81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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かつて銃弾が飛び交う中を駆け抜けた。
あの日々に比べれば、大した状況でもない。
まだ飢えていないし、今の自分には知識がある。
全員で、死ぬくらいなら。
誰かが、生き延びた方がいい。
| (どォしたもんかね)
湿気った髪を掻く。この手の席は第一印象が肝要。 用途を果たさぬ儘湿り切ってしまったタオルを振るい、 パシリと音を鳴らして。
「あァ、自己紹介。そいつはいい。 はじめましての皆々様、“お客さん”とはおれのこと」
視線が向けられればそれらにニカリと笑い返し、 芝居がかった口調でそう、お道化てみせた。
「“ロク”とよんでくだせェ。 名乗るほどの名は持たねェからさ」 (3) 2021/06/27(Sun) 22:36:39 |
| 「ハハ、お上手。 医者と、あァ、なんだったっけか。 ま、なんとかは仕事がねェのがいいっつうでしょ」 ケラケラと笑い、セナハラと名乗った医者に相槌を打つ。 本当に言うのかは知らない。 それらしいことを適当に述べただけなので。 「残念ながらサッソク仕事がありそうだがねェ。 ……アーアー、これァハデにやっちまってねェか?」 包帯の目立つ少年 >>2にズイと近寄り、 枝が刺さったと思しきその箇所を痛々しそうに眺めている。 (7) 2021/06/27(Sun) 23:49:05 |
「ひどい雨。今日はほんとうについてないな。
もう沈んじゃったかなオレの実家
流されちゃったかな、親父」
ぼそりと、近くにいる人間にしか
聞こえないような声量で呟いた。
メイジは戦後に生まれた子供だ。
戦地の恐ろしさを大して知らない。
父親は、なにも話してくれなかったから。
本当に今日はついてなかった。
| >>9 メイジ 「アーアーアー……」 仕方ねェ子だなァとでも続きそうな調子。 傷から手を離させる為、触れる側の手首を握ろうとする。 多少の抵抗は無視するけれども、 酷く痛がる素振りなんかがあれば直ぐに手を引くだろう。 「おれがやってもいいが…… ま、餅は餅屋、ケガは医者だな」 そう呟き、視線を腕から顔へ動かして片目を見下ろす。 「さっさとお医者サンにみてもらいな。 ほっといてもいいこたねェ、いつまでも痛ェだけだろうよ」 (13) 2021/06/28(Mon) 4:13:56 |
「……メイジくん」
偶々近くにいた。
ただそれだけだが、聞こえてしまったのなら、この男の気質的に無視はできない。
貴方のことは主にカルテで知っている。
不自然な頻度で怪我をしている、家庭の事情がありそうな子供。
そう認識していた。
「そうですねぇ、集会所の方に避難していた人もいるみたいですし……。
もしかすると、そちらにいらっしゃるかもしれませんね」
詳しい事情は知らない。
だから励ますようなことは言わず、予想だけを述べた。
| ロクは、指差し名を呼ばれた際、「そこの兄サンと間違えねェでくれよ」とヒラリと手を振って応えた。 (a8) 2021/06/28(Mon) 10:28:39 |
| ロクは、トンカントンカン。腕前の程は (58)1d100。 (a12) 2021/06/28(Mon) 11:42:08 |
| ロクは、釘打つ音がちょいと乱れる。トンカン、ト、トン、カン。 (a13) 2021/06/28(Mon) 11:42:38 |
| >>11 ニエカワ 「坊チャン、熱あンのかァ?」 壁際、左隣に似たように凭れて。 少年を見下ろし声を掛けた。 (20) 2021/06/28(Mon) 12:06:31 |
| >>セナハラ もしくはアユミ
「お医者サン、ちっといいか?」
自己紹介の場を終え、恐らくそれなりの時間が経ってから。 白衣を認め、軽快に呼び止める。
「空いてる部屋を使っていいと聞いたモンで。 場所を伝えとこうかと思ってさァ」
問題無いかの確認と、居場所を把握できた方が安心だろうと。 余所者なりの気遣いから声を掛けた。 (22) 2021/06/28(Mon) 12:21:35 |
「…………そっか!」
軽い調子で相づちを打った。
安心したようにも、どうでもよさそうにも見えるような。
「セナさん……だっけ
病院のひとだからオレよりはわかるよね」
メイジはあなたのことは、知らなかった。
ここ数年は都会にいたからだ。
「オレたちってどうなるかな?」
