45 【R18】雲を泳ぐラッコ
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| [無遠慮に女性を眺めたが、 彼女の意識が此方に向く事はなかった。 >>1:62青年があれほど叫んでいるのだから、 通常であれば気付かないと言う話ではないだろう。 怪訝そうに守ってくれる相手を見る姿は、 気に留めないと言う雰囲気でもない。 観察が終われば青年へと視線を戻す。 動揺しないのは本来の性格と、場慣れと、 目的の為なら刃を突き付けてくる相手だと思っているから。 ] …あんたの名前は? 気付いたらここにいた。俺はここを知らない。 [“志隈”ではなく“シグマ” コードネームの様かもなとは説明を省き、 不審にも構わず名前を聞く。 質問は恐らく返らないだろうが。] (2) 2020/10/02(Fri) 8:24:00 |
| [“帰り方もわからないから別にいい。” >>1:63口にする事はなかったが、 逃走する気も無く流れに身を任せようとした。 様子を窺うのが基本ではあるし、 此方を見れるのが眼の前の相手一人と仮定すれば、 幾らでも対処の仕様がある。 一度撃たれて怪我をするかどうか試してみるのもありかとまで、 考えてしまえるのは一般的ではなかったか。 夢と考えているから多少呑気で、 世界の質感が現実感を刺激してもあまり変わりはせず。 女性が何かを後ろで仕出して、 青年が飛び上がるのも無愛想に眺めた。 >>1:64どうやら実力行使に出たらしく、 言葉で忠告するより行動で先に制するタイプかと彼女を認識し。 青年に…あんた以外には見えてなさそうだと先に忠告すべきだったかと、今更至り。 何度も視線を往復する姿には、 若干生温い目を向けた。 大変だな、と他人事。 彼にはここでの感触があるらしい。 此方に気付ける理由はわからないが、夢だからで済む話か。 ぞんざいに扱われても変わらぬ従順さは 助けられた恩義があるからかと、 言葉を拾っては想像をしていく。 仔犬の様に吠える青年は見た事無い側面の筈だが、 面影もある様な気がして面白くも思え。] (3) 2020/10/02(Fri) 8:24:08 |
| [ブレない銃口は慣れを感じる。 >>1:66此方も同じ頃には既に銃に慣れていたから、 気にはならなかったが、 彼は何時の年頃から握ったのだろう。] …一般人だ。 彼女とは初対面だし、やられてもない。 [過去を鑑みて、 更に警戒を持たれる気がして軍人と紹介するのは止めておく、 平和な国なら一般人だろう。多分。 細かく説明する気もなければ、 誤解も解けないだろうなと考えながら、 当てられた銃口に従って外へと足を向けようとして、 一度止まり。] 彼女とあんたの関係は? 何時からこういう事してるんだ? [聞くだけ聞いておこうという精神。 正直不審者に話しかけられてペラペラ話すものではないし、 夢で、自分が作り出した物でしか無いのなら、 意味はないことだが。 当てられた感触は随分とリアルで、 齎される情報ももしも本当ならと興味深かった。] (4) 2020/10/02(Fri) 8:24:15 |
| [あまり時間を取ってもいられないだろうと、 質問を投げかけた後には大人しく扉の方へ向かう。 >>1:67そうして外に広がる場所はどんな所だったろうか。 一つ瞬き、後ろへと振り返ると、 何時もの姿に戻った男の項垂れかける所。] …何してるんだ、あんた? [不審なものを見るような目を向けた。 姿は現在のものに思えるが、 作られた存在かどうかまでは判断が出来ない。]* (5) 2020/10/02(Fri) 8:24:30 |
| 志隈は、メモを貼った。 (a2) 2020/10/02(Fri) 8:26:31 |
| [青い青年を脅かしてやろうなんて考え付きもしなかったが、 もう少し話を交わせば、人となりを少しは理解出来たか。 話す気があれば、だが。]
