196 【身内】迷子の貴方と帰り道の行方
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| 身分なんて人間性の証明じゃないよ ぼくはね、いろ〜んな人間を見てきたけど 身分がある、なしで人を好きになるかは ぜーんぜん 別だったから ねぇ、さっきからお姉ちゃんはさ 家のためとか義務って言うけどさ >>119 自分の為って言葉を言わないよね。 愛に愛でこたるのって 自分の不安を何一つ打ち明けないまま 不安を抱えてただ我慢することなのかな? (1) 2023/01/14(Sat) 21:06:38 |
| 恵まれて生きてきたなら結婚の不安は我慢するべきなの? 何も言えない親なら きっとエルメスお姉ちゃんにとっては その程度の相手だって事じゃないの? (2) 2023/01/14(Sat) 21:07:19 |
恵まれて生きてきた分の恩返しって素敵だし
相手が実はいい人でハッピーエンドって
そんな素敵な未来もあるかもしれないね
でも、そんなの掴める人はそうそういないよ
ぼくはそんな幸福があるなんて信じられない
もう少しと言わずに迷っちゃいなよ
ここで、閉じ込められるまま
眠りにつけば、何も考えないで済むよ?
……なんでここに居るって決めたのにそんな事言うの?
あ、大丈夫だよ。
僕の一部になってもね、ちゃんと楽しく暮らせるから
ここでは自由に暮らせる
美味しいご飯も綺麗なお洋服もある
雨風しのげる安全なおうち。
好きなだけモラトリアムに浸っていいし
結婚だってしなくたっていいんだ。
ここでぼく達と ず〜っと一緒にいようよ。ね?
……ごめん。この館の権利は彼女にあるから
今君は閉じ込められているんだ。
でも、勝手に館に取り込みはさせない。
それだけは保証するから。
[僕は目を閉じて、迷うように口を開いた。]
もし。もしもね……帰りたくないなら
僕達はそれを受け入れるよ。
───── でも君は……どうだろうね
心をしっかり決めて選んでほしい。
そうでないと、ネリリが納得してくれないと思う
もし、万が一
ネリリが納得しなくて帰りたいと心から願うなら
僕に言ってほしい。
[そう告げれば、僕は席を立った。
食事も気付けば食べきっていたからね。]
今日は疲れただろう?
色々あったしね。休むといいよ。
[そう言って引き留められなければ庭に向かおうと。
ネリリは不満げだけど、僕には逆らえない。
ここに引き留めたい彼女と、意思に任せようとする僕。
話をしたいならどちらも君にこたえるよ。
勿論、休むことを優先しても大丈夫だけどね。]
[
この館の魔法使いは僕だ。
ネリリには館の権利を渡しているに過ぎない。
だからもし、ここから逃げたいが勝つのなら
僕ならそうだね、帰してあげるよ。
それが僕の責任なんだから─────。]**
[ネリリさんの言葉に、
すぐに返事はできませんでした。
死んだように眠り、夢を見続けること。
そんなことを夢想したのも、一度や二度ではありません。
けれど、まさかこんな形で叶うとは思いませんでした。
息をのんでいたら今度は女性の声が。
内容はとても恐ろしいものでした。
何か質の悪い冗談では?と思いたい気持ちもありましたが、
ネリリさんの言葉が女性の言っていることが事実であると、
証明しています。]
楽しく暮らせている?本当にそうでしょうか。
先ほどの女性の方、ここで何不自由なく
暮らしているようには思えませんけれど。
実際、わたくしは先ほどまで彼女の存在すら知らなかった。
少なくともこの屋敷内で自由なのだとしたら、
わたくしが既に彼女と顔を合わせていても、
おかしくない筈です。
[態々わたくしに警告するために、
声を発してくれたのですから。]
[戸惑うわたくしに、男性が状況を説明してくれました。
100%の善意で
わたくしを歓迎してくれたわけではないことは、
少々悲しく思いましたけれど、
彼が取り計らってくれるのであれば、心強いです。
問答無用で館に取り込まれることは、
避けられるようですから。]
もしや、ここへくるお客様は皆、
わたくしや先程の女性のような感じなのでしょうか。
[被害者の数を想像すると……痛ましい気持ちになります。
無邪気にここへ来る人間をもてなして、
迷う客人に選択を迫り、自身の住処に取り込んでしまう。
これは果たして……。]
[楽しかった筈の宴が、白けた空気で満たされたころ、
彼が休むよう促してくれたので、
一先ず入浴を済ませ、部屋で休むことに決めました。]
お気遣い、有難う御座います。
お風呂で温まってから、休むことにします。
[今は頭が混乱しているので、
どちらとお話をしても有益にはならないでしょう。
体も頭も疲れ切っています。
「お休みなさいませ」と挨拶をして、食堂を後にしました。]
[食堂から出ていくエルメスから、何かがはらりと落ちた。
それは、"Louis"と美しく刺繍されたハンカチ。
エルメスはそれに気づくことなく、部屋へと戻った。**]
[ネリリにとってその言葉は響かない。
家の為にエルメスが自分の役割を果たすという事が
幸福には見えていないからだ。
彼女にはそれだけが本心の全てに見えていない。
子供の癇癪は理屈を受け付けはしなかった。]
彼女はもう、意識が寿命に近いからね
自由自在とはいかないのは仕方ないよ
あと、体がないんだから、見なくて当然だよ
ぼくだってそうだよ
[楽しく暮らせている
それは彼女に当てはまらないのは自覚しているのか
そこに関してはネリリは反論はしなかった。]
[正直、僕の事も彼女の事も
もっと強く拒絶され、信じられないと
そう言われる覚悟もしていた。
彼女はそれを得策としなかった賢さがあるのか
それでもなお、僕の言葉を信じたのか
詰め寄られることはなかった。
]
……ここに招かれるのはね
“家に帰りにくい理由がある人
”なんだ
そういう人を招いている。
エルメスさんも心当たりがあるんじゃないかな?
