104 【R18G】異能遣い達の体育祭前!【身内】
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守屋
「僕ですけど。何か問題でも?」
カーディガンも僕のです。
畳まれたものも気にせず、僕はさっさと袖を通そうとして。
「下校の放送を任されたくないから、そうならないように寝る場所は選べと言ってるんです。
あと先輩は僕じゃないんですから、匂い嗅いだところで何も分からないと思いますよ」
袖を通すのをやめた。
先輩のお陰で僕が変態みたいじゃないか。
朝日
「やっぱ見てんじゃん」
現実は非常である。
机の上に手を組んで項垂れよう。
ただのポーズだけど。
ふぅ。
「……そういえば朝日は
クラスの方で競技に出たりとかするんだっけ?」
することもなければ、名前の通り談話することにしようか。
今日は静かだ。
| >>+33 神谷 「おっと、驚かせちまいましたかね?」 普通は人間がリスポーンしてたら驚くし、リスポーンしてた 人間が話し掛けて来たら更に驚くだろう。 「迷惑って言うほどの迷惑は掛かってねぇですから、別に 気にしねぇで構わねぇですよ。 しっかしアンタ、意外と普通に喋っちまってますねぇ? あん時は、例のアレで意識朦朧でやがったんです?」 「解決する気もねぇのに、入ろうとしやがってたんです? 中々、正気じゃねぇ事言いやがりますね。 何か理由でもありやがるんです?」 (55) 2021/11/05(Fri) 23:45:34 |
| 「……貝く〜ん。聞いてくれる?」
ある夜。 寮の部屋で一匹、水槽に向かって話しかける熊。 透明なガラスの中で、ぷくぷく泡が立っている。 大きな身体を丸めて、隅っこで貝と一緒。 静かな夜を、大きな影と小さな影で分け合っていた。
「最近みんな静かでね〜、休んでる子とかもいて。 凛子ちゃんが休み始めてからかな。 そこから急に、お薬の噂が広がって」
異能が強くなる薬。 体育祭を前にしてかどうか、 強くなりたい子たちがたくさんいるらしい。 のんびり屋の自分には、闘争心ってものがわからない。 ちょっとだけ、その熱意に憧れる気持ちがあるのは本当だ。 (L0) 2021/11/05(Fri) 23:56:04 公開: 2021/11/06(Sat) 0:00:00 |
| 「でもね、お薬がどんなものかわからないし、 みんなには危険な目にあってほしくないんだよ。 けれど、ぼくには難しいことはわからないからさ」
効果とか、副作用とか。そういうもの。 知らずに飲んだ子だっているだろう。 何かしたくても、ぼくのハグは 苦しくなった子にしか大きく効かない。 それがちょっぴり寂しくて悲しい。
「ぼくはみんなに元気でいてほしいなって思うんだ。 だから朝も、玄関の近くで 元気のない子をぎゅってするようになったんだけど」
ふわふわして、もふもふして、それで幸せが増えたらいいな。 朝のハグ活動は、そんな小さな願いから始まっていた。
「それからすぐに動物いっぱいの騒ぎが起きて… あのときに貝くんと会ったんだよね。 仲良しのお友達ができて嬉しかったんだあ」
道でばったり出会ったきみと、ぼくはここまで仲良くなった。 日々の変化っていうものは、悪いことばかりじゃない。
良いこと、悪いこと。 それがミルクとコーヒーみたいに混ざり合ってる。 (L1) 2021/11/05(Fri) 23:56:28 公開: 2021/11/06(Sat) 0:00:00 |
| 「ぼくの知らないところで、きっと色んなことが起きてる。 わからないことは、わからないままなんだけど…… それでもぼくにできることって、あるんだよ」
また光樹くんの手料理が食べたいな。 また陽菜ちゃんの放送が聞けてよかった。 また、みんなの元気な姿が見れればそれで良いんだ。
慣れないことをいっぱい考えた頭はふわふわしたまま。 ぷくぷく泡立つ水の中で、 貝くんがずっと聞いててくれるからほっとした。
「だから体育祭の準備を頑張って、 頑張りすぎてる子をぎゅってして、 最後はみんな笑って楽しいお祭りにできたら、 とってもハッピーだよね」