あんたに似た男を知ってるから、気になった。
[理由は告げたものの、予想通り返らない答えには納得し、 否、想像より大分口は悪かったが。 最初に話を聞こうとした時も、 同じようなフレーズを言われたなと僅かな懐かしさ。
そういえば、何故か、国境を越えて言葉がわかるんだなと思ったが、 これも夢の力というものか。
その間に銃口を押し付け直されて、 大人しく従った振りして進む。 銃口を気にしてないのは滲んではいて、 キレやすい人間なら既に発砲しててもおかしくないが、 口に反して大人しい方なのだろうか。
一歩、二歩と緩く踏み歩けば、 少し得意げな声が聞こえる。 トップで、青年と青年の家族の恩人。 生い立ちなど知らないが、馳せて、反芻し。
視線を向けることなく、扉に手をかけて。]
…なら、何故、あの女性の側から離れた? (10) 2020/10/03(Sat) 0:28:27 |
| [その問いかけが届く前に扉を潜っていたか。 後ろの扉がどうなったかを見る事はなく、 聞こえた呟く声は、寝る前に見たアジダルと同じ声色。
不審な目で見下ろして、視線を合わせる。 謝罪も何も無くとも気にしない、以前に 今のアジダルが先程の小屋の何処にいたかがわからず。 扉の中では姿が変わっていたとまでは思っていないのは、 銃を突きつけてお前誰だとデカデカ警戒が、 青年の顔に書いてあったのだし仕方ないだろう。]
あんたの記憶に近い場所ではあるんだな。 “夢”であるなら、 互いが本物の様に見えるのが意味がわからないが。
[夢は一人で見るものだ。 それなら、この空間は何かと眉を顰めたが、 アジダルはそこまで気にしていないように見える。 構造を考えても無意味ではありそうだ。 一先ずは、何かを果たせば朝が来るのだろうと仮定し。] (11) 2020/10/03(Sat) 0:28:34 |
| [薄く開いた扉の先に広がっていたものは見えなかった。 静かに閉じる扉は開くべきでは無さそうだと、問わず。
幾つか現れる扉の先には、 アジダルの過去が広がっているのか、と辺りを見回す。]
正義のヒーロー? 家族や大切なものを守れる人間になる事は良いと思うが。
[不意に出た単語には瞬いて。 正義でなくても守れればいいと考えている方だから、 守る事に正義が必要なのかの答えは出ずに、 悪くはないだろうとは示しておく。
特撮に憧れる無邪気な子供でも、 見せて貰えるならそれはそれで興味深いし、 アジダルにとっての正義がどんなものか気にならないではない。]
で、このままここにいても時間経過しなそうだが、 そっちの扉は入っていいのか?
[遠くに見えるものを示して、問いかける。 アジダルには何が待ってるのか予想は付いてるのだろうか。 入るなと言われれば、無理には近付かないし、 乗り気でなくても入っていいと言われれば、 扉に手をかける事にしよう。]* (12) 2020/10/03(Sat) 0:28:41 |
| 志隈は、メモを貼った。 (a3) 2020/10/03(Sat) 1:05:37 |
[「めいっぱいおしゃれ」したアキナを
瞼の裏に思い描いて、
その日は珍しくシャツにアイロンかけて
学校に行ったんだ。
口を開けて、閉めて。
ちゃんと目の前でも喋れるように。
少し明るい色の髪をセットした青柳を見て
「あー、ワックス、買ったことないや」なんて
色んなことを考えてたり。
でもアキナに会ったら、まず謝らないと。
俺はバスケ部じゃないし
生まれた年齢=彼女いない歴。
もしかして彼女の頭の中に
俺が明るく陽気な人間として描かれているなら
それはすごく、大きな間違いで。]
[─────だけど、俺の予想を大きく超えて
放課後の図書館にいたのは
あの日、俺に襲いかかってきた影
また立ち塞がるでもなし、
ぺこり、と頭を下げてみせる姿に敵意はない。]
………………アキナ?
