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![]() | 【人】 瑞野 那岐[枕に頭を凭せ掛けながら、 思案に老ける彼の様子を眺めてた。 唐突、と言われればそうなのかもしれない。 だけど、自分にとってはあの旅行から戻った時から、 考えていたものでもあったから、そう?と緩く笑みを添えた。] 香りがあれば、いつも傍に居るような気がして。 [寝転がりなら、彼の髪を撫でる。 風呂上がりにするシャンプーの香りも好きだけど、 時間と場所よって変わるフレグランスはまた、 違ったあなたを引き立たせてくれるだろうから、 それも楽しみの一つ。 自分が選んだ香りを纏わせながら、仕事に行く彼も。 なにかの合間に、自身を思い出してくれたら。] (14) 2023/04/03(Mon) 21:41:57 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[名乗りを上げれば、彼からも見立ての注文が入って。 笑いながら、いいよ。と応えた。 考えつく先は、同じなのかもしれない。] 仕事中は付けられないから、休みの日だけ。 [それは、同僚も従姉妹も知らない香りになるだろう。 だとするなら、彼と並んだときに、 噛み合う香りがいいだろうか。 選ぶといいながら、あまり詳しくはないけれど。 彼に送りたいものは、いくつか検討がついていたから。 オーダーメイドという話が、 そういうものもあるのか、と感心しただろう。 それはそれで、互いにまた作ることにして。] (15) 2023/04/03(Mon) 21:42:14 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[季節は春から梅雨へ、梅雨から夏へと移り変わる頃。 旅行のときに、話していた蛍も>>+186 そろそろ見頃の季節がだろうか。 師範代だという祖父は彼に厳しいのだったか。 その話をするときだけ、彼の表情が、 いささか強張ったようなものになったのは、 無意識に祖父を思い出していたのかもしれない。 家族仲が悪いわけではなさそうだけれど。 その話も、これからは耳にする機会もあるかもしれない。 風呂上がりに、いつも。 彼が自身を抱き寄せるのが癖になっているみたいに。 隣に寝転ぶ彼に、寄り添うように身を詰めて、 まだ眠る気配のない彼を下から見上げるのは俺の癖。] (16) 2023/04/03(Mon) 21:42:38 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐……蛍を見に行くの、 景斗さんのお爺さんの家の近くがいいな。 [寝転がりなら、ふわりと柔らかく笑って。 少し、無茶な注文をしただろうか。 難しいと言われたらなら、ごめん、と笑って。 もし、彼も頷いてくれたなら、少し具体的な話をして。 今日も彼の腕の中で、眠りにつく。] (17) 2023/04/03(Mon) 21:42:58 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[休みを合わせた休日に、彼を引き連れて、 デパートへ足を運んだ。 男性だけでは、少し足を運びにくいかとも考えたけれど、 やはり種類を求めるなら、場所を選んだほうがいい。 いくつかの店を周りながら、 今度はやっぱりオーダーメイドにしようと、彼が言うから。 その時ばかりは、笑って頷いただろうか。 ひと目につく所に連れてきてしまったことに、 少々申し訳なさを感じながら、いろいろな香水を試して、 ようやく選んだ香水は、どこか彼を思わせる。 黒いシックな容器のもの。 最初は情熱的な獣のような匂いすらするけれど、 少し時間をおけば、フローラルな香りも混じって 格段にマイルドな印象になる。 何より、香りを試した際に店員の人が教えてくれた 名前の由来がとても気に入ったものだから。] (18) 2023/04/03(Mon) 21:43:14 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[俺にとっての日常は、優しく穏やかなものだった。 日々代わりになく過ごすことに、不満はなく。 慣れた道を通り抜けて、店に向かい。 毎日のように顔を合わせる同僚たちと、 今日はどんな料理を作ろうか。と、 少しの不安と、半分以上の期待に胸を膨らませ、 お客様に喜んでもらえるようなサービスを考える。 そんな一日一日は、大した不満はなく、 過ごしていたものだったけれど。 