そのために、ぼくが一番元気でもふもふしてなくちゃって思う。
「聞いてくれてありがと、貝くん。 また明日も、素敵な一日にしようねえ」 (L2) 2021/11/05(Fri) 23:57:02 公開: 2021/11/06(Sat) 0:00:00 |
| 白入 熊は、今日も、明日も、明後日も。白くて、もふもふで、ふわふわだ。 (a39) 2021/11/06(Sat) 0:00:00 |
守屋
「……」
そりゃ見ましたけど。
どうしてくれるんですか、このカーディガン。
先輩に責めるような目を向ける僕だけど、明らかに前髪が邪魔だった。
「はあ、体育祭の話ですか。
残念ながら。教室の隅で本を読んでるようなやつを競技に推薦する奴はいませんよ」
というか、それを望んで隅にいた。
残り物に福があるならと、精々推薦されて借り物競争くらいだ。
「サボろうかな、体育祭……」
異能がバレた今となっては、どうなるか分かったものじゃない。
| 牛丸紗優は、そう信じているし、そうなるように祈っている。 (a40) 2021/11/06(Sat) 0:12:48 |
| (a41) 2021/11/06(Sat) 0:30:51 |
鏡沼
「いえ、あの後柏倉先輩に、異能絡みで……
カウンセラー? 医者? の方を紹介してもらって。
普段喋りが下手なの、異能に頭取られてるからってのも
影響してるってんで色々してもらったんです。
それで今は割と喋れてる感じで」
つらつらっと言い放つ。
大丈夫。このストーリーだけは何度もさらった。
演技の経験なんてありはしないが、そこそこ自然に聞こえるだろう。何せ以前の喋りがアレだし、それに比べれば。
「……ぼくの異能、空間に作用する部分もあるらしく。
コレも空間に作用してるじゃないですか。
通ったらなんか……感覚的にピンとくるかな、って。
ちょっと思ったってだけですよ。
実際入ってないでしょ」
朝日
「……」
視線を感じたような気がする。
気付かないふり……。
…………苦笑い、を浮かべた。
「それは困るなぁ……
競技だって楽しんでほしい
高校二年生としての体育祭は、一度きりなのだから
カッコいいところ見せてくれたら実況してやるからよ
……いや、一番は放送部としての仕事をだね?」
| >>+37 神谷 「あー……、異能に頭取られてたから、ああいう喋りで やがったんですねぇ」 あなたの言葉に、納得を見せる。 実際に、鏡沼の異能も脳のリソースはかなり食う方だ。 そのせいで、実は寝起きがとても悪い。 自身は処理能力でごり押し出来てるとは言え、似た異能の あなたがああなっていたのも、無理からん話だと。 加えて、我らが副会長が絡んでるとなれば、尚更だ。 きっと自分に焼いた様な世話を、あなたにも焼いたのだろう。 鏡沼からすれば、今の説明に不審な点は見受けられない。 「別に、咎める気なんてねぇですよ。 何なら、同行しやがりましょうか? 僕はこれ、一人じゃ通れねぇんですよね。 空間系の異能じゃねぇんで、力にはなれねぇでしょうが 一人じゃ踏ん切りがつかねぇんでしたら。 普通に入ったら分断されちまう可能性もありやがりますが 僕なら、それもねぇ筈ですし。 無事帰って来られるって保証は出来ねぇですが、命綱の 代わりくらいは出来るんじゃねぇですかね」 (56) 2021/11/06(Sat) 1:05:09 |
守屋
僕は嘆息して、先輩の苦笑いを見た。
いや、そもそも貸した僕も後先を考えていなかった。
嗅覚がいいのも考えものだ。
「嫌ですよ。目立ちたくないんです、僕。
それに今更、カッコイイも何もないでしょう。
僕ですよ?」
精々先輩に振り回される程度がお似合いだ。
何故か誇らしげな勢喜の顔も浮かんだ。本当に嫌。
「放送部の方は、まあ。
先輩の言う通りですけど」
とはいえ準備や片付けの方が僕はやる事が多そうだ。
当日僕が働くとすれば何かハプニングでも起きた時と思う。
ない方がいいのは違いない。
朝日
「今さら、なんて言葉はないぞぉ
いつだって、変われるのは自分次第
……なれよ! カッコいい自分!
