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【赤】 葉山 裕太郎[葉山という男の人生は、他人からの排斥が大部分を占めている。ストーキングという加害行為に基づく防衛行動、その異常性を幼い頃には母親に、成長してからは父親に指摘されてから今に至るまで、葉山が多数派と受け入れられることは万に一つもなかった。 小学校では白い髪は忌避され、中学と高校ではその顔立ちから反感を買い、その度に自分を悪くいう人間の事を徹底的に調べ尽くして恐怖を与えて追い詰めるようになってしまう。 特定の誰かに強い執念を持ち、プライバシーの柵を切り倒す。そうして首元に爪を立てれば、完了だ。 それこそが葉山が唯一持っている防衛の手段だった。] (*11) 2024/01/11(Thu) 4:08:33 |
【赤】 葉山 裕太郎[人は安息の地から石を投げる時にその本性を表す。醜く卑劣なやつらは自分の安全を確保できた時にしか他人に牙を向けない。 これは当然の措置なのだ。安息の地で石を投げる人々と腹を割って話し合うためには、彼らを地の底に引きずり下ろすしかない。 ストーキングという異常性が示す目的などただ一つ、葉山はそう信じて疑わなかった。] (*12) 2024/01/11(Thu) 4:09:41 |
【人】 葉山 裕太郎[サイン会からしばらくした日、自室で差し入れでいただいた紅茶を嗜みながら、さっき宅配ボックスに荷物を取りに行ったら引越し屋のトラックが止まっていたことを思い出す。 流石は人気のマンションだ、家賃も相応にするというのに直ぐに入居者がやってくる。 前の女性は静かな人だったから次もそうあって欲しいと願うばかりだと、そんなことを思っていると部屋のインターフォンが鳴り響く。 恐らくタイミング的にご挨拶だろうか。 流石に部屋着というわけにもいかず簡単な私服に着替えて扉を開けると、思いがけない相手に葉山は目を見開くのだった。] (6) 2024/01/11(Thu) 4:11:17 |
【人】 葉山 裕太郎[世界というのは本当に狭い。まさかここで三度目の出会いが来るというのは運命のいたずらとでもいうのだろうか。 そこに居たのは、サイン会で一番にサインを貰いに来てくれた彼女だった。] あはは、なんだか奇遇だね [何かを疑うわけではなく、ただの偶然だろう。 ここは人気のマンションだ。空けば誰だってやってきてもおかしくない。] (8) 2024/01/11(Thu) 4:12:28 |
【人】 葉山 裕太郎*** [とはいえ、新しいお隣さんがやってきてから特に何か変わったということも無く、葉山の生活はいつも通りだ。 朝六時に起きてモーニングルーティンをこなし、執筆をしながら時折外に気分転換に出かける。 毎週月曜日と金曜日の13時から18時の間だけは編集者との打ち合わせで家を空けるものの、他はほとんど家で執筆作業だ。 そんな味気のない生活に、親しみやすいお隣さんができたというだけのこと。 生活リズムが合うのかなんでなのか。ごみ捨てのときなんかもばったり顔を合わせることも多くて、時折七海の寝癖が直りきっていなかったりとお茶目な一面を知ることもあった。 しかしそれ以外何があるというわけでもない。 出掛ける時にいつもやっていたルーティンも健在だ。] (11) 2024/01/11(Thu) 4:19:18 |
【人】 葉山 裕太郎[ここはマンションの中でも中層に近い場所で、外からの空き巣など入ってこない。それに自分がいるのは角の部屋で、肝心のお隣さんもよく知っている人物。 とても七海が空き巣を働くほど生活に困窮した人間とも思えない葉山は、その警戒を強く持たず、外出時には窓を開けたまま換気をする習慣を継続し止めることはしなかった。 たとえバルコニー同士が隣接してて侵入が容易だとして、出来るのは唯一七海だけ。その七海もあまり心配が要らない。問題は無いはずだ。]** (13) 2024/01/11(Thu) 4:22:16 |
