81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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かつて銃弾が飛び交う中を駆け抜けた。
あの日々に比べれば、大した状況でもない。
まだ飢えていないし、今の自分には知識がある。
全員で、死ぬくらいなら。
誰かが、生き延びた方がいい。
「ひどい雨。今日はほんとうについてないな。
もう沈んじゃったかなオレの実家
流されちゃったかな、親父」
ぼそりと、近くにいる人間にしか
聞こえないような声量で呟いた。
メイジは戦後に生まれた子供だ。
戦地の恐ろしさを大して知らない。
父親は、なにも話してくれなかったから。
本当に今日はついてなかった。
| 自己紹介という流れでしぶしぶ口を開いた。
「俺はニエカワ リョウ……この病院に入院してる。 あ、熱はあるけどコレ人にうつったりしないから……安心して」
壁にもたれて、髪先を手持ち無沙汰にいじっている。 (11) 2021/06/28(Mon) 2:00:02 |
| (a2) 2021/06/28(Mon) 2:04:45 |
| (a3) 2021/06/28(Mon) 2:05:02 |
| (a4) 2021/06/28(Mon) 2:05:38 |
「……メイジくん」
偶々近くにいた。
ただそれだけだが、聞こえてしまったのなら、この男の気質的に無視はできない。
貴方のことは主にカルテで知っている。
不自然な頻度で怪我をしている、家庭の事情がありそうな子供。
そう認識していた。
「そうですねぇ、集会所の方に避難していた人もいるみたいですし……。
もしかすると、そちらにいらっしゃるかもしれませんね」
詳しい事情は知らない。
だから励ますようなことは言わず、予想だけを述べた。
| >>20 ロク 「熱……あるけど、こんなのはいつもだから」 隣に来た貴方を軽く見上げては視線を床へと戻した。 「ロク…さん?だよね。この辺の人じゃないっぽいけど……外の人?」 (21) 2021/06/28(Mon) 12:19:01 |
| >>アユミ
「先生……疲れてる?」
アユミ先生に近寄ってくる熱っぽい少年。 よく入院する少年はきっと貴方とか顔見知りだ。 解熱剤はきいてないらしく顔は赤い。 でもいつもこんな感じなので熱に関して緊急性はないだろう。 (23) 2021/06/28(Mon) 12:30:16 |
「…………そっか!」
軽い調子で相づちを打った。
安心したようにも、どうでもよさそうにも見えるような。
「セナさん……だっけ
病院のひとだからオレよりはわかるよね」
メイジはあなたのことは、知らなかった。
ここ数年は都会にいたからだ。
「オレたちってどうなるかな?」
助けは来るのかな。
食料の蓄えのことをはっきりとは知らないが
アユミの様子を見て、察せれないほど鈍感でもなかった。
| >>26 アユミ 「気を使ってるとかじゃないし…… 大体、先生が無理してここに人をかくまわなくたっていいんだし……」 変に意地を張りながら触診を受け入れる。 首元に触れられるのはくすぐったくていつも慣れないが、じっとしている。 「うん……おなか減ってること以外は特にないよ。 胸もいたくないし……」 病状自体は今は良好のようだ。 (27) 2021/06/28(Mon) 13:23:32 |
「どうなるかは……僕も含め皆さん次第、ですかね。
実を言うと、贅沢できる程の食糧はありません。
争わず助けを待てれば、良いんですけど」
贅沢どころか、全員で生き延びることも難しい。
その事実を子供に対して言える程、人でなしでもなかった。
「メイジくんにも我慢をさせてしまうでしょう。
なるべく僕も頑張りますが、ね」
ちら、とアユミの後ろ姿を見やる。
| >>30 アユミ 「…………」 反論しようと思ったが、大人の意思を曲げさせるようなセリフが思いつくわけもなく、ただ黙り込んだ。 「先生はお医者さんだけど、アトムじゃない…… 誰彼構わず助けなくたって……」 (31) 2021/06/28(Mon) 14:32:06 |