」
囃し立てるように盛り立てる。
とはいえ賑やかし程度なので、無理に強制することもなく。
……出来ることなら、みんなが輝くところが見たいがね。
私にとっては、一緒に参加できる最後の体育祭だ。
「……ふふ、楽しみだねぇ」
立ち上がり、窓の方へと足を運ぶ。
隣に並び立ち、校庭を眺める。
疎らではあるものの、運動する生徒たち。
どれも、当日のための準備。……実るのが楽しみだ。
守屋
「……無茶言わないでください」
隣に並んだ姿を見て、短く息を吐く。
まあ、元気そうで何よりだ。
早いところ、頭のガーゼも取れてくれれば尚いいんだけど。
もう一度、窓の外を見る。
グラウンドに、数日前の自分を幻視した。
それそのものをもうどうにか思うことはない。
良い気もしなければ、悪い気もしなくなった程度には昇華したつもりだ。
「それじゃ、僕は行きますよ。
次は目を覚ました時、僕以外の人がいるといいですね」
なんだ、なんて言うくらいだし。
先輩の返事も聞かず、窓際から離れた僕は談話室を出る。
体育祭を楽しみにする、その呟きには触れなかった。
台無しにするような言葉しか、僕は吐けそうになかったから。
| 若井匠海は、先生から肩を叩かれる日を暢気に待っている。欠伸をしながら (a42) 2021/11/06(Sat) 2:59:00 |
ビート板を使いつつ、プールで息継ぎの練習をしている。
| (a43) 2021/11/06(Sat) 9:12:48 |
世良健人と世良風磨は、入学したときから一部では話題になっていた。
といっても、特別に彼らが目をかけられていたとか、有能だったわけではない。
新しい環境で生活していくにあたって、双子のサッカー部員というのはやや話題性があったのだ。
それは例えば全校生徒から、だとかいう大したものではない。
そのほとんどは同じサッカー部員や同じ一年のミーハーな女子によるもので、
つまり二人は、おおむねセットで扱われることが多かったのだ。
運動神経抜群で、空を飛ぶ異能を駆使してルールの範囲内でのトリッキーなプレイをする弟。
チーム全体のメンターとして働き、マネージャーとして治療の異能を使う兄。
サッカー部の中で二人の存在は必要なものになっていった。
一つのプレイにかける思いとしても、次の世代へ移り変わるにしても。
ヒーローめいた活躍をしてみせる弟も、縁の下の力持ちの兄も、
どちらもあるからにこその稲生学園サッカー部だと、そう思われるようになっていった。
二年の秋、ちょうど今から一年前。
異能格闘のメンバーに選ばれた風磨は、サッカー部としての練習に加え、
自らの異能を使った効果的なプレイを身につけるために日々研究に励んでいた。
当然体に無理を強いるような練習を続ける健人はそれを止めようとしたが、
「一世一代の大舞台かもしれないじゃん」と、風磨は隠れて練習を続けていた。
大会に向けて追い込みも兼ねた、練習試合の最中だった。
全力を出せるように打ち込んだ風磨は、後半あと少しでポイントを稼げるというところで、
"発作"を起こして倒れてしまった。
風磨は先天性の心臓病を患っていた。
健人も、サッカー部のチームメイトも、顧問も、もちろんわかっていた。
だからサッカー部の練習や試合では彼に無理をさせないように気を遣っていた。
兄に監督させ、練習の息抜きはしっかりと行わせ、体への負担を少なくさせた。
それを加速させたのは、異能格闘に選抜されたという期待だった。
きっと、嬉しかったのだと思う。選ばれたということ。認められたということ。
そして、一世一代の大舞台に、自分の全てを賭けられるかも知れないという、願い。
光り輝くような栄光への道に、体は耐えてくれなかった。
世良健人が医学部を目指すことを担任の教師へと宣言したのは、その頃だった。
年頃の男子らしい遊びに興じたり、こっそりゲームセンターへ抜け出したり、
女子となんとなく交友に勤しんでみたりする、そうした十代の若者らしさは抜け落ちた。
目標が出来てしまった。それが良いことかどうかは、他人にはわからない。
世良風磨は寮生活を止め、自宅での療養に専念した。
今は保健室登校の形になり、調子のいい時は教室での勉強も許された。
細かな手術のある前後は、入院のために登校さえ難しくなり、部活動は辞めたらしかった。
もともと双子で使っていた寮の部屋は、ひとりきりの部屋になってしまった。
不自然に空いた同室募集があったのは、そうした理由があったからだった。