……信じて貰えるかわからないけど
最初からその存在を取り込むために
招いているわけじゃないよ
ただね、ネリリは残ると決めた人が
どこかにいなくなるのを良しとしない。
……だから取り込もうとする。
残るなら、逃がそうとしないネリリから
守り切れる保証はしてあげられない。
ごめんね
でも、決断をする時間の間なら……必ず。
[そう、ここは最初は違った。
ただ帰れない人が、帰りにくい人が帰る事の出来る
そんな場所にしようと思ったはずだったのに。]
うん、わかった。おやすみなさい。
[彼女が立ち去るのを止めはしない。
話をしたくないなら、それもまた選択の一つ。
立ち去る前に一声だけはかけようか。]
最後こんななっちゃってごめんね
もう一度言わせて。おめでとう。
そして、よい夢を─────
[何をいい人ぶっているんだと
どこか冷静な自分の心が告げてくる。]
[ネリリの行為を止めきれてない時点で同罪だ。
僕が本心から、その行為を止めればいいだけだ。
それが出来ない。
それを拒む自分がいる事もわかっているんだ。
残ってほしい。
近くにいてほしい。
誰か、誰か僕の隣に……
その願いがある限り
僕は君の物語の悪役にしかすぎないんだ。]
[ネリリの声と共にふわり、と浮いたそのハンカチ。
名の刺繍を見れば"Louis"という名前。]
……彼女の名前じゃないね。
[身内のを偶々拾ってもっていたのか
はたまた例の婚約者のハンカチを刺繍したものか
この時点で判別は出来なかった。]
僕がもっておく。
ネリリが何か聞かれたらそう答えておいて。
……今日はもう一度庭をみてから休むね。
君も、ちゃんと休んで頭を冷やしておいて。
おやすみ、ネリリ
[エルメスの服は、気付けば戻っていることになる。
ご馳走が並んでいて、花が降っていた場所も
気付けばそれらが消え、綺麗に整えられている。
誰もいなくなった場所を見つめて
一人の体が透けた緑の髪の少女は膝を抱えて蹲った。]**
− 回想 −
[ ここはどこだろう、と迷い込んだのは
魔法使いのおうちだった。
わたしは、家族に嫌われていた。
わたしは、家族に殴られていた。
わたしは、家族に捨てられた。
なぜここに? そう言って目を丸くする存在は
赤くて綺麗な人だった。
最後に綺麗な人を見れて幸せだったな。
そして、目を閉じるはずだった。]
[人が入り込めないようしていたはずだった。
どこか隙があったのか。
もしくは無意識で僕が願ってしまったのか。
その子供は僕の元にやってきた。
でも少女はぼろぼろだった。
魔法でいくら癒しても、消えかける命を繋げない
それ位危険な状態だったんだ。
人が目の前で死ぬのは嫌だった。
それが幼い少女ならなおさら。
僕は必死に考え、それを実行してしまった。]
あれ……? あれれ?
わたし、しんでない……の? あれ?
[意識が戻った時、気付いたら立派なお屋敷にいた。
綺麗な服を着て、体もどこも痛くない、空腹もない。
夢? と首を傾げた。
それに、自分の体はやけにふわふわしていた。]
……ごめんね。
君の命を元の体のまま繋ぐことは出来なかった。
でも、意識だけは守れた。
初めまして。
僕は魔法使いだ。
[それが僕たちの始まり。]**
[意識の寿命……それほど長く
この屋敷に留まっていたのでしょうか。
ネリリさんの姿を見せられない理由も分かり、
先程の女性と、大きく事情は変わらないように思えました。
少なくともネリリさんは、楽しそうに振舞っていました。
だからきっと、ここに残ることで
楽しく暮らせている人も中にはいるのでしょう。
ここにしか救いの無いような、
人生を送っていた人もきっといるでしょうから。]
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