隠すため、意図的に広められたそれではなく。
 どこからか、カイキリアの存在を嗅ぎ付けて。
 自分が彼女とかかわりがあったことを知り、
 爆破事故に結びつけたに違いない。]
(65) 2020/05/28(Thu) 1:37:57

【人】 軍医 ルーク


  『だったら説明をしてもらおうか?
  研究班の奴らが言っていたな、
  お前は、誰も知らない、知りようがない
  機獣の通信機を、一度の捜索で見つけてきたと。
  それにな、見張り台で不審な動きをしていたお前を
  見かけた見張りがいるんだよ。
  大穴の調査?
  確認したが、お前にそんな任務はないはずだ。
  そのとき、一体何をしていた?』


[ その問いに―― 一瞬のこと、口を噤む。
 通信機を見つけることが出来たのは、
 嘗て研究所で同じ部品を見たことがあったと、
 そう話すことも出来ただろう。
 けれどもその一瞬のうちに、どうしても、
 それを本当に見つけたのが“誰”であるかを
 このような男に知られてはならないと、そう過ったから。
 見張り台でのことを問われたなら、
 懐に大事に抱えたままの赤い袋に、指が伸びる。

 その一瞬の沈黙をどう捕らえたか、
 男が再び引き金に指をかけようとした、そのとき。]
(66) 2020/05/28(Thu) 1:38:35

【人】 軍医 ルーク

[ ―― その幾つかの出来事は、同時に起こった。

 外壁の外、最早間近へと迫っていた蟲型の機獣が、
 高台の上に現れた敵へと無数の矢を放ち、>>37
 炸裂した対機獣砲が、
 砲声すら巻き込み、爆発音を上げる。

 爆炎が噴き上げ、煙が外壁の外を覆い、
 蟲型が断末魔の叫びをあげる。
 衝撃に煽られ、
 機獣と比べるべくもないほどに小さな赤い身体が、
 外壁の方向へと吹き飛ばされてゆく。>>40]
(67) 2020/05/28(Thu) 1:39:08

【人】 軍医 ルーク

[ そして、外壁の“もう一か所”
 三体の前方からの進撃に紛れるように、
 周りこんで後方へと迫っていた
“もう一体”

 遂に行動を開始する。>>3:298
 
 迷彩を施した鱗に覆われたその体躯は、
 例えるなら蛇に似ているだろう。
 それは基地の側面に迫り、鎌首を擡げ、
 蟲型が破壊されると同時に、その巨大な口を開く。
 放たれた砲弾が、外壁の一画へと直撃した。

 外壁の上部、見張り台が傾ぐ。
 がらがらと崩れ落ちてゆく石壁、
 ひとなど容易く押しつぶしてしまう程に巨大な瓦礫が、
 中庭に雨のように降り注ぐ。
 最後に、ずん、と音を立て、
 見張り台の残骸が、地に突き立った。

 そして、間を置かずに次の攻撃が放たれる。
 基地内部の建物へと砲撃が撃ちだされるその寸前、
 防衛部隊の反撃が蛇の横腹に突き立ち、
 その軌道が逸らされた。]
(68) 2020/05/28(Thu) 1:41:35

【人】 軍医 ルーク

          [ 砲弾が、炸裂する ]


[ 音も、視界も、すべてが真っ白に染まる。
 すべての瞬間が、ひどく引き伸ばされるようだった。
 目の前にいた男が振りむこうとしている、
 その動きがひどくゆっくりと見える。

 ぱきり、と、
 砕け散る窓ガラスの最初の罅すら、
 見えるほどの一瞬だった。
 
 咄嗟に、身体が動いた。
 まだ動く片足、両腕、その全部を使って、
 ぺんぎんを掻っ攫うように抱きしめ、
 手をついていたドアの枠の内側へと滑り込む。
 
 全てが飲み込まれて行くような、真っ白い一瞬の中で、
 全身で抗いながら、手を伸ばしてくる死から逃れようと。]
(69) 2020/05/28(Thu) 1:42:40

【人】 軍医 ルーク


[ 考えていたことは、ひとつだけ。
 絶対に死なない、死ぬものか、
 ここで待ってるって約束したんだ、
 これから何が起こるとしても、何処に行くとしても、
 決して離れない、君の手を離さないって。


    そうだ、わたしは――…  ]
(70) 2020/05/28(Thu) 1:43:20

【人】 軍医 ルーク

[ ――… ]

