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人狼物語 三日月国


205 【身内】いちごの国の三月うさぎ

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


[ 受け入れる側の負担や日々の努力について
 察するに余りあるとはいえ、どれほど現実的に
 伝えてくれていただろう。

 言ってくれなければわからないからと
 聞くことは少なからずあったとは思う。

 事後の処理を手伝うこともあれば、
 知識云々ではなく、セーフセックスを
 強く意識したし、指先、特に人差し指と中指の爪は
 常日頃から整えるようにしていた――とて。

 覚えのない快楽を、紡ぎ合う日々の中
 より負担が嵩むのはどうしたって、受け入れる方。

 ――現にこうして、自分には必要のない所作をひとり
 こなしている。

 それに興奮してしまう相手で申し訳ないとは、少し。 ]

 朝晩とかね、
 ああでも、ここなら朝も気にせず
 お風呂入れるな


[ 初めて二人ででかけた日に、
 温泉にも行けたら良いとは言っていたけど
 まとまった休みを合わせるのは、難儀するから。

 旅行に出かけるのは今日が初めて。

 湯当たりしないで、と添えられた言葉には
 そうだね、と頷いて。

 だいぶ抜けているとはいえ、アルコールを 
 摂取した後の風呂、に油断は禁物。

 泉質によっては湯当たりしやすい等々も十分
 考えられるので。 ]

 いいね、この辺は来たことないから
 新しいもの、いくつも見つかりそう。

[ ぬくい湯の中では、重みはそうそう感じまいから。

 同意を得られれば嬉しそうに笑い、
 湯の中で片膝を立てる、とその拍子に
 ぱちゃり、水面が跳ねた。

 そのうち、挨拶すらも換算しなくなるが、
 まず最初に数えるのを、意識的にではなく
 気づいたらやめていたのが、約束、だった。

 口にする度、罪悪感を蓄えることがなくなって。
 叶えるために、ほんの少しの無理もするが、
 それを無理だとも思わなくなって、

 叶うことしか、言わないと言えばそれもそう
 ではあるのだが。叶える努力を労力に思わなく
 なったから。 ]

[ また一つ、約束を結んだからには、
 近い未来、ここにもまた来ることになる。

 ――といってもまだ、夜と呼ぶほど
 深い時間ではないから、まだまだ
 ここでなければ、という項目は増えるだろう。 ]

 ……痛い?

[ 問うても、そこから手を離すことはなく。
 伺うように、顔をあげると、
 問う意味は、なかったのかもしれないと
 苦笑いを一つ。

 名前が呼ばれ、手が重なって。
 そうではない、と分かってしまったから。 ]

 ん、 なぁに

[ 酒気を強めに含んだ時に呼ばれたのと
 同じように反応を返し、重なる手に指を絡ませて。
 擽ったそうに竦められた首筋にも、
 優しいだけのそれを贈って。 ]

 優しくするって、言ったからね

[ これもまた、数える程にも満たない、
 約束の一つ。

 重ねられた手を湯から上げて、
 自分もまた肩を湯から出して、

 戯れるように、慈しむように、
 すっかり湯の香に包まれた指先、に唇を。

 唇で触れてもわかるくらい、温まっていても
 体の奥にまたゆっくり、火をつけるように。

 指先、指の付け根、掌、手の甲、手首と辿り

 一度体をお湯からざばりと、あげて、
 風呂の縁、岩の上に腰を落ち着けたのは
 このままだと、のぼせかねないなと思ったので。* ]

[彼を受け入れると決めたこと。
 それは、努力という言葉で表すのは少し違った。

 男が求められる側になることに対して、
 いざなってみれば、抵抗はなかったけれど。
 自身が"そういう側"になることは、
 今まで考えていなかったのは確かで、知識の浅さや、
 経験の無さを、どう補おうかと思ったことはあるけれど。

 異性同士でも同性同士でも。
 愛を伝え合うことに変わりはないと思ったら、
 以外とすんなり受け入れることが出来たから。

 寧ろ、受け入れる側より。
 俺で勃つのか、ということの方が気にかかったけれど。
 初めて夜を迎えた日に、彼のものを見た時。
 それは、杞憂に変わった。

 受け入れる身体には、まだ、なってはいなかったけれど。]

[彼の方は彼の方で、細やかな意識を、
 俺に向けていたことは、時折、気づいていた。

 爪切りを使わずに爪研ぎを使うようになったこととか。
 今日みたいによっぽどの余裕がない日以外には、
 ゆっくりと時間を掛けて、身体を解してくれる。

 これ以上ないぐらい、愛されているな、と。
 感じて、照れてしまうぐらいには。少し。
 自覚は、あるのだけれど。

 それを言葉にするには俺にはまだ出来ない。

 だから理性の皮を被って、普段どおりに接して。
 何てことはない会話に笑うふりをして。
 波打つ心を抑えたりする時も、時々。]


  ああ、朝風呂もいいですね。
  夜と違って、また空気が美味いだろうな。


[アルコールの代わりに、頬を染めるのはお湯の熱さ。
 
 出すものを出したこともあって。
 少しすっきりとした頭で、髪から滴る水気を払う。]

[彼が訪れたことがあるのなら、彼に任せて。
 彼が訪れたことがないなら、二人で一緒に。
 俺が知っている場所なら、俺が先に立って。

 二人で過ごす場所を増やせていければいい。

 写真に収められないぐらいの場所と思い出を作って。
 どこに居ても彼を思い出せるぐらい一緒に。

 約束を交わさなくても、自然と傍にあれるように。
 
 この時、二人で暮らすことを考えるのは、
 まだ随分と先の話だったけれど。
 旅行かばんの中には、彼からもらった
 うさぎの形をした合鍵は、今日も一緒に連れてきている。

 彼が感じた後悔を、喜びで埋められるぐらい。
 時間を費やして、増やして。共に、過ごしていけたら。]

[少し先の未来は、そんな時間を共有する証。
 
 街から離れ、山間に建つこの宿は。
 周囲の明かりが少なく数多の星と、月が空に浮かぶ。

 衝立で仕切られている露天風呂のスペースの隣から、
 声は聞こえない。隣が居ないのか。
 それとも、今入っていないだけなのか。
 風呂場ですらないのか、確認することは出来ないけれど。

 湯船の中でもしっかりと感覚を与える掌に、
 目を伏せれば、前髪に水滴が溜まる。]


  ……痛くは、ないです。


[掌の形が分かる程、痕は残っているけれど。
 そこに痛みは全くと言っていいほど感じなくて。
 寧ろ、それよりも。]

[重ねた手に、少しだけ力を込める。
 俯いたままの前髪から、ぽたりと水滴が落ちて。
 湯船に、一滴、波紋が落ちて。]


  景斗さんのものに、
  ……なれたみたいで、いい。



[はにかむように、微笑んで。
 彼の掌の上から、愛しむように脇の痕をなぞる。

 愛おしい痕。
 彼に付けられるものは何一つ嫌じゃなかった。

 身体中に付けられるキスマークも。
 身体の奥に残される仄かな熱も、
 彼が引き抜いた時に僅かに感じる空白も、全て。

 彼が其処に居たと実感できるから。]

[――ただ、今は。
 
 そんな邪な考えは一切なかった。はず、なんだけど。
 名前を口にしたのは、腹に当てられた手が
 思いの外大きくて、温かくて。

 首を竦めたら追いかけるみたいに、唇が。
 薄い肌に吸い付くから、ン、とまた声が溢れる。

 優しくはされている。確かに。
 殻に覆われた卵を扱うみたいに、優しく。

 手を持ち上げられて、指先に落ちるキス。
 それが、指先では収まらずに、
 付け根を辿り、上がっていくみたいに。
 掌と、手の甲に滑って、手首まで。]


  ……っ、 ……けいと、さんッ……


[戯れのはず。たったそれだけなのに。
 手首に落とされた唇に、ぴくん、と反応してしまう。]

[そんな浅ましい自分を、彼のせいにするみたいに。
 焦ったように名前を呼んで。
 は、と少し湯で火照っただけじゃない熱を零して。

 少し、距離を取るように。
 彼が湯船から身体を上げたことに、心なしホッとした。
 のも、つかの間。

 風呂から上がったせいで余計見えるようになった、
 彼の裸体は、もう見慣れたはずなのに。
 湯に浸かったせいで、いつもより色づいた瑕が
 妙に目に毒に思えて、思わず視線を逸らしてしまう。

 手は、まだ彼に取られたまま。]


  ……それ以上、されたら……、
  
また、……シたく、なる、から、



[取られたままの手をきゅ、と丸く丸めて。
 顔を背けた分、耳朶が赤いのが伝わってしまう。
 先に火を付けたのは、あなたのほう。
 だから、どうか。笑わないでほしい。**]

[ 苦しさを快楽に変えていく日々も、
 痛みより快楽が上回るように丁寧に愛する日々も。

 君のためでもあったけど、
 自分のためだと知ったら、どんな顔をするだろう。

 はじまりはたしかに、快楽を拾えるように
 なんていう気遣いからだったけど。

 性欲が湧き出て止まらないことすら
 それを制御することすら、楽しいと思ってしまった
 自分であるから。

 ゆっくりと時間を掛けて、体がひらいて
 くれるのを待つことも、

 しつこいくらい弄り倒して蕩かすことも、
 楽しくて、しょうがなかった。 ] 

 朝食の前に起きれたら
 入ろうか。きっと景色も随分変わってる

[ 朝は弱い彼を揺り起こす事になるだろうけど
 星空の代わりに、抜けるような青空を
 山から降りてくる、新緑の香りを、

 独り占めするのは惜しいから。

 ひとりだった頃から、それほど多くの
 時間は経っていないのに。

 どんな小さな事でも、ふたりで。
 が楽しくてしょうがなくて、
 一人だった事など忘れてしまうくらい。 ]

 そう、

[ 痛くはないと君が言う。
 前髪からぽたりと、水滴が落ちて、そのあと
 溢れてきた言葉に、なぞるように
 動く手に、水面がさわぐ。 ]

 その感覚、ちょっと羨ましいかも
 俺もほしいな、君のものって印

[ 熱い湯に浸かっているから
 以外の理由で心臓もさわいだ。

 独占欲の印だとか、浮気防止だとか
 人は如何にもな理由付をしたがるものだけど

 美しい白に、その赤が似合うから
 愛おしいから、気づいた時には、
 もう、いくつも散っているそれ。

 今夜に至っては、抗えない欲の塊を
 押し付けたために、色付いてしまったもの。 ]

[ 抑えられないからではなく、
 煽られたからではなく。

 ――また、罪滅ぼしでもなく。 ]

 ……うん?

[ 優しく したい。
 優しく愛したいから贈ったもの、に
 ぴくんと反応を示して、焦るように
 名前を呼ぶから、素知らぬふりして、
 指の間に舌を這わせて。

 夜風に晒されても、冷えると思わないくらい
 ぬくまった体から視線が逸らされて。

 聞こえた言葉に、小さく相槌を打ち ]

 願ったり叶ったり、かな

[ 零すと、丸まった手を彼の目線の先へ引く。
 前ちょっと詰めて、と。

 狙い通り、君の背と、岩肌の間
 人一人分の隙間ができれば、
 するりと自分の体でその隙間を埋めて。

 脚の間に、君の体を挟み、
 片手だけじゃなく両手とも、両手で捕まえて
 細い首に、リップ音を響かせると ]

 
逃げちゃう?


[ 肩に顎を乗せて、赤い耳朶、
 君の弱いとこ、の近くで楽しげに問いかけた。* ] 

[早朝の誘いにはふたつ返事で頷いた。
 せっかくの部屋付きの露天風呂を、
 一度だけで済ませるには勿体ない。

 夜の食事が豪勢だったからきっと朝食も期待できる。
 旅館の朝に出てくる海苔が美味しいのは、
 どこの旅館も共通している。
 ほかほかの白米に乗せて、しなっていくのを想像したり。

 かけ流しの湯から溢れ出てくる湯を見つめたり。
 そうして見上げた夜空は、澄んでいてとても美しい。]

[印が欲しい。

 その言葉に言葉に詰まって、水面に視線を落とした。
 彼からは確かに見えないかもしれない。

 脇腹ほどはっきりはしてないけれど。
 そちらこそ痛みがしそうなものなのに。]


  ……印なら、ついてます。
  背中に。

  
……俺の、爪の痕。



[頬を染めながら、チラと彼の方へと視線を投げて。
 トン、と空いた手で自身の背中を指すように示す。

 もしかして知ってて言わせてるのだろうか?
 それとも、爪の痕以外にも
 残して欲しいものがあるのだろうか?]

[ぱしゃん、とまた湯を散らして腕を下ろす。
 片手は彼と重なり合ったまま、どちらとも離そうとはせずに。]


  それとも、きすまーく?


[そう具体的に痕の話を挙げてみる。

 そういえば、俺からはつけたことがないかもしれない。
 彼が、"視られる"仕事だからというのが水面下にある。
 付けられる分には一向に構わないのだけど。

 元々独占欲も所有欲なども持ち合わせない質だったから、
 人に痕すら残したことはないから、余計に。

 付けて欲しい、と言われたら。
 それはそれで、少し、心臓が跳ねそうな。]

[湯船の中で、ドッドッと心臓の脈が聞こえそうな程。
 熱くなってきているような気がする。

 反応を伺うみたいにこちらを見上げながら、
 持ち上げられた手に舌を這わされて、
 指の合間の柔らかい部分をなぞられる。
 ぞく、とまた微かに身を震わせて、指を折り曲げ。

 前に、と促されたら言われるままに尻で移動して。
 空いたスペースに彼が身を滑り込ませる。

 まるで後ろから抱き込まれるみたいな状態になって、
 こちらから見えるのは、彼の足と前に回された手だけ。

 ただ、後ろからいつもよりも近くに体温を感じる。

 捕まえられた両手が彼によって捉えられ。
 少し、自由を奪われる。

 温泉で赤らんだ背筋もきっと彼の眼に晒されていて。
 首筋に、唇を落とされて。]


  ……  ンっ、


[期待に震えるみたいに、顎を逸らしてしまう。]

[天を仰ぐみたいに上向けば、目に映るのは外の景色。
 視界を遮るのは、木造で出来ている衝立のみ。
 
 背徳感と羞恥で、心臓が騒ぐ。

 ワルイコトをするみたいに
 少し悪戯の音が乗った声音で、誘われて。]


  ……逃げ、ない
 


[ふる、と小さく首を振って。
 囚われた手を彼の掌に重ねて、指を絡め。
 恋人だけの繋ぎ方をして、彼の胸元に背を凭せ掛けた。*]

[ チェックアウトの時刻は遅めの11時。
 朝食もそれほど早い時刻には、しなかったはず。

 並んで、ゆっくり眠ることも、
 ぽやぽやとした朝を過ごすことも、

 この上ない贅沢のひとつ、だから。

 それだけは何が当たり前になってもきっと
 変わることがないだろう。

 先に起き出して、あどけない寝顔を
 眺めることも、いつまでも宝物みたいに、
 抱えていたいと思うから。 ]

 ………あぁ うん、
 そうか、……そうだね……

[ 言葉に詰まってた彼に、
 心から不思議そうな表情をしたのは
 許して欲しい。

 ――自分が相手に付けたもの、
 に関しては意識が働いていたとしても

 自分も、付けられている側 とは
 思っていなかったものだから。

 ついてます、と言われれば
 妙に納得したように頷いたから
 察してしまわれたかもしれないが ]

 言われてみればそうだなって
 気づいちゃって、

[ 照れるように、小さく笑う。 ]

 それは興味あるね、とても。

[ 話題は夜を思わせるものでも、
 まだこの時は、さほどそれを匂わせるような
 触れ方はしていなかった、かな。 ]

 付けられたことないから

[ 仕事柄、気をつけろとは再三言われていたのは
 過去の話。

 一度だって付けられたことはないのだが
 それでも口酸っぱく、言われていたのを
 思い出して笑う。

 現在もそしてこれからも、売り物にする
 つもりは毛頭ないので、気にしたことは
 なかったけれど、

 そういう相手だという意識があったのかもしれない。
 一度だって刻もうとしなかったのは。

 ――単純に興味がないだけである可能性も
 否めないけど。 ]

 どうせなら、この辺とか

[ 顎を緩く持ち上げれば、
 まっさらな首筋が見えただろうか。

 これからの季節、特に隠す理由も
 なければ晒している場所へ、

 ――の印は誰かに見つかったところで
 いいでしょ、と言わんばかりに微笑むだけだろう。

 己は、という話ではあるので、
 見知った顔にそれを見つけられた彼の
 気持ちまでは汲んでいない、冗談の類。 ]

[ でもその想像が、この後の行動を
 後押ししたのは間違いない。

 どこに何をされると、"そう"なって
 しまうのか、心得は十分にある。

 思惑通り後ろから抱え込むような
 形に落ち着いて、濡れた後ろ頭を
 眼前に捉えたら、ゆるく両手を握って。

 ――その状態で逃げるか問うのは
 この夜に星の数を数え切るのと同じくらい、

 意味のない、問いだったのに。

 期待に震えるみたいに、顎を逸らして
 律儀に答えをくれるから。 ]

 ……、ちょっと興奮してるの、
 分かっちゃう?