ともかく、二年の秋、体育祭の前。一年前の風雪が。
二人の兄弟の行路を変えてしまったのは、かつてあった、小さな動きだった。
誰もが知ることじゃない。けれど、隠されたわけでもない。
よくある話だった。
異能を以て弟の病気を治すことは出来ないだろうかというのは、何度も試みたことだった。
小さな頃から、学園という場で異能の可能性を見てから、一年前のあの時から。
試みが実を結ぶことはなかった。複雑な病理の前では、異能の力は無力だった。
医者が言っていた言葉が何度も思い出される。
残念ながら、既存の方法を以て一定の回復を見ていくのがせいぜいでしょう。
特別に効果的な方法が開発されるそれまでは、今の彼の望みを可能な限りで優先させましょう。
可能な限りというのはつまり、過度な負担をかけたり、危険の大きい方法は避けるということです……
地道な治療を続ける横で、地道な勉強を続けるのが償いであり、望みになった。
出来事は双子の人生を変えた。自分の力で歩み続けることが、希望への道だと知った。
けれどももしそれが覆せるものがあるのならば。
ちょうど感傷的になりかけた秋の頃、耳に入った噂は少しの誘惑として兄を揺さぶった。
もしも、自分の力に新しい芽吹きを得て、今まで出来なかったことが出来るようになったなら。
怪我や火傷ばかりではなく、病気さえも治せるようになったのなら。
そんなことはない、ないのかもしれない。そんなリスクに自分が賭けちゃ、意味がない。
わかっていても、健人の背中を後押ししたのはごく優しいひと押しだったから。
少しだけ信じてみようと、思ってしまったのだ。
薬を飲んで、一日、二日。
ゆっくりと花開くように、効果は表れたのだ。
朝起きて、カッターの替刃を折ったもので手のひらを傷つける。
握りしめれば傷が出来る。それはいつもどおり。なぞれば、傷は消える。それもいつもどおり。
それを繰り返して、繰り返して。日に何度も、一時間のうちに何度も確かめて。
今か今かと、効力が出るのを待った。何かの変化があることを待ち続けた。
握りしめた手のひらの中から痛みさえも消えた時、急いで自転車を漕ぎ出したのだ。
家に入り、まだ起き出してもいない家の中に駆け入って、弟の傍に駆け寄った。
叩き起こして手をかざし、何度も質問を重ねた。
違和感は消えたか。痛みはないか。いつもと変わったことはないか。
苦しくはないか、楽になったりしてないか、いつもと変わったことはないか。
無理を強いて説得をして、説明をして、病院にまで連れていかせた。
親にも、弟にも、保健室の先生にも拝み倒して、その日の予定を変えさせて。
困り果てた医者の返答としては、病状に変化はないと。
事情も話せないまま、けれども必死な形相の健人を見て、医者は優しく言ったのだ。
不用意な行動を叱りつけたりもせず、残念だけれど、と。
時刻は夕方に戻る。
午後からひとり登校して、なんでも無いようすの学校を見上げる。
正確にはもう少しばかり騒動に見舞われていたけれど、対処できない問題ではないようだった。
誰かの何かが変わって、手を差し伸べて、変化を抱きしめて明日へと歩んでいく。
そういう優しいものが、あったのだろう。
自分は、何も変わりはしなかった。
異能が進化を遂げても尚、痛みさえ治し切るほどになっても、無力なままだった。
からすの声がかあかあと降り注ぐ。
秋空が暗んでいくのは早くて、練習や外作業の生徒がばたばたと戻るのが聞こえる。
それでもなお、まだ何も変わらないのだ。自分に出来ることはなかったのだ。
暮れていく空が色を失っていくのが、夕焼けが熟れて黒くなっていくのが、
無性に苦しく、寂しい思いを胸に呼び起こした。
最初は腰掛けた机を蹴ったくらいだった。足先は痛みもなかった。
蹴り倒して、跳ねた足が自分の脚を掠めても、傷もなく痛みは感じなかった。
教室のスペースを空けるために組んで積まれている机を蹴ったら、崩れてしまって。
決して軽々ではない重みが顔を掠めても、傷はなかった。シャツが破れたのに。
机を両手で持ち上げて、思い切り叩きつけた。大きな音を立てて、パーツは外れた。
幸いネジ留めの部分が折れたくらいで、修復は可能そうだった。
けれども吹き飛んだ上側のパーツは壁を少し凹ませて、その勢いでジャケットとシャツを薙いだ。
普通だったら少しくらい切り傷のようになってもおかしくないのに、それもなかった。
思い切り叩きつけたにも関わらず手の痺れもなく、関節も柔らかく動いた。
なんにも手ごたえがない。なんにもならない。
