人狼物語 三日月国


105 身内村

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[犠牲者リスト]
とある書物

二日目

本日の生存者:清華、夏越 清正、VI以上3名

【人】 春野 清華


 
 はっきりとした喜びを孕んだ表情に、安堵する。
ああ、わたしは触れてもいいんだ。
彼に、触れられるんだ、そんな当たり前のことが
喜びになって押し寄せて、同じように照れと嬉しさを
にじませ、緩く微笑んでみせた。




 「ほんとだ、しないね……」


甘酸っぱい香りはしなかった。
代わりに凍てつくような冷たい風が、空気が、
鼻奥をつん、と通り抜けて体を冷やす。

は、と息を吐いたら微かに白っぽくなった空気が
ふわりと浮き上がって空に溶けた。
同時に繋がれたままの手のひらがすっ、と
上に持ち上がり、彼のポケットに収まる。
それがなんだか照れ臭くて、かあ、と顔に熱が
集まるのがわかった。
けれど、離そうとは思わないから、小さく頷いて
唇を結んだままはにかむような笑みを浮かべる。

 
(0) 2021/11/03(Wed) 11:11:32

【人】 春野 清華




  「うん、いこう、ねぶた村」


ねぶた祭り、をテレビで見たことはある。
ニュースで見るそれは、まるで夜空に
炎が灯ったみたいに、明るくて、大きくて。
パレードだな、と思ったのを覚えていた。

それでも、実際に目にするのとでは───


  「………大きすぎて、びっくりした……」


彼の言葉が聞こえるまで、しばし唖然と見上げていた。
同じような感想をこぼす。
目の前にあるその芸術品をもう一度見上げれば、
彼がそれを説明してくれる。

 
(1) 2021/11/03(Wed) 11:11:44

【人】 春野 清華


 そんなことを考えていたら、彼が食事に
誘ってくれる。やりたいこと、見たいもの。
知りたいことを、教えてくれる。
察することが、できなくたって彼は、
ちゃんと示してくれる───ああ、そうね。
「彼」とW彼Wの違いはこんな些細なところにも。

───ほんとは、「彼」もそんな人だったのかも。
わたしが、振り回して、歪めてしまったのかも。
わからない、それはわからないけれど。


 「うん、おなかすいたね、いこうか」


 そう微笑んで、彼と共に北国の海鮮を
頬張った。なんとなく、少しずつ。
この旅行の中で、見つけていける気がした。
彼と、私の関係にどう、名前をつけるのか。




 
(2) 2021/11/03(Wed) 11:12:16

【人】 春野 清華




 「え、 ───ああ。うん、いいよ。」


 また、些細な違い。
彼のお願いに、ねぶたの前で私はぱちくりと
目を瞬かせて、カメラを構えた。
純粋なのかもしれない、と思った。
「彼」も純粋だったけれど、W彼Wはそれ以上に。
だから、やさしくて、やわらかくて、

 押したシャッターに音が響く。
画面の中の彼は、今まで見たどの「彼」よりも
「彼」らしくなくてW彼Wらしい気がした。


 「ふ、 」


短く吹き出して、笑う。
くつくつと肩を揺らして、目を細めた。

 
(3) 2021/11/03(Wed) 11:12:31

【人】 春野 清華


 じわりと、目の前が滲む。
こくりと唾を飲み込んで、唇を結んで、ほどいた。


 「───W清正Wくん」


小さく、彼のことを呼んだ言葉は少しだけ上擦った。


 「ねえ、わたしとも、撮って。」


あなたの構えるファインダーの中じゃなく。
あなたと一緒に入っていたい。

そう願いながら、目端に滲んだ何かを瞬きで飛ばした。


 「清正くん。」


   「わたし、この旅行できっと」


 「あなたを好きになりたい。───なると思うの。」

 
(4) 2021/11/03(Wed) 11:14:29

【人】 春野 清華






 そんな、確信があるから、微笑んだ。*

 

 
(5) 2021/11/03(Wed) 11:14:44

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[出来るだけくわっと目を見開いて
 後ろのねぶた山車と同じ顔を作ってみせて。

 だけど、カメラを構える清華の顔は
 引き攣るどころかほろりと綻んだのがうれしくて。]


  ちゃんとカッコよく撮れた?


[男も顰めた顔をすぐに綻ばせ、
 ててっと清華の隣に戻る頃には
 いつもの顔に戻っているはず。]
(6) 2021/11/03(Wed) 17:49:28

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[潤んだ目元を瞬かせた清華の瞳を見下ろして
 その奥の気持ちに触れようとする。
 どうしたらいいんだろう。
 抱き寄せて、抱きしめて……

 色々思考を巡らせた後、男は結局
 何も聞かず、彼女の望みを叶えることにした。]


  そしたら…………あっ、すみません、
  写真一枚いいですか。


[近くにいた係の人を呼んで、
 ねぶたを背に、一枚。
 「ご夫婦で旅行ですか?いいですね」って
 人の良さそうな係の人の言葉には曖昧に微笑んだが
 フレームに収まる時には、清華の肩にそっと手を乗せて
 この一歩進めた喜びを浮かべていられたらいい。]
(7) 2021/11/03(Wed) 18:01:26

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[そこでねぶたを見たり、三味線を聞いたり
 のんびりとした空気ごと楽しんだら
 そろそろ宿のある方へ移動しよう。

 弘前駅周辺はおしゃれなカフェや雑貨屋があったが
 電車を乗り進めると、次第に景色の中の
 りんご畑の割合が増えていき─────]