[ 腹に回した手でほんのすこし、
 体を抱き寄せたら、反応し始めてる熱が
 腰の当たりに触れるだろう。

 声を潜めれば、かけ流しの湯の音に
 紛れるだろうし、そもそも隣がどうで
 あるかなど知る術もないというのに。

 その状況に、酔ってるみたいに
 興奮してはいる。してはいるけど。 ]

 こっち向いて?

[ 手も、舌も、くちびるも。
 やさしくしたい、と訴えて。

 目線がぶつかったなら、先に目を閉じたのは
 こちらのほう。* ]

[爪痕のことは意識から抜け落ちていたのか、
 指摘してみて、一瞬呆けたような顔。

 自ら痕をつけました、なんて。
 口にさせるのは止めて欲しい。
 それが、堪らずに縋ってしまった痕だから。

 はにかむようにされたら、居た堪れなくなって。
 湯を掬って、ぱしゃんとそちらの方に向かって、
 訴えるみたいに、肌にかけて顔を背けた。

 彼の背中を見るのは、自身の身体にしっかりと
 残された彼の刻印を見るよりも恥ずかしいから。

 これ以上は突っ込まないでほしい。
 と、暗に示すつもりの水掛け。]

[けれど、キスマークなら話は別。
 興味を示す彼に、笑って。

 にぎにぎと繋ぎ合わせた手を、握って離して。
 弄ぶように、指同士遊びながら。]


  俺も、付けたことないですね。


[初めて同士の挨拶を向けて、ふ、と笑みを深める。
 まるで付けてほしいみたいな口振りが可笑しくて。
 だけど、こちらから付けましょうか、とは言わない。
 
 求められれば別の話だけれど、
 望まれなければ特に肌に痕を残すことはしない。
 
爪痕は意図的に付けたわけじゃないからカウントしない。


 身体を資本とする彼に、あまり。
 そういった縛りを付けたくない思いがあるから。]

[どちらが誘ったのか、これじゃあもう分からない。
 首筋から腕を下ろして、もう一度手を握り合って。
 お湯の温度と同じくらい馴染んだ彼の掌に包まれる。

 逃げるつもりなど毛頭ない。
 もとより、逃がす気がないことも知っている。

 そこで逃がすような彼だったなら、
 今、こうして一緒に過ごしてはいないだろう。

 耳朶に近づいた声が甘く、誘う。
 湯を割って腹部に腕が回って身体を引き寄せられ。]


  …… ッ、…… 



[ここがどこか分からせるみたいな台詞に、
 薄く唇を噛んで、零れそうになった声を殺して。]

[抱き寄せられた腰の下、臀部の辺りに。
 膨らみ始めた彼のものが、つん、と当たる。]


  ……ん、 当た、ってる 、……


[囁き合って、手を絡めただけ。
 直接的な刺激はまだ、互いに与えあってもいないのに。
 自身の身体で、また反応を示してくれているのかと思えば、
 背徳感に、ぞくぞくと震えが走る。

 ぽたり、とまた雫が落ちる。
 それが、きっかけだったみたいに。
 
 振り向かせるようとする声に、
 おず、と俯きがちに首を傾けていった。]

[伏せた眼で覗き込むみたいに、見上げたら。
 それを待ち望んでいたみたいに細められて、
 瞼が降りていくのに、自然。

 こちらも、再び眼が伏せられていく。]


  ……、 
は、
 ン、ぅ ……


[ちゅ、と啄むだけのキスを何度か交わして。
 じわりと熱を高めていくみたい。

 そのうち、触れ合わせるだけじゃ足りなくなって、
 薄っすらと眼を開き、唇を開いて、舌を差し出して。*]

[ つけてしまった、という側からの
 水掛けをもろに食らっても、機嫌は少しも
 損なわれない。

 その痕がどうして出来たのか
 を考えれば答えは明白なので。

 縋らなければ耐えられないほど。
 その先は今は考えるまい。

 濡れた前髪を掻き上げたそばから
 もう一発、喰らいかねないので。 ]

[ 握って離して。湯の中で
 遊ばせるようにすると、水面が波打って ]

 じゃ、つけて、今度。

[ 今、でも勿論いいんだけれど。
 今つけられたらまず間違いなく、明日の朝
 見せつけてしまう気がしたので。堂々と。自分から。

 ――見えないような所になら?

 大歓迎では在るけれど、それより。 ]

[ 掠める唇の感触を覚えている体が
 ゆるく反応してくれるので、自分に
 付けられる痕の話は、のちほど。

 振り返られる瞳に淡い欲のいろ。
 自身の指でなぞる首筋が、より
 "そう"しやすいように、逸らされる。 ]

 
ほしいくせに、


[ 目視で確認できるかぎりでは、
 まっさらになった白い肌が温まって
 上気して、今はほんのり桜の色。 ]

 さっきは素直に言ってくれたのにな?

[ せっかく綺麗になったのに。
 伺うような視線と絡んだなら。

 互いの 望み通り。まずひとつ、
 シャツを着れば隠れてしまう場所に赤を散らして。 ]

[ 本当に逃がすつもりがあるならば、
 わざわざ両手両足を駆使して、捕まえようとは
 しないだろう。

 これがただの、戯れであることは
 互い知れている。

 声を漏らすまいとしている姿に、
 ふ、と笑ってしまったから、その息がまた
 耳を触って。 ]

 ん、また勃っちゃってる。

[ 聞こえてしまうかも、その背徳感が
 更に煽ったことは認めるけど。

 温まりながら手を取り合って、
 なんでも無いことで笑っていても
 白い背中を、染まる耳を、
 見ていたら、つい。

 熱くなってる君もまた、見たくなって。 ]

[ 受け入れるように、瞳を伏せるその瞬間が
 たまらなく、すきで。

 唇を合わせたときに、僅かに口角は
 あがって。 ]

 …… ン 、 
ふふ


[ 啄み離れて、また吸い付いて。
 合間に、笑い声を滲ませて。

 もっと、が聞こえない代わりに、
 舌先で唇をつついて。

 開かれた唇から、赤い舌が覗けば
 おいで、という代わりに、ちう、と
 やさしく吸い付いて。 ]

[ ちゃぷ、とお湯の跳ねる音が聞こえたら
 絡まる舌先をそのままに、片手が腹から
 そっと這い上がっていることに気づくだろう。

 つん、と胸の尖りをつつき、
 親指の腹で、くるりとそれの輪郭を一周。

 甘やかな声が上がりそうなタイミングで
 唇を解放し、抱き寄せれば、先程より顕著に
 反応していることが、伝わるか。

 ゆっくり、やさしくあいしたい。
 から、抱き寄せたほうの手は、
 撫でるように背を登り、とんとんと叩いて。* ]

[つけて、と望まれたなら、数度瞬いて。
 彼と眼を見合わせた。

 本当に付けてほしいらしい。

 ぷ、と噴き出してくすくすと肩を揺らして笑い。]


  いいですよ、上手くつけられるか、
  分からないですけど。


[付け方なら知識としては知っているけれど。
 本当に付けたことはないから、本番勝負になる。
 痣のように広がった場所では目立たないだろうから、
 付けるなら上半身だろうか。
 
 細めた眼で少し、伺うように彼の肢体を眺めて、
 意地悪く笑うのは、少し垣間見えた俺の男の性というもの。]

[その代わり彼にも、晒した肌に痕を望む。
 首筋をなぞった指を辿るように、水滴が肌を滴り。

 潜められた声に、温まった肌と同じくらい
 頬を染めたなら、少し責めるような声に俯いて。

 こくんと、喉を鳴らしてしまう。]


  ……つけて、
  景斗さんの、しるし、



[乞われるままに、おねだりを口にして。
 もじ、と腰を揺らす、微かに身体が揺れる度に。
 ちゃぷんと、跳ねるお湯の音。

 水滴がこんなにも卑猥に感じてしまう程。
 高められているとは気づかない、まま。

 ひとつ、服の下に隠れる場所に落とされたなら、
 満たされたような吐息を、洩らしてしまう。]

[少し身動いでも、腰周りには彼の足が両サイドにある。
 笑う気配がする度に、耳を擽られて。
 ぴくん、と身が跳ねてしまう度に、 
 そこが弱いのだと見せつけてしまう。

 腰を引いたら、彼のものが存在を訴えて。
 言葉でも教えられるから、また火を灯される。]


  ……俺で、感じてる…… ?


[いつか、俺で感じて欲しいと言ったときみたいに。
 自身の身体に反応する彼のもの。
 分かっていても、何度でも確かめてしまう。

 口にされる度に、必要とされていることを、
 実感するみたいに。

 悪い癖、だと思う。こんなこと。
 でも、求められる程、自分の身体も熱くなって。
 まだ反応していなかった、それが僅かに熱を持つ。]

[キスは愛を確かめ合うために交わすもの。
 たくさんの愛の形があるけれど、
 彼と交わすのは、親愛でもあり、情愛でもあり。
 言葉にできない程の、込められた愛も。
 
 言葉にできない分、行動で伝わればいい。
 伏せた睫毛が、震えて。
 彼の笑う気配に、少し首を傾げる。]


  …… ッ 、 
、ぁ ……


[突付かれた先で開いた唇の隙間から、
 覗かせた舌先を、甘く吸い上げられたら、
 ひくん、と震え、閉じかけた眼を薄く開いて。
 もっと、と誘うように、視線を絡め。]

[次第に深くなっていく口づけに、とろ、と瞼が落ちていく。 身体を預けるみたいに、力が抜けていって。
 彼の肩口に寄りかかり、解けた手が肌をなぞって、
 上に上がり、胸の頂きに優しく触れる。]


  んっ、 ンぅ……ッ ぁ……、


[ぞわ、と肌が粟立つみたいに毛羽立って。
 指の腹が輪郭をなぞる間に、解放された唇から、
 あまい、感じ入った声が溢れて。]


  ……は、  ……ンッ、
 
  ………、?


[声を隠すように自身の手の甲を口元に添える。
 とん、とん、と背を叩く手は。
 意図が察せず、染めた目尻で見上げ。首を傾げて。*]

[ 本気にしていたなかったのか、
 肩を揺らして笑うので ]

 上手くつくまで、何度でもして?
 好きなとこ、どこでも。

[ 誘うような色を伴って、言うと
 眺める目線に応えるように、笑うけど。

 すっかり痕を付けられるのに
 慣れてしまった彼の体に、先に贈ることにして ]

 はぁ……かわいい

[ つけて、と口にされると、もじ、と
 腰を揺らして、お湯がゆれて音を立てる。
 綺麗についた、とばかりに吸い上げて赤く
 色づいた箇所を人差し指でするりと撫でる。

 許可を得てしまったものだから、きっと今夜も
 いくつも散るだろう赤のひとつを贈って。 ]

[ 身動き一つも逃すことの出来ない距離。
 笑うことを咎められることもなく、
 ぴくん、と愛らしく跳ねる体に、唇が
 吸い寄せられるのは、仕方のないことだと思う。 ]

 もう、君でしか感じられないくらい。
 感じてるよ

[ これだけ存在を主張する象徴があって尚、
 先程だって熱烈に求めたために、どうなったか
 知っていて尚、

 問いかける言葉ごと、愛おしいから
 伝えることは惜しまない。

 だから何度だって問いかけて良い、
 その度、蕩けた声が君を襲うし、
 その声がまた、君を熱くさせるから。 ]

[ 歯列をなぞって、舌を絡ませて、
 応えるように熱い舌が向こうからも
 絡んできたなら、ぴちゃと水音が響く。 ]

 ふ、………すき  ン

[ 口付け一つで、与えられる物、
 贈るもの、の良さを知ってしまったから。

 口内に囁くような言葉は、受け取る前に
 食べられてしまうようなもの。

 視線が絡めば、あまく、目を細めて。
 啄むものから、絡まるものへ、そして
 奥まで食らうようなものへ自然と変わっていく。 ]

[ とろ、とまぶたが落ちて、
 くたりと、体を預けるみたいにされたら ]

 かわい、

[ 呟いて、焦らすようにまた、くるりと
 ゆっくり、指の腹が動く。 ]

 俺は聞かせてくれると嬉しいし
 興奮するけど、


 他の人に聞こえちゃうのは、ちょっとなぁ

[ 子供をあやすような手付き。
 優しい触れ方、で思いついたのがそれ、
 だったから。 ]

[ だけど、 ]

 でもちょっと、意地悪したくもなっちゃって

[ 染まる目尻、傾げられる首が
 愛らしいから、悪戯したがる手がつい

 つぅ、と背中を辿る。

 やさしくしたい、がこちらの意見。
 そちらの要望はまだ、聞いていない。 ]

 どうされたい?