| >>28 ロク 「ううん、歩くぐらいなら……平気」 といっても健康な状態であったことがほとんどなく、こっちが日常であるため慣れてしまっているようだ。 「そう。よく名前覚えてたね…… "この辺"っていっても、俺の場合この病院と家ぐらいだけどねよく知ってるの」 (33) 2021/06/28(Mon) 14:43:08 |
| >>35 アユミ 「……アトムは直してくれる博士がいるけど、先生は直す人が先生なんだから……どっちかっていうとお茶の水博士目指した方がいいんじゃないの?」 そういう問題でもない気がする。 しかし子供の見る番組のはなしでも否定せず乗ってくれる優しい先生を、姉や母のように感じているらしく、憎まれ口のようなことを言いながらも心配しているようだ。 (36) 2021/06/28(Mon) 15:08:58 |
「……そっか。結構人いるもんね。
オレは争いは、やだなあ。早く助けがきてほしい」
ガタガタと揺れる窓の外、吹き荒れる風景の
ずっと遠くを見ている。灯りは見えない。
「我慢するのは慣れてるよ。
ちょっとお腹減ったくらいならまだヘーキだし」
決して家は裕福ではなかったから。
けれど頑張ったらどうにかなるものなのかと逡巡して
「じゃあオレは、いい子にしてるよ。
手伝えることがあるなら、手伝います」
脅かされなければ、苦しめられなければ
メイジはまだ大丈夫だ。
「……では、…………」
言葉は続かない。
悩んでいた。子供を加担させるべきか否か。
この先、生存者を出していくには、避けられないのだから。
「…………メイジくん、包丁を扱ったことはありますか?
実は流されてきた猿を数匹見つけたんです。
ある程度は僕が解体しますから、
細かく切る作業をお願いしたいんです」
この村で育ったなら知っているはずだ。
……
この近辺の山に、猿はいない。
けれど、もしかしたら。
遠くから流されてくることだって、あるかもしれない。
| >>38 アユミ 「……。先生が元気出たなら、いいけど……」 ぷい、と顔をそむけた。 気恥ずかしいのかもしれない。 「そうだ、セナハラさんが食べるもの探してきてくれるって言ってたよ」 (39) 2021/06/28(Mon) 17:01:28 |
「猿?」
メイジは、小さな頃はよく山に遊びに行って
傷を作って帰ってきたものだ。
当然猿なんて一匹も見たことはない。
……ないが、特に深く考えることはせず、笑う。
「切るくらいならできるよ。まかせてー
オレ鉛筆削るのとか得意だし。わりと器用」
それが猿以外である可能性には思い至らない。
「セナさんも解体できるなんて、すごいね。
山で暮らしてたこととかあるの?」
| >>40 ロク 「うん、ありがと…… でもこの熱は……持病みたいなものだから 一人で部屋にいるのも暇だし」 高熱というほどでもないから平気だと小さく笑って見せる。 不安な状況だからか、多少熱があったとしてもここに居たいようだ。 「ロクはなんでこの村に?」 (45) 2021/06/28(Mon) 20:20:02 |
悟られなかったことが幸いなのか、災いなのか。
今の男には、理解できなかった。
「山というよりは、密林のような場所で育ちました。
外地の生まれなんです、僕。
戦況が悪化して、皆何でも食べてましたから……」
虫から木の根まで、
食べられそうな物は全て喰らった。
それは墓の下まで持っていく筈の秘密で、
二度と侵さないと決めた領域だ。
「鶏とかいれば、絞め方を教えられたんですけどね。
猿はどうしても、見た目が人間に近いですし」
| >>43 アユミ 「うん……二人で運ぶのがもし大変だったら 俺も手伝うよ たくさんの缶詰を運ぶのは時間がかかりそうだし」 入院が続くこの非力な体で力仕事は到底手伝えそうにないが、それでも本人は手伝うつもりでいるようだ。 (46) 2021/06/28(Mon) 20:43:41 |
| >>50 ロク 「一人旅……」 その言葉を聞いた途端貴方の方へ向ける視線に光が宿る。 「今までどんなところにいったの?トウキョウとかいったことある?」 (51) 2021/06/29(Tue) 12:13:13 |