【独】 葉山 裕太郎あの日後ろをつけてきた人物が誰かは直ぐに分かった。 スーパーでぶつかった時の彼女と歩き方が同じだったから。 だから俺は思ったんだ。 彼女が“本物“なら、隣の部屋を空室にすれば ここまで追ってきてくれるんじゃないかって。 (-1) 2024/01/11(Thu) 4:23:34 |
【独】 葉山 裕太郎[初めてぬいぐるみを手に取った時、葉山の中では数々の点が確信を帯びた線に変わった。袋の中にある硬い小さな塊と差し入れには大袈裟な代物。 自分を異端たらしめてきたこの狂気を、攻撃や防衛ではなく好意の暴走として手懐けた人がいたのだと。 人の敵意に晒された葉山にとっては、七海のそれが敵意とは対極的な感情であることくらいすぐに分かった。] (-2) 2024/01/11(Thu) 4:25:01 |
【赤】 葉山 裕太郎[優等生だろうと劣等生だろうと、心の中には独善という名前の悪魔が潜んでいる。いくら人の為と口では語ろうとも最後には自分の為に動くもので、下手な言い訳を並べ立てるよりも欲望を誤魔化さない方が余程可愛らしいとさえ思う。 自分の中に潜む狂気を誤魔化すことをやめた者の気持ちは、同じ側に立ったものにしか分からない。 良い子には決して分からない世界だ。] (*41) 2024/01/12(Fri) 13:37:29 |
【独】 葉山 裕太郎[葉山の中でまたひとつ線が繋がる。 葉山裕太郎というミステリー小説家と血腹妖という官能小説家が同じと気づいてか知らぬか、七海は双方の小説家を好んでいる。 その好みに対する一種の暴走が、これだ。] (-8) 2024/01/12(Fri) 13:45:34 |
【独】 葉山 裕太郎[彼女は決して期待を裏切らない。 むしろそれ以上で応えてくる。 その狂気は先天的にも後天的にも生み出されるものだ。 何が彼女をここまでにしたのか、気になって仕方がない。] (-9) 2024/01/12(Fri) 13:46:27 |
【独】 葉山 裕太郎[まだ悟らせてはならない。 彼女が心の蓋を閉じるより前に知れることは全てを知っておこう。 彼女が外側に逃げる道を、塞げ。] (-10) 2024/01/12(Fri) 13:47:22 |
【人】 葉山 裕太郎[引越しの挨拶にはあまりに高価な気もしたのでしっかりと礼を伝えて、その日は別れることとなるのだった。 それからしばらく、いただいたクッキーとバターサンドをお供に紅茶を嗜む時間がルーティンに追加されたのはここだけの話。 ちなみにびっくりするほど美味しくてお茶会をする時にはこれ買おうと葉山は決心したのだとか。]** (23) 2024/01/12(Fri) 13:53:52 |
【人】 葉山 裕太郎*** [朝、いつも通りごみ捨てに向かう。 ゴミ捨て場は敷地内にあるものの、構造上一度オートロックの外に出て捨てなければならない。 なんでも、ゴミの臭いが廊下まで来たら住人の気分を害するからということらしい。 そしてこのマンションは部屋の鍵とオートロックの鍵が同じ一本で完結していて、差し込み型の鍵に外付けでオートロック用のタッチキーが取り付けされている。 これのおかげでセキュリティも維持できて入居者も楽できて便利という大家さんの心優しい計らいらしいが、実は面倒なこともある。] うわ、やった、終わった…… [そう、忘れたら一環の終わりなのだ。 しかもいつもなら開けてくれる管理人さんも、毎週このタイミングは警備点検に向かっていて席を外している。 そして探そうにもオートロック扉の向こう側に行けないからどうしようも出来ない。 しばらくここで待ちぼうけになることを覚悟するしかなかった。] (24) 2024/01/13(Sat) 4:04:02 |
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