[ 問うのが悪い癖なら、
 恥ずかしいこと、言わせたいこれもきっと、悪い癖。* ]

[くつくつと笑いながら、
 いつもと少し毛色の違う約束を交わして。
 
 それが叶えられるのは今日か、先の話か。
 期限が決められていないのであれば、いつでもいいだろう。
 
 期待に満ちた目を向けられるのを、
 今はさらりと受け流す代わりに、
 肌に新しく咲かせる花が、ちり、と淡い火を灯す。]


  ……、……ぁ、


[微かな痛みと共に彼の所有印を残されることに、
 僅かな興奮を覚えて、甘いため息を漏らして。

 愛おしげに撫でる手が心地良い。
 首筋付近では自分で見ることは今は叶わないから。

 撫でる指先に、彼と眼を見合わせて。
 ついた?と問うて、返される頷きに。
 ふわりと、満足げな笑みを零して贈り物を授かって。]

[水滴を滴らせる肌に彼の唇が滑る。
 撫でるような唇が、時折、舐め取る仕草に代わり。
 ぞわ、と沸き起こる快感に打ち震え。
 身じろぎしかできない彼の腕の中で、身悶える。

 俺でしか。
 感じられないのなら、それでいい。
 そうなって欲しい。


 熱を持ち硬さを示し始める下肢が押し付けられて、
 その大きさを覚えている箇所が、きゅんと疼く。
 先程も荒々しく暴かれた場所。

 多少強引に暴かれたとしても、
 その欲を向けられることが嬉しくて。


 その言葉に、ふにゃりと蕩けるような顔を見せて、
 擦り寄るように、濡れた髪を頬に寄せて、甘え。]

[お湯が揺蕩う音とは違う水音が、耳を擽る。
 耳元により近い、顔の先。
 互いにこれ以上ないくらい顔を近づけて、
 空中で舌を絡めあえば、卑猥な音を立てて糸が滴る。

 キスの合間に告げられる告白に、
 ふる、と身を小さく震わせて。]


  ……ぁ、ッ…… ふ、ぅ……


[溜息にも似た甘い吐息が溢れる。
 言葉を送り込まれて、吹きかけられる息ごと飲み込んで。
 次第に首が、後ろへと傾いていく。

 飲み込みきれない唾液が、唇から溢れて頬を濡らす。
 向けられる強い視線に眩しそうに目を閉じて、

 
あ、
と、思う頃には。]

[ぞくぞく、と背筋から震えが込み上げてくる。
 悦びにも満ちた、快感。

 こんなの知らない。

 赤く熟れた唇を解放されて、くてんと肩口に頭を預け。
 胸を喘がせるようにキスで乱れた浅い呼吸を繰り返す。

 甘い声を上げてしまった場所を、
 彼が喜んで、指が同じ場所をくるくると描く。]


  ……ん、 ……ン、ゥッ ……


[声が聞きたいと言いながら、
 衝立の向こうを意識させるその口振りに、また身体が震え。
 背を撫でる手すら、欲を煽って。
 手の甲で唇を塞いだまま、弱く首を振る。]

[は、と息を零す頃には、また目尻に水が溜まっていた。

 羞恥を煽るのが上手い人。
 でも、甘やかすのも上手くて、少し意地悪い。]


  
……ぁ、ぅッ…… ン、ッ……



[長い指が背の窪みを添っていくのを、
 声を押し殺しながら背を反らして、快感を逃して。

 そっと、腰を抱き寄せる手を両手で持ち上げる。
 その手を、自身の赤い尖りに触れさせれば。
 とくん、とくんと、高鳴る心臓の音も聞こえるだろうか。

 周囲を撫でられただけで、ぴんと立ちあがった頂き。
 そこに彼の掌を押し当てて。]

[ ついた?と言う問いに ]

 きれいに、ついた

[ と頷くと、満足げな笑みが溢れる。
 景斗さんのもの、にして。
 それを聞いて付けられた鬱血痕に、
 満足そうにされると、疼いて、困る。

 今日はもう一度、出したのだから
 もう少し大人しくしておいてほしいが、

 迫り上がるのも仕方ない、とも。

 肌に触れることも快楽を得る方法の一つ
 ではある、身を以て知っている。けれど。

 それほど大きな波打つようなそれでは
 なくとも、ぷるりと震えて身悶えるような
 姿を見せられては、血流がそこに集中しても
 致し方なく。 ]

[ わかるでしょ、と言葉を紡ぐことはなくとも
 少しだけ体を寄せれば、そこが熱に浮かされて
 膨張し、硬度をあげていることは伝わるだろう。

 一度ならず何度も、それを、
 飲み込んでいる身なのだから。

 快楽を得るよりも、勃ち上がるそれを
 見るときのほうが嬉しそうに見える、のは
 欲目だろうか。

 暴き立てられることを期待して
 も少しはあるかもしれないが、それ以上に、

 自分の姿で声で、触れ方で、口付けで
 そうなるのが嬉しいと言うように、蕩けた顔を
 見せるから、敵わない。 ]

[ 聞き飽きるくらいに、聞いているだろうに
 今でも、その言葉を言うと、絶対に聞き逃さない
 その敏感な耳も、告げられた事を自覚して
 小さく震える体も、甘い吐息も。

 すべからく、いとしくて。

 飲みきれない唾液を追うように、
 舌が頬へ沿う。

 舐め取るみたいにして、もう一度唇へ
 一滴残らず飲み干すようにして、
 すっかり赤くぽってりとした唇を解放すれば
 くてんと頭を預けられる。 ]

[ 声が聞きたい、我慢しているその姿も
 見たい。耐えるようにしているの、とても
 劣情を煽られるので。

 それも嘘ではないけれど、
 
我慢しているのに、漏れてしまって
 どうしようもない、そんな顔を見たい。


 ――潜んだ本音も、見透かされているかもしれない。

 手の甲で唇を塞いで、首を振っているから。
 それも、いつまで持つのかなとか
 思っているから、いじわる、なのは否定できない。 ]

[ 背をしならせて、快感を逃がそうとも
 逃しきれないものはいくつもあろう。

 それに、 ]

 うん?

[ 取られた手が向かう場所、とくとくと
 心音は早い。

 すっかり立ち上がって、ぴんとしているそこに
 導かれた手に、どうしてほしいかなんて
 わかりきっている癖にと、詰ってもいいのに。 ]

[ 潜められた声で伝えられるおねだりに
 頬が緩んでしまうから、いじわる、なんて
 長く持たないと思う。 ]

 ……うん、いいよ。
 こう?

[ あたたかい掌を、ゆっくりと押し付けるように
 当てて、先程と同じように指先は円を描く。

 持たないと思う割に、まだもう少し
 そういう趣向は続いているようで。

 ゆら、と腰が揺れれば君のは俺の腹に擦れ、
 俺の、は君の臀部に押し付けられる。 ]

[飲みきれなくて溢れさせた唾液も、舌先で掬われる。
 頬を、口元を、なぞりあげるザラりとした舌を、
 無意識に目が追いかけて、再び唇へ戻れば、
 うっとりと細める目が満足そうに弧を描いて。

 凭れかけさせた頭、濡れた髪が彼の肌に張り付く。
 横から覗き込むような姿勢。
 その横顔を何度見てきただろう。

 手を伸ばして、近い頬とは反対側の彼の頬を抑え、
 ちう、と吸い付くだけのキスを、強く唇を窄め、キツく。
 
 そうすれば彼の頬の少し張り出した部分に薄く、紅い痕が残っただろうか。
 酷く鬱血するほどでは無いけれど、確かに薄く残る痕。
 こんな目立つ場所に、付けられるとはまさかの本人にも思っていなかっただろう。]



  あと、ついた、


[悪戯が成功したみたいに、目を細めて肩を揺らし、笑う。
 さすがに顔は売り物だからと怒られるだろうか。
 明日にはきっと同行者である神田や大咲にも見られるだろう。
 最近のファンデーションはカバー力が強いというのは、
 知恵に聞いたんだったか。
 困ったら、メイクで隠してもらうことにして。
 パウダーの下に、所有の印。

 くすくすと今度は痕がつかないように、
 触れるだけのものをもう一度顎先へと送って。]


  っ、……ぁ、……


[お返しにと腹部を撫でる手に擽られたなら、
 漏れそうになる声をまた、噛み殺したりもして。]

[導いた手の下で、心臓が脈を打つ。
 俺の生きている音が、きっと伝わってる。
 彼に触れられるだけでこんなにも鼓動が早くなること。

 押し当てた手のひらの上から、手の甲を推し重ねれば、
 既に弱い刺激で尖り始めていた頂きが手のひらに擦れ。]


  ……ぅ、ンっ、 ……


[小さく息を飲んで、ぐっとまだ動いていない手を押し付けて。
 自ら刺激を望むように、数度上下に擦らせる。

 こんなに、淫らに刺激を求めるようになったのは、
 触って、感じさせて、身体を作り替えた、あなたのせい。]

[小さく息を飲んで、ぐっとまだ動いていない手を押し付けて。
 自ら刺激を望むように、数度上下に擦らせながら。]

[手を離せば、もう抑えていなくとも。
 彼の手がゆっくりと快感を引き出すように動き始める。
 指の腹が色付いた輪郭をなぞり、それだけで肌が沸き立つ。
 ただ、それだけじゃ刺激が弱すぎるから。]


  ン、ッ……、……つねって、
  つよくして、……なめて、ほし、



[ちゃぷん、と閉じ込められた腕の中、身じろいで。
 向き合うような姿勢に変えて、彼の膝の上に乗りあげて。
 膝に乗り上げた分だけ、高くなった位置。
 尖った赤い部分が彼の目の前に晒されて。]

[腰を擦り寄せるように彼の腹部に、押し付ければ。
 緩く勃ち上がった先端が、彼の腹筋で擦れるから。]


  ぁ、ンっ…… 


[まるで彼の身体で自慰をするみたいに。
 数度、腰を揺らめかせて、快感を拾い上げていく。

 か細い声をふるわせて、まだ、大丈夫。と。
 潜めた声が響かないか、気に掛けながら。*]

 ふ、

[ 覗き込むような姿勢から、頬を抑えられて
 柔らかな感触、のち、吸い付かれて、
 笑い声を堪えるように、息を吐いた。

 顔にくるとは流石に思わなかったので。
 今は確認しようがないけれど、本人が
 ついた、というのなら、きっと赤く色付いているのだろう ]

 予想外なこと、してくれるなぁ
 あとで、鏡見ないと。

[ 目を細めて笑われたなら、こちらも笑う。
 明日まで綺麗に残っていたら、きっと
 隠そうとはしないだろう。

 むしろ昨日愛された印ですがとばかり。

 ――知り合いはともかく朝食を運んでくる
 仲居さんに見られるのは少し恥ずかしい気もするが

 大変、気分が良いので重なる手を
 擽るようにして。 ]

[ わざと、のゆるい刺激でも
 甘い声が耳を擽って。

 足りない、と言いたげに自ら
 擦らせて。 ]

 うん、

[ 身じろいで姿勢が変われば、目の前に
 つん、と尖った乳首が晒されれば、
 白旗を上げる他、ない。

 片方は、きゅ、と親指の腹と、人差し指の
 側面で摘むようにして、もう片方は、尖らせた
 舌先でつついて。

 擦り寄せられた腰、腹部に触れるモノへは
 自分で快感を拾っているようだから。 ]

[ 空いた手が、支えるように、
 臀部へ向かう。

 まだ、声を潜めることにも意識が
 いっているようだから、

 そちらはそっと、撫でるだけで。 ]

 きもち?

[ 問うて、胸の尖りを甘く噛んで。
 もう片方は指の先で引っ掻いて。
 ぱちゃ、とお湯が跳ねれば、目を伏せて。* ]

[意表を突けたのならしてやったりと、
 双眸を細めて、猫のように笑い。
 無い喉をごろごろと鳴らすように、擦り寄って。
 鏡で確認するというからまた声を立てて笑ってしまう。

 嫌がる素振りもなく、確認したい辺り、
 付けて欲しいと言っていたのは本音のようで。
 それなら遠慮することもないか、と。
 これからのことを考えながら。

 彼が恥ずかしげもなく堂々と痕を見せることに対して、
 後日、付けたこちらの方が居た堪れなくなって、
 持ってきていたキャップを目深に被って、
 顔を隠してしまうようになるのは、もう少し後のこと。


 擽ろうとしてくる手を、避けようと身を捩れば
 ぱしゃぱしゃと水音が立って、秘めやかな笑い声が響く。]

[上手くおねだりは出来たみたいだったから、
 彼の手を離しても、その場に残ったまま。

 自身の空いた手は彼が好きだと言っていたように、
 しとりと濡れた髪を、撫でる。

 口にした通りに、尖りを指先で摘まれて、
 まだ弄られていない方には、唇が近づいていく。
 
 触れる前の擽る吐息に、身震いして。
 唇に包み込まれたなら、満足したような溜息が溢れる。]


  ……ッ、ん …… 
ン、



[ぬるりと舌先が這って、尖りを突ついて。
 歯を軽く立てられて、甘い痺れが胸元から背へ。

 身悶える度に、下腹に擦れる先端から先走りが零れ、
 ぬる、と湯とは違う粘ついた液の感触が這う。]

[髪を撫ぜる手とは違う手を、口元に当てて。
 自身の指に熱い息を散らして、伏して。

 気持ちいい、問いかける声に。
 こく、と浅く頷きを返す。]


  ……ッ、ン、 
……きもち、
……



[歯を立てられたなら、仰け反るみたいに身を逸らして。
 口元に胸を押し付けて、震え。

 強い刺激に、そちらにばかり集中していたせいで、
 下方へと伸びた手に気づくのが遅くなって。]


  ……ぁ、 ……ぅ、ン……


[窄まりを指の腹が撫でれば、
 まだ飲み込んでもいないのに、きゅうと悦ぶみたいに。
 そこが、ひくひくと、呼吸をして。
 一気に、顔に熱が集まり、頬を染める。]

[ してやったりと、猫の目で笑うのを
 やられたなぁって顔で見てた。

 確認しないとと言えばまた笑うから
 あまりの可愛らしさに目眩がして、

 くらりとした拍子に、額を首筋にぺたりと
 つけて。自分も笑う。

 擽ろうとした手は、避けようと身を捩られて
 ぱちゃりとお湯が舞う。

 笑い声は密やかに、お湯の跳ねる音に
 隠れるくらい。

 ――後ほど、鏡に写った自分を見て、
 だらしのない顔をするのだろうが、
 それはまた、あとで、の話し。 ]

[ 濡れた髪に、濡れた手が触れる。
 温泉で温まった手が、通るたびに、
 あたたかさと心地よさで、息を吐いて。

 待ってた、とばかりに満足したようなため息が
 聞こえてくれば、可愛がる指にも、熱が入る。

 濡れたそこは、乾いた肌より
 指にとどまりやすいから、捕まえるのも、容易で。

 摘んで力を加えると、ぴくんと体が揺れる。
 擦れる熱から先走りが溢れていることまでは
 まだ、知れずとも ]

 っふふ、 

[ 浅く頷いて、素直に答えられると、
 こちらの熱も、角度がぐっと変わるが
 まだこのもどかしいような、優しい時間を
 過ごしていたいので、見ないふりを。

 ――もっとも、その上に乗っかってる君には
 伝わってしまうのだろうけど。 ]

[ 一気に上り詰めるでなく、
 ゆっくり、を望まれるなら、

 こちらの要望とも上手く、噛み合うことだろう。

 撫でられる手が、耳を掠めれば、
 
、と小さく声を取り落とした。

 教えるばかりではなく、
 教えられる事も多々、あった。

 が、耳に触れられて、ぞわ、と
 するのは初めてのこと。

 ――作り変えられたのはこちらも同じ
 今の今まで気づかなかっただけ、
 なのかもしれない。 ]

[ 何度も吸い付いた胸の尖りは
 赤く色づきながら、強請るように
 唇を押し返してくる。 ]

 こっちも、

[ 指と唇との位置を入れ替えるように、
 まだ吸い付いて居ない方に、ふ、と
 息を吹きかけて。

 尖りを弄っていた手は湯の中へ
 湯の中で尻を撫で回していた手は、
 色付いた胸の尖りへ。

 湯の中へ入れた手は相変わらず
 やさしく、撫で回しながら、
 揺らすように、力を加えると、

 ちょうど自分の熱が擦れて ]

[くるりと輪郭をなぞって、摘んで。
 軽く爪を立てられたら、身を捩って。
 じわじわと快感と熱を引き出されていく。

 半身を湯の上に出しているというのに、
 身体は火照って、吐き出す息も甘く、熱い。

 幾度も往復する指が、ツンと尖りを押して、
 その指を押し返すみたいに膨らみが硬くなって。]


  っ、……ふ、……ぅ、  ンっ、


[湯船の温度に逆上せているのか、それとも。
 彼の愛撫に高められていっているのか分からなくなる。

 ただ、分かるのは。
 胸を擽る髪が、唇が、確実に快楽を与え続けて、
 初めてのときは感じもしなかったその場所で、
 ぬるつく程、先走りを零し、兆しを見せていること。]

[自身のものが張り詰めていくと同時に、
 あまく、腰を揺らしてみれば。
 臀部に彼の勃ち上がったものが擦れる。

 はぁ、と期待に満ちた溜息を洩らして
 焦れるようになったのは、いつからか。
 すっかり作り変えられた身体は、
 彼を飲み込むことを、望んでいる。

 緩やかに髪を撫でていれば、胸元で彼の肩が揺れて、
 笑っているのだと、気づけば。]


  …………、 ……?


