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205 【身内】いちごの国の三月うさぎ
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
[ 昨晩に比べれば、さっくりと事が済んだとしても
半分布団の中で、事に及べばどうしたって、
熱は籠もるし、汗もかく。
時計を眺めて、彼女らが来る前に
風呂へ促して。
あたかも、そういうことがありました、
という風に見えない程度に布団を畳み、
着替えを済ませて、彼女らを迎え入れた。
無論、窓を開け放ったままで。
彼女らとのやりとりを聞いていたのか、
準備が整った段階で、脱衣所から
出てきた彼に、おかえり、と声を掛けて。 ]
朝食も、美味しそうだね。
いただきます。
[ 穏やかな時間を始めようとする。
――つい一時間前まで見せていた顔とは
別人みたいに、にこやかに。 ]
朝からこんなに沢山の種類があるって
贅沢だよね。
[ 夕食もそれは見事なものだったが、
朝食とて、引けは取らない。
朝採りであろう野菜をたっぷりと使った
和え物、炊きたての御飯、温泉卵。
貝柱で出汁を取ったであろうスープは
お茶漬けのようにしても、良さそうだ。
普段であれば、これほどの量を食べることは
ないけれど。諸事情で、なかなか空腹だったので。 ]
お味噌汁、おいしい。
[ 今日の予定はどうだったか、昼食はどこかで
取る予定だったかもしれないけれど、ぺろりと
平らげてしまいそうだったし、 ]
ご飯もうちょっと いこうかな
[ 炊きたてのつやつやした米があまりにも
美味しくて、おかわり、も視野に入れていた。* ]
[共犯と呼ぶにはすっかり熱を上げられて、
緩やかな高まりが収まらなくなっていたのは、
すっかり彼の手によって、作り変えられて
甘く柔らかくなってしまった身体のせい。
おはよう、なんて平然と挨拶を交わしていても、
手は布を押し上げる下肢に伸びていて、
そっと握り込まれたら、息を詰めて、
ぴくんと跳ねるみたいに、腰が疼いてしまった。
かろうじて返せた言葉は、悪態一つ。
腰がぶつかって彼も兆しているのが分かったら、
小さく唸りながらも、降りてくる唇を受け入れて、]
……ぅ、
ンッ、 ……
[とろ、と眠気よりも彼に溶かされるように、
瞼が降りていく。瞼の裏に浮かぶのは、彼の姿。
その後は、もう、――――言うまでもないだろう。]
[仲居さんたちが朝食を用意する間に、
ドライヤーを使う時間は十分にあったから。
半分以上乾いた髪は、軽く水気を残したままだった。]
……ただいま。
[おかえり、というから反射で応える。
やっぱりその表情にさっきまでの艶を帯びた姿はなくて。
ギョーカイジンってみんなこうなのかな。
みたいな、余計な考えた浮かんだけれど、
それを口にするのは辞めておこうと思う。
知ったところで、俺の知っているギョーカイジンは、
彼の一人なので、何の役にも立たない。]
[並んだ朝食の前に腰を下ろせば、
ほわりと仄かに炊きたての御飯の香りがした。
食事を目の前にしてしまえば、
そんなことも忘れて、表情が綻ぶ。]
いい匂いですね、……美味そう。
[自身でも朝食はそれなりに作るけれど、
これほど数は多くはない。
手抜きでピザトーストにする日もあれば、
休みの日には時間を掛けてブレックファーストも。
彼と朝を一緒に過ごすようになってからは、
和食が好きな彼に合わせて、
朝食を日本食にすることが増えてきている。]
[ほうれん草をツナを和えたものは
砂糖と醤油で甘くもさっぱりとしていて好みの味だった。
それだけ食べても美味しいけれど、
炊きたてのご飯に乗せて米と一緒に食べれば、
熱さと甘さが相俟って、より美味しく感じる。
一般的な味噌汁ではなくスープなのは少し珍しい。
昨夜の海鮮も美味しかったし、貝柱が使われているなら、
海もそう遠くはないのかもしれない。
スープを一口飲んで、ご飯を運んで。
貝類の出汁が十分に効いている味を堪能する。
焼きたての魚は、焼き鮭。
温泉卵の他に、定番の厚焼き玉子。
鮭の身をほぐして、口に運べば程よい塩気が
口内に広がって、鮭の旨味を引き立てる。]
旨い。
[シンプルに、一言。それだけでいい。]
[ 朝食を済ませ、合流までの時間。
外を散歩しようと言い出したのはどちらだったか。
川のせせらぎに混じって少し遠くに、
水の流れる音がする。
自分たちの居室の他にも部屋に備え付けの
温泉からか、それとも足を踏み入れる
ことがなかった家族風呂や、大浴場の方か。 ]
蛍って見たことある?
