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【人】 控井― 観月祭前夜 ― [夜は更けていく。窓からは未だ雨が止まず。 弱まってきたのは感じるが、月光は窺えない。 娘は嫁に行っただけで、失ったとは違うけれど、 傍にいてくれるものが、 兎のぬいぐるみ一つになったことは事実で。 せめて、本当の事を君が教えてくれていたら……。 何度、嘆いたことだろう。 君と、お腹の中の彼女、そして私。 家族が三人揃ったのは、十月十日の間だけ。] (13) 2022/10/01(Sat) 21:20:31 |
【人】 控井を 思 皮 燃 名 き ひ 衣 ゆ 残 て の と な 見 外 し く ま に り [教えてくれる筈がない。 し せ そんなことを知ったら、 を ば 私は君の命を優先するに決まっている。] (15) 2022/10/01(Sat) 21:21:21 |
【人】 控井[予め子供の命か母親の命か、選択を迫られていたのだけれど、 君は折を見て話すから、 その事を私に気取られないようにして欲しいと、 医師や看護師に念を押していたそうだね。 そして私は何も知らぬまま、満ち足りた幸福を夢見て…… まんまとその夢は破れてしまったよ。] (16) 2022/10/01(Sat) 21:21:55 |
【人】 控井[最愛の君を失ってしまった。 君が遺した娘も、今はここにはおらず。 母親もいないんだ。 孫が出来ても、それ程長くここへ留まることもないだろう。 だからこそ、思い出してしまうんだ。 君を失ってすぐに頭を過った思い。 失うことが確定しているものを大切にすることは、 幸せな事だろうか。 或いは、哀しい事なのだろうか。**] (17) 2022/10/01(Sat) 21:22:48 |
控井は、メモを貼った。 (a1) 2022/10/01(Sat) 21:28:36 |
【人】 控井[月見団子は、毎年商店街の”うさぎ堂”で購入している。 妻も娘も甘いお菓子が大好きだったから、 お祭の日でなくとも、店には足繫く通っていた。 予約とかは特にしていないし、 急がないと売り切れてしまうかもしれないと、 まだ日の明るい内に店舗へ出向き、月見団子を購入した。 店内で兎の仮面をつけている給仕の女性を見かければ、 「お祭らしくて良いですね」と柔く笑んだ。*] (23) 2022/10/01(Sat) 23:44:52 |
【人】 控井― 回想:君の好きな甘い菓子 ― [例年通り、観月祭の前に月見団子の確保にやってきた夫婦。 うさぎ堂の暖簾をくぐると、 男はまず先にと団子を購入する。] 「ねぇ、折角だし秋の甘味も食べていきませんか?」 [会計を済ませて、もう帰るつもりでいた男は面食らった。] 団子があるのに、他にも食べるつもりかな? 天高く馬肥ゆる秋……なんて言うけれど、 馬だけではなさそうだね。 [冗談めかして男が言えば、女はふくれっ面で応えた。 そんな姿も愛らしいと、結局男は女の要求に応え、 それが毎年の慣例となっている。 女の好物は、栗の入ったぜんざいだった。*] (24) 2022/10/01(Sat) 23:45:38 |
【人】 控井― 回想:彼女の好きな甘い菓子 ― [妻を亡くした男は、それ以降は娘と月を見るようになり、 変わらず"うさぎ堂"にて、毎年月見団子を購入していた。] 折角のお祭だからね。 他にも食べたいものがあるなら、何か食べていこうか。 [年々妻の面影が濃くなっていく娘に、 男は甘かったのだけれど、本人だけは未だ気付かぬ様子。] 「いいの?お父様、ありがとう」 [うきうきと店内に入り席に着く娘。 娘とも団子を購入する序に、 店内で甘味を楽しむのが恒例となった。 娘の好物は、妻とは違いあんみつである。**] (25) 2022/10/01(Sat) 23:47:05 |
【人】 控井[買った月見団子をよき所で、月を見ながら頂こうと用意し、 兎のぬいぐるみも準備万端だ。 女性は身支度に時間がかかるもの。 妻や娘が呉服屋で購入した浴衣を着るのに、 中々終わらない支度を、天気を気にしながら待ったものだ。 我々男たちは常と変わらぬ洋装だけれど。 いい大人の男がぬいぐるみを抱えて出かけるのは滑稽だが、 今日は祭だからそれ程、悪目立ちすることもないだろう。 うさぎ堂の娘さんのように面を付けた人や、 飼い犬や猫を連れている人も見かけたことがある。] (47) 2022/10/02(Sun) 22:42:05 |
【人】 控井[かくして家を出てみれば、 雨音しか聞こえなかった数日間が嘘のようで。 活気に溢れた通りは賑やかで、 色取り取りの提灯の光が鮮やかだ。>>n0 ざわざわとした人々の話し声に混じる、 遠くからのお囃子の音。 露店も色々と出ており、 ちらちらと珍しいものはないかと目をやる。 地元の特産品などは見慣れているけれど、 祭には島外の商人が出店をしたりもするので新鮮だ。 私は割と見ているだけで、満足してしまう質だけれど。 通りすがりに狐面の女性が営む露店を見つけ、>>44 ふと足を止めた。 玩具や装飾品、日用品などが並べられており、 これなんて、君が喜びそうだ。これは彼女に……。 そんな風に脳内で見立てては、顔を綻ばせた。*] (48) 2022/10/02(Sun) 22:43:11 |
【人】 控井― 回想:君への贈り物 ― [男が「聊か支度に時間がかかりすぎやしないか?」と言えば、 女は「殿方のようには、いかぬものなのです」と ツンとそっぽを向いた。 女が身に纏うのは、菖蒲の柄の入った浴衣。] よく似合っている。待った甲斐があった。 [その様に男が返せば、女は忽ち機嫌を直した。 仲良く並んで、薄墨神社への道を行く。 女は露店を見つけては足を止め、 並べられた珍しい品に目を細めた。 薄墨神社にて、長椅子に腰掛けて月を見上げる段になり。] 君にこれを。これをつければ、 月の姫もかくや……なんてことになるかもしれないね。 まぁ、そこまで大層な代物ではないと思うけれど。 [男はそう言って、妻に螺鈿細工の簪を贈った。 毎年、露店で見つけた何かを贈るのも、夫婦の恒例だった。*] (49) 2022/10/02(Sun) 22:44:30 |
【人】 控井― 回想:彼女への贈り物 ― [まだ幼い時分の娘は、 金魚柄の浴衣を祖母に着つけて貰って出かけた。 男と並んで、手を繋いでゆっくりと歩いていく。 露店が気になるのは娘も同じなようで、 父娘の歩みは、実にゆったりとしたものだった。] 何か欲しいものがあったら、言ってごらん。 買ってあげるのは一つだけだから、よく選ぶんだよ? [男が微笑みかけると、娘もつられて笑顔になる。 「お父様、大好き」と娘が言えば、 「現金なものだね」と男は苦笑い。] 「お父様、わたし……あれが良いわ!」 [たっぷりあちこちの露店を吟味して、 夜空も大分暗くなってきた頃合いに、 やっと娘の心が一つに決まる。 娘がその年に望んだのは、 浴衣と同じ金魚の描かれた風車だった。**] (50) 2022/10/02(Sun) 22:46:23 |
(a6) 2022/10/02(Sun) 22:49:01 |
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