人狼物語 三日月国


109 毒房のその先で

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視点:


 
こんな夢を見た。

燃える廃墟を見上げている。誰かの家だったその建物から、時折何かが崩れ落ちる音を聞いた。
曇空に黒い煙が上がり、草木の焼ける臭いに混じって肉の焼ける臭いがする。

────いや、本当は肉の焼ける臭いなどしない。

そんな気がする
だけだ。
自分は、廃墟の中に人がいることを知っている。その上で、火を放ったのだから。

もうどうにもならない。
助けに行ったところで、彼らを抱えて逃げ出すことなど不可能だ。自分だって死んでしまうだろう。

何故彼らを殺そうとしているのか、わからないけれど。
こうするしか無かった、という漠然とした諦念だけは確かだった。

ポケットに入れていたスマートフォンが鳴って、ふと意識がそちらへ向く。二件のショートメッセージだった。

 
────リョウ、今夜は何食べたい?

────何時に帰るのか、わかったら連絡をくれ


画面には家族の名前が表示されていた。

「……夢か」

帰る家があるなら、こんなことをする必要はない。だから、これは夢だと気付いた。

ぽつり、雨粒が頬を濡らす。
炎を宥めるように、少しずつ雨足は強くなる。

……早く帰らないと。
……いや、そうじゃない。

 
「もうオレはね」


「一人でも、帰れるんだよ」

 

炎に背を向ける。

歩き出した。

起きて見る夢の方がずっと楽しいから。