[とろんと落ちた瞼で不思議そうに小首を傾けて、
 つん、と、彼の髪を一房引いて。]


  ……ぁッ、 
……ン、



[彼の刀身がぐっと膨らみを増せば、
 臀部に触れる大きさが如実に伝わってしまって。

 ついと、塞いでいたはずの唇から甘い声が、零れて。
 また、自身の手の甲で、唇を塞ぐ。]

[溜息のような吐息を零して、見下ろせば。
 前髪から雫が落ちて、彼のこめかみを濡らす。]


  
おっきく、なってる……、



[確かに分かる育ち具合。存在感はさっきよりぐっと増して
 柔らかな肉肌を突付くから、目尻を染めて、呟いて。

 まだ、だめ、と訴えたその場所の近くを、
 彼の刀身が擦るから、は、は、と短い呼吸が解ける。

 ほんとうは、触れてほしい。
 けれど、口にするもの憚られるし、
 触られたら、すぐに達してしまいそうで。

 
言えない。

 

  ……は、ぁ…… ッ、
 

[代わりに、彼の胡座に跨がるように沈めた腰、
 少し浮かせて、姿勢を変えて。
 双丘の合間に彼のものを挟み込むようにして、
 体勢を変えたなら、後孔と会陰を刀身に当てて。]


  ……ンッ、 ……ぅっ、
  は、ッ……ぁ、ッ ……ァ、


[緩やかに腰を上下に揺らめかせたらば、
 ちゃぷ、ちゃぷと二人の間から波が広がっていく。
 
 さっき彼の指が触れた場所が、彼のもので擦れて。
 気持ち悦くて、生理的に浮かんだ涙が溜まる。

 一度、気持ち悦さを覚えてしまったら、
 止まれなくて、声を堪えながら、波を何度も作って。]

[一緒に高め合うように、ゆっくりと。
 快感をじっくりと拾っていく。
 湯が張っている分だけ動きは緩慢で、遅く。
 空気に触れるよりも、少し感じが鈍い。

 きゅう、と彼の頭を抱き込んで。
 抱き込んだ手が、彼の耳を掠めたら、
 彼からも感じ入る声が聞こえて、堪らなくなる。

 抱き込んだ頭がもぞりと動いて、
 粒を育てた彼の顔が上がって、反対側へ。
 どちらも、と同様に育てるみたいに唇が降りて。]


  ……ぁ、ッ、 ……ンッ、
  
だ、 め 
ッ……、


[感じ過ぎると、思わず出てしまう否定の言葉。
 だめ、はイイ、ってことはもう知られているのに。
 更に頭を抱き込むみたいに胸元に押し付けてしまう。]

[ 苺みたいに、真っ赤になるそこ。
 デザートをいただく時、みたいに
 じわじわとゆっくり、愛撫を施すと

 腹のあたりで、ひくひくと、刺激を求めて
 擦られるそれに気づいた。


 初めて抱いた時にも、片鱗は見せられていたけど
 キスと、緩やかなふれあいと、胸の尖りへの刺激。

 それだけで、とは言うまい。言えない。

 いつだって、どこを愛撫する時だって、
 感じて欲しい、啼いて欲しい、気持ち良くなってと
 唇を通して、指を通して、伝えていたつもりで。 ]

[ その結果、愛されるのが上手に
 なってしまった。いとしい、みだらなからだ。

 それを愛しさと呼ばず、なんと呼べば
 いいのか。

 君がそれを知っているなら教えて欲しい。 ]

 なってるよ、
 そんな気持ち良いって反応されたら。 

[ 笑った事を不思議そうに見ていたから
 ぐ、とそこを押し付けてやると、
 おっきく、なんて言うものだから、
 尚更押し付けるようにして。

 君で感じて、こうなってる、
 分からせるように、腰を揺らして。

 水中では重さなどあってないようなもの。
 ゆっくりとした動きは、突き上げるときの
 それと似た動きで。 ]

[ まだ、だめ、とそう言われて
 舌の根も乾かぬうち。

 短い呼吸で、染まる目尻で、変わった姿勢で

 限界が近いことを連想させるのに、
 言わない、から ]

 ――あ、
それ、 ちょ、  ン、

 
[ まだもう少し、ゆっくりってそう思っていたのに
 柔らかな肉の合間に挟まれたら、
 焦るような声が出る。

 それでも緩やかに動く腰は止まらず
 ちゃぷり、ちゃぷりと跳ねるお湯が肩を、耳を
 濡らして ]

[ 散らばったものを掻き集めるようじゃなく、
 ひとつひとつ、拾うように。

 高まっていく快楽から、逃げられようもない。
 抱き込まれた腕が触れるだけでも、
 びく、と体が震えるほどに、体ぜんぶ、
 飲まれていくようで。 ]

 俺のが、ダメかも、

[ 更に抱き込まれて、呟いて、
 また尖りを食んで。

 
――そこで漸く気づいたのだが、

 
もう取りに戻る余裕なんて、ない。
]

[彼と身体を重ねるたびに、少しずつ。
 開かれて、慣らされていった身体は、
 小さな快感も拾える程敏感になって、恥ずかしい。

 なのに。
 
 身悶えて、啼いて、縋るたびに、
 褒めるみたいに彼が頭を撫でて良かったね、と言うから。
 まるでそれが正解だったみたいに覚え込まされて、
 快楽に従順になっていく。
 
 一度外れた箍は、際限が効かなくなってしまう程。
 淫らに、彼を求めるようになって。

 自分がこんなにも貪欲で浅ましいとは思わなかった。

[だけど、そんな俺を彼は。
 かわいいと、いとしいと言ってくれるから。

 涙を散らして縋ってしまう。
 もっと、と口に出せるまで数ヶ月。
 口に出せなかった分、身体は素直に、
 彼を求めてしまうけれど。――呆れないでほしい。

 善がる俺を見て、形を大きく変えて。
 硬くなったそれを押し付ける。
 反応を喜んでいる彼に、きゅう、と胸が疼いて。

 髪に頬を擦り付けて、甘えて。]


  ……ぁ、ぁんッ
 ……ゆらさ、ないでっ……



[自らも腰を擦り付けていたのに。
 彼にされたら、それ以上感じてしまうから。
 身体の奥が疼いて、後孔を突付く熱さに身悶える。]

[焦れったいけど心地いい快感の波に飲まれて。
 腰を揺すって刺激を求め、瞳を伏せる。
 ぱた、ぱた、と髪から溢れる水滴が湯に幾度も落ちて。

 気持ちいい、しか考えられなくなっていく。
 もうちょっと、もうちょっと。]


  は、ッ……ぁ、ンッ、
 …ンッ、 んっ


[入り口を擦るだけの淡い刺激を求めていれば、
 直接、昂りを会陰に擦られる彼のほうは、
 きっつかったのか、上擦ったような声が聞こえて。

 少しだけ、動きを緩やかなものに変えて。
 それも、次第に完全に止めて。]


  ……、……ン……、?


[とろ、と蕩けきった表情に映る瞳は。
 しとどに濡れて彼を映し出し、ぼうっと呆けた頭は、
 うまく思考が回らなくて、こてりと首を傾げて問う。]

[後孔を擦り上げる先端から、ぬめりを感じて。
 彼も感じているのだと分かって。
 抱きしめた身体が、僅かに震えただろうか。

 だめかも、という声に。]


  ……ん、  ……ぁ、ッ


[今度は問いかけるではなく、相槌の音を重ねて。
 抱き込んだ頭が、動きを制するみたいに粒を食むから、
 びくん、と背を丸めて、はふ、と吐息を逃がす。

 表情も頭も、これ以上無いぐらいに蕩けたのは。
 今まで、きっと彼も見たことがないくらい、あまい。]

[ 持って生まれたもともとの、
 ではないのは承知済み。

 肌を重ね合ううちに、覚えてくれることを
 褒めるように、良かったねと重ねて、
 心だけじゃなくて、体も、好きになって
 くれて、――そうして、俺は自分の瑕も、
 どうでもいいものじゃなく、好きになれた。

 底なんてなくとも構わない。
 際限など、決めたい人が勝手に決めればよろしい。

 奥の奥、君も知らなかった君と出会う度、
 何度だって、恋する気持ちを知っていくから。 ]

[ 恋を覚えた体はときどき、
 焦がれて焦れて、疼きを君にも
 知らせてしまうけど。

 ――呆れはしないだろう

 この温度を教えたのは君で、
 手を取って二人、溺れてきたのだから。

 甘える君が、あまく、なく。 ]

 可愛い声、――…もっと、欲しいな

[ ちゃぷん、ちゃぷん、泡立つほどでもない
 水音のまま、揺すり、揺すられて。

 次第に追い詰められていって、
 お湯の中、とろりとした先走りの蜜が零れて ]

[ 自分の意志とは裏腹に、入りたがるように
 そこを突き回してしまう。

 ドアを叩いて、あけて、と言うみたいに。 ]

 ――……は ぁ、

[ 腰の揺れが緩やかなものにかわり、
 止まっていくのに、蕩けきった表情を見てしまったら
 こちらの思考も溶けていく。

 しとどに濡れて、首を傾けて、
 あまく息を吐いて。

 主義に反する。このまましてしまうのは。
 その思考すら、奪い去って ]

 ……このまま、 入れさせて。

[ 卑怯すぎる問いを投げる気はない。
 ダメと言われても止まれないからではなくて。

 こんな時に問えば、良いとしか言えないだろうと
 思ったから。 ]

 
――ン、………あっつ、


[ 全て埋め込んだら、切なげに眉根をよせたまま
 なきごと、ひとつ。 ]

 
熱くて、キツくて……

 
出ちゃうかと思った、


[ ふ、と浅く呼吸を繰り返した。

 あってもなくても、そう変わらないだろう
 あんな薄いスキン一枚なんて。

 そんな風に思っていたものだから。

 隔てるものがなにもなくて、
 直接奥まで、触れてる熱さに、
 みっちりと包まれる感覚に、軽い吐精感を感じるほど。

 ――これは覚えちゃいけないもの
 だったかもしれない。こんな手放せない感覚を
 知ったら……、箱ごと屑篭に放りかねない。 ]

 ――ン……、やばい、気持ち良い

[ ゆっくり蕩かした火照った体を、
 これまでにないくらい、ゆっくりと揺すって

 揺するたびに、勝手に声が漏れていく。
 湯けむりの中、真っ赤に染まる肌が跳ねるたび、
 襲い来る感覚もまた、癖になってしまいそうで。* ]

[水音を立てて身体を交差させて、
 快感を高めあっていきながら、ときに。
 溢れた声を拾って彼が可愛いと嘯くから。
 小さく首を揺らして、羞恥を逃がした。

 どう聞いても男の声であることは変わらない。
 身体を揺さぶられて、濡れた分だけ、
 普段の話し声より艶を含んでいたとしても。

 今まで耳にした女性の声よりは到底低い。]


 
 ……ふ、
 ……や、ぁッ……ンッ、


[恥ずかしいのに、次から次へと声が零れて。
 小さく抵抗を見せても、膝を揺すって波を立てるから、
 また、自分じゃないみたいな甘い声が、鼻につく。

 許されていることは分かっているけれど、
 未だに慣れない気持ちはあるのは、どうにもできなくて。]

[愛されたい、可愛がられたいと思うと同時に、
 恥ずかしい姿を見られたくないとも思う。
 
 彼にだけしか見せたことのない姿を、
 もう何度も、何度も、見せてはいるけれど。

 先端を擦り付けるみたいに後孔へと押し付けられたら、
 一瞬だけ、ぬぷ、と先端が入り口に入り込んで、
 すぐに孔から抜けていく。]


  ……ぁ、ンぅッ……、 は、……
は、ぁ



[追いかけるみたいに襞が中でうねり、
 堪らずに腰を捩って、身悶えて、天を仰いで。

 一度覚えてしまった熱さと大きさを思い出して、
 奥が、きゅうきゅうと疼いてしまう。

 喉元を逸らして、息を虚空に吐いて身を落ち着かせ。
 再び、視線を絡ませあったなら。]


  ……ン、ぅ、……ぁ、ッ……
ンっ、


[先走りのぬめりが割り開くのを助けるように、
 つぷ、と先端が入ったと思えば、
 先程まで受け入れていた場所は、彼の形を覚えているのか。
 ゆっくり、形を確かめるみたいに内壁を擦って、
 奥へ、奥へと沈んでいく。]

 
  ぁ、 ぁッ、 
〜〜〜〜〜〜……ッ、



[彼の腕に手を添えて、助けを借りながら。
 彼を全て飲み込んでしまえば、声にもならない。
 熱を吐き出すだけの、溜息が零れ。

 添えた手に僅か、力を込めて。彼に縋る。]

[彼の昂りと一緒に入ってきてお湯と、彼自身。
 身体の奥にしっかりと感じて、涙が浮かぶ。
 は、は、と浅い呼吸を何度も繰り返しながら、
 蕩けた表情は未だ晒したまま。]


  ……おゆ、  はいって、る……、

  ……ぁ、……けいと、さんのも、
  いつも、 ……より、 あつ、ぃ……っ、



[いつもは彼が意識的に付けている薄膜がないだけで、
 こんなにも熱く、脈動を感じるくらい。
 彼を近くに感じて、とく、とくと心臓が早まる。

 彼も同じように感じているのか、
 熱いと漏らす吐息は、それ以上に熱を訴えて。

 出ちゃう、という嘆きだけは、耳に拾えば。
 目を細めて、微かに肩を震わせて。]

[自身もまだ身体に熱を籠もらせたまま、
 落ち着かなくて、呼吸を浅く紡いでいれば、

 彼の手が俺の腰元に落ち着いて、
 ゆっくりと腰を揺らめかせていく。]


  ……アッ、 …… ?

  ぁッ、ぁン……ッ、……は、
  だ、め……まだ、……ゆっ、くり……ッ


[少し揺すられるだけでもさっきとは全然違う。
 身体の奥で彼をまるごと感じて、少しの揺れも、
 ダイレクトに腰に、その奥に響いて、弱い場所を突くから。

 ぱちゃぱちゃ、と湯を跳ねさせながら、
 まだ、彼を感じていたくて、抵抗するみたいに。
 首を揺らして、ゆっくり、と内腿で彼の腰を挟んで。*]

[ 溢れる声を拾い逃すことのないように
 肌を近づけて。

 艶を増して、蕩けて、
 抑えられなくなっている声を拾うと、
 尚更止まらなくなってしまう。

 耳元近くで聞いていたら,
 自分のほうがあてられてしまいそうで。

 揺するうちに、先端がぐり、と入り口へ
 当たり、受け入れられる前に、抜けていく。

 欲しがるように、腰を捻って、身悶える姿を
 見てしまったら、ゆっくり、なんて
 言ってられなくなってしまって。 ]

[ このまま、溶かして欲しい、君の中で。
 答えは返らない。

 瞬きを忘れてしまうみたいに目を見開いて、
 言葉もなく、手の動きも止まって。

 けれど、おいでと呼びかければ
 腕の中におさまって、

 ゆるりと、水面が揺れる。

 見つめ合ったままで、ゆっくりと腰が
 落ちるのを待っているようでいて、
 押し込むように、己の腰も動いてしまう。 ]

[ それでもゆっくり、押し進めるつもりが、
 奥へ奥へと招かれるように受け入れられて
 ぐ、と唇を噛んだ。

 収まり切って、揺するまでの間、
 立ち上ってくる熱に耐えるように、

 短く、息を吐いて。

 顔を僅かに上げたまま、受け入れて
 涙を浮かべる君を、見てた。

 蕩けた表情のままで、また
 そんなつもりはないのかもしれないが
 煽るようなことを言うから ]

 熱くしたのは、君だよ。
 ………あ、……また、……
 
[ どうにかそう、返し、大きく息を吐くことで
 自分自身を誤魔化そうとしてみるが、
 誤魔化されてはくれないようで、ずくんと中で疼いて。 ]

 ……まだ?

