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【人】 黒崎柚樹[武藤は、半年前だろうが半年経っていようが、二言目にはすぐ"警戒心"と言う。 私、そんなにぼやっとしてるかな?してないよ?と思うのだけど、武藤に言わせるとガバガバなのであるらしい。] …………う?…………うん。 [「もう少し警戒心を持った方がいい」 >>421 と、この武藤にまで言われてしまい、釈然としないまま、頷いた。 うっかりドアを開けたのが武藤ではない誰か……ということは、そもそも、そんな事象はあり得ないとは思うのだけど。 そこまで仲良くない男の人がいるところでシャワーを浴びようという事にはならないし、仮にそんな事態になったらさすがに鍵はしっかりかけるし。 万が一、億が一、見られて、身に危険が迫ったら反撃もするし。 それに、今のこの武藤が、そこまで私を心配してくるのもなんだか不思議な気もしていて、それが私の不思議顔に拍車をかける。] (427) 2023/03/04(Sat) 11:06:53 |
【人】 黒崎柚樹[ だって、今の武藤は、私のこと。 恋情的に"好き"なわけではないでしょう? 吊り橋効果で片付けたくはないけれど、私たちの仲を急速に深めたのは、あの美術館の一件があったのは否定できない。 美術館に着いて一緒にランチを摂ったところで記憶が切れている今の武藤は、 「黒崎柚樹のことが好きなんだが?!」 と屋上で雄叫びを上げ、「置いてきたくない」と抱き締めてきた、あの熱とは遠いところにあるわけで。良くも悪くも。 でも、言ってることは、やっぱり武藤で。 「くっきーはくっきーなんだし」 >>422 もね、既に言ってもらっていた言葉なんだよ。 自分でも、自分の思ってることや、感じていることが、よくわからないんだ。 私はなんだか必死で、"この武藤と私の知る武藤は別の人"だと思いたがっているみたい。 私の知る武藤は、私の、女としては貧相な身体も好きだと言う。 ────でも、"貴方は違うでしょう?" そう思いたがっている風で。] (428) 2023/03/04(Sat) 11:07:28 |
【人】 黒崎柚樹[そんな思いは胸の中、形にならずに漠然ともやもやするばかり。 自分の心を落ち着けたいというのもあって、私はココアを支度したのかもしれなかった。 ココアを美味しそうに飲んでる武藤の顔は、私のよく知る顔で、私は何を否定したいのかも、よく解らなくなってしまうのだけど。] …………?宅飲み? [……そっか、私が"話したかったこと"は話してしまったわけなので。 私の側に宅飲みの約束を保つ理由は無くなってしまったんだな……と、武藤に言われて思い至った。] うん。武藤と宅飲み、したいよ? [だってまだ、"貴方"のお話は、聞いてないし。 勿論ノーカンで、と微笑んだ。] (429) 2023/03/04(Sat) 11:08:00 |
【人】 黒崎柚樹また"警戒心"って言う。 …………"いや、来てほしくないとかではなく"。 [まるで同じことを言われたなと思い出し、武藤っぽい口調で諳んじてみれば、まんま同じタイミングで同じことを告げられて。] ふっ…………、ははっ。 ほんと……変わらないよね。武藤は。 [泣きはしなかったけれど、複雑な表情で笑いつつ、不思議な事を告げる私に、武藤はどんな顔をしたんだろう。 ああもう、ほんと、武藤は武藤。悲しいほどに。 でもね、私の武藤は、あの事故の苦くて辛い記憶を抱えて半年の時を重ねてきた武藤なんだよ。 ────あの武藤に、逢いたいよ。*] (430) 2023/03/04(Sat) 11:09:18 |
【人】 黒崎柚樹[この武藤も、あの武藤も、全部武藤だよ。 繋がってるよ。 自分でもそれは解ってるのに、"この武藤は違うから"と必死に否定して、否定の否定を目の前に突きつけられて、その度、泣きそうになってる。 だって。 だって、否定せず、受け入れてしまったら、私はもう二度と、"あの武藤"には会えなくなってしまう気がするんだもの。 ハロウィン当日に初めてのテーマパークに行ってゾンビに追いかけられたり、クリスマスイブに一緒に港町に遊びに行ったり。年越し、実家帰らないならうち来る?と誘って、二年参りを一緒にしておせち食べたり。 買って貰った指輪。開けて貰ったピアス。 たくさんの写真、たくさんの思い出。 そういうのが全部消えてしまう気がして、だからきっと、私は今の武藤を否定したかった。否定しなきゃいけなかった。 なのに……武藤は、やっぱり武藤なんだよ。 言ってることも考えてることも、全部、愛しい人、そのままで。] (438) 2023/03/04(Sat) 13:12:32 |