[そっと呼び掛けても多分言葉は通じない。
影みたいな俺だけど、
本当に影と話すのなんか初めてで。
言葉がすんなり喉から出ない。
はっきりした姿かたちは分からないけど
ぼんやりと、スカートと前髪が揺れてるのが
何となく分かるくらい。
でもこれがアキナだって、分かってる。]
[影と俺と、二人きりの図書館を
静かに風が吹き抜ける。]
アキナ。
[俺は彷徨わせた視線を上げて
明確に、影へと呼びかける。]
……俺、ユウだけど。
[ああ、そうか、通じないかもしれないのか。
書架の片隅、いつもの席に腰掛けると
隣の席に座るように、椅子を引いて促そう。
カバンから取り出したのは
いつも持ち歩いてる『赤いろうそくと人魚』。
やり取りの長さの文だけ皺のよった便箋に
いつもの青いインクを走らせて
アキナに宛てたメッセージを書き始めた。]
[はらり、頁をめくって、ダサい便箋を
『とうげの茶屋』と『金の輪』の間に挟む。
続きの話は、『金の輪』の後にしよう、と。]*
[カナカナと、ひとりぼっちのひぐらしが鳴いていた。
いつの間にか薄くなったセミしぐれの代わりに、
キョ、キョ、とモズが鳴く。
高くなった秋の空から、オレンジ色の夕日が差し込む。
眩しい図書室の中に、一人の影が立っていた。
あの時と同じように、だけど逃げ出さずに、
その人は私を見つめている。
少し違うか。彼には私は見えていない。私に彼が見えないように。
ぺこっとお辞儀をすると、私の影が不自然に伸びた。]
── ユウ君、だよね。
[呼びかけても、返事はない。
仕方ないか。声は影にならないし。]
[吹き込んだ風がカーテンをあおって、
スカートの中を通り過ぎた。
裸の腿をなぞるキンモクセイの香りは、ちょっと冷たい。
スカート下のハーパンを脱いでも、
前髪が割れないように気を付けても、
カーディガンのボタンを可愛いハート型に付け替えたって、
ユウ君には伝わらない。
何となく予想してはいたけれど、
いざ何の反応も無いユウ君を見ていると、
息が苦しくなってしまった。
淋しいけど、泣きそうな顔が見られずに済むのは、助かるかな。
声も表情も分からない人と、どうやって接すればいいんだろう。
何も知らないうちなら、思いっきり距離を詰められたけど。
ユウ君を怖がらせるのが嫌で、お辞儀の後が続かない。]
[やがてユウ君が動きだした。]
あ……ねえ、待って!
[帰っちゃうのかと思ったけど、ユウ君は椅子に腰かけた。
腕が隣の椅子に伸びて、影だけを引っ張り出す。
のっぺりした椅子の実体と、ユウ君の影を見比べて、
私はゆっくり近づいた。
椅子を正しく影に合わせて、ユウ君の隣に座る。
誰かの隣に座るなんて、どれぐらいぶりだろう。
本棚に映る影は、二人並んでいるのに、隣を見ても誰もいない。
その間にユウ君は鞄らしきものから何かを取り出した。
見えなくたって分かる。
私たちを繋いでくれた、紙一枚分だけ重い本。
それを机に広げて、何かを書いている。
だけど机の上を見ても、黄色い木目しか見えない。
私も鞄から本を取り出す。
机の上に本を置いて、傷んでしまった便箋を広げると、
見つめている間にもコバルトブルーが引かれていく。
その線は複雑に組み合って、言葉になって私に届く。
リアルタイムで紡がれる言葉。
ふと思い立って、その便箋をユウ君の手元に置いた。
ちょうどユウ君が書いてるだろう場所に合わせて。]
[ぽんぽんと喋っても、
おーい、と呼び掛けてみても、
耳のあたりにふって息を吹き込んでも、
筆の速度は変わらない。
ああ、本当に聞こえないんだね。
本棚に映る私と、友君。
友君は何かを書いていて、
私はその手元をのぞき込んで、
影だけ見たら仲良しの恋人たちみたいだ。
実際はこんなに遠いのに。
まだ濡れたコバルトブルーを、そっと人差指でなぞる。
私の肌に引きずられて、インクだまりが線を引いた。
指についた青い色。
今、確かに友君は私に向けてメッセージを送っているのに、
それはどこの世界なんだろう。
目を閉じて、ここにいるはずのユウ君を思い浮かべる。
同い年の男の子が、紙面に思いを綴る様を想像する。
私はそれを覗きこんで、時々つついてからかったり、
甘えるみたいに顔を窺ったりして──
再び開いた時には、机の上に紙は無かった。]
[一冊だけの童話集のページをめくる。
さっきまで机上にあった便箋は、
トモ君が挟んだだろう場所にあった。]