[ だめ、まだ、ゆっくり。

 そう紡がれて、揺らぎを落ち着かせるけど
 一番奥に到達したまま。

 ほんの少し、呼吸をするための動作でも、
 中に埋まったそれが、感じ取って、
 脈打って。

 腰を挟まれたら、ふ、と笑って ]

 ――ン、……  ッ

[ 擦り合わせるような口付けが連れてくるのは
 焦りよりも、幸福感だった。

 とく、とく、と早まる君の心臓の音が、
 重なるように早まって。

 ずっと、こうしていたいと思わせるから
 遅れて、こうしたかったのだろうかと
 思い当たれば、そのまま、触れ合うだけの
 やさしい口付けを繰り返す。

 同時に近く、焦げ付いて、
 ちぎれるように、快楽に追い立てられる時まで。* ]

[深く繋がりあったまま、暫くの間。
 どちらからも呼吸をする音だけが響く。

 互いの熱に煽られぬように息を吐き、
 少し、どちらかが身動ぐだけで。
 小さく呻くような声と、あえかな声が溢れる。

 圧迫感のある熱を受け入れたまま、
 打ち震え、へたりと臀部を彼の腿の上に乗せて。
 腿に乗りかかっている分だけ、高い目線。
 
 自然、彼が下から覗き込むような形になって、
 潤ませ、伏した瞳が彼の目にも映り込んでいる。

 煽ったつもりは、毛頭なくて。

 火照った理由を自分のせいにされたなら、
 ふにゃりと幸せそうに、表情を崩しただろうか。]


  ……ッぁ、 また、
 おっきく……、


[中で彼のものが膨張すれば更に、お腹を圧迫する。

 少し、苦しいけれど。
 それ以上に満たされる幸福感のほうが、よっぽど強い。]

[動きをやんわりと制したならば、
 少し、物足りなさそうな声が返ってきて。]


  ……ンッ、 ……ま、だっ……


[こくこくと、首を縦に揺らせば。
 言葉通り、緩慢に突き上げる動きが優しいものに変わる。
 まだ、少し名残惜しそうに、
 つん、と先端で奥の扉を突付かれたら、ぁぅ、と声が跳ねて。
 自分でも驚いて、かぁ、と頬が染まった。

 それでも、慣らすみたいに動きが止まって。
 ただ、中に埋まっている昂りだけが、
 脈打っているのがじっくりと内壁を伝って、
 お腹の奥から、心臓を撫でるみたいにじんわりと、響く。

 咄嗟に挟んだ両腿の力を緩めれば、
 力んでいた力が抜けた分、
 また、ず、と彼のものを飲み込んで、息を詰め。]

[見上げる瞳が弧を描いて、意地悪く囁く。
 う、と小さく唸って、首を引き、薄く唇を噛んで。]


  
……だって、



[いっしょに、と言ったのはそちらの方。
 動かされたらこちらが保つ自信がなかった。

 さすがにそれを言うのは、羞恥が勝って言葉に出来ず。

 彼も、口ほど焦れてはいないようで。
 戯れのような口づけを顎先に贈って、唇へとズレていく。]

[くすぐったいそれを首を竦めて、受けて、
 唇の端で止まったキスは、誘うように開かれるから。

 両手を頬に滑らせて、彼を瞳を閉じ込め。
 同じ分だけ隙間を開けた唇を触れ合わせてから。

 少し首を傾けるようにして、舌を伸ばして割り入れる。
 彼の口腔を探るように、ちろ、と先を尖らせて。
 迎え入れられた舌が吸い上げられ、ン、と声が溢れる。]


  ……ぅ、ンんっ、 ……は、
ふ、っ
……、


[柔らかな舌が軟体動物みたいに動き、
 上も、下も繋がりあったまま。

 頬に添えていた手を、するりと首裏へ回して。
 彼の身体を引き寄せていく。
 もっと、二人の隙間を失くすみたいに。]

[ まだ?と問えば、まだ、と返ってくる。
 焦燥感がないではないだろうに、

 それでも、位置秒でも長く、
 繋がっているのを望む故だろうか。

 首を縦に降られたら、突き上げる動きは
 一時、緩やかなものに変えて

 もどかしさを髄まで味わいながら。
 小さく零す声を聞いた。

 触れ合わせた唇が、全身の自由を
 奪うほど、あまく。 ]

 ……ン、

[ 割り入れられた舌を、優しく吸い上げれば
 また、幸福感と、同時に、襲い来るのは
 剥き出しの、欲。 ]

[ 唇に歯を立てられて。
 角度を変えて、奥まで迎え入れて。 ]


 ――は、

[ 笑い合って。
 穏やかに、繋がったまま――。 ]

[ いられたなら、良かったのに。

 奥から湧き上がる欲を抑え込むのにも
 やがて限界が来る。

 ぴったりと繋がったままの体を
 押し出すようにして、一度、ずる、と
 熱を引き抜くと、 ]


 まだ、でも。もう俺が無理。
 そっち、手ついて。

[ 君の両手を取って、ひやりと冷たい岩肌へ付かせて。
 立ち上がると同時に、腰を湯から引き上げて。 ]

[ 常日頃、顔を見ていたいからと
 そういう体制ばかり取っていただろうか。

 少なくとも、こういう場で
 その白い背中を見ることはなかった筈で。

 体を折って、後ろ首から腰に至るまで
 舌で辿り、最後には、ひく、と
 蠢くそこへ。

 舌先を尖らせて、蕾の周りを撫でれば、
 少量、お湯が漏れ出してきたか。 ]

 ――入るよ、

[ ちう、と付近に吸い付いて、唇を離すと
 腰を掴んで、ぐり、を先端を押し込んだが最後。

 一気に奥まで穿つように挿し入れて、 ]

 っう、………あ、 
締ま、るッ!


[ その一時を耐えたなら。 ]

 ご、めん とまんない、ッ あ

[ 上り詰めるまで、打ち付けるのみ。
 苦しげに吐息を吐き出しながら、
 もっと、近くにと言わんばかりに、両手を
 岩肌に付かせたくせに、体を起こすのを
 手伝うように腰を掴む手を、腹より上まで
 滑らせて、 ]

 も、 やば、

[ 赤い粒にたどり着けば、きゅ、と指で摘んで。

 
――声が漏れることがなくとも、

 
これほど、肉のぶつかり合う音と、水音が響けば

 
何をしてるかなんて、瞭然なのだろうけど。



 そんな 細かい事 気にしてられる余裕はない。* ]

[歯がぶつかったとしても笑い合えるくらいの、
 余裕はまだ互いにあった。
 もう少し、と彼の身体に寄りかかり、
 ちゅ、ちゅ、と触れるだけのキスに切り替えて、
 時折、やっぱり物足りなくなって、
 舌を絡めあって、唾液を交わし合い。]


  ……ッ、んぅ……、


[こくん、と喉を鳴らして飲み干して。満たされる。
 熱い火照りと長い、長いキスにとろんと眦は下がったまま。

 身体を持ち上げるような動きに、
 中から彼のものを引き抜かれていけば、
 動き出すのかと、甘い誘いに乗ろうとして。]


  ……、……?


[全部引き抜かれてしまって、首を傾げた。]

[無理、というのに抜いてしまったら。
 ふわふわとした頭でそう考えながら、手を取られ。
 言われるままに、湯船から上がるけど、
 少し、物足りないような顔になってしまったかもしれない。
 だって、これからだったのに。
 と、淡い期待に濡れた瞳を向けて。

 膝から下はまだ湯に浸かったまま、岩場へと移動すれば、
 触れた岩場は少しひんやりしていただろうか。]


  ……けい、と、さん……?


[両手を岩場について、彼の動きが見えなくなる。
 お湯と彼ですっかりと火照った身体に外気が晒されて、
 少し、冷たい空気が気持ちいい。]

[不安そうに少し後ろを振り返れば、
 彼の身体が覆い被さるみたいに影が重なって。

 首に、ちうと唇が落とされる。]


  ぁ、ッ……、んッ、……


[ぴく、とそれだけで胸を反らして吐息が零れ。
 肌を撫でるようにゆっくりと彼の唇が下がっていく。

 背中から腰、腰から臀部。
 そして、先程まで彼を受け入れていた場所へ。]


  ……ゃ、……
そこ、ッ……ン、ぁぅッ……




[舌先で形を辿るように円を描かれて、ぞくぞくと震え。
 ひくついた孔からさっき押し込まれた
 湯が、ぱた、ぱた、と湯船に滴り落ちる。]

[あられもない場所で彼の息が吹き掛かるのが恥ずかしい。
 岩肌にくたりと身を預けて、肩で息をしていれば。
 低い艶やかな声が、耳を擽って。]


  ……んぁ、っ……く、ぅンッ
……ん゛ッ ……!



[淡い愛撫に疼いていた場所に、先端が入り込み、
 一息に、ズッと奥まで貫かれて。
 一瞬、呼吸が出来なくなる程身体を飲み込まれた気がした。]


  〜〜〜ッ、……ぁ、うッ……、
は、ぁッ……、



[背筋から駆け上ってくる急速な熱が、また身体を火照らせ。
 一気に彼の熱を感じて、ぶわりと身体中に熱が広がっていく。
 落ち着かせようと、息を吐き出そうとするのに。
 動き出すのは、彼の方が少し早かった。]

 
 
  
、ぁッ……ッ、ぁっ、……


[ぱちゅん、と腰を打ち付けられて。一度、二度。
 足りないと言わんばかりに岩に寄り掛かっていた身体を、
 引き寄せられて、腰をしっかりと握り込まれて、
 深く繋がるように、密着させられる。

 中を抉る熱さと、その深さにくらくらとして。]


  ……あっ、 ……
だ、
めッ……、
  
これ、ッ、おくまで、 とどいてッ……ぁ、ッ、


  ぁ、ぁッ……、や、ッ……ふか、いッ……


[声を抑えようとする意識もとうに薄れ。
 淫らな感じ入る声と、肌がぶつかる音が露天に響く。]

[音が、恥ずかしい。
 敏感な耳が、何をしているか分からせるみたいに音を拾って。
 ふる、と首を振れば、また髪から水滴が飛ぶ。

 がくがくと、膝が揺れて立っていられなくなりそうで。
 彼の表情が見えないまま、ひたすら腰を打ち付けられる。
 いつもよりも、余裕もない声が尚更。
 自身を求めているようで、きゅうと胸が疼いて。

 その疼いた場所を、狙っているかのように。
 指が、きゅ、と摘まむから。]


  ふぁ、ッ……ぁっ、ぁッ……ぁンッ……、
  ……、ッ、あ、 ……だ、め、 なんかッ……


[クる。

 一気に込み上げていくるような感覚が、
 下半身から駆け上ってくるみたいに、ぞわぞわと。*]

[ キスが途切れて、自身を引き抜くと、
 どうして?という顔で見られて、
 ごくり、喉が鳴る。

 淡い期待に、欲に濡れた瞳に、
 気を失う程抱き潰してしまいたくなる
 衝動を覚えたから、一旦それを落ち着けるために

 首から背筋を唇で、辿って。
 これから何をするか、教えるみたいに、
 ひくんと疼く蕾を舌でなぞって。

 悦ぶみたいにまたひく、と動くと
 湯が少量滴り落ちて、

 ――酷く扇情的だった。ので、
 衝動自体はそれほど落ち着かないまま
 自身をそこへ、ねじ込んでいくと ]

[ いっとう、甘い声が、己の熱をあげていく ]

 ン、奥まで、届いて ぁ、
 すご、 もっと、 
俺を駄目にして、


[ 体を引き寄せ密着すると、離すまいとするように
 奥までぎゅうと囚われて。

 感じ入る声と、ばちん、と肌を打つ音で

 脳髄まで痺れるような感覚が全身を駆けるように
 巡って、巡って。

 それを相手も感じているのか、ふると首を振って
 膝を揺らして。視覚から得られる興奮でまた、
 打ち付ける動きは早まって。 ]

 絞り取られそ、……だめ?
 好き、でしょ

[ 赤い粒を摘むとより、声が、熱が高まるから
 ほんのすこし、の意地悪を口にして ]

 熱ッ……、ぁ、 良い、………

[ ぐりぐりと、乳首を摘んだままで
 律動を早めていくと、疼きは最高潮に達して。 ]

 那岐、……那岐 ッ

[ 熱に浮かされて、うわ言のように何度も名前を呼べば
 伝わるものもあったかもしれない。 ]

[ しっかりと、体を抱きとめたまま。
 引き抜くこともしないまま。

 しなる背中に、唇を寄せる。

 一つ、二つ、と赤を散らして、
 白い背中に咲いた
を、
 
 焼き付けるように、じっと見ていた。* ]

[腰を支える手が肌に食い込む。
 痕が残っていた場所に更に花開くみたいに。
 
 途切れ途切れの声が、情事を更に生生しく伝えて、
 深く、繋がっていることを意識させる。
 
 とん、とんと最奥を突付く先端が、
 こじ開けるみたいに更に、奥へとめり込んで。]


  うぁ、ッ……、や、
こわッ、……いッ……、



[感じ過ぎてこわい。いつかも訴えたように。
 波が急激に津波のように襲ってくる。

 制するように腰を掴んだ手に手を重ねて、
 弱く首を持っても、撓る腰は淫らに跳ねて、
 飲み込んだものを、きゅううと強く締め付ける。

 もっと、奥へと自分の意志とは相反するみたいに、
 彼を、招き入れて、奥へ。]


[好きかと問われて、また弱く首を揺らす。
 首を振る度に、水滴がいくつも湯に落ちて波紋を作り、
 頬だけでなく、背中が染まるぐらい羞恥に熟れて。

 やだ、と思うのにその声に煽られるみたいに、
 きゅん、と中は悦ぶみたいにひくついた。]


  ……ひ、ぅッ……、…ぁッ、…ァッ、
  こんなの、しらな、 いッ……ぁッ、やッ……

  ……はっ、ぁッ、……も、だめッ……、ッ…


[中を執拗に何度も突付かれて、
 彼の手が痛みを与えるくらいに、赤い尖りを弄る。
 胸と、後ろと、声が弱い耳を擽って。

 ぶるっ、と身体が大きく撓る。
 好きな声に、愛してる、と囁かれたら、]

  
  ……アッ、……ッ、ぅ ……キちゃ……ッ


[声にならない音が、跳ねる。]

[ガク、と岩場についていた手が滑って、
 へたりと頬を冷たい岩場に押し付ける。
 
 汗だけじゃない、涙も、飲み下せなかった唾液も、
 口端から滴らせただらしない姿態を見せながら、まだ。
 達し続けている身体が、ぴく、ぴくと震えている。]


  ……ぁ、ぅッ……、


[もう何度もイってるのに、
 擡げたままの熱はまだ身体の中で渦巻いたまま。
 お腹の下が苦しくて、つらい。]

 
[ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、
 背中に落とされる朱への、弱い刺激にすら、
 小さく身体を震わせる程、肌が敏感になっている。

 そんな姿態が彼の眼に映っていることも、
 脳裏に過る余裕も、今はないまま。

 岩肌に懐くように身体を寄りかからせて、
 彼に背を向けたまま、肩で何度も、呼吸をしていた。*]

[ 怖い、知らない。
 何度か聞いたことのある言葉。

 ――ここまで昂ぶる前だったら、
 聞いて、止まって。やさしく問いかけて。

 焦らすようにすることもできただろう。 ]

 駄目になってよ、いっしょに。

[ 弱く首を揺らして、
 腰を淫らに揺らして、奥まで招いて
 食べてくれるのに、まだ理性が働いて
 いるようなら、より深く、より激しく。

 抉るように、中で暴れて見せた。 ]

[ ぺたりと、岩場に頬をつけて、
 涙と、唾液と、締まらない口元から
 零しながら、まだ熱に浮かされ続けて
 いるであろう、体を抱き込むようにして、

 ゆっくり、と自身を引き抜いた。 ]

 そのまま、

[ その言葉は聞こえたかどうか。
 後回しにしてしまってはまた、後ほど
 熱してしまうだろうからと、

 ゆるりと体を起こし、腰を支えながら

 指を後孔にゆっくり
 押し込んで、掻き出すように動かして。 ]

 苦しい?ごめんね、もうちょっとだから。

[ ――見てしまったのは不可抗力、
 と言い訳はするまい。

 己の出したものが、そこから
 出てくるたびに、悪いことをしたような
 気持ちの他に、酷く満たされるような
 気持ちが湧き出てしまったので。

 自身の欲で汚してしまうことで、
 満たされるなんて、知りたくなかった。

 知ればまた、次の機会を待ってしまう気がして。 ]

[ ぬるつきがなくなれば、ざば、とお湯で
 流して。

 ――水面に浮き出る汚れについては
 ついでに、桶で浴槽の外へ流して。 ]

 動ける?座って、

[ 動くのも辛いようなら手を貸して、
 浴槽の縁に腰掛けるように促して。

 彼の脚の間に入り、肩近くまで湯に沈めて。
 渦巻く熱を吸い上げるように、先端部分に
 唇を数度つけて、ぱか、と口を開いて、
 熱を口の中へ招いた。* ]

[いやも、だめも、受け入れてもらえずに。
 堕ちよう誘われて、また内股がひくんと痙攣を起こして。

 ふる、とまた弱く首を振っても叶わない敵わない
 煽り立てる声に震えて、身体を揺すられて、
 限界なんてもうとっくにきてるのに、
 それ以上を求めるように、腰をきつく抱かれて、
 逃さないと言わんばかりに、奥を抉られて。

 岩につく腕も、かたかたと震え。
 中で膨らみ、彼が熱を吐き出す頃には、
 喉をつく声も掠れて、ただただ揺さぶられていた。]

[彼が中で果てたことも、理解しているものの。
 声をかけることも出来ずに。
 収まりきらず、言うことを効かない身体に、
 翻弄されて、止まらない涙を流し続けて。]


  ……は、っ、……は、……ぁ、ッ……


[只管、呼吸を繰り返す生き物のようになっていた。
 滴るもの全てを制限できないみたいに、
 呆けて、震え続ける身体には何もかもがつらくて。

 気遣うように引き抜かれていく行為すら、
 酷く中を通じて、身体に痺れが走るみたいにじんじんする。]


  ぅあッ……、ぁ、ぁッ ……
ふ、
ンッ……


[もう出ないと思っていた声も、溢れ。
 つらい、と訴えるように、首を揺らすのに。]

[くたりと力の入らなくなった身体を、
 彼の腕に支えられて、少し安堵したのも束の間。

 腫れあがった孔をついて、指が突き入れられて。]

 
  ッ
 ! 