随分昔に、祖父の家で一度だけ
見たことがあるんだけど、
夏はそういうとこに行けたらいいなって。
[ 約束を口にすることへの戸惑いや罪悪感を
消してくれたのも、君だったから。
なんて大げさな理由なんか、いらない。
ただ君と、見たことのないものを、一緒に見たいだけ。
これが最後ではなく、これが最初なのだから。
これから何度だって、そういう機会は作れるのだ。 ]
[――――これは余談の、蜜月の話。
翌日の休みが合えばいつもの流れで
彼の家に尋ねることになり、その日も。
少し遅めに帰宅した後、
二人で珈琲を飲んで休憩を入れて、
先に風呂を促されたので、遠慮なく汗を流しに向かった。
泊まる日に、何もしないで抱き合って眠る日もあれば、
互いにどちらともなく熱を求める日もあった。
そういう"準備"をするのは、出来るだけ。
彼には見つからないように密かに浴室で済ませることも
度々、あって。]
…………、
[今日も後ろに伸びていった手は、
相変わらずぎこちないまま、自分の身体を解す為に、動く。]
[『俺で勃つのか?』という考えは、
以前にもあったけれど、これもまた。
『俺で興奮するのか?』という疑問符はあれど。
求められていることは把握してしまった。
エプロンと彼の前にしゃがみこんで、
エプロンを拾い上げた後、布面積の大きさを確認しながら。
少し、躊躇い。]
……服の、上からで、いいなら。
[ぽつ、とこちらも零すように返した。
さすがにエプロンだけを身に纏うのは恥ずかしいが過ぎる。
……し、料理人の手前、
どうしてもエプロンというものが意識的に制御をかける。]
[そうして、立ち上がったなら用意された
エプロンを拡げ、頭から被って後ろ手にリボンを括る。
エプロンの裾より少し短い丈のパンツが前掛けに隠れるが、
上はTシャツの上に胸当てをつけるという、
何ら不思議はない、エプロンの形。
女性のように胸の膨らみもない。
それでも気のせいか、最近胸筋周りが
肉付きがよくなってきている気はするけれど。
汚れのない、何の変哲もないエプロンを装着して。
くるりと、半身を回して。背中側を見せれば、
後ろはリボンだけで少しずり上がったハーフパンツと、
Tシャツが覗いているだろうか。]
……これで、い?
[首だけを後ろに向けて、彼の様子を伺いながら、
これから、いたします。というのなんだか少し恥ずかしい。*]
[ その姿を今から、自分が
欲望の赴くままに、汚すのだ。
理想が期待になり、
期待が現実に変わった瞬間、
ギラついた視線が、君の全身を舐める。 ]
あぁぁ……… やばい、予想以上、………
[ 様子を伺うようにされて、
たった二歩の距離を焦るように詰めて。
ぎゅう、と後ろから抱き締めた。 ]
もう、勃ってる……
[ 抱きしめればゆるりと、どころか
ぐわっと、熱を蓄え始めてるそれが、
体に当たる。当たれば、どうしたって
気づかれてしまうだろうから、口に出して。 ]
すごい、興奮する……
[ 今夜、寝られなくても諦めて欲しい。
明日は休みで仕事もない、昼まで寝てても
構わないから。
ぴたりと隙間なく、抱き締めたなら
興奮気味に、熱い息を、聞かせながら
悪い手が、するりと、Tシャツと肌の間に
割り込んでいく。* ]
[エプロンを身に纏うのにそう時間は掛からない。
たった布一枚、紐で結んで留めるだけ。
それがキッチンのあらゆる助けになることを知っている。
後ろ手に紐を結んでいるとき、
ふと視界の端でそわそわしている姿に苦笑を零して、
そこまで期待されていると、完成度の低さに、
笑われてしまうかなと思ったものだったけど。
いざ、お披露目するように半身を翻せば、
想像以上に色欲の色の付いた目を向けられて、
少し、ドキリと心臓が跳ねた。
時折見せる堪えきれないような雄の顔に、
これまでも何度、狼狽えさせられたことか。
下から這い上がるように向けられる視線が、
身体の隅々まで、見られているようで。]
……いつも通り、ですけ、どっ……
[普段通りを装うとして、手を伸ばされ、
後ろから抱き竦められたら勢いに、語尾が跳ねた。]
[ぎゅう、と隙間なく抱き込まれて。
意識せずとも腰元に硬いものが当たる。
抱きしめられている分、身動きが取れなくて。
興奮して掠れた声が、耳朶にちょうど当たって。]
……ンッ、 ……、
[それだけでぞく、と期待に身が甘く震えた。
とくとくと、早まっていく心臓が収まらない。
前に回った腕に、そっと手を添えて。
もう一度、改めて後ろを振り向いたら、
首を向けた先に、溜息を漏らす彼の顔があって。]