［　全部は言ってくれなかったんだって。
　　君の態度を見ればなんとなくわかる。　］


　　　……眩しいもんね。
　　　私も、日陰に行きたくなるときあるもん。


［　君の隣に行って、同じように金網にもたれかかって。
　　君に渡したかったものを見せるんだ。　］

　　

　　　交換日記、持ってきたんだ。
　　　言葉にできないことでも文字にすると
　　　言えること、あるでしょ？


［　って言って、渡したのは
　　シンプルな見た目のノート。　］

　　

　　　君のこと、もっと知りたいんだ。
　　　難しく考えずに、書きたいこと書いてほしいな。


［　それに、形として君との思い出を残したくて。　］

　　

［　そんな、取り留めのない内容が綴られたノート。

　　交換日記の提案、君なら付き合ってくれるって
　　そう思って渡したけど、
　　どれくらいやり取り続いたかな。　］*

　　

［　君がどこから聞いてたのか
　　私にはわからなかったけど。

　　君がフォローしようとしてくれてるのは伝わったよ。
　　でも、今、君がそれを言ったら、
　　悪者が君になりそうで。>>103>>104





　　

　　

　　

　　にこっと笑って、話を勝手に終わらせると
　　私も自分の席へ戻った。



　　

***


　　そうだね、満点って言わなくても
　　90点とか？取れたらいいよね。

　　暖かい味、か。
　　


［　私だって、
　　並外れた記憶力とか持ってるわけじゃない。
　　でも、一応努力はしてるから。
　　80点くらいは取れるし。



　　
　　

［　私の両親は、共働きで家に帰ってくるのが遅い。
　　私が自分でお弁当を作ってるのも
　　両親には時間がないから。

　　

　

　　

　　　それは……されたとしても
　　　



　　

　　

　　　え、いいの？
　　

［　開けて欲しい、って君に頼まれたんだって　
　　私は受け取ったから。
　　君の奮闘の効果もあったのか、
　　思いのほか簡単に開いて。
　　ココアをひとくち貰ったんだ。　］

　　

　

　　　チョコ…
　　　私ポッキー好きだよ。

　　　あとは……チョコボールとかも。


［　私があげたのはチョコのお菓子だったけど
　　君が好きなのはチョコレートそのもの。
　　きっとどこかでチョコの箱にイラストを
　　描くのを発見して。

　　「え、これ君が書いたの？上手いね！」

　　なんて目を丸くして褒める日も来るだろうね。　］

　

［　何度も話していれば、
　　少しずつ距離縮められたかな、なんて。
　　きっとこれは気のせいじゃないよね。　］


　　　だってルール守らないから
　　　サボるんでしょ？


［　なんて、君の言葉に笑っちゃうくらいには
　　打ち解けられたと思ってるよ。　］*

　

　　

［　君に言ってないことはあるよ、いっぱい。
　　でもどっちかというと、
　　私は君のことを知るために提案したから。
　　私に必要だったのかって言われると…
　　どうだろうね？
　　本当に伝えたいことは、私は言葉に出してるから。
　　

　　でも、提案してよかったと思ってるよ。　］

　

［　やり取りを続けていくうちに、
　　私の話も出来たと思う。

　　なんでいつもお弁当作ってるのかとか
　　親があまり家にいないこととか、ね。　］

　　

***

［　あの時の言葉は
　　君に向かって言ったつもりはまったくなくて。
　　ただ、君が悪者にならないようにしたかっただけ。




　　　うん…そうだね。
　　　でもそれを言うなら元親くんも、じゃない？


［　ここで両親のことを聞かれないことが
　　君の置かれえている環境を物語ってたのに。
　　そこまで気が回らなかったんだよ。


　

　

　　

［　そうして、二人だけの遠足の日。
　　君と私は事前に決めてた公園に
　　二人で来てたんだ。

　　お弁当、君は何を持ってきてたっけ。
　　私はね、サンドイッチを作ってきたんだ。
　　卵サンドとか、ツナサンドとか
　　イチゴジャムが挟んである甘いのも。
　　楽しみだな、って思ってたら
　　ちょっと作り過ぎちゃったから
　　君に分ける分だってあったんだよ。
　　いる？って聞いてみたりもして。　　］
　

　　　なんか、わるいことしてるみたい。
　　　


［　食べながら言ったのはそんな言葉。
　　くすり、と笑ってから、
　　でもこんな日があるのもいいなって思ったから　］

　　

　　　わるいことかもしれないけど
　　　今すごく楽しいな。

　　　いつも通りの遠足だったら
　　　ここまでじゃなかったと思う。


［　なんて、付け加えて。　］

　　

［　おやつを食べるときは
　　二人じゃきっと食べきれない量の
　　お菓子を広げることになったんじゃないかな。
　　

　　君はチョコボールとか持ってきてくれたのかな？
　　私はといえば、明示のThe chocolateを君に見せて
　　チョコ好きって言ってたよね、って渡すんだ。
　　

　　

　　　こんなにあったら食べきれないね。
　　　……残った分はさ、
　　　明日とか明後日とか。
　　　お昼休みにこっそり食べようよ。

　　　きっと屋上ならだれも見てないよ。


［　お菓子、先生の前では流石に食べられないし
　　他の子の前でだって、いい顔はされないかなって。
　　それに、先生に告げ口されたら面倒でしょ？

　　だから、そんな提案をしたんだ。

　　　　　　　　　

　　

［　そうして、楽しい時間もあっという間に終わって
　　そろそろ帰ろっか、って
　　どちらかが言いだしたあたりで。

　　私は、ちょっといいかな、って。
　　君の方を見て、想いを伝えるんだ。　］

　　

　　　

　　　私はね。
　　　太陽みたいってずっと言われてて
　　　
　　　思うことがあってね。