| >>52 アユミ 「熱が下がった事なんてあんまりないし、これが俺の平熱なんだよきっと」 だから平気、と顔を横に振った。 貴方が歩きだすと自分も歩を進めるも、自分の相手をしている暇はないのだろうと気づきついていくのをやめた。 少しつまらなそうな顔をして人のいる場所へと戻っていくだろう。 (54) 2021/06/29(Tue) 12:46:06 |
メイジは驚いたようにぱちぱちと瞬きをした。
「……そうなんだ。なんでも食べなきゃ
いけないくらい苦しかったの?」
戦争って大変だね。口ではそう言うが、深くまでは知らない。
なんでも。虫とか、草とか、その辺りまでは想像できる。
メイジはそこまで飢えに苦しんだ経験はないから。
「人間に近いと何かまずいことでもあるかな。
オレそれくらい平気だよ、セナさん。だって猿なんでしょ」
未成年だから、気を使ってくれているのだろうか。
でも、人間に近いだけで、人間ではない。
……ふと、真新しい自分の腕の傷を見つめた。
「動物の解体って、大丈夫だと思ってても案外辛くなるんです。
医学校の実習で人を開く授業があったんですけど、
必ず何人か吐く人がいます」
嘘ではないが、本音でもない。
どこまで加担させるべきか、未だ悩んでいた。
「だから先ずは、バラバラにした段階から。
大丈夫であれば、一緒に始めから解体しましょうか」
→
「……これはね。
メイジくんが話したくなかったら、話さなくて良いんですけど」
そんな様子を見つめ、口を開く。
手を汚させるなら、せめて何か報われてほしい。
贖罪にも似た心地だった。
「転んだりぶつけたりすると、怪我をしますよね。
そういった傷は、肘とか膝といった関節にできます。
……言い返せば、」
→
「それら以外の場所にある怪我は、大抵意図的なものです」
今度は、瞬きも忘れて数拍、動きが止まった。
「……あはは……」
気の抜けた笑いが出た。そりゃあ、バレるよね。
さすがお医者さん目指してる人だ、と零す。
「……たぶん、セナさんが考えてるとおりで
合ってると思うけど……」
視線を逸らし、あなたの首元。
手持無沙汰にくるくると自分のくせ毛をいじりながら
躊躇いがちに、ぽつり、ぽつりと話し始める。
ここまで言われてるなら、もういっか、と思った。
「………オレさ、」
「小さい頃から親父に暴力振るわれてたんだ」
「……情けないから、自分でつけた傷ってことにして……
ごまかしてたんだけど、むずかしいね」→
「親父、ずっと家に閉じこもってて、酒ばっか飲んでて
なんかあるとすぐ怒鳴るし
何考えてるのかわかんない人だったなー……」
この小さな村だ、近所によくない噂は伝わっていた。
戦争から帰って来てからずっとそうだった、と。
「母さんはね、昔は優しい人だったって言ってたけど
オレにはそうは思えなかったな。
そんな母さんは勝手にしんじゃったしさ
オレにはなにも理解できない親父だったよ」
そして親父のことを過去の人間のように語った。
「セナさんはオレのこと心配してくれてるのかな。
それとも情けない男だと思ってるかな。
でも、きっと、オレのこと軽蔑しちゃうよ。
オレ、そんないい子じゃないからね」
そう、これは腕の傷と直接関係ある話ではなかった
メイジは、まだ隠していることがある。
| >>57 ロク 「うん……!いつか行ってみたいんだ…… もうすぐ新幹線ができるんでしょ?」 期待に満ちた目で相手を見つめている。 (59) 2021/06/29(Tue) 19:14:12 |
言葉にずっと耳を傾けていた。
荒んだ生活を送る帰還兵は珍しくない。
戦場が人の精神を削り、形を変えてしまうことをこの男は知っている。
「心配してるんですよ、勿論。
情けないなんて、これっぽっちも思いません」
片膝を着き、貴方を見上げる。
もう父親がこの世にいないような話し方をすることに気付きつつ、口には出さなかった。
「……メイジくんの家は、戦場だったんですね」
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