【人】 黒崎柚樹[微かに聞こえた。"ごめん"って。 囁くような真剣な声音に背がひくりと震えてしまって、視線で何をと問うても、いつもは雄弁な口も瞳も、何も答えてはくれなくて。 ────そして、今度こそ、心臓が止まってしまうかと思った。 "くっきーは、笑ってるとかわいいと思うよ。" 今の武藤は、それを自覚してるのかな。してないのかもしれない。 それは美術館で言われた言葉。 私は文字通りにしか受け取らなくて、受け取れなくて、「おそれいります……?」みたいな微妙な返事しかできなかった。 両思いになってからの武藤は、呆れるほどに"かわいい"を量産し続け、私も呆れながら否定するのに疲れてしまって。 そしてある日、唐突に気がついた。 武藤は美術館で言葉を交わしたあの日から、私以外の女の子には、絶対に"かわいい"を言わなくなっていたということに。 武藤の言う"かわいい"は、そのまま"好き"に直結してるということに。 自分の思いを口にすることは苦手な武藤が、一日に何遍も言ってくる"かわいい"は、全部、"好き"と同義だった。] (439) 2023/03/04(Sat) 13:12:54 |
【人】 黒崎柚樹 ………………っ、な、んで……。 ["かわいい"の返しが"なんで"なんて、"おそれいります"よりも酷いものだったろうとは思う。 でも、掠れ気味の声で呟いた私は、落ちそうになる涙を堪えるので必死だった。 なんで、そんなこと、言うの。 なんで、私の好きな武藤と、まんま同じこと言うの。 囁くような「なんで」は、武藤に届かなかったのかもしれない。 そろそろ寝るかと立ち上がった武藤とは視線を合わせないようにしながら、私も共に寝室へと移動した。] ……ん、あんまり起きないようなら蹴り飛ばす。 [私は早起きに慣れてるし勝手に目が覚めるから……と、ぎりぎり、普通の声音で言えたと思う。 おやすみなさい、と私も武藤に背を向けて。] (440) 2023/03/04(Sat) 13:13:25 |
【人】 黒崎柚樹[ばか武藤。 ベッド、壁にぴーったりつける必要も無いのに。 なんだか、すごく変な感じだよ。 ……ばか。 必死に脳内、他愛のない悪態で埋め尽くそうとしても、涙の方がよっぽどに正直だった。 堪えきれなかった滴がぽろぽろと落ち始めてしまったら、もう、止めようがなくて。] …………っ……ッ。 [喉が変に軋みそうになるのを、寝間着の袖を口元に当て、吸い込ませる。 どうか気付かないで欲しい。 どうした?なんて、聞いてこないでほしい。 そうされてしまったら、今度こそ私は、武藤に抱きついて泣きじゃくってしまいそうだから。*] (441) 2023/03/04(Sat) 13:14:05 |
【人】 黒崎柚樹[千々に乱れた心より何より、思っていたのは、"武藤に気付かれたらいけない"ということ。 涙は全然止まりそうになくて。 でもそれを止めようとするよりも、吐息や引き攣るような喉の音を止めるのを優先している自分は、やっぱり相当に混乱はしていたんだと思う。] ………………っ……ぅ、 [それでも時折、どうしても漏れてしまう吐息はあって、どうぞ気付いてくれるなと。 そう、思ってたのに。] !?…………ぇ…………、 [思っていたよりずっと近くから、"くっきー?"と名を呼ぶ声 >>460 が聞こえて、その呼び名にもまた涙が溢れてしまう。 ここに、私を"柚樹"と呼んでくれる武藤は居ない。 なのに、ベッドの軋む音が。手の熱が。声にならない、戸惑うような吐息が。 全部に突き動かされるように、私は武藤に抱きついていた。] (471) 2023/03/04(Sat) 20:51:24 |
【人】 黒崎柚樹…………ぅ……、……ふ、ぇ……っ、 [ああもう。 知ってるにおいがするよ。武藤のにおい。 私の大好きな。 この武藤は私の好きな武藤じゃない。 抱き締めていい武藤じゃない。 好きと囁いていい武藤じゃない。 全部解ってるのに、しがみつこうとする手の力は全然緩んでくれなくて。 そして抱き留めてくれている武藤の手も、緩ませよう、突き放そうとかの色もなく。 嗚咽の合間、「ばか」と「ごめん」という、武藤にはきっと全く意味のわからない、そのくせ強い意味を持つ言葉を漏らし続けていたように思う。] (472) 2023/03/04(Sat) 20:52:16 |
【人】 黒崎柚樹[いつの間にか、私は泣き疲れて眠ってしまっていたらしい。 夢をみたような気がするけれど、どんな夢だったのかは覚えていない。 でも、ひどく悲しくて、ひどく幸せな夢だった気はしてる。*] (473) 2023/03/04(Sat) 20:53:22 |
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