  
やっ
……まだ、 イってる、からッ……
  ん、ンッ、……ぅッ、……ぁ、
んッ……


[高める為ではないのだとしても、その行為がつらい。
 長い指が、中を引っ掻くように蠢いて、
 入り口まで引き抜かれたら、また差し込まれて。

 ゆっくりと、言われても。
 尚更その緩慢さが、指の動きが伝わってしまって。
 腰が、びくびくと踊るように跳ねて、唇を噛む。]

[処理を彼に任せた後、彼の手を借りて。
 よろつきながら、岩肌の縁に腰を掛ける。]


  ……ン、


[辛うじて返事をできるぐらいの意識はあったけれど、
 まだぼうっとするような心地が残ったまま。

 ……だから、抵抗することも忘れていた。

 達したはずなのに熱を持ったそこに彼の顔が近づいて、
 大きな口で先端に吸い付き、飲み込まれたら。]


  ぁッ、 は、ぅッ……、
  ……も、……だめ、って……、言ッ……ぅンッ、


[温かい口内に包まれて、先端が喉奥に締め付けられたら、
 少し落ち着いていた熱が、
 すぐに兆しを見せ、彼の口内で膨らんでいく。] 

[ 己との情事で、涙を流して、
 全身を震わせて、感じてくれるのを
 一番良いところから見てしまったから。

 二度目だというのに、いつも以上に
 吐き出しているのを如実に感じ取って。

 引き抜いた際に、こぽ、と溢れ出て
 来たものが脚を伝っていくのを、

 見ても居ないのに感じていた。

 上限のない快楽を喰らい続けているのか
 引き抜くだけでも、声を上げているのを
 拾おうとする耳を叱咤するように、
 唇を噛んだ。

 これ以上が欲しくて、啼いているのではなく
 これ以上ないくらいに、耐えているのだと。 ]

[ 落ち着いてからすべきだったのかも
 知れないけれど、なにせスキン無しで
 一番奥で、気持ち良く達してしまったものだから
 掻き出すなら、早いほうが良いと判断した。

 ――その判断については後ほどか後日か
 正しい方法を聞き出すことにして。 ]

 ごめんね しんどいね

[ やさしく、声を掛けたところで、
 何が変わるわけでは、ないのだろう。

 イき続ける事の苦しさについては、
 分かってあげられないのがもどかしい。

 泣き縋るように、やだぁと潤んだ目で
 見られて、――さっきより余程、ひどいことを
 しているような気持ちになる。 ]

[ それでもどうにか、処理を終えるまでの間
 身悶えて、苦しげに度々、指を締め付けて
 細やかに痙攣しているのを、横目に、
 煩悩を打ち消すように、息を吐きながら耐えて。

 処理を終えて指を引き抜けば、かくんと
 膝が揺れて、湯船に落ちてしまいそうだったので

 腰と上半身を支えると、よろつきながらも
 岩肌の縁に腰を落ち着ければ

 かろうじて、と言った返事が返って。

 ――大いに、反省した。
 外で、ここまでしてしまったことに。 ]

[ 反省は、している。心から。
 けれどそれと、これとは、また別で。

 熱を蓄えたままで辛いだろうから、
 そういう気持ちも確かに、ある。

 けれど、奥の奥まで招いて、
 中で扱くようにして、ダメになるまで
 愛してくれた君に、少しでも

 それを返してあげたい、から。 ]

 ん、あとで、いくらでも
 責めて良いよ

[ 辛さのほうが勝るなら、それでも
 諦めただろうけど、口内に招いて。
 君の中、ほどではなかろうが奥の方まで
 受け入れたら、兆しを見せ、膨らんでくれたので ]

[ 頭に置かれた手が、どうしたいかは
 分からない。

 くちゅり、唾液の絡む口内で膨らみゆく
 彼の熱に、熱烈な口付けを思わせる動きで
 舌を絡ませて。

 頭に置かれた手を、ゆるくあまく、自分の手で
 握り込んだ。

 逃れようとしているなんて、思わない。

 自分がしたいことを、受け入れてくれると
 信じ切っているから。 ]

 ――ン、 ふ

[ その時が来るのを待つように、喉の奥で、
 きゅ、と先端を締めつけて。* ]

[くったりと身体を岩場に預けて掻き出される時間は、
 実際にはそんなに長いものではなかったのかもしれない。

 それでも敏感になってしまった身体には、
 とても長い時間のように思えていた。
 様子を伺うような声は、半分うつろに曖昧で、
 半ばがくがくと震えるように、浅い頷きを返して。

 堪える。

 震え上がる身体を戒めるように、
 岩場に爪を立てるように、力んで。
 涙で濡らした頬を、冷たい岩場に押し付けて。
 
 ようやく抜かれていった指が無くなった頃には、
 縋る腕も弱く、膝も落ちてしまいそうだったけれど。]

[彼が悪いわけではないことは分かっている。
 ただ快楽に墜ちていくのがこわかっただけ。

 何も知らない場所に沈むには、最初、
 どんな一歩も恐れてしまうものだから。

 悪くないと分かっているのに、
 いや、も、だめ、も口をついてしまうのは許してほしい。
 そう口にしていないと、自我が壊れそうで。
 
 
もっと、違う言葉を口にしてしまいそうで。


 少し、落ち着いた身体を浴槽から溢れた湯で濡らした、
 岩肌に落ち着けて、責めていいという声に。
 否定するように首を振る。

 責めたいわけじゃないから、
 そんなことは言わないでほしい。]

[それでも、口に含まれたら、また。
 だめ、と言ってしまうのだけど。

 柔らかい口腔に含まれて、腰が抜けそうになる。
 思わず、背を丸めて、くしゃりと彼の髪を乱して。]


  ……ッ、ぁ、  ……は、ぅッ……


[躊躇いもなく口に含まれて、追い立てるように
 上下に揺らされたら、まるで身体の中に入っているような
 錯覚すら覚えて、くらくらする。]


  ンッ、ぅ……
、めッ ……ぁッ、ぁッ、



[呂律の回らなくなった口をなんとか、回して。
 何度も、弱く首を振っても、彼の口が追い立てて。]

[眼を細めて、出して、なんていうから。
 ぶる、とまた快楽の波が押し寄せてくる。

 ぼろ、とまた大きな粒が目尻から零れて。
 つらいのではなく、感じ入って出てくる生理的な涙。

 片手は髪を掻き混ぜながら、もう片方の手で。
 再び自身の口元に手の甲を押し付ける。]


  は、ぅ……っン、んぅっ……、ぁ、


[腰元から這い上がってくる何かを堪えようと、
 しても。促すみたいに喉で締め付けられ、
 舌で溢れ出す汁を絡め取られていく。] 

[髪を撫でていた手を取られて、重ねられ。
 あやすように、握り込まれ。
 こわくないと、伝えるみたいに強く訴えられたなら。]


  ……アッ、 ……クるッ……ぅ…ッ、

  だ、
め、  くち……、はなして、ッ ……

  ……ゃッ、 も、  でちゃ、……ッ



[中に吐き出してしまうから、と。
 首を振り揺らしたまま、手の甲を薄く噛んで。

 堪らえようとするのに、喉奥が絞るみたいに、
 窄まれば、堪えきれるはずもなく。] 

[ これからずっと、この先もずっと。
 一緒にいたい。

 一つでも多く、知り、
 一つでも多く、理解し合いたい、

 そのうちの一つとして、今日の日もあればいい。

 肌を重ね合う中でもそれは変わらない。
 これは良い、これは痛い、これは怖いと
 伝え合う中に、責めるよう言葉一つくらい
 
 あっても一向に構わない。

 君に関してのこと、特に、我慢ならずに
 口にしてしまうことが多いことだし。 ]

[ 恋するにあたっての、酸いも甘いも、
 苦痛も快楽も、君から知りたいから。

 背を丸めることで、心理学的には
 快楽に怯えていると取る事ができるらしい。

 良くそうしているのを見るから、
 今日もすこし、怯えているのかもしれない。 ]

 ん、 いいよ、

[ 口をついて出てしまう言葉の裏側は、
 知っている。どうしても出てしまうだけで、
 本当は駄目でも、いや、でもないことを。

 駄目と言われる度、良い、と返してきた
 これまでも。そして今日も。 ]

[ ぼろ、と零れた涙が頬を伝って
 顎先に落ちて、まだあたたかいまま、
 自分の手に落ちてくる。

 泣いちゃうくらい、良くなって

 その願いが通じたような気になって
 尚更、恍惚とした表情を浮かべたまま

 とくとくと脈打つ愛しい熱を、
 口内で抱きしめるように、口を窄ませて。 ]

[ ゆるりと手を握りこんだなら。
 くちをはなして、と彼が言う。

 に、と微笑って、一度だけ静かに
 首を振るようにして。

 ――前にも言っただろう。
 そんな寂しいこと、言わないでと。
 それについさっきも、中にと。

 それでもまだ、遠慮があるようだから、
 つい、意地になるみたいに、窄めたままで
 吸い上げてしまう。 ]

 あ。

[ 舌で追いかけそこねたそれを指の先で
 拭って口の中へ戻すと、いつかと同じように
 名残惜しげに、先端にちう、と吸い付いて
 解放し、ごく自然に、喉を鳴らして。 ]

[ 背を丸めてしまうのは、強すぎる快楽に
 怯えてしまうから、らしく。

 背を逸らすのは、
 より深く感じ入るため らしい。

 聞きかじった話を思い出して、ひとり
 小さく笑うと、 ]

 良かった?

[ 聞いて、両腕を組んで、君の膝の上に
 乗せて。落ち着くまではそうしていただろう。

 冷える前にもう一度湯に浸かるように促してから
 洗い場に向かい、髪と体、顔を洗って、
 自分ももう一度湯船に浸かって。

 星空と、君とを交互に眺めていたけれど ]

 湯あたりする前に、あがろう。

[ ただでさえ燃え上がってしまったから
 ゆっくり浸かるどころではなかったの
 かもしれないな。

 抱き上げるつもりで、膝の裏へ
 片手を入れたけど、素直に甘えて
 くれただろうか。* ]

[零れた涙が彼に落ちて、濡らしても。
 気づくことができないくらい余韻が酷くて、
 射精後の脱力感が一気に襲ってくる。

 彼が口から溢れさせたそれも、
 視界の端に留めてはいたけれど。]

 
  ……飲、……っ、  ……


[溢れたものまで、指で掬い上げ口に含むのは、
 少し、いやかなり恥ずかしかった。
 何度その光景を見ていたとしても。

 ただ、上がった息を肩で呼吸しているぐらい、
 口を挟める程の余裕もなかったから。

 小さく呻くだけになってしまって、
 その反抗は、彼には通じないだろう。]

[いくら湯に浸かっていたとしても、
 濡れた肌を長い時間、夜風に晒していれば寒気も伴う。

 自分も彼も吐き出したものを手で掻き出したとはいえ、
 すぐにまた浸かるのはさすがに抵抗があったけど。
 冷えた空気には抗えずに、少しだけ身を浸した。

 肩口まで温もれば、外の温度に合わせて、
 少し高めに設定されたお湯が心地いい。

 温もってから身体を二度目の身体を洗い流して、
 丁寧に彼が指で掻き出した場所は、
 少しだけ、シャワーで洗い流していれば、
 彼からもまた、手伝う声が上がったかもしれない。


 少しだけ、また触れ合って。じゃれあって。
 逆上せてしまう前に身体を冷ます。
 
彼に逆上せた頭と表情だけは、残ったまま。

[身体を気遣うように差し伸べてくれた手は、
 気怠さを残した身体には、ありがたかったけれど。
 
 足元が濡れた場所で寄りかかるには、気になってしまって。
 やんわりと首を振って申し出を断った。

 甘い雰囲気を壊したかった訳じゃないけれど、
 二人して滑ってしまったら、元も子もないので。

 手だけを借りて、脱衣所まで戻り、
 水気を取り払った後、宿の据え置きの浴衣に身を包んで。]


 
  …………けいと、さん


[つんと彼の浴衣の袖を引っ張ってから、
 ン、と甘えるように両手を伸ばしたら、
 さっきの誘いのお返しだと気づいてもらえるだろうか。

 ドライヤーは部屋にも持ち運べるはず。
 髪はまだしっとりと濡れたままだけど、
 後で、彼に乾かしてもらうとして。

 今は、先程断った彼の腕の中に甘えるように身を寄せた。*]

[ 問いに、言葉をつまらせるのを見て。
 ――問うべきではなかったのだろうかと僅か
 不安になる。

 軽い気持ちで問うたのを、後悔するより
 少し早く、控えめに頷いてくれただろうか。

 見上げる視線に不安が少しだけ、混じったのを
 続く言葉が、ふわりとかき消していったから

 反応は示さないまま、撫でられる手に
 促されるように、目を伏せて。 ]

[ 内風呂に移動する気も起きず、
 湯から身を上げれば、甘い香りのボディソープ
 で体を洗って。髪を洗って、嗅ぎ慣れぬ匂いへの
 違和感を感じつつ、

 彼もシャワーで洗い流すようなら
 手伝いを申し出て。

 遠慮しないでだとかじゃれ合いながら
 洗い場を後にして。

 抱き上げるつもりだった腕は、支えるだけに
 留めたが。 ]

[ 浴衣に身を包んで、濡れた髪を拭っていると
 つんと袖を引かれて。

 タオルを首掛け、微笑むと、
 背中に手を回し、一度ぎゅうと抱き締めたあとで

 抱き上げて、部屋まで向かい
 座椅子の上にそっとおろして。

 これではどちらが甘えているか、わからないなと
 声を上げて、笑い

 ドライヤーを手に戻ると、短い君の髪に
 先に温風を当てていく。

 さほど時間もかからずに、乾ききって
 しまったなら、自分の髪も乾かして。 ]

[ 冷えたお茶で喉を潤して、
 窓の外を眺めた後に、スマホに目をやって。

 ――夕食からこちら、結構な時間が経っていることに
 少し驚きながら。

 眠るまで、飽きもせず、腕の中の
 ぬくもりを抱き締め、やさしく撫でているうちに
 眠りについてしまったのだったか――。 ]

 ………ん…ぁ………?