何をしたって痛みも疲れも感じないし、何も変わりはしない。
それが無性に苦しいような、空しいような、どうしようもない心地を呼び寄せて。
三年生用の階、空き教室の静けさ。生徒たちの騒々しさのせいで、お互いに何も届かない。
空っぽで、息苦しくて。
だから、空き教室の窓ガラスを、思い切り叩き割ったのだ。
| いつかは少々空っ風の吹き込んでいた教室。 割られた窓は、今や傷一つ無い。 修復に適した異能者の手によって、 おおそよ"完全"な姿でそこにある。 手袋を外して、それに触れる。 何も変化は無い。 この異能は、そこにある傷にしか影響を及ぼさない。 結局の所は、そういうものだ。 得てして直す、或いは治す異能というものは。 初めから"そうである"ものには対しては、 どうしようもなく無力でならないのだろう。 こんな身に余る大層な力をくださるのなら。 もう少し夢を見せてくれればいいのに、と思う。 世界というものはどうにも残酷で、現実は何処までも甘くない。 (L3) 2021/11/06(Sat) 17:33:06 公開: 2021/11/06(Sat) 18:00:00 |
| (a44) 2021/11/06(Sat) 17:33:14 |
| けれども、大人しくその事実を受け入れて しおらしく諦めてやるほど、柏倉は殊勝な人間ではない。 異能が頼りにならないのなら、他の道を模索し続けるまで。 死んでも全てを諦めて泣き寝入りなどしてやるものか。
だから、手の掛かる、それでも諦めない人間が好きだ。
無力な自分に縋ってでも、現状から抜け出そうとする人間が。 心の底で理不尽な現実や気に食わないものに唾を吐きながら、 それでも利用できるものは何だって利用する。 たとえどれだけ傷を背負い込んでも、執念だけで立ち上がる。 そういう人間にこそ、手を差し伸べようと思うのだ。
そうしてみっともなく、見苦しく、泥臭く足掻いて。 いつか彼等がざまあみろと現実を見返してやれる時が来たなら。 その時はきっと、自分の努力も救われたような気になれる。 そんな自分勝手で独り善がりな希望。
結局の所、全ては自分の為の事。 あの薬は、あなた達の存在は、異能というものは。 憎たらしくも、忌々しくも。 それでも紛れもなく、自分にとっての希望なのだ。 (L4) 2021/11/06(Sat) 17:34:33 公開: 2021/11/06(Sat) 18:00:00 |
| (a45) 2021/11/06(Sat) 17:34:40 |
午後の授業には出られそうだ、目隠しして、ジャージ姿で
自分の道を見つけている。だからこれは少しの誘惑で、而れども少しは辛いのだ。
| (a46) 2021/11/06(Sat) 18:43:51 |
| (a47) 2021/11/06(Sat) 18:44:08 |
鑑沼
「同行……、いや、止めときます」
判断は早かった。
歪んだ空間から離れ、息をひとつ吐く。
「ひとりなら兎も角。
先輩まで巻き込んで何かあったら、
ぼくが他の先輩方に殺されますよ。
先輩の異能がどんなもんか知りませんけど、
空間系の異能じゃないなら、下手したら
戻ってこれなくなるかもしれませんし」
そして先輩にこの話をした以上、自分が帰ってこなかったら先輩は何かしらアクションを起こすだろう。
二次被害を増やす訳にもいかない。
となれば必然、選択はこうなる。
「むしろ先輩こそ、意外ですけど。
ここは止める場面じゃないのかなって」
| >>+47 神谷 あなたの言葉を聞いて、鏡沼創はおかしそうに言った。 「あはは、殺される事はねぇんで安心しやがってください。 僕は絶対に巻き込まれねぇですから。 此処に居る僕は、分身みてぇなモンだと思ってもらえば 話が早えぇですかね? 納得出来ねぇってんなら、もうちょい説明しちまいますが」 ・・・・・・・・・・・・・ 「ん? そりゃアンタが止められてぇとは思ってないからじゃ ねぇですかね?」 (57) 2021/11/06(Sat) 19:13:23 |
はしゃいだところで、一番にはなれないのだ。結局、状況は変わらない。
| 鏡沼 創は、今日も何処にでも居る。 ……が、いつもよりは大分少ない。 (a48) 2021/11/06(Sat) 19:27:30 |
鏡沼
「何一つ話は早くないですけど。まあいいや。
鏡沼先輩はニンジャ。理解しました」
理解したのか?
「…………?
ぼくの思考を読み取って反応してる……
ってことです?
