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【人】 空虚 タチバナ― 院内廊下 ― [病院すべてを覆い尽くす黒が、 腰まで伸びた髪の先へ縋るように絡みついてくる。 身体の延長線上みたいに闇を引きずる姿は、 さながら黒いヴェールを纏っているようだった。] ……。 [しかし白いパジャマは胸元に穴こそ開いてはいるが、 それ以外は至って普通の質素なもの。 神聖なヴェールには似つかわしくなく、 色の名残さえ匂わせない。 積み重ねた負の感情が表情を陰鬱にし、 逃れられない怨霊の性が死の匂いを甘く漂わせた。] (21) 2022/08/13(Sat) 13:05:13 |
【人】 空虚 タチバナ[唯一の痕跡は腹の中に残っている。 元より遅かった歩みを更に緩め、 真白い手が下腹部をゆったりと撫でた。 注がれた瞬間、死ぬことが約束されている 意味を成さない命のはじまりが、たっぷりと。] ん……。 [まだ快感の切れ端が残っていたのか、 鼻にかかった声を漏らし、身を震わせた。 この身にそれを刻んだ男は、 今頃ベッドで眠っているだろう。] (22) 2022/08/13(Sat) 13:05:31 |
【人】 空虚 タチバナ[己の感情を思い出す。 自身の存在理由を確かめる。 たとえ望んだものではなかったとしても、 自分が得た唯一のもの。 生きている間には手に入らなかった、たった一つの。 悲しみが、怒りが、憎しみが、恨みが 黒く、黒く……渦巻く感情が、 怨霊を怨霊たらしめているのだと。 生まれてはいけなかった。 死ななければならなかった。 だから私は両親を――] (24) 2022/08/13(Sat) 13:06:16 |
【人】 空虚 タチバナあれ……? [今のは何だろう。よく思い出せない。 私は正しいこと≠したはずだ。 必要ないものを片づけ……いやでも、それは同じ、] ……あたま、…………いたい。 [途切れた快感がいつもの痛みを取り戻した。 足取りがぶれて、よろよろと蛇行しながら進む。 きっと、どこかで何かが混じっただけだ。 ただそれだけ。これは私のものじゃない。 どれだけ言い聞かせても、否定しても、 喉の奥が狭くなったような気がして。 必要ないはずの息が苦しくなった。 目頭が痺れを訴え、熱を帯びた。ねえ、どうして。] (26) 2022/08/13(Sat) 13:08:20 |
空虚 タチバナは、メモを貼った。 (a6) 2022/08/13(Sat) 13:17:16 |
【人】 空虚 タチバナ[かれん、と。私の名前を呼ぶ声が聞こえる。 母ではない。 彼女が娘の名を呼ぶことなんて滅多になかった。 他人がいる時だけ取り繕うように紡ぐ響きは、 何かが切れてしまうより前から他人事のようだった。 私だけを見て、私だけに注がれる名は、 彼が抱いた欲に満ちていた。 欲するままに与え合い奪い合って、 教えてもらった彼の名前ごと口づけられて、 交わした熱い吐息にどろどろに溶けてしまうような。 ――夢のようだった。 あの時だけは、たとえどんなに愚かだったとしても、 本物になれたような気がしたから。 私の名前を呼ぶ声が聞こえる。 何度も思い返そうとする頭の中で、 思い出の彼が私の名前を呼んでいる。] (32) 2022/08/13(Sat) 17:24:01 |
【人】 空虚 タチバナ[空っぽだって言ったくせに、 私の持っていないものをたくさん抱えた彼が、 生者の輝きを持つ彼が、憎くて、羨ましくて。 独り占めしそうになるくらいおいしそうで、 どちらかが消え、触れられなくなるのが怖ろしくて。 ――だから、殺してやらないことにした。] (36) 2022/08/13(Sat) 17:25:45 |
【人】 空虚 タチバナ[だから、逃げてしまえばいい。 ひとときの夢と、欲に溺れて生を投げ出さず、 どこかで幸せに生きてくれたなら。 だって―― 生きていたら、いつか報われるはずでしょう? 思いが怨霊のそれから逸脱し始めていることに 女はまだ気づかない。 自分に価値などないから、己を省みる時はなく。 矛盾から目を逸らすように頭の痛みに呻く。] ぅ……。 [折角逃げられたんだから、幸運を逃してはいけない。 あなたに駆け寄ってくれる人がいた>>1:110。 あなたを呼んで探してくれる人がいた>>1:13。 彼らとの関係も、どんな理由があるのかも知らない。 それでも心配してくれる誰かがいる。] (38) 2022/08/13(Sat) 17:27:24 |
【人】 空虚 タチバナ[この場に溜まる怪異は、あらゆる手段を用いて 求める者を手に入れようとする。そういうモノだ。 生者の延長線にいたとして、境界は存在する。 だから、] ぅ……ぁ゛… ァ……。 [幸運を逃してはいけない。 もし、次にその姿を捉えることがあったなら、 今度はもう、手放すことはできないだろうから。]** (39) 2022/08/13(Sat) 17:28:38 |
空虚 タチバナは、メモを貼った。 (a9) 2022/08/13(Sat) 17:33:02 |
【人】 空虚 タチバナ[痛くて、苦しくて、どうにかなりそうだった。 生者を死へ誘う程の強く暗い感情が、 今日ばかりは自分すら傷つけるように荒れ狂う。 生者の目を多く見てしまったから? 注いだ痛みを他人事だと思えなかったから? それとも異界化の影響だろうか。 彼女の口にした救いは、生者だけに与えられるのか。 いや、一度両手に抱えてしまったからだろうか。 少しでも、欲しいと思ってしまった命を。] (63) 2022/08/13(Sat) 22:35:25 |
【人】 空虚 タチバナ……どうして、ここにいるの。 [耐えきれない感覚によろめき、蹲っていたせいか、 結>>43が近づいていることに気づかなかった。 髪の隙間から瞳を覗かせ、ずろりと相手を見る。 尋ねた声は背中と同じく、か細く震えていた。 彼に肩を支えられるまま手を引かれ、立ち上がる。 得た質量を支えきれず、 彼へよりかかるように身体が傾いだ。] ぁ……、 [あたたかい。 死んだ者にはないぬくもりが触れた場所から広がる。 決して熱が移る訳ではないけれど、 己を苛んでいた痛みが和らいだ気がして 身を離そうとした意思も忘れ、身を任せる。 彼は、寄り添うことを許してくれるだろうか。 拒まれない限りはそのままの体勢で、 彼の言葉と心音に耳を傾けるつもりだ。] (64) 2022/08/13(Sat) 22:35:48 |
【人】 空虚 タチバナ[彼の提案はそう長くなかった。 けれど私より雄弁で、私よりずっとまっすぐだった。 人の言葉をなぞる悪戯にはじとりと視線を向けたが、 おぞましさよりも拗ねたような色が宿る。 最初からこちらを怖れもしなかった彼にとっては、 何の牽制にもならないだろう。] なんで……、 [また彼に理由を尋ねようとして、口を噤んだ。 「あなたには他にも幸せがあるのに」なんて、 傲慢にも過ぎる言葉だったからだ。 私の地獄が世間にとって甘えであるように、 私の思う彼の幸せも、彼には空虚なんだろう。 それを贅沢だとは思わない。 正しい選択ではないのかもしれないけれど、 正しさが幸福を保証しないことは ずっと前から分かっていたのだから。] (65) 2022/08/13(Sat) 22:36:10 |
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