[ 明け方近く一度目が覚めた時にはまだ、
 窓の外は暗かったはずだが。

 次に目覚めたときにはすっかり
 部屋の中は明るくなっていて。

 普段以上に長く眠ってしまったことに
 ぼんやりとしたままで、驚きつつ

 旅館の布団って寝心地が良いものだから
 そのせいにしてしまいつつ、ごろりと
 寝返りを打つ。

 朝は弱い、と自称する恋人はどうして
 いたか。引き寄せたスマホのアラームは
 まだ、鳴らないし、朝食まではまだ余裕はある。 ]

 うーん、

[ 二度寝の誘惑も捨てがたいが、朝風呂の
 贅沢もまた……そんな風に悩んでいると、
 カーテンの隙間から差した光が目に入って。* ] 

[袖を引いて、少し高い位置にある彼を覗いて、
 笑みを深くされて、腕の中に閉じ込められたら、
 肩口に、ぽてんと頭を寄せて甘えた。
 
 両腕に抱き込まれる大きさを覚えてしまったなら、
 もう、抜け出せない。忘れられない。
 着慣れていない浴衣は少し生地が薄く、
 風呂上がりの温もった温度を伝えている。

 其処に居ることを確かめるようにゆっくり瞬いてから。
 名残惜しそうに、身体を離して。

 膝裏に差し込まれた腕に身を預けて、
 首裏に両腕を回せば、慣れた様子で運ばれていく。

 ……なんだか、出会った時よりも、
 運び方が慣れてきたような、不安がないような。

 彼がもし知らぬところでそれを意識していたとしても、
 まだ、それは知ることのない、話。]

[窓際の座椅子に降ろされて、はふ、と。
 風呂上がりの開放感にほっとした息をついて。

 どちらが甘えているのかは分からずとも、
 互いに触れ合い、離れがたいのは事実。
 傍に居たい理由を付けて、隣を望む。
 そういう時間が、付き合い始めた頃は、
 もう少し、たどだどしかったように感じるから。

 その頃に比べたら、甘え方は上手くなったと、思う。 

 少し、腰は重かったか。気怠さが纏わりついていて。 
 出されたままだった茶碗を取り、水分を補給して、
 すっかり乾いていた喉を潤した。

 姿を一度消した彼が、ドライヤーを手に戻るのに
 気づいたら、座椅子に座り直して。
 頭を垂らして、乾かしてもらっただろうか。
 
 温風が心地よくて、無言になれば。
 うつらうつらと眠気が襲ってきて、かくりと船を漕いで。]

[いつの間にか、ドライヤーが終わっていた。
 一瞬手放した意識が、戻ってきて。
 傍らで聞こえるドライヤーの音に、ごし、と瞼を擦る。]


  変わる。


[と、申し出て、受け入れられれば。
 動けない分、座椅子の前に俯いてもらって、
 温風を当てて乾かしていっただろうか。

 濡れていた髪をぱさぱさと揺らせば、水気が抜けていく。
 正面から乾かしている分、視線が合いやすく、
 手持ち無沙汰にした彼と目が合えば、微笑んで。

 もう少し、と口パクで伝えて。
 長い髪を、後ろに流して、乾かしていく。]

[大きかった一房が、さらりと流れるようになれば。
 温風を切って、見上げ。
 いつもの表情が覗いたら。]


  うん、格好いい。


[……と、満足気に仕上がりに頷いただろう。]

[そんな穏やかな時間を過ごして、どちらともなく。
 布団に入り込んだ。
 二つ並んだ布団を、隙間なくくっつけて。
 枕を隣り合わせ直して、床に入り。

 待っていたように伸ばされた腕に、身じろぎ。
 腕の中に身を収めると、閉じ込められる。

 睡魔が訪れるのは思いの外、早く。
 数度背中を叩かれるだけで、うと、と瞼が落ち始め。

 ぬくもりに包まれながら、船は眠りへと旅立っていく。]

[疲れ果てた身体は、睡眠を求めていたのか、
 朝まで目覚める気配もないまま、ぐっすりと眠っていた。

 瞼の向こうが少し、明るくなったような気がするけれど、
 瞼はまだくっついていたいと、言うから。
 逆らえないまま、言うことを聞いていた。

 ただ、眠る前にあった温もりが、無いような気がして。
 少しだけ、重い瞼を持ち上げて、姿を探し。
 その背中を見つけたら、もぞ、と身動いで。]


  …………んぅ、……、



[ぬくもりを求めるように、
 ぴと、と両手と額を彼の背中に擦り寄せた。

 夏が近づいているとは言え、まだ朝は春眠暁を覚えない。
 要するに、もう少し寝ていたい。]

[無くしたものが確かに埋められて、
 とろ、とまた瞼が落ちてくる。微睡みに落ちるのは早い。

 寝乱れて浴衣が肩から少し下がり落ちている分、
 ぬくもりと求めてしまうのは仕方がない。
 
 腿まで覗いている脚も、
 冷えた足先を温めるように、足首をすり、と絡めて。*]

[ 出会った頃よりすんなりと抱きかかえることが
 出来るのは、多分、抱えられる側に心得が
 出来たから、と思う。

 協力的だと自分よりも大きな体であっても
 持ち上がることがあるのだから。

 信頼して首に手を回してくれるなら
 前よりずっと手慣れた風になっても、おかしくはない。

 温風を浴びて眠たげにする君が変わる、というから
 ドライヤーを渡して、前から乾かしてもらうことにした。

 世話を焼かれるっていうの、とても心地よかったから。
 ――弟妹はおらずとも、門下生は多く。
 どちらかといえば兄の顔をしている期間のほうが、
 長かったから。

 髪が乾いて告げられた言葉には、
 僅かに照れて、頷いただろう。 ]

[ そうして溶けるように眠ったため、
 夢を見ることはなかったかな。

 起きるか起きまいか、悩んでいると
 側に在ったぬくもりが離れたことに、
 気づいたのか、僅か数センチの隙間を
 埋めるように、ぴたりと擦り寄ってくる君は、 ]

 ん?起きる?

[ まだもう少し、眠っていたいようで。
 体を起こすどころか、微睡みのなかへ
 落ちていきそうだが。一応声を掛けて、
 振り返ると――。  
うわ、絶景。

 声なき声で呟いた。 ]

 そうだね、もう少し寝よう。
 こっちおいで。

[ 浴衣で寝ると、そうなるだろうと昨晩
 予測はしていたけれど。

 寝乱れて肩からずり落ち、緩んだ合わせから
 腿まで露出していて。

 実際目にすると、大変悩ましいお姿で。
 眠たげな姿もまた、あどけなさの他に、
 壮絶な色気を感じて、長いため息をついた。
 
 ――これ以上見ていると、昨晩の反省すら
 吹っ飛んでしまいそうなので。
 あと三秒、と決めて、眺め終われば

 布団の中に招き入れるように寄り添って。 ]

[ ――それが間違いだったと気づくのは
 慌ただしく、着替えを済ませた朝食の直前。

 布団の中に招き入れて、擦り寄ってくる
 ぬくもりに、僅かな眠気が勝てるはずもなく。

 と、いうか――、自分の節操の無さに、
 呆れてしまわれても、致し方なく思う。

 触るだけ、一回だけ。

 それを遵守はしたけれど、今までにはない
 起こし方をしてしまったことは、否めない。

 朝の光を浴びて、浴衣の合わせから覗く
 赤が鮮やかで、とは言い訳に違いないだろう。 ]

 ――ええ、とても

[ 浴衣を着直そうとしたところで、
 それでは見えてしまうからと、慌ただしく
 私服に着替えたところで、ドアノックの音がして。

 布団の上げ下ろしと、朝食の準備に
 伺いましたという仲居さんが、
 よく眠れましたかと、問うのでそう答えたあと。

 ――……あら、と小さく零した仲居さんが
 恥ずかしげに目を逸らしたところで、

 頬のそれ、に気づいたけれど。
 朝食を終えて、合流する際には、
 マスクをつければ、隠れてしまうだろうから

 特に何を言うこともなく、ごゆっくり、と
 彼女らが去れば、何食わぬ顔で、熱いお茶を啜った。* ]

[ぬくもりを求めるみたいに擦り寄った時、
 彼が起きているのかどうかは、確かめていなかった。
 眠っていたなら問題なかったし、
 起きていたら、もう少しと布団の中を長引かせたかも。

 だから、降り掛かる声には、]


  ……んー…… 、


[ぐずるように返事とも否定ともつかない反応を返して、
 身体はより、近づけるように額を擦りとぶつけて。

 絡めた脚を、もぞ、と動かして。
 脚に挟んでもらって、ぬくもりを求め。
 もう少し、うとうとと船を漕いでいて。]

[誘いの声に、ン、と寝ぼけたまま頷いて。
 眠ったときと同じように向き合う形になれば、
 もぞもぞと、胸の内に身体を落ち着けた。

 包まれる温かさが好ましい。
 身じろげば尚更、浴衣がずれて肩を露出して。
 腰元には帯が纏わりついている程度。

 邪魔な裾は後ろに残した分、
 顕になった腿でぴとりと片脚を挟み込んで、
 抱き枕のようにすれば。

 瞼を下ろしたまま、夢見心地にふにゃりと、笑んで。
 抱き込まれた安心感に満足して、
 くぅ、とまた眠りに誘われていく。]

[揺蕩うようにゆらゆらと、眠気に誘われるまま。
 しばらくの間、寝息を立てていた。

 もぞりと、動く手は抱き直すものだろう。
 その手が、悪戯に動くのに気づかないでいたら。]


  ……ン、



[鼻から抜けるような甘い声が溢れる。
 一度だけじゃなくて、数度。
 胸元がすぅすぅして、くすぐったくて。
 
 顕になった腿の間に彼の太腿が割り入れられて、
 朝の兆しを見せていたものを、下から押し上げられて、
 吐息混じりのあえかな声が、喉を突く。]

[約束していた朝風呂は、予定していたよりも、
 少し短く、慌ただしいものになったかもしれない。

 寝乱れた布団を仲居さんに直してもらうのは、
 とても居た堪れなくて。
 対応は彼に任せてしまって、少し長めに湯に浸かり、
 脱衣所でそのやりとりを聞いていた。

 何食わぬ顔で対応しているその人。
 朝から悪戯を仕掛けてくるような人です。

 仕事慣れから来ているのか、そもそもの性格なのか。
 今はその対応に助けられながら。

 彼女たちが部屋を後にしたタイミングで、
 ようやく脱衣所の扉を開けて、
 様変わりした部屋の眺め、タオルで口元を抑えながら。]


  ……上がりました、


[湯気を立ち上らせつつ、彼の向かい側に
 腰を下ろして、朝食を共にする。

 いつもとは、少し、――――違う朝。*]

[ あたたかさを求めて、擦り寄って
 いるのは知っていたし、眠たげな声が返ってきたから
 二度寝にしけ込む、つもりだった。のに。

 ぐずるような反応をして布団の中へ入ってきて。
 脚を絡めてくるのも、ぬくもりを求めての
 行動だとは分かっていた。

 寝ぼけたままで、頷いて、胸にぴたりと
 張り付いて、ほとんど意味を成していなかった
 浴衣が更にずれ込んで、布団の中で
 剥がれていく。露出した腿が、挟まるように
 脚を割って、抱き枕よろしく抱き込まれれば

 あちらはほっとしたのか、ふんにゃりと笑うから。 ]

[ 一方的ではなく、共犯に興じるつもりに
 なってしまってからは、だいぶ手が早かった筈。

 なにせ、たっぷり寝て、目覚めもすっきり
 してしまって、こちらも兆しが見え始めていたから。

 赤い花のほど近くにもう一輪、それを咲かせて
 撫でさするだけでも、摘める程度に尖ったそこを
 きゅう、と摘めば、愛らしい声があがって、
 漸く状況を察した君が、焦ったように名前を呼ぶ。 ]

 うん?なに、おはよう。

[ 不釣り合いな挨拶を投げやって、そっと勃ち上がった
 それに手を伸ばしたところで、ばか、と
 可愛く罵られただろうか。

 ――可愛い文句を聞いていてもいいのだけど、
 焦らされる前に、その口をあまく
 塞いでしまうことにして――。 ]

[ 昨晩に比べれば、さっくりと事が済んだとしても
 半分布団の中で、事に及べばどうしたって、
 熱は籠もるし、汗もかく。

 時計を眺めて、彼女らが来る前に
 風呂へ促して。

 あたかも、そういうことがありました、
 という風に見えない程度に布団を畳み、
 着替えを済ませて、彼女らを迎え入れた。

 無論、窓を開け放ったままで。

 彼女らとのやりとりを聞いていたのか、
 準備が整った段階で、脱衣所から
 出てきた彼に、おかえり、と声を掛けて。 ]

 朝食も、美味しそうだね。
 いただきます。

[ 穏やかな時間を始めようとする。

 ――つい一時間前まで見せていた顔とは
 別人みたいに、にこやかに。 ]

 朝からこんなに沢山の種類があるって
 贅沢だよね。

[ 夕食もそれは見事なものだったが、
 朝食とて、引けは取らない。

 朝採りであろう野菜をたっぷりと使った
 和え物、炊きたての御飯、温泉卵。

 貝柱で出汁を取ったであろうスープは
 お茶漬けのようにしても、良さそうだ。

 普段であれば、これほどの量を食べることは
 ないけれど。諸事情で、なかなか空腹だったので。 ]

 お味噌汁、おいしい。

[ 今日の予定はどうだったか、昼食はどこかで
 取る予定だったかもしれないけれど、ぺろりと
 平らげてしまいそうだったし、 ]

 ご飯もうちょっと いこうかな

[ 炊きたてのつやつやした米があまりにも
 美味しくて、おかわり、も視野に入れていた。* ]

[共犯と呼ぶにはすっかり熱を上げられて、
 緩やかな高まりが収まらなくなっていたのは、
 すっかり彼の手によって、作り変えられて
 甘く柔らかくなってしまった身体のせい。

 おはよう、なんて平然と挨拶を交わしていても、
 手は布を押し上げる下肢に伸びていて、
 そっと握り込まれたら、息を詰めて、
 ぴくんと跳ねるみたいに、腰が疼いてしまった。

 かろうじて返せた言葉は、悪態一つ。

 腰がぶつかって彼も兆しているのが分かったら、
 小さく唸りながらも、降りてくる唇を受け入れて、]


  ……ぅ、 
ンッ、 ……



[とろ、と眠気よりも彼に溶かされるように、
 瞼が降りていく。瞼の裏に浮かぶのは、彼の姿。
 
 その後は、もう、――――言うまでもないだろう。]

[仲居さんたちが朝食を用意する間に、
 ドライヤーを使う時間は十分にあったから。
 半分以上乾いた髪は、軽く水気を残したままだった。]


  ……ただいま。


[おかえり、というから反射で応える。
 やっぱりその表情にさっきまでの艶を帯びた姿はなくて。

 ギョーカイジンってみんなこうなのかな。
 みたいな、余計な考えた浮かんだけれど、
 それを口にするのは辞めておこうと思う。

 知ったところで、俺の知っているギョーカイジンは、
 彼の一人なので、何の役にも立たない。]

[並んだ朝食の前に腰を下ろせば、
 ほわりと仄かに炊きたての御飯の香りがした。
 食事を目の前にしてしまえば、
 そんなことも忘れて、表情が綻ぶ。]


  いい匂いですね、……美味そう。


[自身でも朝食はそれなりに作るけれど、
 これほど数は多くはない。

 手抜きでピザトーストにする日もあれば、
 休みの日には時間を掛けてブレックファーストも。
 
 彼と朝を一緒に過ごすようになってからは、
 和食が好きな彼に合わせて、
 朝食を日本食にすることが増えてきている。]

[ほうれん草をツナを和えたものは
 砂糖と醤油で甘くもさっぱりとしていて好みの味だった。

 それだけ食べても美味しいけれど、
 炊きたてのご飯に乗せて米と一緒に食べれば、
 熱さと甘さが相俟って、より美味しく感じる。

 一般的な味噌汁ではなくスープなのは少し珍しい。
 昨夜の海鮮も美味しかったし、貝柱が使われているなら、
 海もそう遠くはないのかもしれない。

 スープを一口飲んで、ご飯を運んで。
 貝類の出汁が十分に効いている味を堪能する。

 焼きたての魚は、焼き鮭。
 温泉卵の他に、定番の厚焼き玉子。

 鮭の身をほぐして、口に運べば程よい塩気が
 口内に広がって、鮭の旨味を引き立てる。]


  旨い。


[シンプルに、一言。それだけでいい。]

【人】 瑞野 那岐

[朝食を食べて、
 少し散歩する時間くらいはあったかもしれない。
 たった一泊二日の旅行は、短くとも。
 濃厚な密度で、彼と過ごせる時間だった。

 明日からは、また日常が戻ってくる。
 帰りの車の中で、その日常の話をするのもいいけれど。

 此処は、良かったと。
 次はどこに行こうか、とか。
 寂しさを感じさせるものよりは、
 次に繋がるものを、自然と口にしていただろうか。

 彼との思い出を増やすように、一つずつ。

 そうして、硫黄の香りを嗅ぐ度に、
 きっと、この日のことを思い出してしまうだろう。
(2) 2023/04/03(Mon) 2:13:06

【人】 瑞野 那岐

[そんな、考えが過ぎったからこそ。

 旅先から戻った休み前の晩。
 ベッドの中で、彼と横たわりなら一つ提案をした。]


  ……景斗さんって、フレグランス使います?