助けは来るのかな。
食料の蓄えのことをはっきりとは知らないが
アユミの様子を見て、察せれないほど鈍感でもなかった。
「どうなるかは……僕も含め皆さん次第、ですかね。
実を言うと、贅沢できる程の食糧はありません。
争わず助けを待てれば、良いんですけど」
贅沢どころか、全員で生き延びることも難しい。
その事実を子供に対して言える程、人でなしでもなかった。
「メイジくんにも我慢をさせてしまうでしょう。
なるべく僕も頑張りますが、ね」
ちら、とアユミの後ろ姿を見やる。
| >>21 ニエカワ 「いつもそンなに顔赤くしてんのか。 そいつは心配だなァ、ここに出てくんのも一仕事だったろ。 おれが口出すモンでもなかろうが……」 旋毛を見下ろし乍ら会話を続ける。 「お、覚えてくれたか。そうそ、外モン。 そんなお前サンは“この辺”のニエカワリョウクン。正解か?」 (28) 2021/06/28(Mon) 13:58:53 |
| >>24 メイジ 振り払われた手をジ、と見てから。 しゃがみ込んで目線をなるたけ合わせ、笑いかける。 「メイジクンだっけか。 謝るこたねェさ、おれこそおどろかせちまって悪いね」 腕は膝の上、両手を仕舞い込むように組んでいる。 (29) 2021/06/28(Mon) 14:01:42 |
| >>25 セナハラ 「あァ、洗濯紐。余ってんなら借りてェな。 なにせこの雨、風呂敷ごとやられちまった」 濡れた儘放置していた手荷物を思い出してそう返す。 ……食料への言及が無いことに触れはしない。 気づいているのかそうでないのかも、露わにはしなかった。 それから、申し出る。 女のお医者サンにも言っといてくれ、と言い添えつつ。 「掃除でもなンでも、仕事がありゃァ言ってくれ。 厄介になるからには役に立ちてェからさ」 (32) 2021/06/28(Mon) 14:37:44 |
「……そっか。結構人いるもんね。
オレは争いは、やだなあ。早く助けがきてほしい」
ガタガタと揺れる窓の外、吹き荒れる風景の
ずっと遠くを見ている。灯りは見えない。
「我慢するのは慣れてるよ。
ちょっとお腹減ったくらいならまだヘーキだし」
決して家は裕福ではなかったから。
けれど頑張ったらどうにかなるものなのかと逡巡して
「じゃあオレは、いい子にしてるよ。
手伝えることがあるなら、手伝います」
脅かされなければ、苦しめられなければ
メイジはまだ大丈夫だ。
「……では、…………」
言葉は続かない。
悩んでいた。子供を加担させるべきか否か。
この先、生存者を出していくには、避けられないのだから。
「…………メイジくん、包丁を扱ったことはありますか?
実は流されてきた猿を数匹見つけたんです。
ある程度は僕が解体しますから、
細かく切る作業をお願いしたいんです」
この村で育ったなら知っているはずだ。
……
この近辺の山に、猿はいない。
けれど、もしかしたら。
遠くから流されてくることだって、あるかもしれない。
| >>33 ニエカワ 「そうかい、しんどくなったらすぐ言いな」 早めに切り上げて部屋に戻した方が良いだろうか。 ……本人は慣れっこの様だが。そう考えつつ口を動かす。 「覚えるのは苦手じゃねェんだ。 家と病院……あァ、その熱でか。風邪とはちげェのかい」 (40) 2021/06/28(Mon) 17:04:13 |
| >>34 メイジ 「そうかい」と姿勢を崩さぬまま柔やかに相槌を打って。 唐突に顔を伏せて小さく呻いた。 それから、殊更に声を顰めて話の続き。▼ (41) 2021/06/28(Mon) 17:06:47 |
| >>37 セナハラ 「服まで貸してくれンのかい。 いよいよ張り切って働かねェとだなァ」 手伝う内容を聞いて、雨の溜まった容器を思い浮かべる。 空き部屋を探した際に幾つか見たような気もする。 「はいよ、雨漏りね。 捨てンのは適当に外でも――と、」 ふと何か気づいた様に言葉を止め、くいと指先を動かす。 『耳を貸せ』の動き。 (42) 2021/06/28(Mon) 17:30:57 |
| (a16) 2021/06/28(Mon) 17:59:40 |
| (a17) 2021/06/28(Mon) 17:59:55 |
「猿?」
メイジは、小さな頃はよく山に遊びに行って
傷を作って帰ってきたものだ。
当然猿なんて一匹も見たことはない。
……ないが、特に深く考えることはせず、笑う。
「切るくらいならできるよ。まかせてー
オレ鉛筆削るのとか得意だし。わりと器用」
