ちらと、青が貴方を見る。
貴方のエメラルドグリーンはまだ健在だっただろうか。

「……」

小さく開きかけた唇は空気を震わせることのないまま閉ざされた。

目を伏せ、テンガンは貴方から。処刑室から、立ち去った。

「……すまない。遅くなった」
「占い師テンガン。今日の占い結果を報告する」


「俺視点で残る人狼はキュー、キファのどちらかだった。
どちらも俺に対し疑いを向けていたが、キファは勘違いなどから来るものが多く感じた。

後は……２日目に言いだしたのはバーナードだったが、誰もツッコミを入れないまま霊能をローラーする方向で進んでいたのも気になってな。１日目の段階では、霊能者か占い師か、という話だっただろう？
だから、もしかすると人狼側はあの段階で占い師COしていたのがどちらも騙りだと感付いていたのかもしれないと思った。
それで霊能者ローラーは確定事項だという方向へ持って行きたかったのではないかと。

故に、カストルが最初占ったキューを占った。
……結果、黒。真占い師が潜伏している事は想定済みだったようだな」

５日目。
ヌンキの処刑が執り行われ……命の灯火が潰えた頃だろうか。
返り血の付いた服のまま貴方を探し船の中を駆け回り、戻ってきた男は自身の部屋の前でやっと探し人を見つけた。

「……シトゥラ！」

慌てて座り込む貴方へ駆け寄り、手を伸ばしかけ。
寸でのところで手袋を外し、素手で確かめるように貴方に触れただろう。

「大丈夫か。いったい今まで何処で、何を……
……部屋に、入るか？」

「あぁ、いつもすまない」

「……と、言いたいところだが。
俺もカストルに続いて議論の場で、俺の口から告げさせてもらった。
ムルイジの分については任せよう。既に受け取っているのなら、サルガスの判断で出してもいいと思う」

抱きついてきた貴方を抱きとめる。
浴びた血は、もう乾いている。

「そうだったか。
留守番ができて偉いな、シトゥラ。待たせて悪かった」

髪にこびり付いた血の塊を剥がし、頭を撫でる。

「……なら、入ってくれ」

扉を開ける。備え付けのテーブルにはポットとティーパック、ふたり分のカップが置かれたままだった。カップを手に取り、新しいものに手をかけながら声をかける。

「茶は、飲むか。それとも、シャワーを浴びた方がいいだろうか。いつまでも汚れたままという訳にはいかないだろう」

弟妹を相手にしている時のような、奇妙な感覚に襲われる。
……シャトが大丈夫と判断しているはずだ。
まだ、まだ踏みとどまっているはずだ。

「そうか。俺はシトゥラの『まま』がどういう者だか知らないが……部屋をきちんと片付けられる者なんだな」

私物はほとんど持ち込んでいない。特別なものを頼む事もしていない。最低限のものが詰め込まれた、殺風景にも見える部屋だ。

「では、シトゥラにはよく冷えたジュースを出す事にしよう。
シャワーから出たら…………

一緒、に？
……構わないが、大の男が二人、入れただろうか。風呂の用意をしておくから、シトゥラは準備しておいてくれ。できるな？」

―――昨日までのシトゥラなら絶対に、こんな提案していない。
そんな話が出ようものなら即座に顔を赤くしポカポカと叩くなり、していたと思う。
湯を張り、タオルや替えの服を用意しながらぼんやりとそう考えた。

「そうか」

深堀りは、しなかった。

「それは、すごいな。俺は昔そういう事が得意ではなくてよく……怒られたものだ。今でも時々、その辺に置いたままに―――」

湯加減を確かめ、振り返る。
そして貴方の裸体が目に入った。

―――貴方の歳はひとつ上だったと、記憶している
―――貴方は確か、成人していたと、そんな話を記憶している

「……」

「止まれ」

ようやく出たのはその、一言。
用意していたバスタオルを一枚掴み、これ以上貴方の裸体を視界に入れる前包む。

「……待て。待ってくれ。『シトゥラ』？」

男の声は明らかに狼狽えている。