  ……さっきの弘前駅と比べると
  すごく、静かだ。


[駅前に大きな道の駅と温泉を兼ねた施設があって
 小さなロータリーがあって……
 コンビニやファストフード店も見当たらない、
 なんだかそれが新鮮で、自然と笑みがこぼれる。]


  早いけど、宿行って荷物置く?
  それとも周りを少し見ていこうか。


[温泉施設を見下ろすように、茶臼山という
 小高い山がそびえたっていて、
 そこなら紅葉も綺麗だろう、と。]*
(8) 2021/11/03(Wed) 18:28:49

【人】 春野 清華



「ご夫婦」と呼ばれた言葉に、巡らせる。
彼と私は夫婦ではなくて、恋人でもなくて
友達でもなくて、彼は、人間でもない。
それでもその言葉に頷いていたいと思う
自分がどこかにいることを感じながら、笑んだ。

名前をつけられるまでは、もう少し。


(9) 2021/11/04(Thu) 12:32:34

【人】 春野 清華




 電車に揺られ、人気の少ない田舎町の方へと
進んでしばらく。だんだんとまた灯りも寂しさを
増しては行くのだけれど、わたしの気持ちは
寂寞などひとつも感じてはいなかった。


 「そうね、今度こそりんごの匂いしないかな。」


と頷いて、過ぎゆく景色を見つめている。
ゆっくりと、柔らかなブレーキで停車した車体。
こぢんまりとした駅は、シンプルなもの。
凍てつくような風とは裏腹に、長閑さに
どこか安心するような心地がした。
 
(10) 2021/11/04(Thu) 12:32:47

【人】 春野 清華




 「歩いて、宿まで行きたい。
  そうしたら、散歩もできるし……
  話も、したいなって思って。」


そう彼のことを見上げて、カバンを持ち直した。

 人気の少ない小さな駅を降り、歩いていく。
微かにりんごのにおいが鼻をくすぐった気がした。


 「……清正くんは、りんご、好き?」


はじまりは、そんな何気ない会話から。
話をしましょう。わたしたちきっといままで、
きちんと向き合えていなかったと思うから。
「彼」じゃなくてあなたの、話を。*

 
(11) 2021/11/04(Thu) 12:33:58

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  りんご、食べたとは思うんだけど。


[“僕”としての記憶の大半は、
 予めインプリントされたもので
 “僕”として生きた中で印象が強いのは
 やはり桃だったかもしれない。
 木からもいだものを「お父さんには内緒」だと
 息子さんがそっと手渡してくれて、
 それが何より味が濃くて美味しくて……

 微かにりんごの香りが漂う街を、
 そんな思い出話とともに男は清華と歩く。

 確かに山梨で暮らす中、
 りんごを食べたことはあると思うが
 強く「好き」という印象に残らなかったのは
 やはりもぎたての桃の鮮烈さに勝らなかったからか。]
(12) 2021/11/04(Thu) 15:48:53

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[……しかしりんご畑の中を歩いている訳でもないのに
 このりんごの爽やかな香りがするのは何故だろう。
 見れば道のあちらこちらで木箱に山盛りのりんごが
 彩りも鮮やかに並んでいる。]


  ……スーパーで売ってるやつの
  1.5倍くらいの大きさに見える。


[お昼に食べたほたてもそうだったけれど。
 なんだか何もかもが大きく見える。
 男の拳のもう一回りより大きなそれが幾つも集まって
 街にほのかな果実の香りを齎しているのだろう。

 しかもスーパーで買うより、安い。
 立派で艶の良い果実なのに、
 価値というものが分からなくなる。]
(13) 2021/11/04(Thu) 15:54:55

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  “僕”の記憶は、まだたくさん知らないことがあって
  ちゃんと自分のものにするために、知りたいのかも。


[だから、ここで美味しいりんごに出逢えたなら
 前よりずっと好きになれるかもしれない。
 そのための、旅なのだ。
 
清華からの質問も、同じ意味だといいな。


 何気なく覗いたりんご屋さんには
 ものすごい種類のりんごが並んでいる。]


  もぎたてが美味しいのかもしれないけど……
  ねえ、帰る時に買って帰ろうよ。


[いつぞやの山梨旅行みたいに、果物の匂いに包まれて。]
(14) 2021/11/04(Thu) 16:04:46

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  そういえば、清華は何が好き?
  フルーツでも、普通のご飯でも。


[こんなの聞くのは、今更すぎるかもしれないけれど。
 けれど“僕”の記憶として覚えておきたいと
 思ってしまうのだから、許して欲しい。

 そんな話をしながら宿までの道を歩く。
 手はしっかりポケットの中で握りあったまま。
 どちらの温もりも溶け合っているような
 二人の温度が嬉しいのだけれど、
 口に出すとおかしいかもしれないから、
 まだ黙っていよう。]
(15) 2021/11/04(Thu) 16:13:45

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[そんなことを話しながら歩いていれば
 ちらり、ほらり、鈍色の空から
 真っ白な粒がはらはらと落ちてくる。]


  わ、雪……!


[繋いでいない方の指を差しのべてみれば
 指先に小さな結晶が止まる。
 こんな綺麗な雪を見たのは初めてのことで
 つい男の顔に喜色が浮かぶ。]


  こんなの、初めて見た。
  “僕”も……きっと「オリジナル」も。

  清華は、見たことあった?


[知っていたら、驚異に目を見張るだろうし
 同じ初めての体験をしているなら
 初遭遇する現象を共に出来たことに
 にや、と頬を緩ませるだろう。

 そうして寒くなる前に、風情溢れる旅館の中へ
 二人で一緒に逃げ込もうか。]*
(16) 2021/11/04(Thu) 16:44:46
 




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