  ―― 
回想:第二研究所
 ――

>>2:183
[ 目の前が真っ白になる。
 格納庫に明かりが灯り、
 暗闇にいた目が明るさに慣れずにいるうちに、
 格納庫の扉が開き、なだれ込んできた兵士たちが、
 見る間に自分たちを取り囲んだ。

 銃口が突きつけられる。
 彼女に、そして自分に。]


  『泳がせておいて正解だった。
   案内ご苦労、
   “良い警官と悪い警官”というのは、
   古臭い手だが悪くない、
   君はいい仕事をしてくれた』


[ 上司はそう言って、青い光を放つ通信機に指を伸ばした。]
(71) 2020/05/28(Thu) 1:44:04

【人】 軍医 ルーク

[ 銃を突き付けられ、兵士たちに拘束され、その少女は]


  『――、
   あーあ、ばれちゃったか。
   折角上手く行くと思ってたのに』


[ くすり、あざ笑うように笑った。]


 『本当にね、“案内ご苦労”――
  わたしも、もう少し警戒するべきだったかなあ。
  こんな甘い子を一人で担当にして、
  泳がされてるに違いない、って』


[ 彼女は、別人のような眼差しを向ける。
 その視線に、ぞくりと背筋が泡立つ。
 まるで機械のように、虫のように、
 感情のないまなざし。
 上司の男は彼女を見下ろす。]
(72) 2020/05/28(Thu) 1:44:45

【人】 軍医 ルーク


 『機獣とともに此奴が回収されたのは僥倖だったな、
  戦闘要員というよりは、情報を集めるために
  人に取り入る術を叩きこまれた諜報員だろう。
  病原菌のようなものだよ、
  放っておいては酷い被害が出ていたに違いない。
  さて、君らの処分はまた考えねばならないとして――
  これが通信機か?
  記録が残っているなら、これは役に立つな、
  十分な成果だ』


[ 次の瞬間だった。
 彼女――カイキリアが、息を呑む。
 顔色を失い、目を見開き、
 自分に銃を突きつける兵士たちの“向こう側”にある
 ひとつの部品を凝視して。
 彼女の視線を追い、気づく。
 その部品に、赤いランプが灯っている。
 ちか、ちか、と規則正しく点滅しながら。]
(73) 2020/05/28(Thu) 1:46:03

【人】 軍医 ルーク


  『……嘘、どうして?』


[ 彼女の口から零れたその声は、
 先ほどまでとは打って変わって、
 凍り付いたような恐怖を露にしている。
 彼女はもがき、兵士たちから逃れようとする。
 がつりと殴りつけられ、顔を上げ、叫んだ。]


  『爆発する…!!
   いやだ、やだ、
   此処から逃がして、逃げないと…!!』


[ 僅かな間のこと――奇妙な静寂が、その場を支配する。
 そのような馬鹿な、と、口にしかけた上司の口が、
 言葉を発せず噤まれる。
 ひい、と引きつるような息をしたのは、
 自分たちを抑えていた兵士だ。
 彼らは顔を見合わせ、銃を放り投げ、
 ばらばらと勝手な方向に駆けだしてゆく。
 そして、最後まで残った上司の男もまた、
 彼らの後を追って走り出す。]
(74) 2020/05/28(Thu) 1:46:48

【人】 軍医 ルーク


   ――、 
   逃げるよ!


[ 茫然と立ちすくむ彼女の手を取り、駆け出す。
 どれだけの時間があるかは分からない、
 一分? 数十秒? それとも――

 格納庫を駆けだし、あたりを見回す。
 どこまで余裕があるだろう、
 視線で問うた彼女の目を見て、
 もう本当に猶予がないのだと知る。
 背後から迫って来るそれは、確実な死だ。

 限界まで足を動かして駆け抜け、
 手近な部屋へと駆けこんだ。
 倉庫のようだった。
 少しでも奥へと、彼女の手を引いて、
 物陰へと身を潜め、身体を丸める。

 がたがたと指が震える。
 耳も、尾も、何一つ現実味のない圧倒的な恐怖の中で、
 破裂しそうに早鐘を打つ鼓動の音を聞きながら、どくどくと。]
(75) 2020/05/28(Thu) 1:47:36

【人】 軍医 ルーク


 『……きらいだった、
  あんたたちなんか、大っ嫌いだった、
  笑ったり、怒ったりしてもいい、
  悲しんだり、楽しんだり、なんでも持ってる、
  当たり前みたいに、“感情”があって、
  わたしに酷いことをする、あんたたちが』