それが猿以外である可能性には思い至らない。
「セナさんも解体できるなんて、すごいね。
山で暮らしてたこととかあるの?」
| (a18) 2021/06/28(Mon) 20:17:15 |
悟られなかったことが幸いなのか、災いなのか。
今の男には、理解できなかった。
「山というよりは、密林のような場所で育ちました。
外地の生まれなんです、僕。
戦況が悪化して、皆何でも食べてましたから……」
虫から木の根まで、
食べられそうな物は全て喰らった。
それは墓の下まで持っていく筈の秘密で、
二度と侵さないと決めた領域だ。
「鶏とかいれば、絞め方を教えられたんですけどね。
猿はどうしても、見た目が人間に近いですし」
| >>45 ニエカワ 「ンならもうちっとこうしてても問題ねェか」 納得した様にそう言って、ニカリと笑い返す。 「ン、おれかい。 おれァ風の吹くまま気の向くまま。一人旅の途中だよ」 (50) 2021/06/29(Tue) 9:46:33 |
メイジは驚いたようにぱちぱちと瞬きをした。
「……そうなんだ。なんでも食べなきゃ
いけないくらい苦しかったの?」
戦争って大変だね。口ではそう言うが、深くまでは知らない。
なんでも。虫とか、草とか、その辺りまでは想像できる。
メイジはそこまで飢えに苦しんだ経験はないから。
「人間に近いと何かまずいことでもあるかな。
オレそれくらい平気だよ、セナさん。だって猿なんでしょ」
未成年だから、気を使ってくれているのだろうか。
でも、人間に近いだけで、人間ではない。
……ふと、真新しい自分の腕の傷を見つめた。
| >>51 ニエカワ 「ン? まァ、ある。 坊チャン、都会に興味があンのかい」 あるもなにも、男は東京に住んでいた。 その事実は伏せた儘、 「知ってることでよけりゃァ話してやるが」と言い添える。 (57) 2021/06/29(Tue) 15:07:29 |
「動物の解体って、大丈夫だと思ってても案外辛くなるんです。
医学校の実習で人を開く授業があったんですけど、
必ず何人か吐く人がいます」
嘘ではないが、本音でもない。
どこまで加担させるべきか、未だ悩んでいた。
「だから先ずは、バラバラにした段階から。
大丈夫であれば、一緒に始めから解体しましょうか」
→
「……これはね。
メイジくんが話したくなかったら、話さなくて良いんですけど」
そんな様子を見つめ、口を開く。
手を汚させるなら、せめて何か報われてほしい。
贖罪にも似た心地だった。
「転んだりぶつけたりすると、怪我をしますよね。
そういった傷は、肘とか膝といった関節にできます。
……言い返せば、」
→
「それら以外の場所にある怪我は、大抵意図的なものです」
| >>セナハラ 「そンじゃ、これにて。 おれは二階に行ってこようかね」 潜めていた声を戻して。 ヒラリと手を振って件の雨漏りを確認しに向かった。 (58) 2021/06/29(Tue) 18:17:38 |
今度は、瞬きも忘れて数拍、動きが止まった。
「……あはは……」
気の抜けた笑いが出た。そりゃあ、バレるよね。
さすがお医者さん目指してる人だ、と零す。
「……たぶん、セナさんが考えてるとおりで
合ってると思うけど……」
視線を逸らし、あなたの首元。
手持無沙汰にくるくると自分のくせ毛をいじりながら
躊躇いがちに、ぽつり、ぽつりと話し始める。
ここまで言われてるなら、もういっか、と思った。
「………オレさ、」
「小さい頃から親父に暴力振るわれてたんだ」
「……情けないから、自分でつけた傷ってことにして……
ごまかしてたんだけど、むずかしいね」→
「親父、ずっと家に閉じこもってて、酒ばっか飲んでて
なんかあるとすぐ怒鳴るし
何考えてるのかわかんない人だったなー……」
この小さな村だ、近所によくない噂は伝わっていた。
戦争から帰って来てからずっとそうだった、と。
「母さんはね、昔は優しい人だったって言ってたけど
オレにはそうは思えなかったな。
そんな母さんは勝手にしんじゃったしさ
オレにはなにも理解できない親父だったよ」
そして親父のことを過去の人間のように語った。
「セナさんはオレのこと心配してくれてるのかな。
それとも情けない男だと思ってるかな。
でも、きっと、オレのこと軽蔑しちゃうよ。
オレ、そんないい子じゃないからね」
そう、これは腕の傷と直接関係ある話ではなかった
メイジは、まだ隠していることがある。
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