  決まったものがなければ、
  俺が見立ててもいいですか?


[硫黄の香りを嗅いで、思い出す香りがあるように。
 特定の香りで、彼を想うのもいいかと考えて。

 俺自身は仕事中には使えないから、
 休みの日ぐらいしか使うことはないけれど。

 彼ならば仕事柄、平気かと思って。*]
(3) 2023/04/03(Mon) 2:13:50
[ 朝食を済ませ、合流までの時間。
 外を散歩しようと言い出したのはどちらだったか。

 川のせせらぎに混じって少し遠くに、
 水の流れる音がする。

 自分たちの居室の他にも部屋に備え付けの
 温泉からか、それとも足を踏み入れる
 ことがなかった家族風呂や、大浴場の方か。 ]

 蛍って見たことある?
 随分昔に、祖父の家で一度だけ
 見たことがあるんだけど、

 夏はそういうとこに行けたらいいなって。

[ 約束を口にすることへの戸惑いや罪悪感を
 消してくれたのも、君だったから。

 なんて大げさな理由なんか、いらない。
 ただ君と、見たことのないものを、一緒に見たいだけ。

 これが最後ではなく、これが最初なのだから。
 これから何度だって、そういう機会は作れるのだ。 ]

【人】 瑞野 那岐

[枕に頭を凭せ掛けながら、
 思案に老ける彼の様子を眺めてた。

 唐突、と言われればそうなのかもしれない。
 だけど、自分にとってはあの旅行から戻った時から、
 考えていたものでもあったから、そう?と緩く笑みを添えた。]


  香りがあれば、いつも傍に居るような気がして。


[寝転がりなら、彼の髪を撫でる。
 風呂上がりにするシャンプーの香りも好きだけど、

 時間と場所よって変わるフレグランスはまた、
 違ったあなたを引き立たせてくれるだろうから、
 それも楽しみの一つ。

 自分が選んだ香りを纏わせながら、仕事に行く彼も。
 なにかの合間に、自身を思い出してくれたら。]
(14) 2023/04/03(Mon) 21:41:57

【人】 瑞野 那岐

[名乗りを上げれば、彼からも見立ての注文が入って。
 笑いながら、いいよ。と応えた。
 考えつく先は、同じなのかもしれない。]


  仕事中は付けられないから、休みの日だけ。


[それは、同僚も従姉妹も知らない香りになるだろう。
 だとするなら、彼と並んだときに、
 噛み合う香りがいいだろうか。

 選ぶといいながら、あまり詳しくはないけれど。
 彼に送りたいものは、いくつか検討がついていたから。

 オーダーメイドという話が、
 そういうものもあるのか、と感心しただろう。

 それはそれで、互いにまた作ることにして。]
(15) 2023/04/03(Mon) 21:42:14

【人】 瑞野 那岐

[季節は春から梅雨へ、梅雨から夏へと移り変わる頃。
 旅行のときに、話していた蛍も>>+186
 そろそろ見頃の季節がだろうか。

 師範代だという祖父は彼に厳しいのだったか。

 その話をするときだけ、彼の表情が、
 いささか強張ったようなものになったのは、
 無意識に祖父を思い出していたのかもしれない。

 家族仲が悪いわけではなさそうだけれど。
 その話も、これからは耳にする機会もあるかもしれない。

 風呂上がりに、いつも。
 彼が自身を抱き寄せるのが癖になっているみたいに。

 隣に寝転ぶ彼に、寄り添うように身を詰めて、
 まだ眠る気配のない彼を下から見上げるのは俺の癖。]
(16) 2023/04/03(Mon) 21:42:38

【人】 瑞野 那岐

 

  ……蛍を見に行くの、
  景斗さんのお爺さんの家の近くがいいな。



[寝転がりなら、ふわりと柔らかく笑って。
 少し、無茶な注文をしただろうか。

 難しいと言われたらなら、ごめん、と笑って。
 もし、彼も頷いてくれたなら、少し具体的な話をして。

 今日も彼の腕の中で、眠りにつく。]
(17) 2023/04/03(Mon) 21:42:58

【人】 瑞野 那岐

[休みを合わせた休日に、彼を引き連れて、
 デパートへ足を運んだ。
 男性だけでは、少し足を運びにくいかとも考えたけれど、
 やはり種類を求めるなら、場所を選んだほうがいい。

 いくつかの店を周りながら、
 今度はやっぱりオーダーメイドにしようと、彼が言うから。
 その時ばかりは、笑って頷いただろうか。
 ひと目につく所に連れてきてしまったことに、
 少々申し訳なさを感じながら、いろいろな香水を試して、

 ようやく選んだ香水は、どこか彼を思わせる。
 黒いシックな容器のもの。

 最初は情熱的な獣のような匂いすらするけれど、
 少し時間をおけば、フローラルな香りも混じって
 格段にマイルドな印象になる。

 何より、香りを試した際に店員の人が教えてくれた
 名前の由来がとても気に入ったものだから。]
(18) 2023/04/03(Mon) 21:43:14

【人】 瑞野 那岐

[俺にとっての日常は、優しく穏やかなものだった。
 日々代わりになく過ごすことに、不満はなく。
 慣れた道を通り抜けて、店に向かい。

 毎日のように顔を合わせる同僚たちと、
 今日はどんな料理を作ろうか。と、
 少しの不安と、半分以上の期待に胸を膨らませ、
 お客様に喜んでもらえるようなサービスを考える。

 そんな一日一日は、大した不満はなく、
 過ごしていたものだったけれど。

 ときに失敗をした夜もある。

 疲労した身体をなんとか家まで運んで、
 熱いシャワーで洗い流して、
 気持ちを切り替えようと、取り出した缶ビール。
 
 話し相手はいないから、AIシステムから流れる
 ラジオが耳の拠り所だった。]
(19) 2023/04/03(Mon) 21:43:59

【人】 瑞野 那岐

[同じ月を見ていても、
 どこか遠いもののように思えいてた世界。

 決して混じり合うことのないだろうラジオの向こう。
 それが、あるとき。

 不意に目の前に形になって現れた。

 こんなこともあるのか、なんて驚きが一番近くて。
 常連として見慣れていた姿が、一気に身近に感じた。

 
あなたの声が好きです。


 いきなりそう告げてもきっと驚かれるだろう。
 距離感は保ったまま、それでもいつか。
 伝えられたらと思っていた日々はあっという間に過ぎて。]
(20) 2023/04/03(Mon) 21:44:15

【人】 瑞野 那岐

[俺が伝えるよりも早く、彼が一歩踏み込んだ。

 好きなタイプを聞かれたときに、
 ふと頭に思い浮かんだもの。

 今思い返してみれば、少し恥ずかしい。

 だけどきっと、その時から、大切だった。
 優しくて穏やかな声を、聞いた日は。
 あの月を探した夜を思い出す。
 
 一人でいても、どこかで繋がっているような。
 ひとりじゃないと、思わせてくれた声が確かに
った。]
(21) 2023/04/03(Mon) 21:44:35

【人】 瑞野 那岐

[今は、一人ではなく、隣に貴方がいる。
 一人じゃないと教えてくれた貴方が。

 二人で過ごすことの心地良さを、
 大切な人が居ることの強さを教えてくれる。

 夏に近づいた帰り道、数歩先を進んで、
 彼が追いついてくるのを待つ。

 再び隣にならんだら、プレゼントを持っていない手を
 伸ばして、小指だけを絡めるように少しだけ繋がって。]


  ……もうすぐ、夏ですね。


[『なんでもない』ことを、
 さも日常に溶かすように口にする。

 なんでもないことが特別なように、一日一日を過ごして、
 これからも、ずっと貴方と過ごせていけるなら――。]
(22) 2023/04/03(Mon) 21:44:56

【人】 瑞野 那岐




[     ―――それは、最高の『なんでもない日』。**]



 
(23) 2023/04/03(Mon) 21:45:15
[――――これは余談の、蜜月の話。

 
 翌日の休みが合えばいつもの流れで
 彼の家に尋ねることになり、その日も。

 少し遅めに帰宅した後、
 二人で珈琲を飲んで休憩を入れて、
 先に風呂を促されたので、遠慮なく汗を流しに向かった。

 泊まる日に、何もしないで抱き合って眠る日もあれば、
 互いにどちらともなく熱を求める日もあった。

 そういう"準備"をするのは、出来るだけ。
 彼には見つからないように密かに浴室で済ませることも
 度々、あって。]


  …………、


[今日も後ろに伸びていった手は、
 相変わらずぎこちないまま、自分の身体を解す為に、動く。]

【人】 瑞野 那岐

[風呂が長くなった時は、暗にそういう合図でもある。
 きっと彼も長くなっていることには気づいている、はず。

 それを口に出されることは、恥ずかしいから、
 できるだけ気づかない振りをしていてほしいけれど。

 ほんのりと上気した頬を隠すように頭からタオルを被り、
 自宅用の緩めのTシャツとハーフパンツを履いて、
 浴室から出てみれば。

 まるで正座するみたいに畏まったあなたがいて、
 いつもと違う様子に、タオルで口元を抑えながら小首を傾げた。

 目の前に差し出されたのは、
 真新しいながらも洗濯された、自宅向けのよくあるエプロンで。]


  ……俺に?


[既に彼の家には使用してるエプロンが、
 俺用のものと、時々彼も使う用として二着ある。
 だから、三着目?と素直に疑問符を浮かべたら。]
(35) 2023/04/03(Mon) 23:58:43

【人】 瑞野 那岐

[ぽそり、とエプロンを前に慾を告げられて。
 一瞬、理解できなくて。]


  え?


[思わず聞き返してもう一度視線をエプロンに落とした。

 『着けた君と、したくて』

 頭の中で反芻して、ぐるぐると思考を回す。
 自身が男ということが念頭にありすぎて、
 発想がなかったけれど、エプロンでしたい、といえば。]


  
……あー…………、



[ようやく合点がいったように感嘆を洩らして。
 タオルで隠れた顔が、ほんのりと赤く染まる。]
(36) 2023/04/03(Mon) 23:58:57
[『俺で勃つのか?』という考えは、
 以前にもあったけれど、これもまた。

 『俺で興奮するのか?』という疑問符はあれど。
 求められていることは把握してしまった。

 エプロンと彼の前にしゃがみこんで、
 エプロンを拾い上げた後、布面積の大きさを確認しながら。

 少し、躊躇い。]


  ……服の、上からで、いいなら。



[ぽつ、とこちらも零すように返した。

 さすがにエプロンだけを身に纏うのは恥ずかしいが過ぎる。
 ……し、料理人の手前、
 どうしてもエプロンというものが意識的に制御をかける。]

[そうして、立ち上がったなら用意された
 エプロンを拡げ、頭から被って後ろ手にリボンを括る。

 エプロンの裾より少し短い丈のパンツが前掛けに隠れるが、
 上はTシャツの上に胸当てをつけるという、
 何ら不思議はない、エプロンの形。

 女性のように胸の膨らみもない。
 それでも気のせいか、最近胸筋周りが
 肉付きがよくなってきている気はするけれど。


 汚れのない、何の変哲もないエプロンを装着して。
 くるりと、半身を回して。背中側を見せれば、
 後ろはリボンだけで少しずり上がったハーフパンツと、
 Tシャツが覗いているだろうか。]


  ……これで、い?


[首だけを後ろに向けて、彼の様子を伺いながら、
 これから、いたします。というのなんだか少し恥ずかしい。*]

[ その姿を今から、自分が
 欲望の赴くままに、汚すのだ。

 理想が期待になり、
 期待が現実に変わった瞬間、

 ギラついた視線が、君の全身を舐める。 ]

 あぁぁ……… やばい、予想以上、………

[ 様子を伺うようにされて、
 たった二歩の距離を焦るように詰めて。

 ぎゅう、と後ろから抱き締めた。 ]

 
もう、勃ってる……


[ 抱きしめればゆるりと、どころか
 ぐわっと、熱を蓄え始めてるそれが、
 体に当たる。当たれば、どうしたって
 気づかれてしまうだろうから、口に出して。 ]

 すごい、興奮する……

[ 今夜、寝られなくても諦めて欲しい。
 明日は休みで仕事もない、昼まで寝てても
 構わないから。

 ぴたりと隙間なく、抱き締めたなら
 興奮気味に、熱い息を、聞かせながら
 悪い手が、するりと、Tシャツと肌の間に
 割り込んでいく。* ]

[エプロンを身に纏うのにそう時間は掛からない。
 たった布一枚、紐で結んで留めるだけ。
 それがキッチンのあらゆる助けになることを知っている。

 後ろ手に紐を結んでいるとき、
 ふと視界の端でそわそわしている姿に苦笑を零して、
 そこまで期待されていると、完成度の低さに、
 笑われてしまうかなと思ったものだったけど。

 いざ、お披露目するように半身を翻せば、
 想像以上に色欲の色の付いた目を向けられて、
 少し、ドキリと心臓が跳ねた。

 時折見せる堪えきれないような雄の顔に、
 これまでも何度、狼狽えさせられたことか。

 下から這い上がるように向けられる視線が、
 身体の隅々まで、見られているようで。]


  ……いつも通り、ですけ、どっ……


[普段通りを装うとして、手を伸ばされ、
 後ろから抱き竦められたら勢いに、語尾が跳ねた。]

[ぎゅう、と隙間なく抱き込まれて。
 意識せずとも腰元に硬いものが当たる。

 抱きしめられている分、身動きが取れなくて。
 興奮して掠れた声が、耳朶にちょうど当たって。]


  ……ンッ、 ……、


[それだけでぞく、と期待に身が甘く震えた。
 とくとくと、早まっていく心臓が収まらない。
 
 前に回った腕に、そっと手を添えて。
 もう一度、改めて後ろを振り向いたら、
 首を向けた先に、溜息を漏らす彼の顔があって。]

[俺が好きだと言った近所の食パンと、
 コーヒーメーカーが置かれたカウンターテーブル。
 
 そこに両手をついて、腰を上げて。
 ハーフパンツと下着が片方の足首に纏わりついている。
 ばつん、と肌がぶつかり合う音が、
 キッチン近くで響いて、ぞくぞくと背筋が震える。]


  ……っぁ、あっ、 ……
、ンッ……、


[勃ち上がったものが、エプロンを押し上げて。
 内側から自身の先走りで汚れていく。

 後ろからじゃ、エプロンも見えないだろうに。
 そんな余裕もないのか、胸元までずり上がったTシャツの下、
 彼の指が、赤い尖りをきゅう、と摘んで。
 また、腰が、びくんッ、と跳ねた。]

那岐は、景斗にキスをした。
(a0) 2023/04/04(Tue) 0:59:41