ときに失敗をした夜もある。 疲労した身体をなんとか家まで運んで、 熱いシャワーで洗い流して、 気持ちを切り替えようと、取り出した缶ビール。 話し相手はいないから、AIシステムから流れる ラジオが耳の拠り所だった。] (19) 2023/04/03(Mon) 21:43:59 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[同じ月を見ていても、 どこか遠いもののように思えいてた世界。 決して混じり合うことのないだろうラジオの向こう。 それが、あるとき。 不意に目の前に形になって現れた。 こんなこともあるのか、なんて驚きが一番近くて。 常連として見慣れていた姿が、一気に身近に感じた。 あなたの声が好きです。 いきなりそう告げてもきっと驚かれるだろう。 距離感は保ったまま、それでもいつか。 伝えられたらと思っていた日々はあっという間に過ぎて。] (20) 2023/04/03(Mon) 21:44:15 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[俺が伝えるよりも早く、彼が一歩踏み込んだ。 好きなタイプを聞かれたときに、 ふと頭に思い浮かんだもの。 今思い返してみれば、少し恥ずかしい。 だけどきっと、その時から、大切だった。 優しくて穏やかな声を、聞いた日は。 あの月を探した夜を思い出す。 一人でいても、どこかで繋がっているような。 ひとりじゃないと、思わせてくれた声が確かに 在 った。] (21) 2023/04/03(Mon) 21:44:35 |
![]() | 【人】 瑞野 那岐[今は、一人ではなく、隣に貴方がいる。 一人じゃないと教えてくれた貴方が。 二人で過ごすことの心地良さを、 大切な人が居ることの強さを教えてくれる。 夏に近づいた帰り道、数歩先を進んで、 彼が追いついてくるのを待つ。 再び隣にならんだら、プレゼントを持っていない手を 伸ばして、小指だけを絡めるように少しだけ繋がって。] ……もうすぐ、夏ですね。 [『なんでもない』ことを、 さも日常に溶かすように口にする。 なんでもないことが特別なように、一日一日を過ごして、 これからも、ずっと貴方と過ごせていけるなら――。] (22) 2023/04/03(Mon) 21:44:56 |
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![]() | 【人】 高野 景斗[ 人は一人で死ぬものだ。 その考え方自体は大きく変わっていない。 無理心中したところで、その死体が 引き上げられたら、個と個で。 同じ棺に入ることも、なければ あちらで再会できる保証も一つもない。 だから、 ひとりでいい 。だから、ひとりが こわい 。相反する思いはいつまで経っても 解決することはない。それでも、その声が その存在が、怖さを消し去るほどの愛しさを 教えてくれるから。 ] (24) 2023/04/03(Mon) 22:48:40 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ これまでに何度か、自宅で過ごしているところ 掛かってきた電話に出ることがあった。 どこで目にしたのか、あの厳格な父が MVの話題を出し、開口一番、 "姿勢が悪い"と言うものだから、笑ってしまった あれは撮影だからどうしたって見栄えが重視される だとか、散々っぱら話したあとで、父は "ちゃんと食べているのか 困っていないか"と そう口にした。実に7年ぶりに会話したのを それを聞いて、思い出したくらいだ。 ちゃんと食べている、生きている。 そう伝えた後、入院している時 意地を張らずに顔を見に行けばよかったと 父母二人共えらく後悔したんだと聞かされて 近いうち、顔を出すと約束したときも、 彼はすぐ近くで見守るようにしてくれていたか。 ] (25) 2023/04/03(Mon) 22:49:20 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ 料理を覚えたと言えば、野菜を送ってくるようになったし 母は"連れてきて"とうるさくなった。 何一つ伝えてはいないのだが、 察するものがあるらしい。 フレグランスの話をしていた時だったか その後の話だったか。 夏には蛍を、その話を覚えてくれていたのか 彼の方から、祖父の家の近くが良いと 言われ、僅か思案するような顔をした後 ] 嫌じゃなければ、祖父母の家に行かない? だだっ広いだけが取り柄みたいな家だから。 (26) 2023/04/03(Mon) 22:49:48 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ そう口にした。否と言われれば近場に 宿のあてはいくらでもあると告げるだろうが。 ――そもそも、こそこそと隠れなければ いけない事も、ないと思って。 世間的には冷ややかな目を浴びることも あるのだろうと理解はしているつもりだが。 ] 爺さんも婆さんも、孫には甘いから。 稽古の時以外はね。 [ 彼のおかげで、ひとりではなくなったのに それをひた隠しにしなければと考えること自体 少し我慢ならない所もあって。 ――とはいえ、父母、祖父母世代には デリケートな問題かもしれないけれど。 話してもいい?と聞き、許可を貰えたなら 父母には話してしまうつもりでいた。 ] (27) 2023/04/03(Mon) 22:50:07 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ 共に休みの日、出かけることも 少しはあるが、大掛かりな買い物、は これまであまりなかったと思う。 要所要所、販売員の手を借りながら 選ばれたそれは、勝負の時にも 大いに役に立った、と言える。 大晦日、父母には出演の話はしてあるから 祖父母もきっと、テレビにかじりついていることだろう。 舞台袖から電話を掛けて、 声と愛をねだり、受け取った後。 一歩踏み出すその時にも、 その香りが背を押してくれた。 黒のボトル、その香りの名は「英雄」 卒業するには、うってつけと言えるだろう。 君の思いを背に、その席を自ら、蹴り壊すには 似合いすぎるくらいだった。 ] (28) 2023/04/03(Mon) 22:50:40 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ 出会って、二度目の春を前に、 冷蔵庫の中には、取り寄せた苺が 冷えている。 フレグランスを買いに行った日、 ついでに、と食器やグラス、カップ等も 買い漁って。 今ではこの部屋には二人分のモノが、溢れている。 その日も、その香りに助けられたと言える。 言葉は淀みなく、零れていたとしても、 言葉通り、緊張はしていたから。 夏か近づいた帰り道、 もうすぐ、夏ですねと次の季節を なんでもないことのように言う君が居た。 夏が逝く前、 すべてが夢だったと思わされるような 悪夢に魘されて、冷えた手を、 救い出すように握ってくれた君が居た。 ] (29) 2023/04/03(Mon) 22:51:10 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ 君に会える特別な日々から、 君がいる、当たり前の毎日へ変わりゆく頃 告げた言葉を、告げられた言葉を、 生涯、忘れることはないだろう 一つ前の季節を思い出す、 そのなんでもない日にも、 俺 の隣には、愛する君 がいる――。** ] (30) 2023/04/03(Mon) 22:51:34 |
![]() | 【人】 高野 景斗[ ――コスチュームプレイを含む アブノーマルなプレイについて。 自分は興味などない方、だと思っている節がある。 節がある、というか。あった、が正しい。 同性同士のカップルだと、オーラルセックスで 十分に幸せだ、という人たちがいるらしい。 実際そういう人たちの体験記などを拝見して、 初夜に望んだ身である。 望まれれば望まれるように振る舞うことが できる、くらいに認識していた自分の性欲。 貪欲だったのだと気づかせたのは、 ほんの少し年下の、恋人。 ] (31) 2023/04/03(Mon) 23:18:32 |
![]() | 【人】 高野 景斗 ……何も言わないで。 [ とある日のこと。別にそうと決めているわけでは ないが、翌日が休み、という時に彼は良く 泊まりに来るし、こちらも誘う事が多い。 互い期待している事はなんとはなしに、感じ取るから やはりそういう日は、色々な事が念入りになる。 そして浴室から出てきた彼に対し、 何も言わないで、であるから、不思議そうな 顔をされたとしても、致し方なく。 おずおずと差し出したのは、新品、 洗濯済み、のブルーストライプ柄のエプロン。 ] (32) 2023/04/03(Mon) 23:19:04 |
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