[私が書いている間、トモ君は本を読む。
音のない読書が寂しくて、
「ぺら、ぺらり……なんてね」って、
ときどき効果音をつける。
シャーペンを走らせるさりさりという音は、
さっきまでは聞こえなかった。]
[トモ君が言ってたように、この本は明るい話が少ない。
童話集のくせに。]
[ニュースを見るたびに、チョコの包みをはがすたびに、
本を思い出す。
トモ君のことを思い出す。
トモ君もそうだったら嬉しいな……なんて、
トモ君の感情を確認したがって、
他愛のない話題に逃げた。
トモ君は「話す前に逃げ出したくない」って言ってくれたのに。
だって、こんなに楽しくおしゃべりできてるんだもん。
どこにいるのか、はっきり確認するのが怖いんだもん。
だけど知りたくて、探りを入れるようなやり方で、
トモ君の世界を知ろうとする。
時間は有限なのに。
少しずつ、日が沈んでいく。
私たちの影の、輪郭が曖昧になる。
真っ暗になっちゃったら、トモ君を見つける術はない。
マツムシが、夜の帳を連れてきた。]**
[遠くにひぐらしの声を聞きながら
影と二人、席に着く。
お互い実体があったら二人並んで
放課後の自習……みたいな感じだったのかな。
耳に息を吹き込まれたり、話し掛けられたり
そんなことされてるなんて夢にも思わず
俺はペンを走らせていく。
さりさり、ペン先の回る音は一つだけ。
なのに、書きたてのインクが、
触れても無いのに
すっとあらぬ方向へ尾を引いた。
相手の呼吸音すら聞こえない距離で
俺は静かにアキナに語り掛けるだろう。]
[そう、この童話集にはハッピーエンドのが
いっそ珍しい部類で。
意匠を凝らした絵本の1ページみたいな
綺麗な風景……人ならざる純粋な生き物が
人の醜さ、強欲に飲み込まれて
失意のまま物語が幕を閉じるのが多い。
人は醜い、汚い。
その世界に没入して、被害者の側に
自分を投影することで、
自分自身の汚さからは目を逸らす。
そんな楽しみ方、作者が聞いたら怒りそう。
─────ともかく、『金の輪』も
ハッピーエンドとは言い難い話。]
[もちろんそんなことはしないけど。
「世界の違う」天国とやらに辿り着いては
全く意味が無いんだ……そこに菜月がいないなら。
自分でも、会ったことの無い人間に
ここまで入れ込むなんて滑稽だと思う。
隣の影を覗き込むようにしても
結局その表情は計り知れないし
俺の目頭がじんと熱いのも、
きっと、菜月は知らない。
─────ああ、夜が来る。]*
[書きかけた言葉は、心の中にしまったまま。
口やSNSだと勢いで言ってしまっても、
手書きの文字だと考えこめる。
勢いで、伝えちゃえればよかったのに。]
クラスメイトに声をかけたの、頑張ったね……
[聞こえないのは分かっていても、自分の声も使う。
多分、私は友君にとって、苦手な人種。
クラスに一人や二人いる、物静かな子たち。
そういう子から、私は怖がられる。
話しかけても目を逸らされて、
一刻も早く会話を切り上げたい、
そんな意志をひしひしと感じる。
だから、友君がクラスメイトに話しかけるとき、
どれだけ勇気を振り絞ったかは、
想像できる気がした。]
[友君の言葉は、どんなに温かい言葉も、
消
えてしまう。
フリクションのコバルトブルーを、
黒板みたいに書いては消してを繰り返したから、
紙面はすっかり毛羽だって、よれよれで、
青いインクは染み込んで、少しずつ消えなくなっていく。
SNSだったら履歴が残るのに。
便箋がたくさんあったら、本だってできるのに。
神様が与えてくれたのは、たった一枚のダサい便箋で、
友君からもらった言葉がどんなにうれしくても、
形には残らない。
せめて黒板みたいに頑丈だったら、
ずっとやりとりができたのに、
本当に、神様は残酷だ。
それでも、限られた条件の中でも、
私が臨む景色を、見せてあげられてたかな。]
[私はわざと大げさに口元を抑えて、
笑顔を伝えようとする。
表情が見えなくたって、ボディランゲージなら見えるよね。]
[私たちも夜に塗られて、
一つの大きな闇になった。]
[次の日も、その次の日も、私は図書室へ通い詰めた。
少しずつ、私たちの世界の差に目を向ける。
目をそらしていた溝の、絶望的な深さを知る。]
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