それって、テレ……」
問いかけたとき、頭の後ろのほうがずきり痛んだ。
……思考を読み取る、と言う言葉からなにかが繋がりかけたのか。なんにしてもこれは止めておこう、と首を横に振る。
| >>+48 神谷 「ま、ニンジャにもなれるって意味じゃ、間違いはねぇですね」 実にさらっと、とんでもない事を言って。 「テレパシーって言うよりは……あ。 もしかして、神谷はわかんねぇんですかね? 『自分が今、相手にどう認識されてるか』っての」 似た異能を持つが故に。 この男は至極当たり前の様に、あなたにもそれが出来るもの だと思っていたのだ。 (58) 2021/11/06(Sat) 19:52:28 |
鏡沼
「いや分かるわけなくない?」
敬語がどこかに飛んだ。
「え? 分かるんですか?
分身的存在全部で見たり聞いたり? 考えたり?
なに? チートか?
ぼくだってそもそも誰に見られてるとか
どう見えてるかとか分かるならもう少しこう……
悪いことも考えますけど。
そうじゃないから困ってたわけで」
| >>+49 神谷 「えっ、わかんねぇんです?」 こっちはこっちで驚いている。 珍しく、普段細められてる目が開いて紫色が見える程度には。 「チートっつうよりは、増殖バグでやがりますが。 見たり聞いたりは出来ちまいますね。 尤も、何処にでも居られる訳じゃねぇですが。 こん中にだって、一人じゃ入れねぇですから」 と、件の扉を指し示す。 「しかし、わかんねぇなら、そりゃ思う様にも出来ねぇですし 薬の件がなくても日常に支障出まくりじゃねぇですか。 ま、僕はそのせいで“自分”って言えるモンがほぼねぇんで してぇって程の事もありやがらねぇんですがね」 わかるという事は、アイデンティティの喪失に繋がりかねない。 出来る様になった所で、あなたの救いになるかは疑問だ。 (59) 2021/11/06(Sat) 20:11:41 |
鏡沼
「……増殖、バグ……?」
あれは小説だったか、漫画だったか。
たぶん最近のやつじゃない、SFものだったと思う。
何人もの自分に分かれた後、『自分たち』の間でいさかいが起こり、殺し合いにまで発展する話。
そうだ、あの話でいさかいが起こった理由は──
「あの、鏡沼先輩。
先輩は、『どれが本物か』って分かるんですか?
記憶とか経験は、どうなって……?」
そもそも。
目の前にいる鏡沼先輩は、本当に鏡沼先輩なのだろうか。
自分は今、誰としゃべっている……?
一歩、後ろに下がる。
人は理解できないものを見ると、思ってしまうのだ。
『気持ち悪い』と。
それは神谷とて例外ではない。
| >>+50 神谷 「……一応、『本物』って言えるモンはありやがりますよ。 出来る事・出来ねぇ事ってのが異なっちまってるんで。 記憶や経験は、全部その『本物』にフィードバックされて ますから、齟齬が出たりはしやがらねぇです」 それは、全てを並行処理出来る処理能力があってのものだ。 この処理能力も異能の一部なのか、必要だから開花した才能 なのかは、鏡沼自身にもわからない。 処理出来るのが、鏡沼にとっては当たり前というだけの話。 鏡沼創は知っている。 あなたに自分が 『気持ち悪い存在』として認識されている 事を。 (60) 2021/11/06(Sat) 20:34:34 |
ピンポンパンポーン
『もうすぐ下校時間になります
校内に残っている生徒は作業を中止し、
速やかに下校の準備を始めてください』
『繰り返します』
『もうすぐ下校時間になります
校内に残っている生徒は作業を中止し、
速やかに下校の準備を始めてください』
ピンポンパンポーン
鏡沼
「そう、なんですか……」
異能なんてそもそもが訳のわからないものであるが。
自分のそれも他人に言わせれば気持ち悪いもので、自分だってそう思ったりするが。
それにしたって、眼前の人間は。
「……や、すみません。
なんか込み入ったことを聞いちゃって」
更に一歩、下がる。
生理的嫌悪に近い何か。神谷の中にあるのはそういうもの。
踏み込んではいけない気がする。
頭の奥の蓋がかたかた揺れている。
無意識にポケットの中身をまさぐった。
まだ薬はある。まだ、……何錠かは。
| 若井匠海は、帰る間際、軽く振り帰って虚空に手を振った。「じゃ、また明日!」 (a49) 2021/11/06(Sat) 20:57:10 |
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