[ そう言いながら、彼女は、
 ――… この手を離そうとは、しなかった。

 強く、固く、互いの手を握りしめる。
 この手もまた、震えていた。
 彼女の言葉のすべてを受け止めるように、頷く。
 その憎しみは、きっと、わたしの中にもあるものだ。
 天の穴の向こうに居る者たちと会ったなら、
 どうして父を殺したのかと、
 一片も思わずにいることが、できるだろうか。
 彼女にその影を重ねようとは、思わなかったけれど。

 それでもどうしても、自分たちは、
 世界の外と内で殺し合う場所に立ってしまっていたのだ。]
(76) 2020/05/28(Thu) 1:49:30

【人】 軍医 ルーク

[  音が、視界が、白く覆われる。
  闇に落ちてゆく。
  さいごに、聞こえる声があった。]


  『 ごめんね、おとうさん、おかあさん、
    きっとわたしは帰れない。 』


>>1:318 
 
(77) 2020/05/28(Thu) 1:50:16

【人】 軍医 ルーク

[ 視界のすべてが赤かった。
 炎は消し止められたようだ。
 耳音で滴る水の音に、
 ああ、流れている血だなと――そう思った。

 辺り一面の瓦礫の山、
 吹き飛んだ天井の向こうは、一面の闇だ。
 誰かの声が聞こえる、誰かの動き回る音、
 瓦礫をかき分ける音。

 彼らの声が、ひとつも意味を為さない。
 頭の中はぐらぐらと揺さぶられて、
 目に飛び込んでくる景色も一秒後には捻じれ、
 水にぬれて絞られる布のような心地がした。

 身をよじり、身体を動かそうとする。
 けれど、からり、と手元の破片が音を立てた、それだけで。

 そうだ、繋いでいた手が、あったはずだった。]
(78) 2020/05/28(Thu) 1:50:36

【人】 軍医 ルーク

[ 首を傾ける。
 小さな傷だらけの手は、確かにそこにあった。
 自分の右手と、つないだままだった。


 ――その手“だけ”が、あった。

 動いた視界の先に、大きな瓦礫がある。
 その下にあるものは――ああ、位置的にはわたしの脚か、と、
 他人事のように、思う。

 音のすべてが遠ざかる。
 けれど、鼓膜は大丈夫。
 視界に問題はない、赤いのは、血が入っているから。
 そんな風に淡々と分析しながら、
 駆け寄ってくる誰かの足音を聞きながら、

 まるで、ピアノを弾いている指の上に
 蓋を思い切り閉められたように、
 自分の中に『何か』が致命的に断ち切れたということに、
 気づいては、いた。

 そのときは、それは両脚のことだと思った。
 切れてしまった糸はそれだけではなかったということを、
 病室で自分を診察した医師のカルテを盗み見て、知る。

 ―― そのときも、もう、何も感じなかった。]
(79) 2020/05/28(Thu) 1:51:11

【人】 軍医 ルーク


            [ ――… ]

[ 身を起こす。
 起こそうとする。
 意識なんて、あるかないかすらもう分からないけれど。
 自分が確かに『生きている』ということだけは、
 はっきりと、分かっている。]

 
  ……死ぬもんか、


[ そうだ、絶対にだ。
 わたしは、待ってる。
 君が帰って来るのを、君にまた会うのを、
 そして――…
 これからもずっと、一緒に、いるんだ。]
(80) 2020/05/28(Thu) 1:52:15

【人】 軍医 ルーク

[ きゅいきゅいと、腕の中で声を上げる温もりがある。
 額が割れ、血が流れ込んだ右目の視界が、
 赤く覆われていく。
 ぽたり、血が頬を伝い、床へと滴り落ちる。
 
 少し離れた場所に、あの男がいる。
 銃を落とし、意識はないが――
 見たところ、生きている、大丈夫だ。
 どうやら砲撃の直撃は避けられたらしい、
 だとしたら、逃げないと。少しでも遠くへ。

 足に力を込めたそのとき、
 がくり、引っ張られるように身体が床へと落ちる。
 義足の片方――先ほど撃ちぬかれた足を、
 倒れた棚が押しつぶしているのに気づいたのは、その時だ。
 ぺんぎんが腕を抜け出し、必死で持ち上げようとするが、
 到底動く重さではない。]
(81) 2020/05/28(Thu) 1:53:21